真・仮面ライダー-----終章-----『仮面ライダーワールド序章(プロローグ)』 作:狼と踊る男
ダルイゼン「こんな所を根城にしてる訳? 趣味悪……」
ネオ生命体「えぇ~? そうかなぁ~? 良い所だと思うよ? ダルイのお兄ちゃんも住んでみたら?」
ダルイゼン「願い下げ」
そこは、ネオ生命体が指定した『大きな船』の内部だった。
かつての激戦であちこちが損傷し、壁も床も傷だらけになっている。だが、ネオ生命体にとってはそれすら面白いのか、この場所を新しい住処のように扱っていた。
薄暗い通路の奥から、一体のコウモリ型怪人が飛んでくる。
先にグレース達を襲ったコウモリ男とは微妙に姿が違う。ゴルゴムの怪人、コウモリ怪人である。
コウモリ怪人は耳障りな声で何かを伝えた。
言葉ははっきりとは分からない。
だが、ネオ生命体には内容が伝わったらしい。
ネオ生命体は、にたりと笑った。
ネオ生命体「来たみたいだよ?」
ダルイゼン「ようやくか……」
一方、真達は荒れ果てた更地へたどり着いていた。
目の前には、巨大な船のような構造物が横たわっている。
それは船というには異様で、戦艦というにはどこか生物的だった。
外装はひどく損傷し、あちこちが剥がれ落ちている。長い間、地中か山中に打ち捨てられていたようにも見えた。
ひなた「これが、大きな船……?」
勝「随分と傷んでいるな」
ちゆ「でも、確かに船のようには見えるわね」
耕司とベリーだけは、他の者達とは違う反応を示していた。
耕司「ベリー。この船はもしかして……」
ベリー「間違いない。これはフォグの戦艦だ!!」
勝「フォグの?」
ひなた「確かこれだっけ?」
ひなたは、隣にいたのどかへぎゅっと抱きついた。
のどか「ひなたちゃん、それはハグ」
ちゆ「フォグとハグ……ぷっ……くくっ……」
ちゆは口元を押さえたが、笑いを隠し切れていない。
グレル「なぁ、これ面白いか?」
エンエン「ううん」
あゆみ「正直……全然……」
ベリー「笑っている場合じゃない。これは用心しないといけない」
耕司「フォグとは、一度戦っている。戦艦も完全に破壊したと思っていたんだが……」
内部へ入ると、そこは外から見る以上に荒れていた。
通路の壁は裂け、床には焼け焦げた跡が残っている。
だが、不思議なことに、ところどころ修復されたような形跡もあった。
ネオ生命体がここを住処にしていたためなのかもしれない。
一同は慎重に進みながら、耕司とベリーからフォグについて聞いていた。
そして、やがて最深部と思われる広い部屋へたどり着く。
そこは、かつて仮面ライダーJがコブラ男ガライと死闘を繰り広げた場所。
そして、ベリーが一度命を落とした場所でもあった。
空気が重い。
古い戦いの残り香が、まだそこに沈んでいるようだった。
その天井から、緑色の煙がゆらゆらと降りてくる。
煙の中心に、ネオ生命体が姿を現した。
真「ネオ生命体……」
ネオ生命体「おじちゃん。一人で来てって言ったよね?」
真「約束は破った。だが、新は返してもらうぞ!!」
ネオ生命体「まぁいいや。ちゃんとおじちゃん来てくれたし。いいよ、返してあげる」
のどか「割とあっさり返してくれるんだ……?」
ひなた「見た目通り子供だから、実は素直とか?」
勝「油断するな。相手はネオ生命体だ」
ネオ生命体「じゃあ、返してあげるから受け取って」
緑の煙が、部屋の中央へ流れる。
その上に、風祭新の小さな体が乗せられていた。
真の顔色が変わる。
真「新……」
真は一歩踏み出した。
新は眠っているように見える。
怪我をしている様子はない。
真は煙の上の新を抱きかかえようと、両腕を伸ばした。
その瞬間、ネオ生命体の口元が歪む。
勝「真!!」
勝の叫びは、わずかに遅かった。
緑の煙が爆ぜるように広がり、真の全身を包み込んだ。
真「ぐあぁっ!?」
あゆみ「真さん!?」
苦しみながらも、真は咄嗟に新を抱えた。
そして、煙に飲まれながらも、あゆみへ向けて新を投げる。
