真・仮面ライダー-----終章-----『仮面ライダーワールド序章(プロローグ)』 作:狼と踊る男
コウモリ怪人A「ウゥッゥ~~!!」
エコー「ぅぅっ!? ……やぁっ!!」
キュアエコーは、コウモリ怪人に掴まれたまま空を飛ばされていた。
グレース達とは引き離されている。
このままでは、さらに遠くへ連れ去られる。
エコーは体をひねり、コウモリ怪人の足へ手刀を叩き込んだ。
コウモリ怪人A「ウゥッゥ~~!?」
痛みに耐えきれず、コウモリ怪人はエコーを放す。
エコー「うぅっ……!」
地面へ落ちる。
受け身は取った。
だが、綺麗な着地とは言えなかった。
膝をついたエコーの前へ、すかさずクモ怪人二体とスカル魔二体が現れる。
クモ怪人A「……」
クモ怪人B「……」
二体のクモ怪人が、口から糸を吐いた。
粘る糸が、エコーの右手首と首に絡みつく。
エコー「くっ……!」
立ち上がることはできる。
だが、自由に動けない。
クモ怪人達はエコーを中心に円を描くように動き、糸を引っ張って翻弄する。
クモ怪人A「ギュッォ!!」
片方のクモ怪人が跳び、反対側へ着地する。
糸に引かれ、エコーは地面へ転倒した。
エコー「うわっ!?」
スカル魔A「ウゥ!!」
好機と見たスカル魔が、鎌を振り下ろす。
エコーは首と体を必死に動かし、刃をかわした。
そのまま蹴りを伸ばし、スカル魔の腹部へ叩き込む。
スカル魔A「ウゥ!?」
怪人が後ろへ下がる。
エコーはその隙に立ち上がり、右手首に絡む糸を掴んだ。
エコー「ぅぅっ……」
背後から、別のスカル魔が迫る。
スカル魔B「ウゥ!!」
エコー「ぁっ!? ふっ!!」
鎌が振り下ろされる。
エコーは咄嗟に前転し、かわした。
さらに追撃の鎌。
今度は避けるだけではない。
エコーは絡みついた糸を引き、鎌の軌道へ持っていった。
刃が糸を切り裂く。
右手首と首の拘束が解けた。
エコー「ふっ!!」
自由になった拳を握り、スカル魔Bの腹部へ正拳突きを叩き込む。
スカル魔B「ウゥ!?」
怪人が後退する。
エコーは残った糸を乱暴に払い捨てた。
その時、正面から再びコウモリ怪人が飛んでくる。
コウモリ怪人A「ウゥッゥ~~!!」
エコー「ふっ!! ……うっ!?」
コウモリ怪人は何度も突進してくる。
エコーは地面を転がり、紙一重でかわす。
空を飛ぶ相手は戦いづらい。
動きを捉えるには、まず視界を奪うしかない。
エコーは胸元へ意識を集中する。
エコー「キングストーンフラァァッ~シュ!!」
胸の宝石から、まばゆい光が放たれた。
BLACKボトルをスマイルパクトにセットしている今、エコーは仮面ライダーBLACKの力を引き出せる。
これは、キュアエコー版のキングストーンフラッシュ。
コウモリ怪人A「ウゥッゥ~~!?」
光をまともに受けたコウモリ怪人は、一時的に視力を奪われた。
勢いのままエコーの頭上を通り過ぎる。
エコー「ふっ!! ……はぁ!! ライダァァーチョップ!!」
エコーは跳んだ。
右手にエネルギーを宿し、コウモリ怪人の頭部へ手刀を叩き込む。
コウモリ怪人は落下し、スカル魔Bを巻き込みながら地面へ激突した。
クモ怪人A・B「ギュォッ!?」
怪人達が一歩下がる。
だが、エコーはもう動いていた。
エコー「ライダァァーパンチ!!」
エネルギーをまとった拳が、クモ怪人Aの顔面へ突き刺さる。
エコー「やぁ!!」
続けて、クモ怪人Bにも拳を叩き込む。
二体が転倒する。
残るスカル魔Aは、倒れた怪人達を見て警戒するように鎌を構えた。
エコーは空へ跳ぶ。
右足に光が宿る。
エコー「ライダァァーキィィッーク!!」
スカル魔A「ウゥ!?」
スカル魔は鎌を盾のように構えた。
だが、エコーのキックは止まらない。
鎌の柄が折れ、そのまま衝撃がスカル魔の胸を貫く。
スカル魔は後方へ吹き飛び、背中を強打した。
一度は立ち上がろうとする。
