獅子の騎士が現代日本倫理をインストールしたようです 作:飴玉鉛
ちなみに本作では、選定の剣カリバーンにも不老の加護があるものとしています
でないと辻褄が合わないと感じるからです
カリバーンを抜いてから、エクスカリバーに替えるまで、数年のスパンは確実にあり、カリバーンに不老の力がなければ、最低でも謎のヒロインXXぐらいの肉体年齢になってないとおかしいのです
なのでアルトリア三姉妹は原作の姿で固定されております
高機動戦艦型天空城――またの名を王城エハングウェン。
明らかに文明レベルを超過した、空翔ぶ城を創り上げた名匠は神域の天才である。
彼は神ではない。精霊でもない。純然たる人間であり、遥か古代より綿々と受け継がれてきた叡智を誇る、ギリシャの神々の
そして彼の本懐は鍛冶職人などではなく、偉大な機械の神々の残影を追い求める、求道に身命を捧げる研究者としての魔術師こそが本分だった。
彼らは無名だ。
名を残し、痕跡を史上へ刻む事に固執せず、ただ只管に求道する研究者であり。届かないからこそ彼方へ手を伸ばす愚かな夢追い人でもあった。そんな彼らが神代の終焉に導かれ、ブリテンに流れ着いたのは必然であり、国に仕える職人となったのも資金繰りの都合上必然である。
彼らの業は未来を向かず、過去に逆行して文明を置き去りにしている。地球外文明を目指す、技術的特異点とも言える存在であり、故にこそ王の目に留まるのは至極当然であった。
潤沢な資金を投入され、満悦した彼らは千年を超える研究成果を形にした。王への忠義故にではない。こうまで望み通りの設備を得られた試しがなかったからだ。『一度は全力で知識と業を試してみたい』という誘惑に駆られ、王からの依頼を無視しなかった事からも、彼らもまた人間の業には逆らえなかった事が伺い知れる。
果たして、彼ら無名の一族は最高傑作といえる王城を建造した。
この功績を以て彼らは多くの財と、そして名を与えられた。だが名匠は自身の作の出来に満足したのか、はたまた柵に縛られるのを嫌ったのか、王の下を辞して何処かへと去っていってしまう。
しかし彼らは神代最後の王に仕えた誉れと、受けた恩義を忘れる事がなく、これより五百年先に勃興した魔術師の一家は、王より賜った名を家名としてヴォーダイムと名乗るようになった。
五百年先には彼らの業は人理に蝕まれ、機神の再現の探求が潰えた為、占星術や天体魔術に類した、神代よりも古い『理想魔術』の研鑽を積むようになったのだが――それはまた別の話である。
天翔る戦艦、揺蕩う空の城。その全長は325メートル、幅は64メートルにも及んだ。豪華絢爛たる純白の光輝――居住生活区画、玉座と艦橋を兼ねた黒円卓の間があり。畜産と農業区画も搭載されている為、独立して生存可能な小さな国とも言える代物となっている。
搭載された兵装は主砲の
輝かしきかな王の城。円卓の王たちの御座。全ての怨恨を癒やす聖なるキャメロットがブリテンの繁栄の象徴ならば、エハングウェンこそはブリテンの武の象徴であった。
「がぉーっ! 早く逃げないと食べちゃうぞー?」
――迫力のない脅しが、荘厳なる庭園横の通路に木霊した。
幼く楽しげな悲鳴が上がり、三人の幼児が短い手足を振って逃げていく。
歳の頃の近しい金髪碧眼の男児と女児。そして白髪に琥珀の瞳の男児だ。
順に名をロオ・モナーク、騎士王と勝利王の嫡男。第二子にして騎士王と顧問魔術師の長女、グウィネス・ペンドラゴン。第三子にして騎士王と近衛騎士長の長男、アニル・ペンドラゴンである。
それぞれが瓜二つとまではいかずとも、よく似た異母兄弟達だ。そしてそれを追っているのは
三人の幼児を獅子が追い立てるという、絵面として危機的な状況なのだが、幼児達に恐怖の色は欠片もない。むしろ無邪気に追いかけっこを楽しんでいるようで、すれ違った衛兵達も微笑ましげに道を譲る。それもそのはず、白い獅子は偽りの姿なのだ。その真の姿は――
