GGOでパイロットを活躍させたかっただけの話 作:EDFからあげT
チュン!チュイン!
至近弾が多くなりつつある戦場を駆ける。
いつ命を落としてもおかしくないこの状況に彼は歓喜していた。
「…いいぞぉ!最高だ!もっと楽しませてくれ!」
すでに残り30人を切ったこの戦場でこんなに楽しめるとは正直思ってもみなかった。
まさか個人戦であるこのBoBで臨時パーティを組んで殺しに来るとは!
ガッ!
「ーーーッ!!痛い…!痛いなぁ!!」
腹部に銃弾が刺さる。
ペインアブソーバーを切っている彼には他のプレイヤーには想像のつかないだろう激痛が走る。
痛い、痛い。とても痛い。
だが!それがいい。命を実感できるから。
お互いの生命を賭けた戦場であると再認識できるから。
先程撃たれた弾はさほど遠くない位置からの物であった。
この瓦礫の多い射線の通りづらい環境でよく当てたものだ。
強い、強いなぁ。そこまでの射撃センス。
スキルに依存するだけではできない芸当だ。
殺したい。今すぐにでも。
射撃地点の近くの半ばから崩れ蔦にまみれた建物の壁を走りながら一気に距離を詰める。
相手もこちらにラインを合わせている。
タン!タン!タン!タン!
一定の間隔で的確に射撃してくる。
彼の着るパイロット装備は機動性と回復能力を大幅に高めてくれるが防御力は布ほどしかない。
しかし。相手も運が悪かった。いや、運が悪かったというには腕が良すぎた。
的確に射撃してきた、が。すべて頭部にだ。
パイロットのヘルメットは他の部位と比べて防弾性が高く生半可な威力の弾は弾かれるか逸らされて無効化される。
相手の放った弾も例外ではない。
放った弾がすべて無意味であったことを悟った相手は無意識下で逃げる選択をしていた。
しかし遅い。遅すぎたのだ。
パイロットの浮いていた身体が地面に着いた瞬間パイロットはその場から消える。
ジャンプキットを流用し瞬間的な推進力を生み出し逃げた相手を殴りにかかったのだ。
ゴシャッ!
「ぎぁっ!?」
普通に殴った程度では出ない音の殴打を叩き込む。
パイロットに憧れた彼はGGOにおいて捨てスキルとまで呼ばれた格闘スキルを極めていたのだ。
今までの殴打や蹴りも全て格闘スキルの補正がかかっていた。
当然そんな殴打を喰らった相手は瞬く間にHPバーを黒く染める。
臨時パーティを組んでいた内の一人の無線機から反応が無くなりやられたことを理解し殺らなきゃ殺られる!と思ったのか臨時パーティを組んでいたのであろう4人が姿を見せる。
ダン!ダン!ダン!ダン!
勝負は一瞬であった。
姿を見せたプレイヤー達は皆一様にプロと呼ばれる者たちであった。
しかし、パイロットには劣った。
初めて彼が銃を抜いた、その銃の名は“ウィングマン・エリート”。
種別はピストルだがその威力はライフルをも凌ぐ素晴らしい銃だ。
ハンドキャノンとまで呼ばれるそれで相手の頭を吹き飛ばしHPバーを黒くしていった。
手だけではなく腕全体がピリピリと痛む。
ウィングマン・エリートは威力も素晴らしいが反動も素晴らしい。
その後の戦闘に支障が出るほどではないがこれは想定外であった。
存外に気持ちいいのだ。まるで電気風呂に入っているような感覚だ。
早い内にこの感覚には慣れておかなければ。
剣を握っている頃にはなかった感覚だからか手先が不安定だ。
ガッ!ギギギギィ…!
「っくぅぅぅ!重ぉぉぉいぃぃ!」
パイロットが戦っている頃、さほど遠くないところでも激戦が繰り広げられていた。
片方は銀髪で露出の多い装備のライフル使い、もう片方は軽装でピストルを腰に携えたナイフ使い。
今なおこの二人は切り合っていた。
見るからにSTR型であろうナイフ使いが優勢であるのは確かだが。
「あぁぁぁもう!こんなとこで使う予定はなかったんですがね!」
銀髪の方がこのままでは負けると悟ったのか一気に距離を取りポーチから何かを取り出し地面に投げつける。
地面に投げつけたのはそれなりの大きさの筒状のものでバシュゥ!という音と共に周囲に煙が放出され始めた。
「特性の電気スモークグレネードです!あなたとは二度と会いたくないですね!さよなら!」
放たれた煙からはバチバチと危なげな音と共に青白い雷光が走る。
それを見て追うのを諦めたのか彼女と戦うのに飽きたのか分からないがナイフ使いは追うのをやめ別なプレイヤーを探しに行くのであった。
〜SBCグロッケンにあるとある武器屋にて〜
「銃士X正々堂々とか言っといてスモーク持ってたんか…」
「策としてはありだろJK」
「んなことよりあのナイフ使いやべぇぞもう17人目だぞ殺したの」
「波乱万丈すぎんかBoB」
「一般ピーポーが参加しても無理だわなありゃ」
「でも参考にゃなるだろ」
「見てすぐ買って取り込むのが俺らのスタンスだからな!」
「いつか目指すぞ!俺らもBoB本戦!」
「「「おーっ!」」」
〜とある酒場にて〜
「もうダメだ…全財産…消えた…」
「あのナイフ使いいいなぁ!強ぇぇぇ!」
「あのプレイヤーなんなんだ…一瞬で腰に掛けてたリボルバーっぽいので4人殺ったぞ…」
歓声も悲鳴も感嘆も悲嘆も様々な声が聞こえる酒場で彼女は今だに彼を見ていた。
「なんであんなに笑って…?分からない…分からない…」
彼とは長い付き合いで知らないことの方が少ないはず、何故?
という思考の渦に飲まれながらも彼女の瞳は彼だけを捉えて離すことはなかった。
後編続きますなー
それはそうとウマ娘楽しいですね