真・仮面ライダー-----終章-----『仮面ライダーワールド序章(プロローグ)』 作:狼と踊る男
レベル2D「うっ!? ……何!?」
あゆみ「上手くいった……」
スパークル「えぇっ!? 嘘でしょ!?」
フォンテーヌ「あの姿は……」
グレース「仮面ライダー……シン!!」
一同が見たのは、失ったはずの力だった。
風祭真の体に、仮面ライダーシンの姿が重なっている。
ただし、かつてのシンとは一つだけ違っていた。
腰にはロストドライバーが装着されている。
真の肉体そのものが再び改造兵士へ戻ったのではない。
真ボトルに残された「仮面ライダーシンとしての力」を、ガイアメモリとロストドライバーが外装のように再構成しているのだ。外皮や触覚・口も眼も動き方や感触はどう捉(とら)えても生物のソレだが……
シンはレベル2Dの攻撃を左腕で受け止めたまま、右の張り手を叩き込む。
レベル2D「ぐっ!?」
真は立ち上がった。
自分の身に起こった変化に、真自身もわずかな戸惑いを見せる。
だが、目の前にいる氷室巌――レベル2Dを見た瞬間、その迷いは消えた。
シン「……」
レベル2D「オォッー!!」
レベル2Dは再び、右腕を横八の字に振るって攻撃する。
シンは一歩引いてかわした。
続けて踏み込み、右、左のビンタを連続で叩き込む。
レベル2D「ぐっ……!」
さらに、シンは一メートルほど跳んだ。
落下の勢いを乗せた右の張り手が、レベル2Dの頭部へ炸裂する。
レベル2D「うぉっ!?」
レベル2Dは数歩後ろへ下がり、思わず膝をついた。
シンはゆっくりと歩き出す。
だが、その途中で異変が起きた。
シン「……!?」
ロストドライバーから、火花が散った。
次の瞬間、全身を激しいエネルギーが駆け巡る。
それは、変身を保つための光ではない。
制御しきれず、暴れ出した力だった。
グレース「真さん!?」
シン「ぐっ……!」
胸、腕、脚。
体のあちこちで火花が爆ぜる。
シンの力が強すぎる。
真ボトルから抽出された仮面ライダーシンの戦闘力は、あまりにも生々しく、あまりにも荒々しい。
ロストドライバーと真メモリだけでは、その力を安定して形に留めておくことができなかった。
数秒後。
変身が弾けるように解けた。
シンの姿は消え、真は再び人間の姿へ戻ってしまう。
真「はぁ……はぁ……」
息が上がっている。
体力を消耗したというより、力の奔流に振り回されたような状態だった。
同時に、真メモリがロストドライバーから火花を上げて排出される。
メモリは床を転がり、あゆみの足元へ戻ってきた。
グレース「変身が解けた!?」
スパークル「何で!? 今いけそうだったじゃん!?」
あゆみはメモリを拾い上げ、すぐに原因を理解した。
あゆみ「駄目……強すぎたんだ」
フォンテーヌ「強すぎた?」
あゆみ「真さんの、ううん『仮面ライダーシン』の力が強力すぎて、メモリが安定してない。このままじゃ、何度変身しても暴走するか、すぐに弾かれる……」
あゆみは、アースへ振り向いた。
あゆみ「あなた、風の力を使うプリキュア。キュアアースだよね!?」
アース「私ですか? はい。確かに風の力を扱いますが」
あゆみ「お願い!! 力を貸して!! このガイアメモリに、あなたの風とプリキュアの力をぶつけて!!」
アース「風と、プリキュアの力を……」
あゆみ「荒れているエネルギーを、風で整えてほしいの!! シンの力を壊すんじゃなくて、包み込んで、安定させるために!!」
アースは真メモリを見つめた。
そこには、真がかつて背負った力が宿っている。
恐怖ではなく。
呪いでもなく。
今度こそ、大切な者を守るための力として。
アース「分かりました」
あゆみは真メモリを天井へ放り投げた。
アースは静かにハープを構える。
アース「アースウィンディハープ!!」
弦が鳴る。
澄んだ風が廃工場の空気を変えていく。
アース「舞い上がれ!! 癒しの風!!」
