真・仮面ライダー-----終章-----『仮面ライダーワールド序章(プロローグ)』 作:狼と踊る男
~終章~
場所は変わり、地空人の世界。
ベリーの先導のもと、一同は地球の奥深くに存在するその世界へ足を踏み入れていた。
そこへ、二人の地空人が姿を現す。
かつて瀬川耕司に改造手術を施し、仮面ライダーJとして地球を守る力を与えた男女だった。
地空人の男「おぉ、よく来てくれた。瀬川耕司」
耕司「お久しぶりです」
地空人達は耕司だけでなく、のどか達のことも穏やかに迎え入れた。
ちゆは、二人の姿を見て思わず息をのむ。
ちゆ(この体……植物と一体化している……?)
地空人の女「驚かれましたか?」
ちゆ「えっ!? いや、その……」
地空人の女「いいのです。私達地空人は、大地と一体化して生きているのです」
地空人の男「私達にとっては、これが自然なことなのです」
ちゆ「そう……なんですか?」
耕司「分かるよ。俺も初めて彼らを見た時、同じように思ったから」
ひなたは周囲を大きく見回し、深呼吸した。
ひなた「う~~ん!! それにしてもここって空気がおいしいねぇ~!! マイナスイオンを感じるぅぅ~~……」
のどか「そうだね。ここの空気を吸ってると……なんて言うか……生きてるって感じがするよ」
あゆみ「うん。マイナスイオンは分からないけど、言いたいことは分かるね」
ラビリン「……」
のどか「ラビリン? どうかしたの?」
ひなた「ニャトランとペギタンも、何かだんまりしちゃってるけど、調子でも悪いの?」
ラビリン「何だか……ヒーリングガーデンを思い出す場所ラビ」
あゆみ「ヒーリングガーデン?」
ちゆ「あぁ、ペギタン達はヒーリングガーデンっていう所からやってきているの。ラテと一緒にね」
あゆみ「そうだったんだ。どんな所なの?」
ちゆ「私達も行ったことはないから分からないけど、ペギタン達の話だと、自然豊かな綺麗な所らしいわ」
ペギタン「雰囲気は違うけど、どこか似てるペェ」
ニャトラン「空気が似てるよな。肌に感じる力とかさ」
ベリー「それもそうだろうな。この世界も、ヒーリングガーデン同様、地球が生み出した世界だ」
ラビリン「そうだったラビ!?」
ベリー「普段は決して交わることがない。互いに不用意な接触は極力控えると決めている。だから君達も、僕らのことはプリキュアと違って、伝承で少し聞くぐらいしか知らなかったんじゃないか?」
ペギタン「そう言われればそうペェ」
ニャトラン「俺達も、地空人のことはテアティーヌ様からちょっとしか聞かされなかったな」
耕司「それで、俺達を呼んだのは一体どういう要件なんですか?」
地空人の男「うむ。あなた方の戦いは、すべてこの場所からも見ていました」
地空人の女「彼女達が伝説の戦士プリキュアであり、ここより未来から来たことも」
のどか「はい。私達も、元の時代に帰らないといけないんです。きっと、家族が心配していて……」
地空人の女「それなのですが、地球の力を借りて時の精霊の力を引き出すことができれば、あなた方が元の時代へ戻ることも可能でしょう」
のどか「時の精霊の力……?」
のどかは、この時代へ来るきっかけとなったボトルを思い出した。
ポケットから時のボトルを取り出し、地空人達へ見せる。
地空人の男「それです。そのボトルは、時の精霊の力を宿しています」
地空人の女「ただし、それだけでは時を越える道を安定させることはできません。地球の力を借りる必要があります」
ちゆ「その場所というのは、どこですか?」
地空人の男「地球の“すべてを生み出す力”が強く引き出せる場所」
地空人の女「それは……河童山・ヒョウタン池です」
ちゆ「河童山……」
のどか「ヒョウタン池……」
ひなた「……って、どこ?」
あゆみ「耕司さん。その山って知っていますか?」