強くではない。
ふわりと弧を描くように。
あゆみ「っ……!」
あゆみは両腕を伸ばし、なんとか新を受け止めた。
だが、真は煙の中でもがいている。
体があちこちへ跳ねるように動き、姿が変わっていく。
それは、かつて真が初めて怪人となった時と同じ変身の仕方だった。
人の形が歪む。
骨格が変わる。
皮膚が変わる。
やがて、そこに立っていたのは、仮面ライダーシンの姿だった。
だが、色が違う。
本来の緑ではない。
血のような赤。
オレンジにも近い、禍々しい赤。
かつてZOがドラスに取り込まれた時の、赤いドラスと同じ色だった。
その意味するところは、一つしかない。
赤いシン「……」
あゆみ「真……さん……?」
のどか「真さんが……赤い……?」
勝「まずい!!」
赤いシン「ヴァァぁぁァッぁっ~~!!」
赤いシンが咆哮した。
直後、獣のような速度で突進する。
耕司「真!?」
勝「うぅっ!?」
赤いシンのかぎ爪が、耕司と勝を左右へ吹き飛ばす。
さらに、後ろにいたちゆとひなたの肩に手をかけ、そのまま力任せに地面へ転がした。
ちゆ「うっ!?」
ひなた「うわぁっ!?」
あゆみ「のどかちゃん!!」
あゆみは咄嗟に新をのどかへ預けた。
のどか「うわっ!?」
次の瞬間、赤いシンの手があゆみの首を掴む。
あゆみ「うっ……ぐぅっ……!」
体が宙に浮く。
グレル「 あゆみ!?」
エンエン「やめて!!」
赤いシンの口から、声が響いた。
それは真の声ではない。
ネオ生命体「この体すごいね? お兄ちゃんに負けない位(ぐらい)すごく力が湧いてくるよ!!」
あゆみ「ネオ……生命体……!?」
のどか「そんな……真さんはどうしたの!?」
ネオ生命体「おじちゃんなら眠ってるよ。っていうか、この体はもう僕の物だ!! お友達も返してもらうよ!!」
あゆみ「のどかちゃん……逃げ……て……」
のどかは動けなかった。
目の前で起きていることが恐ろしく、足がすくんでしまっている。
赤いシンの左腕が、のどかの抱える新へ伸びる。
その時、新の体が光を放った。
赤いシン「っ!?」
眩い光に、赤いシンは思わずあゆみを放す。
あゆみは床に落ち、咳き込んだ。
あゆみ「ごほっ!! げほっ!! ……何が起こったの?」
のどか「新君……?」
新から溢れる光は、まだ収まらない。
やがて光は緑色の粒子となり、部屋全体へ広がっていった。
同じ頃。
地空人の世界。
新のテレパシーに反応した地空人達が、両腕を天へ伸ばしていた。
彼らは地球の力を呼び覚まし、Jパワーを放出している。
新は、助けを呼んでいたのだ。
再び、フォグ戦艦内部。
Jパワーの光が赤いシンを包み込む。
赤いシン「ガァァァッ……!?」
赤いシンは苦しみ、頭を抱えてもがいた。
その様子を見ていたあゆみのポケットが光る。
石になり、二つに割れていたエコーデコル。
そして、グレルとエンエンまでもが光に包まれる。
グレル「何だ!?」
エンエン「僕達、光ってる!?」
グレルとエンエンの体は、それぞれ小さな紫と赤の光の球となった。
二つの光が空中で混ざり合う。
さらに、割れたエコーデコルもその光へ引き寄せられた。
あゆみは両手を差し出す。
ふわりと光が手の中へ降りる。
やがて光が晴れると、そこにはスマイルパクトと、元通りになったエコーデコルがあった。
あゆみ「スマイルパクト……?」
ひとりでにスマイルパクトが開く。
右下の赤い宝石から、グレルの声。
左下の紫の宝石から、エンエンの声が響いた。
グレル「何だ!? 俺達どうなったんだ!?」
エンエン「僕とグレルが一つになっちゃった!?」
どうやら二人は、ラビリン達のように変身アイテムへ宿る存在となったらしい。
あゆみはスマイルパクトを見る。
そして、Jパワーの光に苦しむ赤いシンを見る。
迷いは消えた。
あゆみ「グレル!! エンエン!! 変身よ!!」
グレル「おうっ!!」
エンエン「うんっ!!」
――レディ~!?
