真・仮面ライダー-----終章-----『仮面ライダーワールド序章(プロローグ)』 作:狼と踊る男
新訳版『1話『それぞれの序章『真』……そして20××……』』
~1章~『1994』
----------1994年7月16日----------
山奥にひっそりと建てられた小さな小屋。
人の気配などほとんどないその場所で、ひとりの男が眠っている幼子の顔を見つめていた。
その寝息は穏やかだった。
少なくとも今だけは、外の世界の悪意も、追跡者の影も、この小屋の中までは届いていないように思えた。
真「よく眠ってる……これなら、しばらくは安心だな」
男――風祭真は、静かに息を吐くと、傍らに立つ友人へ振り返った。
真「それじゃあ結城、すまないが少しの間、留守を頼む」
結城「真。やっぱり行くのか?」
結城卓也は、心配を隠そうともしなかった。
それも当然だった。
風祭真と、その息子である風祭新。
二人は今、『財団』と『CIA』に追われる身である。真は人間でありながら、人間ではない存在へと変えられた男。そして新もまた、その血を受け継いだ子供だった。
結城は、そんな二人を見捨てることなどできず、こうして山奥に隠れる親子の世話を焼いていた。
真「あぁ……さっきから頭の中に響いてきた声が離れないんだ。誰かの深い悲しみが、テレパシーになって俺に伝わってきた。そんな気がする」
結城「でも真! それが『財団』の仕掛けた罠だったらどうするんだ!? またお前や鬼塚先生、それにお前が戦ったっていうレベル2の化け物みたいな奴が現れたら!?」
結城の言葉は、恐怖からではない。
友を心配するからこその言葉だった。
だが、真の目はすでに決まっていた。
真「その時は戦うしかない。新を守るために」
結城「真……」
真「じゃあ、行ってくる」
結城「……」
真「結城……いつもすまない」
結城は一瞬だけ目を伏せ、それから真をまっすぐ見た。
結城「そう思うんだったら、必ず生きて戻れよ?」
真「あぁ」
短く答えると、真は小屋を後にした。
向かう先に何が待っているのかは分からない。
もし結城の言う通り、再び『財団』が関わっているのなら、蹴散らせばいい。
そうでなかったとしても、向かってくる者がいるなら戦う。
それが、最愛の人が残してくれた最後の希望――新を守ることになるのだから。
風祭真は、頭の中に流れ込んできた悲しみに満ちた叫びの正体を探るため、山の奥へと歩き出した。
----------20××年6月1日----------
グレース「プリキュア!! ヒーリング!! フラワァァーー!!」
花のような光が広がり、病に蝕まれた電車を包み込む。
エレメント「……わあぁっ!!」
電車メガビョウゲン「ヒーリングッバイ……」
グレース・ラビリン「お大事に……」
浄化の光が消えた時、そこには元の姿を取り戻した電車があった。
シンドイーネ「きぃぃっ~!! またしても!!」
悔しげに叫んだシンドイーネは、すぐさま瞬間移動で姿を消した。
戦いを終えたキュアグレース、キュアフォンテーヌ、キュアスパークルは変身を解く。
花寺のどか、沢泉ちゆ、平光ひなた。
三人は電車へ近づき、聴診器を当てた。そこに現れたのは、砂時計の姿をしたエレメントだった。
のどか「エレメントさん、大丈夫?」
時のエレメント「私はもう大丈夫です!! ラテ様にこれを使ってください!!」
時のエレメントが分けてくれた力は、ヒーリングボトルとして形を成した。
淡く輝くそのボトルを、のどかはそっと受け取る。
ラビリン「これは……」
ちゆ「新しいヒーリングボトルね」
ひなた「砂時計っぽいし、もしかして時間の力?」
のどか「時のボトル……かな?」
のどかがそのボトルをラテの首に取り付けると、弱っていたラテはすぐに元気を取り戻した。
ラテ「わふぅぅ~ん!!」
のどか「よかった。エレメントさん、ありがとう」
時のエレメント「どういたしまして!!」
