獅子の騎士が現代日本倫理をインストールしたようです 作:飴玉鉛
ちゃちゃっとユーの現在の立ち位置とか世界情勢とか纏めてみました。
仕事を作って仕事に追われる仕事人間な王様
西暦1994年、10月。
魔術協会。
魔術師達によって作り上げられた、自衛と魔術の管理を目的とした団体だ。
広く認知されてしまうと衰弱する神秘を隠匿し、外敵に対抗する為の武力と魔術の発展の為の研究機関を有する。また魔術犯罪の防止法律を敷き、厳格な警察機構も具えていた。
魔術師という人種は基本的に自らの研究を公表する事はなく、魔術師同士の交流はない。あるとすれば、魔術協会の総本山たる時計塔にて行われる権力争いぐらいなものだろう。
時計塔の王と称される者の所有物、霊基アルビオンの上に築かれた時計塔は魔術を学ぶ上で最高の環境であり、自身の研究を最優先にする魔術師にとって抗い難い魅力に溢れたものだった。
協会は入会も退会も自由であり、支配するモノではないものの、時計塔に属する限り王の定めた法は絶対に遵守しなければならない。もし法を破れば、封印指定という名の極刑に処される。
倫理に背を向ける事の多い魔術師だが、時計塔という環境を捨てるのは惜しい為、退会を考える者はほとんどおらず法を侵す真似は厳に謹んでいた。何せ法を犯せば恐ろしい封印指定執行者が派遣され、もしこれを撃退、あるいは追跡を振り切ろうものなら――神秘の具現とも言える王が直接出張り滅ぼされてしまうからだ。故に時計塔に属していない魔術師も、王と執行者を恐れて魔術犯罪を侵す事は滅多に無い。
また、魔術協会は時計塔の設立以前こそ聖堂教会と血で血を洗う闘争に明け暮れていたものの、時計塔が設立されて以降は互いに不可侵の間柄に落ち着いた。というのも、時計塔の王は教会から聖人に認定されている、現代唯一にして最後の聖者なのだ。
彼が管理している組織には、戒律に厳しい聖堂教会も頭が上がらない。故に聖堂教会の脅威から保護されるのを目的に、魔術師は基本的に時計塔へ属するのが常識にまでなっていた。
時計塔の王。
地上に残った最後の神秘、裁定者、管理人、最終兵器とも謳われる彼の正体は暗黙の了解の下、広く認知されている。ローマ皇帝ルキウスが聖剣によって抹消されてしまった故に、歴史が曖昧となって伝説上の王に過ぎないと思われているが、彼は実在する神代の王なのだ。
これは噂の域を出ないが、彼にだけは抑止力が働かない故に、根源到達を目指すなら王の側近――即ちロードになるのが最短の道であると言われており、現に歴代ロードの内の幾人かは根源に旅立って不帰の者となっているという。……そしてこれも噂に過ぎないのだが、王が抑止力を脅しつけ、魔術犯罪を犯した者を特定するのにも利用されているというが……噂は噂だろうと人は言い、ロード達は口を噤んで何も言わなかった。
各学部のロード達は貴族主義の選民思想を有している者が大多数を占める。故にこそ彼らは神秘の具現たる王を信奉し、揺るぎない敬意を懐いていた。そしてそれは――稀代の天才ケイネス・エルメロイ・アーチボルトも同様であり。王に呼び出された彼は高揚を胸に王の居室を訪れていた。
「――は?」
だがケイネスは魔導元帥バルトメロイ以外のロードでは滅多に得られない、王への拝謁の栄誉に与ったにも関わらず、間の抜けた顔を晒してしまった。
漆黒の王服を纏った、明白に人類の域を逸脱した超越者。溢れ出る威厳には桁外れの魔力が含有されており、気を抜けばロードたるケイネスであっても恍惚としてしまいそうだ。
だが王の眼差しに色はない。あるのは単純な億劫さであり、関わり合いになるのも馬鹿馬鹿しいと思っているのが明確だ。……にも関わらずケイネスを呼び出してまで王が賜した言葉は、慈悲だった。
どうでもよくても気を遣う、根っこの人格が善性であるのが伝わる台詞。しかしそれにケイネスが懐いたのは不服の念であった。
「流石は陛下……私の存念をご存知でしたか。ですが……」
「ああ、別に止めはせんよ。行きたければ行け」
「………」
「だが私は警告する。他の何者かであれば捨て置くが、貴様はロードだ。仮にも私に仕える貴種である貴様が、みすみす死にに行くのを座視はしない」
心此処に在らず。視線すらケイネスに向けず、心底どうでも良さげにしているからこそ、彼の言葉はケイネスの心に深く突き刺さった。