だが、すぐに前のめりに倒れ、爆発した。
エコー「……んっ?」
爆炎の向こうに、かすかな人影が見えた。
銀色の体。
エメラルドグリーンのように輝く眼。
煙と熱気に揺らめくその姿は、明らかに普通の怪人とは違っていた。
エコーが目を凝らす。
すると、その存在はエコーの視線に気づいたように背を向けた。
ガチャン。
ガチャン。
独特の重い足音を立てながら、その銀色の影は去っていく。
エコー「あれは……うっ!?」
突如、エコーの周囲に緑色の雷が落ちた。
雷は二、三発で止む。
だが、代わりに重い足音が近づいてくる。
エコーが振り向いた先にいたのは、ネオ生命体の真の姿。
ドラスだった。
エコー「ネオ生命体……」
ドラス「今度は僕が遊んであげるよ!!」
ドラスはゆっくりとエコーへ近づく。
エコーは構えた。
だが、ドラスはあざ笑うように言う。
ドラス「戦えるの?」
エコー「……」
ドラス「この体は新君の物だよ? 僕を傷つけるってことは、新君を傷つけるってことだよ?」
その言葉に、エコーの体が固まった。
確かにそうだ。
今、目の前にいるドラスの中には、新がいる。
攻撃すれば、ネオ生命体だけでなく、新まで傷つけてしまうかもしれない。
ドラスが近づくたび、エコーは自然と後ろへ下がっていた。
ドラス「ヴァッ!!」
ドラスがビンタに似た攻撃を振るう。
エコーはしゃがんでかわす。
次は前転。
さらに腕で受け止める。
防御と回避だけで精一杯だった。
ドラスが左腕を振るう。
エコーは右腕で受け止めた。
反射的に、左拳が動いてしまう。
エコー「はぁ!!」
左正拳突きがドラスの腹部へ命中した。
ドラス「ヴゥ!?」
エコー「あっ!? しまった!?」
ドラスは二、三歩後ろへ下がり、膝をつく。
苦しむような声を漏らした。
エコー「新君、大丈夫!?」
エコーは思わず駆け寄る。
それが罠だった。
ドラス「ヴァ!!」
ドラスの手が、エコーの首を掴む。
エコー「うっ……!?」
足が宙に浮く。
息ができない。
その時、横から影が飛び込んだ。
シン「!!」
シンがドラスへ体当たりする。
ドラスはエコーを放し、エコーは地面へ落ちた。
シンはエコーを庇うように前へ立つ。
ドラスは、二人を睨むように低く唸った。
エコー「真さん!! 待ってください!! ネオ生命体を傷つけたら、新君も傷つけることになります!!」
エコーはシンの肩を掴み、止めようとした。
シンはゆっくり首を後ろへ向ける。
じっと、エコーを見る。
数瞬の沈黙。
その後、エコーの頭の中に声が響いた。
エコー「……『一緒に戦ってくれ』?」
シンは頷いた。
テレパシーだった。
エコーは戸惑う。
だが、シンはさらに言葉を送ってくる。
エコー「戦うこと……それが新君を救うことになるんですか?」
シンはまた頷いた。
真だって、新を傷つけたいはずがない。
それでも、ネオ生命体を弱らせなければ、新を救い出す機会さえ作れない。
これは父親である真が下した、苦渋の決断だった。
エコーの心に、別の声も届く。
真が新へ向けた謝罪の言葉だった。
――少しだけ我慢してくれ。
一番つらいはずの真が、覚悟を決めている。
それなら、自分がためらっている場合ではない。
エコーはシンの横へ並び立った。
エコー「行きましょう、真さん……いいえ、シン!!」
あえて、真ではなく仮面ライダーとしての名を呼ぶ。
シンは頷いた。
二人は同時に駆け出した。
ドラス「ヴァ!!」
ドラスの胸部からレーザーが放たれる。
シンとエコーの周囲に着弾し、爆発が連続する。
それでも二人は止まらない。
爆煙を裂き、距離を詰める。
エコー「はぁ!!」
エコーが走りながら右フックを放つ。
だが、ドラスはあっさりかわした。
その後ろから、シンが右のひっかき攻撃を繰り出す。
ドラスは左腕で受け止め、カウンターの右張り手をシンの腹部へ叩き込んだ。