「ほーらロオくん、つーかまえ――
「――見つけたぞ
四歳のロオが、三歳のグウィネスの手を引いて走っていたのだが、逃げ足の遅いグウィネスを庇って異母妹の後ろを守っていた。そこに飛びかかって捕まえようとした白獅子だったが、通路の曲がり角から
見るも鮮やかな
「ははうえ!」
「アニル、私は
「はいっ!」
現れた少女、オルタの腰に後ろから抱き着いた白髪の男児が素直に返事をして、ロオ王子らと連れ立って駆け去っていく。
オルタは白獅子の指から指輪を抜き取ると、それを自身の懐に収める。すると白獅子の幻がほつれ、仕立ての良いローブと帽子を纏った、王妃と瓜二つの少女の姿が現れた。
「いたた……あっ、オルタ! いきなり何するの!?」
それは言うまでもなくリリィである。
目を回していたリリィだったが、意識が戻ると跳ね起きて、自身に首刈りを食らわせた姉に食って掛かる。いつもであれば冷たく突き放す返す所だが、オルタはばつが悪そうに目を逸らした。
「……がなるな。
「だったら普通に呼び止めてよ! 別に盗んだんじゃないし、子供達と遊ぶのに使うから貸してって言ったよね! 謝れーっ! 悪い事したら謝るのが常識でしょ、オルタも大人なら謝れーっ!」
「………」
悪い事をした自覚はあるが謝り辛いオルタである。日頃が往生というが、常日頃のリリィの行ないのせいで、つい手荒に止めてしまったのだ。素直に謝意を述べる事へ抵抗がある。
無言で踵を返したオルタは背中越しにボソリと呟く。当然、聞こえるか聞こえないかといった謝罪に満足するリリィではなかった。ハッと何事かに気づいたリリィは悪い笑顔を浮かべる。普段は色々と強く当たられる事が多い姉に、今回はマウントを取れると悟ったのだ。
歩き去ろうとするオルタにまとわりつき、リリィが姉の病的に白い横顔を下から見上げながら嫌らしく言う。
「……ふふーん? そんな態度でいいのかなー? 悪いことしたのに謝らないなんて、人としての道を外れてるんじゃないのー? いっけないんだいっけないんだー、
「………」
「ほれほれオルタさん、一言謝るだけで許してあげようっていうわたしの優しさに縋った方がよろしいのでは? さもないと兄さんにも言いつけちゃうぞ? いいのかなー。兄さんの説教は長いぞー? きちんと反省させられて、改めて謝らされるのは嫌じゃない? ほらほらほらほら早く謝っちゃった方が後が楽だと思っ頭が割れるように痛いぃぃいいい!」
「――まとわりつくな、鬱陶しい」
リリィの顔面を鷲掴みにして、妹を引き摺りながら自身の眼前にまで持ち上げたオルタが吐き捨てる。他の者なら無感情に受け流せるのだが、相手がリリィだとそうはいかない。
堪らず手を出してしまった。妹ほど的確にオルタを苛つかせられる者はいない証左である。
「痛い痛い痛い! 理不尽! オルタ理不尽だよこれっ! わたし悪くないもん!」
「ああそうかそうだな謝ってやろうすまなかった今後は気をつける。許せ」
「脅しにしか聞こえないぃ!」
「許せ。それとも許さないのか? 残念だ」
「許すから離して顔の形変わっちゃうよー!」
「フン……」
気まずげに鼻を鳴らしてリリィを解放する。
「あーあ、ロオくん達どっか行っちゃった。
せっかく内気なアニル君とも打ち解けてきたのになぁ……」
退屈そうにボヤきながら顔を揉む末妹。
どうでもいいが、リリィは昔から変わらない。一児の母になれば多少は落ち着くのではと期待していたのだが、全くと言っていいほど成長していないリリィにはオルタも頭痛を覚えてしまう。
いや、成長はしているのだ。何せ今年で19歳である、色々と世間が見えてきて、子供のままではいられなくなっている。だが敢えてリリィは昔のまま変わらない振る舞いをしていた。