耕司「その山なら、前に調査で行ったことがある。案内はできるな」
ひなた「良かったぁ~。それなら何とかなりそ」
耕司「ただ……地球の力を引き出せる場所、か。それらしい場所を見た覚えはないな」
ひなた「ガ~~ン!!」
地空人の女「それなら大丈夫です。その場所までの案内は、ベリーがしてくれます」
ベリー「僕はその場所を知っている。山に着いたら、そこからは任せてくれ」
のどか「よろしくね、ベリー」
ちゆ「頼りにしているわ」
ひなた「マジよろしくで!!」
ベリー「あぁ。しかし、ここから河童山・ヒョウタン池までは距離がある。一度、登山の準備をしてきた方がいいだろう」
耕司「そうだな。では、お二人共。俺達はこれで……」
その時、勝が一歩前へ出た。
勝「ちょっと待ってくれ!!」
耕司「勝?」
勝は地空人達へ向き直る。
勝「僕が望月博士に改造され、山を彷徨っていた時……助けてくれたのはあなた方だと、ベリーから聞きました。それは本当なんですか?」
地空人の男「本当のことです」
地空人の女「フォグと戦える者が他におらず、地球を守るためとはいえ、あなたには申し訳ないことをしました」
勝「それは違います」
勝は静かに首を横へ振った。
勝「僕はあなた方に感謝しています。そのおかげで、僕はネオ生命体と戦う力を得た。改造された力だけではなく、この地球の力、Jパワーを宿したことで、宏君を守ることができました」
勝は深く頭を下げる。
勝「ありがとうございます」
地空人達は、少し困惑したように顔を見合わせた。
彼らは、勝から恨まれていても仕方がないと思っていたのかもしれない。
だが、勝の言葉に嘘はなかった。
二人の表情が、わずかに明るくなる。
勝は続けて尋ねた。
勝「先ほど、あなた方は僕達のことを見ていたと言いましたね。でしたら教えてください。ネオ生命体を蘇らせた黒幕について、何かご存じありませんか?」
地空人達の表情が曇る。
どうやら、詳しいことまでは分からないらしい。
だが、そこに真とあゆみが口を挟んだ。
真「そういえば結城が、ネオ生命体と一緒に銀色の変な奴を見たと言っていた。もしかしたら、そいつが?」
あゆみ「そういえば、ネオ生命体は王様が蘇らせてくれたとも言っていましたよね。私も、さっき戦う前に銀色の怪人を遠目で見たような気がします」
地空人の女「銀色の変な奴と、王様が同一の存在なのかは、私達にも分かりません」
地空人の男「ですが、もしや世紀王のことかもしれません」
真「世紀王?」
ベリー「エコー。君が持つBLACKのエレメントボトルがあるだろう?」
あゆみ「えっ? これ?」
ベリー「そのボトルの力の主、仮面ライダーBLACK。彼もまた、世紀王ブラックサンと呼ばれる存在だ。そして、そのBLACKと対になるもう一人の世紀王。それがシャドームーン」
あゆみ「シャドームーン……」
のどか「ちょっと待って!? じゃあ、もしかしてそのシャドームーンって怪人が、まだ残ってるってことなんじゃ!?」
ベリー「そこまでのことは、僕らにも分からない。ただ、世紀王の力は強大だ。怪人を蘇らせることぐらい、簡単にやってのけてしまうかもしれない」
ひなた「嘘でしょ!? まだ終わらない訳!?」
ちゆ「世紀王シャドームーン……厄介そうな相手が残ったものね」
ベリー「まだ、シャドームーンが黒幕と決めるのは早い。何故ならシャドームーンは、仮面ライダーBLACK、そして仮面ライダーBLACK RXが倒したはずだからだ。もしかしたら、全く別の存在かもしれない」
あゆみ「じゃあ、もしかして、ちゆちゃん達が話してくれたビョウゲンズの首領……キングビョウゲンが黒幕とか?」
ちゆ「その可能性は低いと思う。あゆみもダルイゼンに言っていたけど、ビョウゲンズの目的はあくまで地球を蝕むことであって、地球の破壊ではないわ。今回の件とは矛盾しているもの」
あゆみ「そっか……」