彼がかねてより手配していた聖遺物――征服王のマントの切れ端。その存在からケイネスの目的が極東の魔術儀式にあるのは筒抜けらしい。しかし彼は正直に不満を吐き出した。
「……陛下は私の実力を疑っておいでか? 陛下のお側に侍るこの私が、極東の田舎者風情に遅れを取ると? であれば陛下は私を見縊っておられる。私は決して敗れず、必ずや勝利するでしょう」
王を相手に不満を口に出す事は不敬ではない。何せ権謀術数が通じない、千数百年もの時を生きる不老の賢者である。百年も生きていないケイネスなど彼からすれば子供であり、どれほどの才知を誇っていようと内心が見抜かれてしまうのは道理であった。
故に王はロードの言葉を無下にしない。寧ろ言いたい事はハッキリ言えと命じている。本心を隠し言いたいことを言わない方が不敬であると、歴代のロード達にも言い含めていた。
やはり王はケイネスを見ない。彼という個人を軽んじているのではなく、それは王がケイネスを慮っているが故の態度だ。王の視線には特別な力がある。軽率に視線を寄越した結果、現代の魔術師は王の視線に宿る魔力に中てられ前後不覚に陥ってしまうのだ。
一種の絶頂状態になるのである。下手な魅了の呪いより質が悪い。魔術師以外であったり、歴史の浅い家門の者であれば影響はないのだが――王からすれば歴史のある魔術師という
「だろうな」
王はケイネスの自負を認める。彼の実力は確かに高いと。
だからこそ王は指摘しているのだ。純粋な魔術師ほど陥る失陥を。
「だが貴様は思い違いをしている」
「思い違い、ですか……?」
「聖杯戦争の主役は
「……それは、どういう意味でしょう」
「貴様らはサーヴァントを所詮は使い魔と侮っているな? 令呪で律する事のできる、過去から現れる影法師に過ぎんと。それは間違いではない、低級の者であれば私の一瞥のみで滅せられる」
事実である。
王は以前、時計塔の目を盗んだ『アインツベルン』が、極東に実験場を設けた事を突き止め、第二次聖杯戦争の場に王は視察に向かった。視察とは言ったが実情は『処刑』である。
英霊の存在を知る王は、人間の手には負えないと判断した故に、聖杯戦争を潰しに行ったのだ。王は冬木の地にて、人食い虫の妖怪に成り果てていたマキリを斬り殺し、妄執に取り憑かれようとしていたアインツベルンの長老を斬り捨て、遠坂の当主を見定めた。
サーヴァントを軒並み座に還したのも時計塔の王である。その中で低級の霊格しか持ち得ていなかったサーヴァントを、王は視線の斬撃のみで滅し粛清した。この時点での王はサーヴァントの存在を災害としてしか見做していなかったのだ。当然だろう、冬木という人里で、兵器クラスの存在が殺し合うのである、無関係な人間にとっては災厄以外の何者でもない。
だが、聖杯戦争は続いている。それはなぜか。
第二次聖杯戦争にて最後に残ったサーヴァントが、王と対峙した時に言ったのだ。この聖杯戦争は時代を超え、戦士と戦士が腕を競える数少ない舞台だ、と。一般人に被害を出さずに立ち回っていた戦士の言に、王は「そうとも捉えられるな」と理解を示し、あくまで当人同士にしか被害を出さないのであれば聖杯戦争という舞台を壊さずにいようと約束を交わしたのである。以来の聖杯戦争の監督役は――聖堂教会の者ではなく、この時計塔の王当人となった。
不埒者は即座に滅する。
故に第三次聖杯戦争にてアインツベルンが反則を犯して召喚した、最弱の反英霊もまた彼の手で滅び、その魂は聖杯に焚べられることはなかった。聖杯は無色のまま、純粋な器を保っている。
ルール違反を犯したアインツベルンは、今度こそ一人残らず滅された。御三家の一角が滅び去り、魔術回路が枯れたマキリも消え、今や御三家は遠坂を残すのみであった。
例えサーヴァントの中に邪悪な者が現れようが、監督役になった王がいる限り無法を働けない。どれだけ霊格の高いサーヴァントであろうと――それが神話の頂点であっても――所詮はサーヴァントに貶められた、生前より遥かに劣化している存在だ。
サーヴァントがサーヴァントである限り、純粋な霊格の格差だけで時計塔の王に攻撃は通らない。仮に通せる者が現れたとして、果たしてこの超越者の命に届くかは甚だ疑問であった。
王と対等に戦いたければ、最低でも何者にも依存しない、確固たる肉の器が必要で。受肉してその器を得るには、時計塔の王が監督する聖杯戦争で勝ち抜かねばならなかった。
手の内が明かされた状態で、王と対決する事になるのである。