理由は幾つかあるのだろう。近衛騎士も兼ねるオルタや、王妃であるアルトリアと違って立場が微妙なのだ。宮廷での身の置き場がない。愛妾という立場はあってもそれは公的身分としては薄弱である。そして立場が微妙であるからこそ、リリィは態と馬鹿のフリをして、周囲に侮られようとしている。知恵のないバカ女――仮にも身内がそう噂されるのは面白くないが、政治力学的になんの影響力もないように思われようとしているリリィの努力の形だ。
それに、主君にして旦那である青年も、リリィのこの態度を好ましく思っているらしい。気の休まらぬ人のために、道化のような事をする事もあった。公私の両面でリリィも考え、昔からの無垢な少女のフリを通している。多分に素が混じっているのも否めないが……。
しかし、痛々しくはない。
19歳の成熟した女らしい肢体であれば、リリィの振る舞いも鼻に付くだろう。だが自然に見えているのは、アルトリアら三姉妹の肉体年齢が15歳で停止しているからだ。選定の三剣――『ペンドラゴン』の証である剣の加護で、彼女達は不老と化している。同じく18歳で肉体年齢が停止した大王の隣に立っても違和感のない姿だった。
「そういえばオルタ、どうして指輪を取りに来たの? ドレスなんて着ちゃってさ、なんか予定にあったっけ?」
「これは普段着だ」
なんのけなしに付いてくるリリィが問い掛けてくるのに、オルタは嘆息して応じた。
「それより貴様、さてはアルトリアの話を聞き流していたな? 今日は第七期の円卓の騎士を選抜し終え、サクソンとの戦争に臨む軍議を行う予定だぞ」
「……え、そうだっけ?」
「私は陛下の近衛だが、円卓の議席は持てん。故に随獣として傍に侍る。よもや円卓内に陛下へ刃を向ける不届き者がいるとは思わんが、生憎とアルトリアほど、私は他人を信用していない。何時如何なる時も陛下の盾であり剣となる……その為にはこれが必要だ」
「ふぅん……オルタも大変だね。……ん? だったらなんで、わたしに指輪を貸してくれたの? そんなに大事な日なら貸せないって言えばよかったのに」
「貸したのは朝だ。昼前まで使うとは思わなかった。それで、どうする。貴様も顧問魔術師として、陛下の傍に侍るのか?」
「やめとく。近衛のオルタがわざわざ変身していくのに、騎士でもないわたしが居るのはおかしいでしょ? 幻術苦手だし……わたし苦手なんだよね、堅苦しいの。選定の杖ありきだけど、そろそろ固有結界の習得も見えてきたし、そっちの研究しておくね」
「分かった。……承知しているだろうが、くれぐれも男に隙を見せるな。色目を使ってくる輩は掃いて捨てるほど居る。我々の醜聞は陛下の瑕疵にも繋がる、私に貴様を斬らせてくれるなよ」
「うぇぇ……オルタ、もしかして口説かれたりするの? 無謀な人もいるね。ま、仮にわたしのとこに来たら不能になる魔術掛けるから安心して。そういうとこはわたしも真面目に考えてるから」
「ならいいが、酒も呑むな。貴様は呑まれる質だからな」
「心配性だなぁ……。アルコールを分解する魔術は、口に入れる飲み物には全部掛けてるよ。対策は万全なのだ!」
「……そうか。まあ、いざという時は私が貴様を斬ってやる。安心しろ」
「え、なんで? 全然安心できないんだけど……?」
物騒な台詞だが、これがオルタ流の心配の仕方だった。リリィは苦笑して、通路の分岐路で姉と別れる。魔術触媒の宝剣も必要数揃い、部分的にはマーリンにも並ぶ攻撃魔術も会得した。後は、防御系統の魔術さえ修めれば、大事な人達を守れるようになる。
姉の後ろ姿を見送る。戦争の機運の高まりを感じ、リリィは物憂げに嘆息した。一番大事な人が、怖い貌で軍議を仕切る様を思い浮かべ――「戦い、ですか……やだなぁ……」と、密かに呟いた。
早く平和になればいいのにとリリィは思う。そしてその想いはきっと、多くの人々が共有する切なる願いだろうと思った。
きっと大丈夫だ。
だって、アルトリアがいる。オルタもいる。
円卓のスゴイ人達や、何より――とってもスゴイ、旦那様がいるのだから。