耕司「そのことなら、君達は気にしなくていい。黒幕のことは俺が調べる」
のどか「そんな!? 耕司さん!! 今更、水臭いこと言わないでください!! 私達も地球のために戦います!!」
耕司「のどかちゃん。君の気持ちは嬉しい。でも、未来から来た君達が、いつまでもこの時代にいてはいけないんだ」
のどか「でも……」
耕司「この時代のことは、この時代の俺達に任せればいい。それに、のどかちゃん達は俺達のことを信用できないかい?」
のどかは、すぐに首を横へ振った。
のどか「それは違います。皆さんのことは、信じています」
耕司「なら、それでいい」
耕司は、のどかの頭を優しく撫でた。
のどかには心残りがあった。
けれど、この時代には、この時代を守る人達がいる。
そのことを受け入れるしかなかった。
一同は地空人達に別れを告げ、地空人の世界を後にした。
そして一度、真と新が暮らしていた山小屋へ戻り、耕司の指示のもとで登山の準備を進めることになった。
地空人の世界から戻り、一同は風祭親子の暮らす山小屋へやって来た。
そこには、一足先に結城卓也が戻っていた。
結城は一同を出迎え、これまでの顛末を聞いた。
あゆみ達の事情。
河童山へ向かうこと。
そして、のどか達が元の時代へ戻ろうとしていること。
結城「それじゃあ、君達は明日にも未来へ帰る訳か?」
のどか「そうなりますね」
ちゆ「そう思うと少し名残惜しいですが、私達にも私達の日常がありますし」
ひなた「それに、新君と真さんを見てたら、ウチらも家族に会いたくなっちゃって……」
結城「無事に帰れるといいな」
それから結城は、真へ向き直った。
結城「それにしても、真。本当によかったな」
真「結城……」
結城「これでもう財団に狙われることもないだろうからな。これで死んだ愛ちゃんや親父さんに心配かけることもなくなったな」
真「だといいんだが……」
結城「そうに決まってる!! だって、お前と新の体にはもう改造兵士の力はないんだろう? だったら狙っても意味なんてないはずだろう?」
セーラ「そうかしら。そうとも言えないわ」
結城「えぇっ?」
あゆみ「どういうことですか?」
セーラ「改造兵士の力がなくなったなんて、口で言っても誰も信じないわ。財団がそんなことを知る由もない。実際に施設で検査した結果でも用意できなければね」
セーラは冷静だった。
だからこそ、その言葉は重かった。
セーラ「それに、不思議な力を持った少女達が人間に戻した、なんて話を誰が信じるのかしら?」
誰もすぐには言い返せなかった。
セーラ自身は、当事者だ。
実際に見ているから信じられる。
だが、それを知らない者にとっては違う。
真実がどれほど正しくても、証拠がなければ虚言で終わる。
まして、その真実が常識外れなら、人は無理やり常識に当てはめた説明の方を選ぶ。
真と新が人間に戻ったことは、救いだった。
だが、同時に戦う力を失ったということでもある。
財団もCIAも、力で押し込んでくれば、今の風祭親子には抵抗する術がない。
人間に戻ったことで、真はどこか浮かれていた。
その心に、セーラの言葉は重く刺さった。
セーラ「仮に財団が今の真を見つけて連れて行ったら、今度は元の体に戻った原因を探ろうとするでしょうね。また人体実験を繰り返すかもしれない」
真「……」
セーラ「身を隠すことをお勧めするわ。ただし、もう誰にも見つからないような場所を探した方がいい」
真は口を開けなかった。
考えがまとまらない。
答えが見つからない。
そんな中、顎に手を当てて考えていたちゆが、そっと手を上げた。
ちゆ「あの、真さん。行く当てがないのでしたら、私の家に来ませんか?」
のどか「ちゆちゃん!?」
ペギタン「ちゆ!? なんてことを言ってるペェ!? 男を連れ込むなんて!?」
ちゆ「えっ!?」