最近王が覚えた言葉で言うなら、無理ゲー、という奴だ。
しかし王にとって脅威ではないサーヴァントでも、現代の魔術師にとってはそうではない。
「――だがな、令呪如きで律されるほど、サーヴァントは素直な者ばかりではない。まして相手には百戦錬磨の戦上手が紛れているケースも想定される。ケイネス、貴様は戦争の経験があるか?」
「い、いいえ……ございません」
「だろうな。貴様は魔術の決闘を戦争と履き違えるような愚図ではない。あると言えてしまうような間抜けでなくてよかったよ」
「………」
「で、ケイネス。貴様は戦争に於いて最も効果的な戦術を知っているか? ああ、ここで私の言う戦争とは、局地的で少数により行われるものだ。つまり、聖杯戦争だな」
「それは……。――マスター殺し、ですな」
「正解だ。流石に知恵があるな」
冷静に考え、判断した戦術に、王は淡々とした様子で褒めた。
それが分かるなら後は簡単だ、と。
「サーヴァントは現代の魔術師が戦える存在ではない。であればサーヴァントの攻撃を凌ぐ為には、そのサーヴァントを傍に置き続けねばならん訳だが。ケイネス、想像してみると良い。貴様以外のロードのように我が強い連中が、素直に貴様の指示を守り続ける保障はあるか?」
「――!」
「サーヴァントは基本的に、己の願いを叶えたくて召喚に応じる。故に自らのマスターを殺めるような戯けは、狂戦士以外にはいない……とは思う。しかし何事にも例外はある、ただでさえ自尊心の高い英雄という人種が、自らより遥かに弱いマスターの指示に従うと思うか? 令呪を使い切れば最後、貴様の制御下から離れる可能性の高い連中だぞ。そうなれば貴様の扱いは単なる魔力タンクだ、貴様はそれを受け入れられるか?」
「………それは、」
「聖杯がどうしても欲しいと言うなら止めはせんがな、聖杯戦争は貴様の思うような誉れとは程遠い。貴様は
王の言葉に、ケイネスは長く沈黙した。
そして深く頭を下げ、警告の体を持った忠告に感謝した。
「……お言葉、有り難く。私は聖杯戦争に参じません」
「そうか。なら下がれ、話は終わりだ」
「は」
もう一度頭を下げて退室していくケイネスを見送り、王は嘆息する。
聖杯戦争……時代を超え、戦士たちが純粋に腕を競い合える舞台。
響きは良い。実際、王も多少は心惹かれるものはある。
だが彼は後悔していた。一度は気の迷いで聖杯戦争の存続を認めたが、民間人に被害がいかないように気を遣う者ばかりが現界する訳ではない。監督役をしている王に手間を掛ける輩は必ず紛れている。一言で言うと面倒臭いのだ。一定周期で開催される聖杯戦争に手間を掛けさせられている今、あの時の戦士の言葉に耳を傾けず、一思いに聖杯を破壊してしまえばよかったと。
――果たして開催された第四次聖杯戦争にて、時計塔の王は再び骨を折ることになる。
参戦した英雄王が順当に勝ち上がった結果、聖杯が紛い物であると知り、既に魔力が満ちていた聖杯を破壊しようとしたのだ。そんな真似をすれば周辺は焼け野原になるにも関わらず、だ。
雑種がどれだけ死のうと知った事ではない、寧ろこのような不毛な儀式に我を招いた報いだと言い放ったのである。そうして監督役の時計塔の王が動く事態となり、英雄王は座に還された。
マスターの遠坂は令呪を無効化されて殺されている。被害はそれだけだ。
「……次で聖杯を手に入れる資格を持った者が出なかったら、壊すか」
王は疲れたように頭を振る。
第二次聖杯戦争から次の第五次聖杯戦争……三回も見逃したとあっては、あの時の戦士に対する義理は果たしたと言えるだろう。……言えるという事にしておこう。
『あ、あのぉ……ゆ、ユーウェインさん……?』
「……なんだ、
さっさと時計塔から離れ、
他の何者にも――魔法使いという例外を除き――認識すらできないはずの、赤いローブを纏った無性の人型が王の傍に現れた。
完全に謙っている。其れが霊長の抑止力たるアラヤだとは、誰も思えないだろう。
だがアラヤにしてみれば当然の態度だ。何せ相手は自分のことを毛嫌いしている、自分を認識して殺してしまえる存在だ。機嫌を損ねないようにするのは当たり前であった。
『そ、そのぉ……ですね……』
「さっさと要件を言え。また躾られたいのか?」
『ひっ……! めめめ滅相もない! あっ、あの、ユーウェインさんの言いつけ通り、例の存在が現れたので報告に来た次第でして……!』