† † † † † † † †
「――全員揃ったな」
穢れなき純白の円卓に座するのは、半年で任期を終える第七期の円卓の騎士達である。
国内上空を常に移動する戦艦城。口火を切ったのは円卓筆頭の騎士。本来は王だが、この席に座っている時のみは一人の騎士として臨み、対等に物を言う資格が他の騎士にも与えられている。
彼こそは、古王ウーサーより
円卓議席No.1 『騎士王』ユーウェイン・モナーク
「ええ。それでは今回の議題を確認しましょう。――ベイリン卿、頼みます」
一介の村娘として幼年期を過ごし、血筋故に数奇な運命に導かれた少女王。
今や王妃としての風格も具え、清純にして高貴な佇まいを発露した。
彼女こそが永遠の乙女、彼女こそが――
円卓議席No.2 『勝利王』アルトリア・ペンドラゴン
「応、任せてくれ姫さん」
応えたのは、一見すると山賊にしか見えない男だった。
騎士爵以上の者でなければ身に着けられない甲冑を纏わず、身に着けているのは革の軽鎧。手入れのされていないザンバラの黒髪と、口元の無精髭が精悍な面構えに粗野な印象を与えている。
誉れある円卓の騎士に相応しくない風体だ。
だが彼の経歴と確かな実力が評価され、第七期の円卓の騎士に列せられた。風貌こそ粗野で騎士らしさのない粗忽者だが、人品に卑しさはなく、公平で婦女子を尊ぶ騎士道精神を具えた男である。
ユーウェイン股肱の臣がシェランやラモラックならば、彼がアルトリア股肱の臣。アルトリアが王を称し立身する前から馳せ参じた最古参の強者。粗野なる物言いが許されている者だ。
騎士の中で最も信を置ける者は誰かと問われたなら、アルトリアは迷わずこの男の名を挙げるだろう。円卓の王の一人ペラム王が保管していた聖槍、神の子を殺めた曰く付きの槍の
彼の名は、ロンギヌスの槍を収めた匣を担ぐ者――
円卓議席No.3 『
「ごちゃごちゃした下らねぇ前置きは省くぜ。要するにサクソンの野郎共と、どこで殺り合うか戦場の選定をやろうぜってこった。ユーウェイン王のイングランド統一戦争だ、初戦から派手に勝って最後まで勝ち切るのに、地の利は欠かせねえもんな。意見はあるかい、お歴々よ」
「意見はまだ無いが、その前に一ついいか、ベイリン卿」
「お、なんだ?」
真っ先に反応したのは、真紅の全身甲冑を纏った赤騎士である。
円卓議席No.4 『日輪の騎士』アイアンサイド
アイアンサイドは攻撃的な日輪の属性を有し、勇猛な猛者でありながら、目的のためなら非道な作戦も是とする男だ。
彼は元々ブリテン王の旗のもとに集わず、粛清された赤王に仕える騎士だったが、『大剣の騎士』シェランに敗北し虜囚となった後、彼の武勇に心服しブリテン王の臣下に降った経緯がある。
赤騎士は内に秘めた冷酷さを感じさせない、朗らかな声音でベイリンの揚げ足を取った。
「
「おいおい、んな下らねぇとこで突っかかるなよ、メンドクセェ……」
「下らなくはない。アイアンサイド卿の言にも一理ある。このブリテンの地は元々我らのものだ、であるのに憎むべき侵略者共の土地である事を認めるような発言は、厳に慎むべきでしょう」
アイアンサイドは露骨に喧嘩腰だったが、そんな彼を援護するように言う者が居た。
円卓議席No.5 『精霊の騎士』ペレアス
湖の乙女ニミュエに一目惚れを食らい、電撃的にベッドインさせられたが、本人もまんざらでもなかったらしくニミュエと夫婦になった騎士である。
女性からの強引な攻勢に弱いが、騎士としての力は円卓に名を連ねるに値するもの。勇猛果敢なる忠義の騎士、勝利王の腹心ベイリンと互角に戦える彼は紛れもなく英雄だった。
アイアンサイドとは違い、個人的な好悪のない意見である。ベイリンはペレアスの言に嫌そうな顔をするも、援護射撃を貰ったのはアイアンサイドだけではない。ベイリンに助け舟を出すように、蒼銀の騎士甲冑を装備した黒髪の騎士が言った。