紫がかった風が、真メモリを包み込む。
アース「プリキュア!! ヒーリングゥゥッ~ハリケェェッ~~ン!!」
癒しの風が、真メモリへ注ぎ込まれた。
真メモリは空中で、薄紫色のシャボン玉のような光に包まれる。
暴れていたエネルギーが、ゆっくりと整っていく。
荒々しいシンの力に、キュアアースの風が通り道を作る。
プリキュアの癒しの力が、暴走を抑える。
やがて、光は真の目の前へ降りてきた。
真が両手を差し出す。
メモリはその手の上へそっと乗った。
一際大きな光が真を包む。
光が晴れた時、メモリは変化していた。
ただ漢字で『真』と刻まれていたメモリではない。
サイクロンメモリを思わせる風の模様。
そして、その中央に刻まれた一文字。
『真』
あゆみ「よし!」
アース「これで『仮面ライダーシン』の力は風と調和しました」
真はメモリを握った。
そして、ロストドライバーへ差し込む。
真「変身!!」
メモリの差込口が斜め四十五度に傾く。
風が巻き起こった。
特殊な物質が真の体を覆い、姿を変えていく。
それはもう、仮面ライダーシンではなかった。
旧・仮面ライダー1号を思わせる姿。
だが、腰にはロストドライバー。
全身には、風と大地の力が通っている。
あゆみ「やった!!」
バテテモーダ「おいこら!! 姿変えて変身とか、どういうつもりだ!? 仮面ライダーシン!?」
新たな戦士は、静かに顔を上げた。
ガイア「仮面ライダーシン? ……いいや、今は違う」
バテテモーダ「あっ?」
ガイア「俺は、仮面ライダーシンの力と、風の力が合わさって生まれ変わった新しい戦士」
ガイアは構えた。
ガイア「仮面ライダーガイア!!」
レベル2D「仮面ライダーガイア……? ふざけるなぁ!!」
あゆみ「よぉし!! 私も!!」
あゆみはスマイルパクトを構える。
あゆみ「プリキュア!! スマイルチャージ!!」
光があゆみを包む。
エコー「想いよ届け!! キュアエコー!!」
仮面ライダーガイア。
キュアエコー。
そして、何とか立ち上がったキュアアース。
三人が並び立つ。
それに対抗するように、レベル2D、バテテモーダ、ヤンデモータも並んだ。
六人は、同時に駆け出す。
バテテモーダはアースを狙う。
レベル2Dはガイアを狙う。
だが、その前にエコーが立ちはだかった。
レベル2D「そこをどけ!! 小娘!!」
エコー「ガイアはやらせない!!」
レベル2D「このっ!!」
レベル2Dが右腕を振るう。
エコー「ふっ!!」
エコーはしゃがみ、右水平チョップを脇腹へ叩き込む。
レベル2D「うっ!?」
二、三歩下がるレベル2D。
チョップを受けた箇所を押さえながら、再び右腕を振り上げる。
レベル2D「オォッ!!」
エコー「はあぁっ!!」
エコーはその腕を両手で掴んだ。
そのまま体をひねり、百八十度の曲線を描くように投げ飛ばす。
柔道の大外返しにも似た投げ。
相手の力を利用して体勢を崩し、背中から叩きつける技である。
レベル2D「ぐぅっ!?」
硬い背中が床へ激突する。
一方、バテテモーダと戦うアースは苦戦していた。
バテテモーダ「おらぁおらぁおらぁ!!」
アース「くぅっ!?」
先ほど受けたダメージが響いている。
以前戦った時のように、余裕を持って相手を捌くことができない。
バテテモーダの蹴りが入る。
アースは吹き飛ばされ、木箱とドラム缶の山へ激突した。
アース「ぅぅっ……」
バテテモーダ「弱ってるとこ悪いんすけど、そろそろ止め行っときますかね」
バテテモーダが爪を突き立て、アースへ突っ込む。
その刹那。
光の盾が割って入った。
バテテモーダ「うおっ!?」
スパークル「やらせないし!!」
フォンテーヌ「私達もいるの、忘れてない?」
グレース「アース。後は任せて!!」
アース「すみません。お願いします」
グレース「うん……行くよ!!」
フォンテーヌ「えぇ!!」
スパークル「うん!!」