シン「!?」
シンは前のめりに倒れる。
ドラス「ッ!! ッ!!」
ドラスは倒れたシンの背中を何度も踏みつけた。
三度目の踏みつけ。
シンは横へ転がり、何とか脱出する。
次の瞬間、シンの姿が視界から消えた。
ドラスがシンを探す。
だが、その隙を与えまいと、エコーが跳んでいた。
エコー「ふんっ!!」
エコーの拳がドラスへ命中する。
だが、ドラスは表情一つ変えない。
ドラスは左腕でエコーを薙ぎ払った。
エコー「つっ!?」
続けてエコーが飛びつく。
しかし、ドラスはその体を掴み、放り投げた。
エコーは地面へ転倒する。
倒れたまま、近づいてくるドラスを睨む。
距離が縮まった瞬間、エコーは足を伸ばし、脇腹へ蹴りを入れた。
だが、ドラスは反撃としてエコーの腹部を蹴る。
エコーは地面を転がった。
シン「!!」
シンがエコーを助けるため、ドラスへ跳ぶ。
ドラスはすぐに気づき、胸部からレーザーを放った。
空中では避けられない。
レーザーがシンへ直撃する。
シンは宙で反転しながら坂へ叩きつけられ、転がり落ちていった。
ドラス「……ヴ!!」
ドラスはさらにレーザーを放つ。
シンは痛みをこらえて起き上がり、低空飛行のような跳躍で次々と避けた。
着地。
そして、再びジャンプ。
そのままドラスへ突進する。
ドラス「ヴ!!」
ドラスの手が、飛びかかったシンの首を掴んだ。
シン「!?」
シンは苦しみながら、ドラスの腕を掴み返す。
背後から気配。
ドラスの首が、ぎぎっと九十度ほど後ろへ向く。
エコーが走り込み、拳を突き出していた。
ドラスはシンを掴んだまま体を一回転させる。
エコーの拳は空を切った。
戻る勢いのまま、ドラスの手がエコーの頭部を打つ。
エコー「うぅっ!?」
エコーが吹き飛び、地面を転がる。
さらにドラスは、掴んでいたシンをエコーへ投げつけた。
二人の体がぶつかり、倒れ込む。
ドラス「ゥゥゥ……ヴ!!」
倒れる二人へ、レーザーが放たれる。
シン「!?」
シンは咄嗟にエコーを庇った。
レーザーはシンの背中へ直撃する。
シンはそのまま倒れた。
エコー「シン!!」
ドラスは、ゆっくり二人へ歩き出す。
エコーはシンを寝かせ、単身でドラスへ向かった。
三メートルほどの距離で立ち止まる。
ドラスも足を止めた。
エコー「プリキュア!! ハートフル!! エコォォーー!!」
白い光がドラスへ降り注ぐ。
ドラス「ヴゥゥッ~!?」
ドラスが苦しみ出す。
体から、わずかに煙のようなものが上がる。
エコー「イケる!! このまま弱らせれば……」
だが、技を放ち続けるだけでは決定打にならない。
エコーはハートフルエコーを止め、両腕を広げる。
その場で跳躍。
右手にBLACKの力を宿す。
エコー「ライダァァ~チョォォップ!!」
しかし、ハートフルエコーが途切れた瞬間、ドラスは動けるようになっていた。
一、二歩後ろへ跳び退く。
エコーのチョップは空を切った。
ドラス「ヴッ!!」
反撃の蹴りがエコーへ入る。
エコー「ぐぅっ!?」
エコーは転倒した。
その時、再びシンが飛び出す。
シン「!!」
シンはドラスへ飛びかかり、エコーから引き離すように押し込んだ。
次にドラスが体勢を立て直した時、景色は森の中へ変わっていた。
ドラス「……」
シンの姿はない。
気配を消している。
太い枝の上。
そこにシンはいた。
木から木へ、音もなく飛び移る。
ドラスが気配を感じて振り向いた時には、もうそこにいない。
それが何度か繰り返された。
獣のように森を使うシン。
人工的な戦闘ではなく、生物としての狩り。
そして、ついにシンが動いた。
シン「……!!」
高い枝から一直線に突撃する。
ドラスが気づいた時には遅い。
シンの体当たりが命中し、二人は地面を転がった。
ドラス「ヴッ!!」
片膝をついたまま、ドラスがレーザーを放つ。
シンは三、四メートル後ろへ跳んでかわす。