ひなた「ふ~む、ちゆちーは年上好きか……」
のどか「その……恋してる? って感じ?」
ちゆ「違う違う!? そうじゃなくて!?」
ちゆは慌てて首を振った。
ちゆ「新君のことも考えると、落ち着ける場所がいるでしょう? 身を隠すという意味でも、この時代から長く姿を消せれば都合がいいと思ったからで……っていうか、それならあゆみのポジションじゃないの!?」
あゆみ「えぇっ!? 私!?」
ひなた「あぁ、そっか。パターンで見れば、あゆみっちって真さんのことになると真剣だったし」
あゆみ「いや、確かに真剣だったし、憧れみたいなものはあるけど、恋とかそういうんじゃなくてね!?」
真「その、なんだ……俺もその……愛以外には考えられなくてな。すまない」
あゆみ「へっ!? あっ、いや……いいんですけど……。なんか、告白した訳でもないのに振られたみたいで複雑なんですけど……」
少しだけ場の空気が和らぐ。
だが、真はすぐに真面目な顔へ戻った。
真「しかし沢泉。うちに来るかと言っても、家の人に何て言うつもりなんだ?」
ちゆ「それなんですけど、私の家は旅館を経営しています。住み込みで働くこともできますし、新君のこともちゃんと考慮できると思います」
ちゆは少し考えながら続ける。
ちゆ「表向きは、はぐれたラテを見つけてくれた子連れの就活生、ということにすればいいかと。私の家族なら、事情がありそうだと察して、深くは追及しないと思います」
真は迷った。
財団のことを考えれば、ちゆの家族まで巻き込むかもしれない。
迷惑をかけたくない。
それが本音だった。
だが、このまま結城に頼り続けるわけにもいかない。
そして何より、新の未来を考えれば、山奥で隠れ続ける生活が良いはずもない。
真はしばらく黙っていた。
やがて、静かに頷いた。
真「……世話になる」
ちゆ「はい」
こうして、風祭真と新も、のどか達が元の時代へ帰る時に同行することになった。
行き先は、すこやか市。
真と新の、新しい生活が始まる場所である。
翌日。
一同は風祭親子の山小屋を出発し、河童山・ヒョウタン池へ向かった。
ヒョウタン池が見える場所まで来ると、そこからはベリーが先導する。
山道は険しく、一同はゆっくりとしたペースで進んでいた。
道中では、何度も休憩を挟む。
のどか「ふぅ~……」
ラビリン「のどか、大丈夫ラビ?」
のどか「うん。大丈夫。ありがとう、ラビリン」
ちゆ「疲れたら遠慮しないで言って。登山では、思っている以上に体力を使うから」
のどか「分かった」
ひなた「いやぁ~、それにしてもいい眺めですなぁ~。疲れたけど」
あゆみ「ベリー。目的の場所って、あとどれぐらいなの?」
ベリー「もうしばらく歩く。少しここで休憩を挟んだ方がいいだろう」
耕司「皆!! 少し休憩するぞ!!」
一同はその場に腰を下ろし、体を休めた。
耕司は地図を広げ、ベリーと一緒に通ってきたルートと、これから進む道を確認している。
他の者達は雑談をしたり、水分や食べ物を口にしたりしていた。
真「ベリー。俺達が探している、地球の“すべてを生み出す力”が強く引き出せる場所というのは、どんな場所なんだ?」
ベリー「僕も噂でしか聞いたことがないんだが、この地球とは別の世界、光の園と呼ばれる世界にある光の祭壇と似た作りになっているらしい。肌で感じられるほど神秘的な場所らしいぞ」
真「光の祭壇……」
ひなた「っていうか、光の園なんて世界があるんだ? ニャトラン知ってる?」
ニャトラン「うんや。初耳だな」
ベリー「光の園からは、この地球のことを虹の園と呼んでいるらしい。噂では、光の園にもプリキュアの伝説があるとかないとか」
ひなた・ニャトラン「へぇ~」
あゆみは、その言葉に少し引っかかりを覚えた。
あゆみ(光の園のプリキュア……確かキュアブラックとキュアホワイトのことだったような……どうだったっけ?)