三人は、過去の世界から持ち帰ったボトルをセットする。
グレース「RXのエレメント!!」
フォンテーヌ「バイオライダーのエレメント!!」
スパークル「ロボライダーのエレメント!!」
バテテモーダ「妙なことされる前にぶっ潰す!!」
バテテモーダが突進する。
フォンテーヌ「バイオアタック!!」
フォンテーヌの体が青い液体のように変化した。
バテテモーダ「うおっ!? 何じゃこりゃ!? ぎゃあ~!?」
液状化したフォンテーヌは、バテテモーダの周囲を目まぐるしく回る。
背後を取った瞬間、実体化。
そのままキックを叩き込んだ。
バテテモーダは吹き飛び、スパークルの方へ転がっていく。
スパークル「パワー充電!!」
右拳にオレンジのエネルギーが集まる。
スパークル「ロボパァァ~ンチ!!」
バテテモーダ「ごはぁっ!?」
腹部へ直撃。
体がくの字に曲がる。
スパークル「どりゃっ!!」
さらに拳を押し込むように殴り飛ばす。
バテテモーダは床をバウンドしながら転がり、何とか起き上がった。
だが、すでにグレースが宙にいた。
グレース「RX!! キック!!」
両足を突き出した蹴りが、バテテモーダの横顔へ炸裂する。
バテテモーダ「ごあぁぁっ~!?」
前歯が折れるほどの衝撃。
バテテモーダは再び吹き飛び、ドラム缶と木箱の山へ突っ込んだ。
ラビリン「今ラビ!!」
グレース「うん!!」
三人はミラクルヒーリングボトルを構える。
グレース・フォンテーヌ・スパークル「トリプルハートチャージ!!」
グレース・フォンテーヌ・スパークル「届け!! 癒しの!! パワー!!」
光が廃工場を満たす。
グレース・フォンテーヌ・スパークル「プリキュア!! ヒーリングゥゥッ~~……オアシス!!」
バテテモーダ「俺の野望がァァ~~!? ヒーリングッバァァッ~~イ!?」
癒しの光がバテテモーダを包み込む。
その中に、素体となっていたカピバラの姿も見えた。
今度こそ解放されたのだ。
グレース達「お大事に……」
三人は浄化完了を確認し、軽くハイタッチを交わした。
その頃、エコーはレベル2Dを追い詰めていた。
レベル2D「ぐおっ!? ……うぅっ……」
エコーはBLACKのエレメントボトルをスマイルパクトにセットしている。
仮面ライダーBLACKの力が、エコーの拳と脚に宿っていた。
エコー「ふっ!!」
両拳を強く握る。
エコー「ライダァァ~パンチ!!」
空中から放たれた拳が、レベル2Dの顔面へ叩き込まれる。
レベル2D「ぐおぉっ!? がぁぁ!?」
さらに、エコーはすぐに次の体勢へ移る。
右足に光が集まる。
エコー「ライダァァーキィィック!!」
蹴りが胸部へ突き刺さる。
レベル2D「ぐうぅぅっ~~!?」
レベル2Dは後方へ吹き飛び、倒れた。
着地したエコーが静かに見つめる。
レベル2Dの首から、ガイアメモリが強制排出された。
メモリは床へ落ち、砕け散る。
使用者である氷室巌の体もまた、断末魔を上げながら消えていった。
氷室「真……この私が……また……!」
その声は、途中で途切れた。
エコーは静かに息を吐く。
氷室巌の復讐は、ここで終わった。
そして、ガイアはヤンデモータと戦っていた。
ヤンデモータ「フン!!」
ガイア「ふっ!!」
ヤンデモータの右ビンタを、ガイアは左腕で受け止める。
すかさず右フック。
ヤンデモータの頭部へカウンターが決まり、黒い体が数歩下がりながら回転した。
ガイアは歩みを止めない。
ヤンデモータ「ウゥッ!? ……フン!!」
今度は左ビンタ。
ガイアは膝をつくようにしゃがんで避ける。
その低い体勢から、右正拳突きを腹部へ突き込んだ。
ガイア「オォッ!!」
ヤンデモータ「ウゥッ!?」
ヤンデモータは吹き飛び、床へ転倒する。
ガイアはロストドライバーへ手を伸ばした。
差し込まれていた真メモリを一度抜き取る。
そして、右脇腹の挿入口へ差し込んだ。
――真!! マキシマムドライブ!!
