主人公補正の無い主人公の妹に転生したので兄の強化に尽力したのにいざ本編が始まると微妙に別人でした   作:緒河雪那

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壱之伍

呼ばれた竈門炭治郎と竈門禰豆子の兄妹が大広間に入ると、皆が一斉に二人に……特に鬼の禰豆子に注視した。その色は警戒と殺意に満ちている。

 

(無一郎の姿が無いのは、前の時より二年早いからかな? しのぶさんもそうだったけど、皆若いな……)

 

「炭治郎君、禰豆子さん、こちらに」

「あはい」

 

しのぶに促され、用意された席に座る竈門兄妹。そんな二人に、上座から聞く者に安らぎを感じさせる声が掛かる。

 

「良く来てくれたね。君達が……「俺、竈門炭治郎って言います。今はしのぶさんの処で家族と共にお世話に成ってます。今日は宜しくお願いします」……」

「おい小僧! お館様の御言葉を遮るたぁ、どういう了見だ! あぁっ!?」

 

額に青筋を立て声を荒げて炭治郎を叱責する実弥を、お館様と呼ばれた上座の人物は「まあまあ」と宥める。

 

「言われずとも自己紹介と挨拶が出来るなんて、随分立派な若者じゃないか。私は産屋敷耀哉。代々鬼殺隊の長を勤める産屋敷家の九十七代目当主だ。剣士(こども)達からは『お館様』と呼ばれているよ」

「有り難う御座います。ほら、禰豆子も……」

 

兄に促され、機を窺っていた妹も一礼して自己紹介をする。

 

「竈門禰豆子。炭治郎の妹で無銘の怪物……皆様方が言う処の鬼です」

 

鬼。その単語が出た瞬間、周囲からの殺気が増大した。

 

「? 禰豆子は随分と機嫌が悪い様だね。炭治郎が心配かな? けど安心してほしい。君達が御行儀良くしてる限り、剣士(こども)達には誓って手荒な真似はさせないよ」

「いえ……私の家族を襲い、私をこんな身体にした奴と同じ顔が目の前に居るもので……当時の事を思い出していました」

「「「「「「「「は……………………?」」」」」」」」

 

衝撃的すぎる内容に、揃って目が点になる柱一同。今この少女鬼は何と言った。正体不明な鬼の首魁が、我らの主と同じ面貌?

 

「安心しろ禰豆子、この人はお前が戦った鬼とは匂いが違う。確かに髪型と目元以外は双子処か同一人物の変装か? て位にそっくりだけど……。この人は唯の特殊な人間だ。だいたい禰豆子、お前も耀哉さんがあの鬼舞辻無惨とか言うのとは別人だって解ってるだろ?」

「待て少年、今何と言った」

 

妹を(なだ)め説得する炭治郎に、柱達の纏め役行冥は光を宿さない眼を向ける。

 

「? だいたい禰豆子、お前も耀哉さんがあの鬼とは別人だって解ってるだろ?」

「その前だ、その前!」

 

今言った己の台詞をそのまま繰り返す炭治郎だったが、小芭内の反応を見るに違うらしい。

 

「? 安心しろ禰豆子、この人はお前が戦った鬼とは匂いが違う」

「その後だ、少年!!」

 

続く杏寿郎の答えと様子から、これも違うらしい。

 

「? この人は唯の特殊な人間だ」

「地味にどっちだよ! 先見の明を持った御方だが非戦闘員って意味なら、まあ……派手に間違ってねえけどよ」

 

天元の突っ込みから判断するに、やはり違うらしい。

 

「つまり……禰豆子ちゃんを鬼に変えた鬼舞辻無惨とか言う鬼の大将は、お館様のそっくりさん?」

 

新人柱、恋の蜜璃が確認する様に問い掛けると、炭治郎は「はい」と返す。

 

「頭は癖の強い黒髪……花子、あ……下の妹曰くワカメ頭で、眼は血の色をした獣みたいな感じです」

「ふむ……ワカメか……」

 

耀哉が炭治郎から聴いた説明を元に無惨の人物像を思い描こうと思案している処へ、禰豆子が「でも……」声を掛ける。

 

「あの家を襲った鬼……鬼舞辻無惨でしたっけ? その時は腕を自在に伸縮変形硬化させて振り回したり、衝撃波を飛ばしたりしてたんですよね。アレと永年戦ってる皆さんがその正体を知らない事をふまえると、普段はその能力を応用して変装している可能性も有ります。それも定期的に変えて」