休憩を終え、一同は再び歩き出す。
目的地が近づくにつれ、ラビリン達妖精だけでなく、Jパワーを宿す耕司と勝も何かを感じ始めた。
さらに進むと、のどか達にも分かるほど、神秘的な力が空気に満ちていく。
ラテ「アン!!」
ラテが突然、先頭を切って走り出した。
のどか達も慌てて後を追う。
ラテが止まった先。
そこには、静かで、どこか神聖な空気をまとった場所が広がっていた。
この場所は、後の時代に別の伝説の戦士達も訪れることになる場所。
今はまだ、そのことを知る者はいない。
ベリー「ここだ」
ベリーの言葉で、一同は目的地にたどり着いたことを理解した。
のどか「それでベリー? ここからどうすればいいの?」
ベリー「あぁ。これから――」
勝「待て!!」
突然、勝が叫んだ。
のどか「勝さん?」
勝は周囲を鋭く見渡す。
勝「出てきたらどうだ。すぐ近くにいるのは分かっている」
一同に緊張が走る。
その背後から、姿を隠していたダルイゼンが現れた。
のどか達はすぐに変身できるよう構える。
耕司と勝も前へ出た。
だが、ダルイゼンの顔色は悪かった。
のどか「……大丈夫?」
根が優しいのどかだったため思わず心配していた
ダルイゼン「大丈夫な訳ないじゃん。ここの空気って、俺達ビョウゲンズにとっては最悪な環境だし」
そう言いながら、ダルイゼンはのどか達を見る。
ダルイゼン「ねぇ。もしかしてこれから元の時代に戻るつもり?」
あゆみ「だったら何?」
ちゆ「邪魔をしに来たの?」
ひなた「アンタには容赦しないし!!」
ダルイゼン「おぉ怖い怖い。そんなに睨みつけてたら、シワができるよ?」
険しい顔をしていた三人は、思わず額に手をやった。
表情を意識してしまい、構えが一瞬崩れる。
のどか「それで、結局あなたは何をしに来たの?」
ダルイゼン「元の時代に帰るなら、俺も連れてってよ」
『はあっ~!?』
ラビリン「何を図々しいこと言ってるラビ!! どうしてラビリン達があなたを送っていかないといけないラビ!?」
ひなた「そーだ!! そーだぁーー!!」
ちゆ「あれほどのことをしておいて、流石に虫が良すぎる気がするわね」
ペギタン「僕も反対ペェ!!」
ニャトラン「俺もだぜ!!」
あゆみ「そうだね。私も流石に助けようとは思えない」
ダルイゼン「あっそう? まぁ、この時代にはまだシンドイーネもグワイワルもいないから、うるさくなくていいんだけどさ。誰もいないと、地球を蝕むのを俺だけでやる羽目になるのは面倒なんだよね」
ラビリン「そんなの知らないラビ!!」
ダルイゼン「でも、俺をこの時代に残したら、お前達の方が困るんじゃない?」
あゆみ「どういうこと?」
ダルイゼン「浄化できる訳? 俺達ビョウゲンズを、仮面ライダーがさ」
ちゆ「それは……」
ひなた「あぁ~!? そうだった!?」
ダルイゼン「それに、この時代じゃ本来俺はまだいないんだ。俺がこの時代を蝕んでいけば、お前達のいた時代はどう変わっちゃうのかな?」
ダルイゼンの言葉に、ちゆ達は口を閉ざした。
腹立たしい。
だが、指摘そのものは間違っていない。
のどか「分かった。一緒に帰ろう」
ちゆ「のどか!?」
ラビリン「何を言ってるラビ!?」
ひなた「何で!?」
のどか「でも約束して。元の時代に帰るまでは、私達の邪魔を一切しないって」
ラビリン「ダルイゼンが約束なんて守る訳ないラビ!!」
のどか「困るのはダルイゼンも一緒みたいだし、私達もダルイゼンを残していったら大変なことになる。それを分かってて、断れないって知っているから、ダルイゼンも私達の所に来たんだと思う」
ダルイゼン「さぁ? どうだろうね」