「細かい事で目くじらたてんなよ。いいじゃねぇか、イングランド統一戦争。そりゃ確かにイングランドってぇのはアングル人共の土地って意味だがよ、オレらが勝っちまえば意味は変わるぜ。
ベイリンを擁護したのは、第七期のみならず、以降の最盛期を迎える円卓の中でも、騎士王を除いた最強論議では必ず名を挙げられる英雄である。純血のブリテン人の騎士では文句なしに最強だ。
一年前「槍は要らないなぁ……」と、顧問魔術師の少女が発掘した魔槍が騎士王に献じられ、それを下賜されたブリテン王の股肱の臣。彼が以後愛用する魔槍の真名は
ブリテン人統一戦争で絶大な戦果を挙げた王殺しでもある彼の名は、
円卓議席No.6 『魔槍の騎士』ラモラック
「な、ケイもそう思うよな」
「オレに言うんじゃない。どうでもいいだろ、そんなもん」
ラモラックに脇腹を肘で小突かれ、鬱陶しそうに眉を顰めたのは水辺の試合では負けなしの文官騎士だ。兵站の管理や財政を担う若き官僚でもある。
魔槍の騎士の友であり、ブリテン王の叙勲を受けて騎士となった、勝利王の義理の兄。釘の一本も無駄にしないと畏れられる、情け容赦のない青年だ。
円卓議席No.7 『水辺の騎士』ケイ
「――くだらん論議で時間を取るな。陛下の御前でそのような醜態を晒すとは……円卓に列せられた栄誉に浮足立っているのか? 結構、そのような愚昧、半年後には他の者に座を追われるだろう。今の内に無駄話をしておくのは構わんが、この場を離れてからにしてほしいものだ」
「……ハッ。浮足立っているのは貴公だろう、アグラヴェイン卿。円卓に昇ってきたのが今回初めてらしい貴公には、イングランドであるのか、ブリテンであるのかの論議は難しかったようだな。我々の名誉に関わる重大事であるというのに……嘆かわしいと思わないらしい」
赤騎士アイアンサイドの茶々に、黒鉄の甲冑を纏った青年が三白眼を向ける。
後に『鉄の宰相』として名を馳せる、ブリテン随一の謀臣である。
内政官のトップがケイなら、彼は王の傍に侍る参謀だ。そんな彼に論戦で敵う者はいない。
円卓議席No.8 『鉄の騎士』アグラヴェイン
彼が感情の熱を排した冷徹な双眸を向け、口を開かんとする刹那。
そこへ待ったを掛けるように、朗らかなる青年の声が差し込まれた。
「アイアンサイド卿、申し訳ないが軍議の本筋から逸れてしまっています。ここは議長であるユーウェイン王や、副議長アルトリア様に意見を伺い、速やかに本題に戻るべきなのでは?」
円卓議席No.9 『太陽の騎士』ガウェイン
言わずと知れた、清廉潔白、明朗闊達、眉目秀麗なる白騎士。アグラヴェインの兄であり、太陽の聖剣を下賜された彼の存在感は、すでにして他と隔絶した貫禄を具えつつあった。
ガウェインの毒のない諫言に気勢を削がれたアイアンサイドは、口の中で舌打ちして腕を組む。そんな先輩騎士をガウェインは気にする事なく、一瞬だけアグラヴェインを押し留めるように目配せをしてユーウェインに向き直った。
「陛下――我が王よ。そして敬愛する至上の王妃アルトリア殿下。どうか我らの不明をお許しください。ベイリン卿の称せしイングランド統一の名、如何様にお思いなのか、お聞かせください」
堂の入ったガウェインの礼節に、笑みを浮かべるばかりのユーウェインに代わって、アルトリアもまた微笑みながら答えた。
「ガウェイン卿。私やユーウェインの認識は、奇しくもラモラック卿の言の通りです。ブリテン島を侵略者から取り戻した暁には、イングランドの名もまた我々の勝利を飾る事になるでしょう」
「は。陛下と殿下、お二方の見解をお聞かせ下さり感謝致します。これより先は、我らの戦いをイングランドの統一を目指すものと認識します。諸卿もそれで構いませんね?」
「………」
「………」
円卓議席No.10 『激情の騎士』パロミデス
円卓議席No.11 『介助の騎士』グリフレット