あゆみ「プリキュア!! スマイルチャージ!!」
――GO!! レッツGO!! エコー!!
光があゆみを包み込む。
白く、柔らかく、それでいて強い光。
その中から現れたのは、再び変身を果たした坂上あゆみ。
キュアエコーだった。
エコー「想いよ届け!! キュアエコー!!」
その後ろ姿を見て、のどかは息をのんだ。
同じプリキュアであるはずなのに、どこか神秘的なものを感じる。
のどか「キュア……エコー……」
ちゆ「あれが、キュアエコー……」
ひなた「あれが、あゆみっちのプリキュア……」
ベリー「エコー!!」
エコー「ベリー」
ベリー「Jパワーがシンの体に集まったことで、ネオ生命体の力が弱まっている。今、シンの意思が奴を抑え込んでいるんだ!! 今なら君の力で、奴とシンを引きはがせるはずだ!!」
エコー「分かった!! 少し離れてて!!」
ベリー「あぁ!!」
エコーは赤いシンへ向き直った。
苦しみ続けるその姿の奥に、真がいる。
エコー「真さん……今、助けます!!」
エコーは両手を前へ掲げる。
エコー「世界に届け!! みんなの想い!!」
光が集まる。
エコー「プリキュア!! ハートフルエコォォーー!!」
白い光が、赤いシンの頭上から降り注いだ。
赤いシンはさらに苦しみ、体を震わせる。
その姿は、鬼塚が最後に苦しんだ時のようでもあった。
やがて、赤いシンの体が大きく揺れる。
そして、二つに分かれた。
一つは、人間の姿へ戻った風祭真。
もう一つは、精神体となったネオ生命体。
真は床へ倒れた。
エコーはすぐに駆け寄り、真の体を起こす。
エコー「真さん!! 真さん!!」
真「……う……」
真の目が、ゆっくり開く。
エコー「よかったぁ……」
安堵が溢れ、エコーの目尻から涙が落ちた。
その涙が、真の頬に当たる。
だが、その光景を憎らしげに睨んでいる存在がいた。
ネオ生命体だった。
ネオ生命体は標的を変える。
のどかを見た。
ネオ生命体「こうなったら、お姉ちゃんの体をいただくよ!!」
のどか「何!?」
ネオ生命体は液状の体となり、一気にのどかへ迫る。
のどか「きゃあっ!?」
ちゆ「のどか!!」
ひなた「のどかっち!!」
のどかは新を守ろうと、背中を向けて抱え込んだ。
だが、次の瞬間。
新の体がふわりと宙に浮いた。
のどか「新君……?」
新は、のどかを庇うようにネオ生命体へ飛び込んだ。
のどかが新を守ろうとしたように。
今度は、新がのどかを守ったのだ。
のどか「新君!?」
真「新!!」
二人の叫びも虚しく、新の体はネオ生命体に取り込まれていく。
液状の体が一気に膨れ上がり、巨大な肉体を形作った。
宙に浮いていた足が、ゆっくりと床へつく。
そこに現れたのは、ネオ生命体の真の姿。
ドラスだった。
真「新んんっ~~!!」
エコー「そんな……」
耕司「新君を取り込んだ……」
勝「あれはドラス……!」
ドラス「へぇ~……おじちゃんほどじゃないけど、力が湧いてくるね」
ドラスは自分の体を見下ろし、楽しげに笑った。