だが、ドラスもすぐに宙へ浮くように跳び、シンの目前へ着地した。
ドラス「ッ!!」
ビンタに似た拳が、シンの頭部へ叩き込まれる。
シンは二、三歩後退した。
ドラス「ゥゥッ……ゥッ!!」
腹部からレーザー。
シンは即座に跳び退き、木々を盾にしてやり過ごす。
何発ものレーザーが幹を削り、火花と木片を散らした。
一瞬、攻撃が止む。
その隙に、シンはドラスへ向かって右足を突き出して跳んだ。
シンのライダーキック。
ドラス「……ヴッ!!」
だが、ドラスはその足を掴んだ。
そのまま何度も回転する。
十分に遠心力をつけたところで、シンを投げ飛ばした。
シンは大きく吹き飛び、谷へ叩き戻される。
そこは、先ほどエコーと共闘していた場所だった。
シンはダメージのため、すぐには立ち上がれない。
ドラスはゆっくり近づく。
エコー「ライダァァ~パンチ!!」
エコーが右拳にピンクのエネルギーを灯し、BLACKのライダーパンチを放つ。
だが、ドラスのレーザーが先に撃たれた。
エコー「うぅっ!?」
エコーは地面へ倒れる。
それでもすぐに立ち上がり、構え直した。
すると、ドラスが右手を突き出す。
その腕が、ロケットのように射出された。
エコー「えっ!?」
予想外の攻撃だった。
反応が遅れる。
直撃。
エコーは反転しながら後方へ吹き飛び、崖へぶつかる。
そのまま下り坂を転がった。
エコー「ぅぅっ……」
それでも、エコーは立ち上がる。
息は荒い。
体も重い。
だが、まだ目は折れていなかった。
エコー「はぁ……はぁ……ふっ!! ……バイタルチャージ!!」
両拳を強く握る。
胸の宝石が光り出し、力が体内へ巡る。
エコー「キングストォォッーン!! フラァァッーシュ!!」
両拳を腹部の前で合わせ、胸の宝石から強烈な光を放つ。
ドラス「ヴゥッ!?」
ドラスの視界が、数秒間奪われる。
その隙に、シンがエコーのそばへ駆け寄った。
二人は同時に跳ぶ。
エコー「ライダァァーキィィック!!」
シン「!!」
エコーはBLACKのキック。
シンは左脚を突き出す。
ダブルキックが、ドラスの胸部へ命中した。
ドラスは後方へ吹き飛び、背中から地面へ倒れる。
二人は着地し、構え直した。
ドラスはゆっくりと起き上がる。
ダメージは入っている。
だが、表情も態度も変わらない。
そこへ、空中から光線が降り注いだ。
グレース「実りのエレメント!! はあぁー!!」
ドラス「ヴァ!?」
光線がドラスへ命中し、数歩後退させる。
グレースがシンとエコーの後ろへ着地した。
エコー「グレース!!」
グレース「二人共、大丈夫!?」
続いて、左右からフォンテーヌとスパークルが飛び込んでくる。
ペギタン・ニャトラン「プニシールド!!」
二人はプニシールドを展開したまま、ドラスへ突進した。
ドラス「ヴッ!?」
ドラスは左右の腕を突き出し、盾を受け止める。
すぐにZOとJが参戦した。
ZOはフォンテーヌの後ろへ。
Jはスパークルの後ろへ回り、二人の体を支えながら押し込む。
ドラスは左右から挟まれ、動きを止められた。
スパークル「グレース!!」
フォンテーヌ「今のうちに浄化を!!」
グレース「分かった!! エレメントチャァァ――」
ベリー「待ってくれ!!」
グレース「えぇっ!?」
溜めかけた力が、光の粒子となって散っていく。
ラビリン「何で止めちゃうラビ!? 今がチャンスなのに!?」
ベリー「グレース!! 今回はJを浄化した時とは状況が違う!!」
グレース「Jの時と違う?」
エコー「どういうこと、ベリー!?」
ベリー「精神体だったネオ生命体は、ビョウゲンズが作り出すナノビョウゲンに近い。グレースやフォンテーヌ、スパークルの技は十分効果があるだろう」
グレース「それなら、止める理由なんて……」
ベリー「ネオ生命体が寄生したのがJやZOならよかった。だが、新君に憑りついたのなら話は別だ!!」