「……ハァ。また
アラヤが怯えながら報告するのを聞いた王は露骨に嘆息する。
根源接続者――その名の通り、ほぼ全知全能に等しい存在だ。
王はこの根源接続者を放置はしない。なぜならば、この根源接続者は全知全能であるが故に、この世に生まれる事の不毛さに絶望して、自ら命を断つ者ばかりだからである。
故に王は、根源接続者が生まれると、根源との繋がりを断って常人に戻してやっている。
例外はない。
直近では一年前、極東で生まれた両儀という家の娘の接続を断った。許可は取っていないが、以後のその娘は普通の極道の……普通……? ……普通の娘になって、満ち足りた日々を送っている。
「場所は」
『に、日本……です……』
「またか。聖杯といい蒼崎といい両儀といい、あそこはなんなんだ?」
王は呆れてしまった。日本……憐れな奴だ……。
――当日、沙条という家の長女が根源との接続を断たれた。しかしその日の内に、とうの沙条家の長女に一目惚れされ追い回された挙げ句に「付き合ってくれないなら自殺するわ!」と脅されてしまい、アヴァロンにまで連れて行き妻帯者だから無理だと断ろうとするも、妻達にロリコン疑惑を持たれ有史上最大の夫婦喧嘩に発展しかけてしまうのだが……それはまた別の話だ。
アラヤソーレン
・早期に犯罪者として処された模様(無慈悲)
魔法使いズ
・君子危うきに近寄らず。
転生する蛇さん
・シエルさんに転生前に処される。
・シエルさんは平和に生きました(有情)
お月さま
・こわ……戸締まりしとこ……。
トーコさん
・時計塔に残ってる。ロード? なりたくない。
衛宮さん家のパパ
・シャーリーとかに色々やって警察だ!されて最終的に処された。
・近代魔術史に名を残す極悪人と記録されてる。
・なんで時計塔警察舐めたの……? と諸兄に困惑されてる模様。
アインツベルン
・一度は見逃されたがアンリマユ呼んで詰んだ。
・滅亡済み。
・小聖杯の鍛造法だけ魔術協会に。所有者はユー。
マキリ
・蟲翁は魂が腐敗してえらいこっちゃな事になってたので処された。
・ケリィパパを超える極悪人と記録され終了。
・魔術刻印(蟲)は時計塔の魔術師のおいしい餌になってる。
遠坂
・見逃された(有情)
アラヤ
・パシリ。脅されたらジャンプもする。わんわん!
・隙あらば抹殺……とか考えてたけど諦めた。
・媚を売って危なくなったら助けてもらおうとしてる(無理筋)
ガイア
・どうせワイには手出しできへんとたかをくくってる。実際そう。
・もうアイツがタイプ・アースでいいよ……(諦観)
言峰さん家のキレイさん
・目覚めないまま求道者してて、どうぞ(無慈悲)
・親が監督役ではないため、聖杯戦争に関わってない。
衛宮さん家のケリィさん
・飛び入りで第四次聖杯戦争に参加したが、普通に召喚したサーヴァントが英雄王に負け逃走、再起を狙うも果たせず無念の撤退。(無法の野良な)魔術師殺し頑張って、どうぞ(無慈悲)
・聖杯が使われなかったので周期が早い次回聖杯戦争に参加するつもり。十年後まで現役。
・なお第五次には魔術王連れたマリスビリーがいる模様(無慈悲)
遠坂さん家の桜さん
・無事海外に養子として出された模様(無慈悲)
・ホルマリン漬けは犯罪なので無事(有情)
・ロードを目指し、将来的にトッキーを見返そうとしてる。
○○さん家の士郎さん
・普通に生きる一般人。なんやかんや遠坂さん家のリンとくっつく可能性が高い(有情)
・なお平行世界で英雄王の暴挙により聖杯が破壊され辺りが焼け野原になった結果、衛宮さん家に拾われてしまい魔術師殺しとか朔月さんの家のミユちゃんとかが妹になったりして英霊になるような波乱万丈なルートを辿って、なんやかんや家出中のリリィちゃんに出会いなんやかんや聖剣の鞘を貸してもらい起源「剣」になって英霊エミヤは本作にもいたりする(早口)(無慈悲)
なんやかんやとは(謎)
第四次聖杯戦争
・ウェイバーもケイネスも征服王もアルトリアもディルムッドもバサスロットもマキリもアインツベルンもカリヤおじさんもキレイさんもいない、クリーンな聖杯戦争だったため英雄王は不満たらたら。その英雄王は乖離剣出そうとしたけど間に合わずユーに斬られ還らされた。初手ナメプこそしなかったが、『全知なるや全能の星』を封印した縛り状態ではどうにもならなかった模様。次があれば初手全力全開を出すつもり。
なお次はない(無慈悲)