太陽のような青年の笑顔に、黒人の騎士パロミデス、アルトリアの助言者グリフレットらを含め、アイアンサイドらも一様に頷いた。
そんな彼らを見渡し、ユーウェインが可笑しそうに笑みを湛えながら話を進める。
「にぎやかで大変結構。その調子で続けてくれる事を期待したいが、話の腰は余り折ってくれるな。貴公らが戯れ合うのを眺めるのは楽しいがな、大事な時期だ、軍議は円滑に進めるに限る。私を微笑ましい気持ちにさせてくれた礼はまた後でするとして――ベティヴィエール」
「はっ!」
ジロリとユーウェインに睨まれた赤騎士の顔から、サァと音を立てて血の気が引いていく。
厳格で怖い人に目をつけられた、憐れな新米騎士のような反応に――ケイやラモラックが馬鹿にするような表情を浮かべてせせら笑うも、ユーウェインの視線が向いてくる瞬間に真顔に戻る。
王に名を呼ばれ、キビキビとした所作で立ち上がったのは、
円卓議席No.12 『隻腕の騎士』ベティヴィエール
――である。
彼はベイリンと殆ど時期を同じくして、アルトリアの許へ馳せ参じた騎士なのだが、彼の武力はお世辞にも高いとは言えない。
いや、円卓外の騎士の中では最強なのだが、如何せん、円卓に名を連ねる他の騎士が強すぎるのだ。誰を見ても他国の伝承の主役や、主役に立ちはだかる強大な
そんな彼が円卓の騎士に列せられたのは、ひとえに彼の謙虚かつ誠実な人品と、戦略眼が確かなものとして認められているからだった。目下の者からの支持も厚く、将としてなら他の円卓にも負けないだろう。
ベティヴィエールが虚空に手を伸ばす。すると彼の指先に、虚空に投影されたモニターが現れた。
慣れた仕草で操作すると、円卓に大きな地図が映し出される。
ブリテン島全土を押さえた、極めて詳細な地図である。アルトリアの背後で影の如く佇んでいた青年が、どよめく騎士達を見渡して呟いた。
「いやぁ……驚いてもらえると、苦労して作った甲斐があるってものだねぇ……」
マーリンである。ユーウェインから馬車馬の如く働かされ続けた彼は、彼らしくなく疲労の滲んだ貌をしていた。
花の魔術師の悲嘆は、誰も理解してくれない。とほほと肩を落とすマーリンをよそに、ベティヴィエールが地図の上に駒を配置していった。
そうして軍議が始まり。戦争の準備が地上では着々と進行していく。
――この場に集った、十二人の騎士。空席の十三番目を置いて、彼らがサクソンとの戦争期に於ける、ブリテンの円卓の騎士達であると伝説は記した。
円卓の最盛期となる、栄光の第二十七期は――まだ、遠い。
ちょっと混乱してきたので、個人的な情報整理をするついでに本作のバワーバランスを10点評価でまとめてみました。いつぞやのニコール目線での曖昧なものではない正式版。円卓はガウェインを強さの単位、目安にしてる面が割と目立つ…。通常状態のガウェイン級が円卓中位のライン、みたいな…。
※宝具込みでの評価は別。
アルトリア ?(色んな人に勝ったり負けたり。大体6~10あたりをふらついてる、戦闘力のムラっけが激しすぎる我が王。自重なく聖剣ブッパするなら40。やりすぎたら国土荒廃するのでやらない)
ランスロ 10(第一の騎士。最強。アロンダイト使うと素の戦闘力が15に。聖剣ビーム撃てるけど、国土荒廃するので撃たない騎士の鑑)
ギャラハッド 10(加齢で衰えたランスロ以上。全盛期ランスロ)
トリスタン 10(円卓第二の騎士。ホントは弓より剣使った方が強い。剣は未来のイギリス王室で儀礼剣として用いられる慈悲の剣カーテナ。大規模破壊系ではない、環境に優しい騎士の鑑)
ラモラック 10 (円卓第三の騎士。疲労困憊の状態で、三倍ガウェイン・アグラヴェイン・ガへリス・モードレッド四人掛かりでも数時間手こずらせた。なお原典で高名な武具は使っていない模様。環境に優しい)