グレース「え……?」
ベリー「JとZOには、地空人から与えられたJパワーが体内に宿っている。だからビョウゲンズに蝕まれても、プリキュアの技を受けて無事だった」
グレース「じゃあ、新君にはそのJパワーが宿っていないから……どうなっちゃうの?」
ベリーの声が重くなる。
ベリー「もし、このままグレース達の技を放てば、ネオ生命体と一緒に新君も消滅してしまうかもしれない」
エコー「そんな!?」
グレース「どうして……どうして新君の時だけ、そんなことになっちゃうの? 何で!?」
ベリー「新君の体にはJパワーが宿っていない。プリキュアの必殺技は怪人にも有効打になってしまう。敵ではないから都合よく助けられるとは思わない方がいい」
グレース「そんな……」
ラビリン「じゃあ、どうすればいいラビ!?」
その迷いを、ドラスは見逃さなかった。
ドラス「ゥゥゥッ……!」
全身から、三百六十度にビームを放つ。
左右から押さえ込んでいたフォンテーヌとスパークルのプニシールドが軋む。
次の瞬間、盾は破られた。
ZOとJは咄嗟にフォンテーヌとスパークルの盾になる。
ビームが直撃し、さらに足元で爆発が起こった。
四人は爆風に吹き飛ばされ、受け身も取れず地面へ転がる。
グレース「皆!?」
ドラスは、グレースとエコーの方へ歩き出した。
その前へ、シンが飛び込む。
シン「!!」
シンはドラスにしがみついた。
ドラス「ヴッ!? ヴ!! ヴ!!」
ドラスは拳を何発も叩き込み、シンを引きはがそうとする。
シンは耐えた。
グレースとエコーの元へ進ませないために。
だが、防御もできない状態で攻撃を受け続ければ、シンの方が先に倒れてしまう。
グレース「どうしよう……このままヒーリングフラワーを撃ったら、新君も真さんも巻き込んじゃう……」
エコー「シン……」
エコーとシンの目が合う。
シンはドラスを食い止めながら、何かを訴えるように見つめていた。
大きく頷く。
エコーの心に、かすかな意思が届く。
――ヤレ。
違っててほしい……
他に方法はないのか。
最後まで諦めたくない。
そう思った瞬間、今度ははっきりと声が届いた。
――ヤレッーー!!
改造兵士の力を持たないエコーに、届くはずのないテレパシー。
それでも、その声は確かに聞こえた。
さらに、その奥に真の覚悟が流れ込む。
――新。お前を一人にしない。最後まで一緒だ。
エコーは、攻撃を受け続けるシンを見つめた。
父親として、真は覚悟を決めている。
けれど、エコーはまだ諦めたくなかった。
その時、フォグ戦艦の中で真を救った瞬間が、脳裏に蘇る。
あの時、ハートフルエコーは真とネオ生命体を分離した。
ならば。
エコーはエコーデコルを取り出し、グレースへ差し出した。
グレース「エコー……?」
エコー「グレース。これを使って浄化してみて」
グレース「えぇっ!? でも私の技じゃ、新君も真さんも一緒に消滅しちゃうんだよ!?」
エコー「それはシンも分かってる。でも、せめて新君と一緒に逝くのが、シンの覚悟で、願いでもあるの……」
グレース「そんな……」
ラビリン「待つラビ!! エコーはそれでいいラビ!?」
グレル「おいおい!? エコー、諦めんのかよ!?」
エンエン「きっと二人を助ける方法はあるはずだよ!?」
エコー「私だって諦めたくない!!」
エコーはグレースを見つめた。
エコー「だから……グレース。私を信じて。シンと新君を助けて!!」
グレースはエコーデコルを握りしめる。
怖くないはずがない。
失敗すれば、真も新も失うかもしれない。
それでも、エコーは信じて託した。
ならば、自分も信じるしかない。
グレース「……分かった。やってみる!!」
エコー「ありがとう!!」
グレースは数歩駆け出し、ドラスとシンの前に立つ。
ドラス「ウゥッ!?」
グレース「真さん、新君。今、お手当します!!」