そして、両腕を一気に広げる。
ドラス「ふんっ!!」
無数のビームが部屋中へ放たれた。
赤い光が壁を裂き、床を砕き、天井をえぐる。
一同は爆風に飲み込まれた。
次の瞬間、彼らはいつの間にかフォグ戦艦の外へ吹き飛ばされていた。
地面を転がる者。
膝をつく者。
うつ伏せに倒れる者。
キュアエコーも大きなダメージを受け、変身が強制的に解ける。
坂上あゆみの姿へ戻り、グレルとエンエンも元の姿に戻ってしまった。
ドラスは、ゆっくりと外へ出てくる。
ドラス「もう皆いらないや。殺しちゃっていいよね?」
真「……」
真がよろけながら立ち上がった。
一歩。
また一歩。
ドラスへ近づいていく。
あゆみ「真さん!?」
あゆみは慌てて真の右腕を掴んだ。
真はそれを振り払う。
そして、足を止めた。
真「俺は……新を取り返す」
真は振り返らなかった。
それでも、背後にいる者達へはっきりと告げる。
真「力を貸してくれるか?」
あゆみ「はい!!」
あゆみの答えに、真は静かに頷いた。
そして、正面を向く。
意識を集中する。
真の周囲が、夜よりも濃い影に包まれた。
服が裂ける。
程よく鍛えられた人間の体が、苦しみに震える。
骨格が変わる。
筋肉が変わる。
細胞が戦闘の姿を思い出す。
やがて真は、レベル3のサイボーグソルジャー――仮面ライダーシンへと変身した。
シンはドラスを睨み続ける。
その左側に、のどか、ちゆ、ひなた。
右側に、あゆみ、耕司、勝。
シンの覚悟に応えるように、六人もそれぞれ変身を始めた。
のどか・ちゆ・ひなた「プリキュア!! オペレーション!!」
耕司「変身!!」
勝(変~身!!)
あゆみ「プリキュア!! スマイルチャージ!!」
グレース・ラビリン「重なる二つの花!!」
グレース「キュアグレース!!」
ラビリン「ラビィィ!!」
フォンテーヌ・ペギタン「交わる二つの流れ!!」
フォンテーヌ「キュアフォンテーヌ!!」
ペギタン「ペェ!!」
スパークル・ニャトラン「融け合う二つの光!!」
スパークル「キュアスパークル!!」
ニャトラン「ニャッー!!」
ZO「仮面ライダーZO!!」
J「仮面ライダーJ!!」
エコー「想いよ届け!! キュアエコー!!」
妖精達「地球をお手当!!」
グレース・フォンテーヌ・スパークル・エコー「ヒーリングっど♡プリキュア!!」
グレース「……あれ? エコー?」
エコー「あはは、混ざってみたくって……」
グレース達三人がチーム名を名乗るポーズを取った時、エコーもそっと加わっていた。
いつも一人で名乗っていたから。
せっかくの機会に、少しだけ混ざってみたかったのだ。
ZOは構える。
Jは右手で『J』の形を作る。
グレース、フォンテーヌ、スパークル、エコーが並び立つ。
その中央に、シン。
七人の戦士が、ドラスと向かい合う。
この瞬間から、ネオ生命体との最終決戦が始まろうとしていた。
~新訳版4章~『7大ヒーロー対怪人大軍団』
新訳版1話『決戦! 怪人軍団!!』へ続く