ペレアス 8 (ガウェイン最大の汚点の逸話に関わる人。被害者。明確にガウェインより強いとされる騎士。湖の乙女ニミュエの夫。悲劇的な最期を遂げていく周囲の英雄を尻目に、安楽な最期を迎える幸せ者。皆もブリテンに転生するならペレアスにしよう! 一番の安全牌)
ベイリン 8 (ランスロ到来以前、元最優の騎士。双剣の騎士。蛮人ベイリンとも言われるが根は忠義者の良い奴。ロンギヌス使った事も。国土荒廃するので聖槍は切実に勘弁してほしい)
ペリノア王 7(若き日のアルトリア以上)
アイアンサイド 5(日輪15)(日の出から正午まで三倍。劣化ガウェイン)
ガウェイン 6 (日輪18)(午前9時から正午、午後3時から3時間三倍。通常時は円卓中位。聖剣ビーム撃ちまくる太陽ゴリラ。国土荒廃するからやめろ)(素の実力でも並外れているが、性格面での評価も非常に高い。実力と性格の双方を合わせて、後の円卓最盛期にて筆頭格の騎士と謳われるように)(※なおマロリー版ガウェインは性格が改悪され過ぎなので読む際は注意されたし)
ガへリス 5(今一パッとしないが激強。このレベルで地味。円卓は魔境)
ガレス 6(ホントは激強のガレスちゃん。ラモラックと互角に戦いガウェインを退けた事もあるアイアンサイドを、初めての冒険譚の最後にラスボス扱いして倒した。☆2とかウッソだろおい)
パロミデス 5(円卓中位)
モードレッド 4(円卓の中では中の下。円卓は魔境)
グリフレット 3(円卓下位。ベティヴィエールの従兄弟。後に誰かと交代)
アグラヴェイン 3(円卓下位の上。文官畑なのにクソ強い。円卓は魔境)
ケイ 2 (円卓下位。英霊全体の戦力では中位の上の方に入る模様。円卓は魔境)
ベティヴィエール 1(強いが円卓内だと最弱。円卓は魔境)
――越えられない壁――
ブリテン一般騎士0.1
一般市民0.01
――番外――
本作ユーウェイン(人類悪の致命傷デバフなければ一人で物語完結させる。ついでに人理も終わる。抑止力さんが全力で抑え込みに掛かった異聞帯の王候補。具体的な数値が付けられないバグ。現在は数で押されたら死ぬ。剣を振らずに脳内鍛錬で今も技量高まってる最中)(※致命傷デバフがなければ、聖者の数字スキルを時間の縛りなく任意のタイミングで自在に発動可能)
ニコール 10(実はぶっ壊れ性能。複合神との戦い時は20発揮してる。相性やらなんやらを込みにすると致命傷デバフ状態のユー王には持久戦で勝てる)
シェラン 10(ランスロと互角。互いに宝具込み判定にしても互角)
ガニエダ 6(マーリンと同値。+魔術だと20を超えてくる。冠位魔術師)
キャスパリーグ(数値が意味のない存在。人類悪。抑止力に導かれて颯爽登場即退場)
複合神ダナン ?(ケルト神話残存神10体の融合神格。実はラスボス級。抑止力さんが頑張って後押ししており、対ユーウェインのガンメタ要員と化す。存在そのものが星の鍛えた神造兵装クラス、ノアの箱舟の大洪水クラスの大災害を引き起こせる。炎のスルト、水のダナン)
――現在数値不明――
キングピクト (実名フアイル・マヴ・カウ。エイリアン。控えめに言って化け物。タイプ・ムーンならぬ、タイプ・アースの失敗作が暴走した奴なのではないかと思わなくもない)
白竜アルビオン (ファブニールが赤ちゃんに見えるぐらいデカい・強い・ヤバい。全長2kmもある超巨大竜種、時計塔の霊基アルビオン。赤竜には優勢だがコーンウォールの猪が天敵)
ブリテン島の意思+白竜の血inヴォーティガーン (エクスカリバー、ガラティーンの合体攻撃の直撃受けても死なない化け物。エクスカリバーより殺傷力に優れたロンゴミニアドじゃないと通用しない)
ローマの剣帝 (ローマ帝国の侵略者としての象徴。三倍ガウェインを一蹴する事から恐らく30はある。…は?)
10点評価とか言いながら満点を平然と超えていく奴らの多い事…。
ガニエダぁ!
-
慈悲はない(無慈悲)
-
慈悲はある(あるだけ)
-
さよなら、天さん…!