時のエレメントはそう言い残すと、電車の中へ戻っていった。
一同はその場を後にする。
そのちょうど同じ頃、一体の赤鬼が電車から姿を現した。離れていく三人の後ろ姿を見ながら、赤鬼は訝しげに首を傾げる。
モモタロス「何だぁ~あいつら? デンライナーにいたずらでもしたんじゃねぇだろうな?」
赤鬼――モモタロスは、ぶつぶつ言いながら電車の方へと歩いていった。
その後、のどか達は海岸沿いを散歩していた。
海風は穏やかで、先ほどまで戦っていたとは思えないほど静かな時間が流れている。
のどか「でも、何で電車なのに『時のエレメント』さんがいたんだろうね?」
ちゆ「そう言われてみればそうね」
ひなた「まぁいいじゃん、細かい事はさ?」
ちゆ「それもそうね」
ラビリン「細かくしていいことと、よくないことがあるラビ……」
そんな会話をしながら歩いていると、ひなたがふと、さっき手に入れた時のボトルを見つめた。
ひなた「『時のボトル』かぁ~……タイムマシンでも出来ないかなぁ~……」
ちゆ「どうしたの、藪から棒に?」
ひなた「いやさ? これ見てて思ったんだけど、もし過去に行けたらさ? ビョウゲンズなんか簡単にやっつけられるんじゃないかなぁ~って」
ニャトラン「おぉー!! ナイスアイディアじゃんか、ひなた!!」
ペギタン「そうすればテアティーヌ様も傷つかずにすむし、ラテ様もお母様から離れることもなくなるペン!!」
のどか「すごいよ、ひなたちゃん!!」
ひなた「いやぁ~、それほどでも!!」
ひなたが照れたように笑う。
だが、ちゆだけは難しい顔をしていた。
ちゆ「いいえ。それは、できたとしてもやめた方がいいわ」
ひなた「えっ?」
のどか「何で?」
ちゆ「タイムパラドックスが起こるからよ」
ひなた「鯛からボックス?」
ちゆ「タイムパラドックス。過去に何らかの変化が起こると、未来も変わってしまうことを言うの」
のどか「つまり……どういうこと?」
ちゆ「私達がこうしてプリキュアになって、ペギタン達と出会えたのも、ビョウゲンズが現れたことが発端でしょう? もし未来から来た私達が過去のビョウゲンズを取り除いたりしたら、世界にどう影響が出るか分からない。最悪の場合、私達がこうして一緒にいること自体が『無かったこと』になるかもしれないわ」
ちゆ以外『えぇっーー!?』
ひなた「そんなのヤダヤダ!! ありえないって!?」
のどか「私もそれは嫌だな……」
ちゆ「私だって嫌よ。でも大丈夫。そんな都合よく過去にタイムスリップできるわけじゃないし」
のどか「そっか……そうだよね」
ひなた「それもそっか。早々『タイトスカート』なんて起きないよね?」
ちゆ「ぷっ……くくっ……『タイムスリップ』よ、ひなた」
ちゆは思わず笑いをこぼした。
ひなたの言い間違いに緊張が少しだけ和らぐ。
だが、ちゆはすぐに何かを思い出したようにスマホを取り出した。
ちゆ「そういえば、『過去』と言えば、ちょっと気になる記事を思い出したの」
のどか「どんな記事?」
ちゆはスマホに保存していた新聞記事のデータを開いた。
画面には、古い新聞の切り抜きが三つ並んでいる。
日付はそれぞれ、1992年、1993年、1994年。
どれも最近の記事ではない。
だが、その内容は、実際に見た者でなければ到底信じられないようなものばかりだった。
のどか「『無差別殺人犯は人か獣か!?』……その姿は人間サイズのバッタのような人間との証言もあり……」
ひなた「こっちは『町に突如飛来してきた怪人』? 何これ?」
ちゆ「極めつけは最後の『巨大怪獣VS緑の巨人』って記事よ」
ひなた「ちゆち、こんな記事よく見つけたね?」
ちゆ「1年生の時に、授業の一環で過去の新聞を調べて発表する課題があったの。その時に目に留まって読んだことがあったのよ。発表した記事は全く別のものだったけど、最近プリキュアとして活動するようになって思い出したの。これって、もしかしてビョウゲンズが関係しているんじゃないかと思って」