ドラスはグレースへ攻撃しようと動く。
しかし、シンがしがみついて離さない。
グレースはヒーリングステッキを構え、エコーデコルをセットした。
グレース「エコーデコル!! エレメントチャァァージ!!」
ラビリン「キュンキュンキュン!!」
ドラス「お姉ちゃん、正気!? その技は僕だけじゃない。おじちゃんと新君も殺しちゃうよ?」
グレースは唇を噛む
グレース「そうだね。あなたの言う通りかもしれない」
それでも、グレースはステッキを下ろさなかった。
グレース「それでも、私を信じて力を託してくれたエコーのことを、私は信じる!!」
ドラス「人間ってやっぱり愚かだね。やっぱり僕が神にならないと、この星は滅んじゃうよ?」
グレース「あなたみたいなのが神様だったら、私達は全力であなたに立ち向かう!!」
ドラス「このぉぉ~~!!」
グレース「凄く辛くて苦しくても、全力であがいて、全力で生き抜くんだ!!」
シン「!!」
グレース「プリキュア!! ヒーリング!! フラワァァーー!!」
放たれたヒーリングフラワーは、いつものピンクではなかった。
エコーの力が加わったからか、光は白く輝いていた。
白い花の光が、ドラスとシンを容赦なく包み込む。
ドラス「ぎゃあぁぁっぁっぁぁっ~~!?」
シン「……」
光の中から、精神体のネオ生命体が引きずり出される。
まるでメガビョウゲンからエレメントが解放される時のように。
ネオ生命体「ヒッ……ヒーリン……グッバイ……」
ネオ生命体は苦しみながら、白い光の中で浄化されていく。
グレース「お大事に……」
その声は、いつもより低く、静かだった。
ラビリンは何も言わなかった。
光が晴れる。
そこには、風祭真が倒れていた。
腕の中には、新が抱かれている。
エコー「真さん!! 新君!!」
グレースとエコーが駆け寄る。
真はゆっくりと目を開けた。
新も、小さく息をしている。
二人とも無事だった。
エコー「よかった……」
グレース「本当に……よかった……」
ドラスの攻撃で吹き飛ばされていたフォンテーヌ、スパークル、ZO、Jも戻ってくる。
全員が、真と新の無事を確認して安堵した。
ZO「ベリー。ネオ生命体はこれで消滅したのか?」
ベリー「恐らく大丈夫だ。奴の気配はもう感じない。グレースが完全に浄化したようだ」
ZO「そうか……」
スパークル「はぁ~疲れたぁ~……」
フォンテーヌ「そうね。ネオ生命体も、あの怪人軍団も手強かったしね」
ラビリン「でも、どうして二人が無事だったラビ?」
エコー「フォグの戦艦の中で、私が真さんをネオ生命体から助けたでしょ? その時、真さんとネオ生命体が分かれたから、私の力を加えたら、今度も分離できるんじゃないかと思って」
グレース「それで、エコーのデコルを渡してくれたんだ?」
エコー「えぇ。一か八かの賭けだったけど、上手くいって良かった」
ようやく、ネオ生命体の脅威は去った。
皆が変身を解こうとした、その時だった。
地面が大きく揺れた。
グレース「何!?」
フォンテーヌ「地震!? それもかなり大きい!?」
スパークル「のわぁっととと!?」
立っていられないほどの揺れ。
地面が唸り、周囲の岩が崩れる。
一同は次々に倒れ込んだ。
その中で、ZOが何かを見つける。
ZO「あれは!?」
ZOが指差した先。
全員が、見上げた。
スパークル「うえぇぇっ!? 嘘嘘!?」
フォンテーヌ「動いてる……!?」
グレース「何て大きいの……」
J「バカな……あれは……!?」
そこにあったのは、ネオ生命体が根城にしていた巨大な機械母艦。
フォッグ・マザー。
死んだはずのそれが、再び動き出していた。
巨大な影が、空を塞ぐ。
機械の咆哮が、山全体を震わせる。
ネオ生命体との戦いは終わった。
だが、真の危機も、新の危機も、まだ終わってはいなかった。
3話『復活のフォッグ・マザー』へ続く