のどか「ここで浄化することだって、できると思う。でも……」
ダルイゼン「でも、何?」
のどか「私達の決着は、私達の本来の世界でつけるべきだと思うから」
ダルイゼン「あっそ。それはどうでもいいんだけど、お前がそうしたいなら、それでいいんじゃない? 俺は楽して元の時代に帰れればそれでいいし」
のどか「信じていいんだよね?」
ダルイゼン「お前らの邪魔して、下手に帰れなくなっても面倒だし。俺もここの空気吸ってると気分悪いから、そんな気になれないし」
のどか「分かった。あなたも連れていく。一先ず、一緒に帰ろう」
プリキュア側の気持ちは複雑だった。
ダルイゼンの言い分は虫が良すぎる。
けれど、この時代に彼を残す危険も無視できない。
一同はひとまず帰還を優先し、準備を進めることにした。
ベリーの指示のもと、祭壇の周りにのどか、ちゆ、ひなた、あゆみ、真、そして妖精達が集まる。
祭壇の中央へ、時のボトルを置いた。
全員が意識を集中し、地球の“すべてを生み出す力”へ呼びかける。
しばらくすると、時のボトルとジカンコエ~ルに光が集まり始めた。
祭壇の中央から、半径五十センチほどの光が立ち上る。
縦に二、三メートルほど伸びた光の柱。
ベリーの反応を見る限り、これが未来へ通じるゲートのようだった。
あゆみ「この時計も反応してる!?」
ベリー「その時計は、特定のエネルギーを吸収して動力源にできるようだな。これをくぐれば、きっと元の世界へ帰れるだろう」
のどか「皆さん、お元気で!!」
ちゆ・ひなた「お世話になりました」
あゆみ「いつかまた、お会いしましょう」
耕司「君達も元気でな」
勝「王様や財団のことは俺達に任せろ。君達も、地球の治療を頑張れ!!」
のどか・ちゆ・ひなた「はい!!」
真は、結城へ向き直った。
真「結城。元気でな」
結城「お前も新も元気でな。愛ちゃんと親父さんの方には、俺が知らせておく」
真「頼むぞ、親友」
結城「おう!!」
真は次に、セーラを見る。
真「セーラ。あんたの方も、まぁ……死なないようにな」
セーラ「ふふっ。やっぱり、あなたって優しい男ね」
セーラは新の頭をそっと撫でた。
セーラ「あの時、殺し損ねて本当によかったわ。改めて、新しい人生のスタートおめでとう、真。この子もね」
セーラの言葉には、皮肉も敵意もなかった。
心からの祝福だった。
真とセーラの間にあったわだかまりも、少しずつほどけたように見える。
あゆみも結城も、その様子にほっとしていた。
別れの挨拶が済む。
一同は光の柱へ入っていく。
最後に、のどかとラビリンが入ったところで、光の柱は消えた。
未来へ帰る者達は、完全にこの時代から姿を消した。
耕司、勝、結城、セーラ、ベリーは、しばらくその場に立ち尽くしていた。
彼らの安否を思いながら。
そして、いつかのどか達の時代へ、真と新の様子を見に行こうと、心の中で誓うのだった。
時の狭間。
一同は、光の流れの中を進んでいた。
その途中で、あゆみが持っていたジカンコエ~ルが強く反応する。
あゆみ、グレル、エンエンは立ち止まった。
あゆみ「ここでお別れだね」
のどか「あゆみちゃんも元気でね」
ちゆ「キュアエコーの活躍、決して忘れないわ」
ひなた「すこやか市に遊びに来てよね、あゆみっち!!」
あゆみ「うん!! きっと行くよ!!」
あゆみは、ちゆへ向き直る。
あゆみ「ちゆちゃん。真さんと新君のこと、お願いね」
ちゆ「えぇ。責任を持って家で面倒を見るわ」
真「世話をかけるな」
ちゆ「気にしないでください。私達にとっても、真さんも新君も大切な人なんですから。それに、すこやか市は本当にいい所ですし」