ラビリン「多分これは違うラビ」
ちゆ「そうなの?」
ラビリン「分からないけど……でも三つ目の記事は、もしかしたら『Jパワーの戦士』と『フォグ』のことかもしれないラビ」
ひなた「フォーク?」
ちゆ「ぷっ……『フォグ』と『フォーク』って……ふふっ」
ラビリン「違うラビ!! フォグラビ!! フォッグ・マザー!!」
のどか「何なの、それ? それに『Jパワーの戦士』って?」
ラビリン「ラビリン達も詳しくは知らないけど、大昔に宇宙からやってきて、恐竜達を絶滅させたって聞いたラビ」
のどか「恐竜を!?」
ちゆ「そんな大昔に現れた相手なの!?」
ひなた「あれ? でも恐竜が絶滅したのって、別の話がなかったっけ?」
ペギタン「僕達もよく分からないペェ……」
のどか「じゃあ、『Jパワーの戦士』って?」
ラビリン「Jパワーの戦士ラビ!!」
のどか達は、そろって目を点にした。
ひなた「……それだけ?」
ラビリン「そうラビ!!」
自信満々に答えたラビリンだったが、ぶっちゃけ全然分からない。
その時だった。
ラテ「クゥゥ~ン!!」
のどか「ラテ、どうかしたの?」
ラテが何かに反応し、のどかの腕から地面へ降りた。
そのまま砂浜の一角へ歩いていき、そこに落ちていた八角形の何かに鼻を近づける。
のどかはそれを拾い上げた。
ひなた「何これ?」
ちゆ「どことなく時計のような雰囲気があるような……」
のどか「うぅ~ん……」
のどかが指で触れていると、回転するパーツがあることに気づいた。
試しに四十五度ほど回してみる。
すると、二つの穴に目のようなものが現れ、八角形のそれには獣のような、昆虫のような顔が浮かび上がった。
さらに、表面には四桁の数字が刻まれている。
のどか「1994……?」
その瞬間、聞き慣れた声が背後から響いた。
ダルイゼン「あれ? 何でお前達ここにいんの?」
のどか達が振り向くと、そこにはビョウゲンズの一人、ダルイゼンが立っていた。
言い方からして、どうやらのどか達を狙って来たわけではなさそうだった。
のどか「何でここに?」
ダルイゼン「さっき失敗して戻ってきたシンドイーネとグワイワルの喧嘩がうるさくって、憂さ晴らしに蝕みに来た」
ひなた「そんな理由で来ないでよ!!」
ちゆ「二人共、行きましょう!!」
のどか・ひなた「うん!!」
のどかは変身しようと、ポケットからボトルを取り出そうとした。
しかし、その時。
のどか「あっ!?」
ポケットから、時のボトルと先ほど拾った八角形のアイテムが一緒に落ちた。
八角形のアイテムについていた小さなボタンのような部分が、カチッと鳴る。
直後、渋い男性の声が響いた。
――ゾンジス!!
その声と同時に、時のボトルの蓋が開いた。
中からこぼれた一滴の水が、八角形のアイテムに触れる。
次の瞬間、それは周囲を巻き込むほどのまばゆい光を放った。
のどか、ちゆ、ひなた、ラビリン、ペギタン、ニャトラン、ラテ。
そしてダルイゼンまでもが、その光に包まれていく。
光が晴れた時、そこにはもう誰の姿もなかった。
数秒後。
誰もいなくなったその場に、一人の青年が現れた。
青年「あった!!」
青年は、なぜかそこに残っていた八角形のアイテムを拾い上げると、ほっとしたように息を吐いた。
青年「僕としたことが、大事なお宝をうっかり落としてしまうだなんてね。無事に見つかって良かった」
その青年の名は、海東大樹。
またの名を、仮面ライダーディエンド。
彼は、ある三人の仮面ライダーの力が一つに合わさったアイテム――ゾンジスウォッチを、いつの間にか手に入れていた。
そして、うっかりそれを落としていたのである。
海東はそのまま軽やかに立ち去っていった。
のどか達に何が起きたのか、彼が気づくことはなかった。
次回
~1章~『1994』
新訳版2話『それぞれの序章……『あゆみ』……』へ続く