「そうだね。でも、鬼舞辻無惨の正体が私そっくりだと言うのは確かだと思う。あの男は今から千年程前、元々は平安の時代に産まれた産屋敷の人間でね。奴をこの世に産み出した事は、我が産屋敷家唯一にして最大の汚点だよ」

「「「「「「「「え……………………」」」」」」」」

 

又もやの衝撃的すぎる事実、その弐に、揃って本日二度目の絶句をする柱一同。お館様と鬼の首魁が同じ血筋…………? 思考が追い付かない柱達を他所に、禰豆子は「元は人間ですか……」と独り呟く。

 

「そのお陰で我が一族……取り分け嫡男は短命の呪いを授かっていてね、私も三十まで生きられるか判らない。この殆ど見えない眼もその影響だよ。呪いを解くには鬼舞辻を斃すしか無い」

 

自嘲気味に苦笑する耀哉。回りの者達がどう声を掛けるべきか悩む中、当の耀哉が「話を進めよう」と発破を掛ける。

 

「さて、君達の家に伝わるヒノカミ神楽だが……結論から言うと、日の呼吸とその型を神楽と言う形に落とし込んだものだと思われる。義勇、しのぶ、良く見付けてくれたね」

「勿体無い御言葉」

「私は炭治郎君の家族を護りたいと言う想いに、年長者として少しばかり助力しただけです」

 

お館様に褒められ恭しく頭を下げる義勇と、功労者は炭治郎だと返すしのぶ。そんな二人を横において、行冥がおうむ返しに皆の想いを代弁して問い掛ける。

 

「日の呼吸……ですか?」

「うん。今は喪われし、始まりの呼吸にして最強の呼吸だよ。その呼吸の使い手はかつて鬼舞辻と対峙し、鬼殺隊の歴史の中で唯一奴に傷を負わせたと言われている。煉獄家に伝わる『炎柱の書』にも、戦いの詳細な記録が遺されている筈だ」

「よもや! 帰宅した後、早速書庫を(あらた)めてみます」

 

驚きに目を見開く杏寿郎を横目に、実弥は「最強……ですか……」と思案顔で呟く。

 

「お館様の御言葉を疑う訳ではありませんが……それが本当なら、今回の竈門家襲撃は自身に傷を負わせた、数少ない天敵とも言える日の呼吸を根絶やしにする為でしょうか?」

「だろうね。実際、その日の呼吸の使い手と同じ黒い日輪刀の剣士は鬼達から積極的に狙われていてね。その悉くが出世する前に皆殺られてる」

 

その前途は多難だと言外に告げる耀哉の言葉を受けて、不安気な視線を炭治郎に送るしのぶと蜜璃、そして義勇。

 

「俺は殺られませんし、禰豆子にも人喰いなんかさせませんよ」

「私も、お兄ちゃんは殺らせません。貴方達にもね」

 

満面の笑みで宣言する炭治郎に、不敵で獰猛な笑みを浮かべる禰豆子。

そんな仲の良い兄妹……特に禰豆子に未だ多くの柱達から怨みと疑いの籠った視線が集まる中、耀哉は「そんな訳で……」と続ける。

 

「竈門禰豆子の処遇については経過観察とする。勿論、人を襲えば即斬首だ」

「…………はい」

 

(禰豆子を殺そうなんて、到底納得出来ない…………けど、するしか無い。今回は前と違って、二年間の実績は無いんだ)

 

「そして竈門炭治郎の教育をする育手(そだて)だけど……」

「それついては私の師、鱗滝左近次を紹介しようかと」

 

義勇の提案に対して、蜜璃が「でも……」と疑問を投げ掛ける。

 

「炭治郎君が使う日の呼吸って、基本と成る五つの呼吸の元に成ったんですよね? なら逆に考えてって訳じゃ無いんですけど、水の呼吸だけで無く炎の呼吸もとか、他の呼吸にも触れておくべきだと思うんですよ」

「それについてはお館様、俺の方からも提案しようかと思っていました。少なくとも、どの時代にも柱が存在した水の呼吸と炎の呼吸については触れさせておくべきと愚考致します」

「二人の言う事も一理あるね。判った。そう言う事なら雷の呼吸の育手(そだて)、桑島慈悟朗にも文を出しておこうか……」

 

元継子に便乗した形の杏寿郎の提案に頷く耀哉。

 

(? と言う事は『今回』の俺は、鱗滝さんだけで無く煉獄さんにも鍛えられて最終選別に挑むのか……。でも桑島さんって誰だ? 雷の呼吸って事は善逸の関係者かな?)

 




水と炎そして雷の呼吸修得のフラグが建ちました
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