真「それは楽しみだ」
真は、あゆみとグレル、エンエンを見た。
真「あゆみ。それにグレルもエンエンも、元気でな。君達にも本当に感謝している」
グレル「気にすんなよ。俺達は、ただ友達を助けたかっただけだしな」
エンエン「うん!! 僕達も、真さんと新君が大好きだから!!」
あゆみ「それじゃあ、真さん。皆。また、私にとっては二年後に」
のどか「あっ!? あゆみちゃん、待って!! これを持っていって!!」
のどかが差し出したのは、真の力が宿ったボトルだった。
あゆみ「これって……真・ボトル……?」
のどか「あゆみちゃんに持っていてほしいの。きっと、それがいいと思うから」
あゆみはボトルを受け取る。
両手で大切に包むように握った。
あゆみ「分かった。真さんの力……私が預かりますね」
真「あぁ。頼む。それが役に立つかは分からないが、何かあったら使ってくれ」
あゆみ「はい!!」
その言葉を最後に、あゆみ、グレル、エンエンは光の向こうへ消えた。
あゆみ達は、のどか達の時代より二年前の世界へ戻っていく。
残されたのどか達も、光の流れに身を任せた。
そして、ほんの少し後。
気づけば、のどか達は自分達の時代へ戻っていた。
真は、初めて訪れるその町を見渡す。
真「ここが未来……すこやか市か……」
新しい時代。
新しい町。
風祭真と風祭新の、新しい人生がここから始まる。
一方、あゆみ達もまた、自分達の時代へ戻っていた。
グレル「おい、ここって……」
エンエン「僕達が過去に行く前にいた場所……?」
あゆみ「みたいだね。良かったぁ~。無事に帰ってこられたっぽい……」
目の前には、あゆみ達がよく知る街並みが広がっている。
あゆみは、自分の手の中にある真・ボトルを見つめた。
風が吹く。
髪が、ふんわりと揺れる。
あゆみ「風……ガイア……か……」
その言葉は、まだ形にならない予感のように、風の中へ溶けていった。
一方、1994年のどこか。
恐らく、かつてのゴルゴム宮殿と思われる場所。
そこに、世紀王シャドームーンの姿があった。
シャドームーン「ネオ生命体もフォグも、それにビョウゲンズの小僧も、奴らを倒すまではいかなかったか……」
静かな声が、暗い空間に響く。
シャドームーン「まぁいい。面白い余興ではあった。俺の本来の力を超えた新しい力を、体に慣れさせるための時間稼ぎでもあったからな」
シャドームーンはゆっくりと歩く。
ガチャン。
ガチャン。
金属質な足音が響く。
シャドームーン「あわよくば、とも思ったが……そこまではいかないか。まぁ、そうでなくては面白くはない」
彼は、巨大化した仮面ライダーJの姿を思い出す。
シャドームーン「それに最大の障害である仮面ライダーJは、自らの意思で巨大化できないようだ。ならば、俺の勝利は確実だ」
シャドームーンの眼が、暗闇の中で輝く。
シャドームーン「もう間もなくだ。間もなく、この世紀王シャドームーンが全宇宙を支配するために動き出す日も、遠くはない」
笑い声が響く。
シャドームーン「はははははっ!!」
これからが、本当の戦いであることを、まだ誰も知らない。
そして、シャドームーンもまた知らなかった。
この事件がきっかけで、本来自らの意思では巨大化できなかった仮面ライダーJが、ボトルの力の副作用によって、自在に巨大化できるようになっていたことを。
シャドームーンと、J、ZOの戦いは、この後『仮面ライダーワールド』へ続いていく。
・・・・・『真・仮面ライダー』は終わらない・・・・・
新章『仮面ライダーガイア』
新訳版第1話『復活!! 仮面ライダーシン!!』へ続く