薄紫色の風が、ガイアの右足へ渦巻く。
それは、キュアアースのヒーリングハリケーンと同じ癒しの風だった。
荒々しいシンの力を、ただ破壊する力にしない。
風と癒しをまとった、浄化のライダーキック。
ヤンデモータ「ウゥゥッ~……」
ガイア「これで終わりだ」
ガイアは跳んだ。
右足を突き出す。
ガイア「ライダァァーキィィック!!」
薄紫色の風をまとった蹴りが、ヤンデモータへ直撃する。
ヤンデモータ「ムゥッ!?」
ヤンデモータは後方へ吹き飛び、前のめりに倒れた。
ガイアは無事に着地し、倒れた敵を見つめる。
ヤンデモータはよろめきながら立ち上がる。
だが、その体には薄紫色の光が宿っていた。
足首から少しずつ、光の粒子となって消えていく。
最後には、指先と頭部が同時に消えた。
それは、単なる破壊ではなかった。
浄化だった。
グレース「やりましたね、真さん。ううん……ガイア」
フォンテーヌ「まさか、仮面ライダーがビョウゲンズを浄化できるなんて思わなかったわ」
スパークル「めっちゃすごいじゃん!!」
ガイア「そうみたいだな。しかし……何故、俺がビョウゲンズを浄化できたんだ?」
アース「それは恐らく、私の力が加わったからでしょう」
ガイア「そうなのか?」
アース「はい。プリキュアの力で安定したそのメモリを使って変身したことで、攻撃にも癒しと浄化の力が働いたのだと思います」
ガイア「なるほど……。ただ戦うための力ではなくなった、ということか」
アース「はい。地球を癒す風と、守ろうとする真さんの心が重なった力。それが、仮面ライダーガイアなのだと思います」
その時、ガイアの視線が上を向いた。
宙に浮かぶ三つの影。
ダロム。
ビシュム。
バラオム。
三神官が、ゆっくりと降りてくる。
なぜかエコーは、その名を知っていた。
エコー「大神官ダロム!! バラオム!! ビシュム!!」
グレース「えっ!? エコー、あの三人のこと知ってるの?」
エコー「えぇ。南光太郎さん……仮面ライダーBLACK RXから聞いたことがあるの。ゴルゴムの三神官。光太郎さんを改造人間にした張本人達……」
スパークル「そうだった!? まだあの三人が残ってたんだ!?」
フォンテーヌ「エコー、気を付けて!! あの三人、かなり手強い!!」
だが、ダロムは手を上げた。
ダロム「まぁ待て。もはや我々には戦う意思などない」
一同「えっ?」
バラオム「言ったはずだ。BLACKに敗れた我らには、もう現世の者と事を構える気など持ち合わせてはおらん」
ビシュム「バテテモーダと氷室巌に協力したのも、ただの気まぐれなのですよ」
ガイア「気まぐれだと!?」
ダロム「まぁ、そう怒るな。我々も死後の世界で暇を持て余していたのだ」
エコー「たったそれだけのことで、こんなことをしたって言うの!?」
フォンテーヌ「なんて迷惑な……」
ダロム「ほほほっ。まぁそう言うな。我らも此度の戦いは大いに楽しめた。しばらくは、お前達の前から姿を消そう」
グレース「えっ? 帰るの?」
バラオム「ここでお前達を殺すのは、我々の本意ではない」
ビシュム「実を言うと、私達もお前達の戦いを楽しみにしているのです」
フォンテーヌ「私達の戦いを?」
ビシュム「BLACKと同じように、大いなる闇に抗うあなた達が、どこまでビョウゲンズと戦っていけるのか。それを見ているのも、なかなかいい暇つぶしになるのですよ」
スパークル「アタシらにとっちゃ、めっちゃ必死でお手当てしてることなんですけど!!」
ダロム「そういうことだ。我々は十分楽しませてもらった。帰るとしよう」
ダロムの声が、廃工場の天井へ響く。
ダロム「お前達がこちら側へ来た時は、我らがまた相手をしてやるとするか。ははははっ!!」
スパークル「もう会いたくないっての!!」
笑い声を残し、三神官の姿は薄れていく。
そして完全に消えた。
死後の世界へ戻ったのだろう。
一同は、しばらく三神官が消えた天井を見上げていた。
誰も、すぐには動かなかった。
戦いが終わった後。
さらわれていた新は、奥の部屋で眠らされていただけだった。
怪我はない。
変身を解いた一同は、場所を移し、ひなたの自宅のワゴンカフェでお茶をしていた。
のどか「ありがとう、あゆみちゃん。おかげで助かったよ!!」
ひなた「あゆみん、原チャリの免許取ったんだね?」
あゆみ「あれ? なんか呼び方変わってない? 確か、あゆみっちって呼んでなかった?」
ちゆ「それにしても、よく考えたらあゆみって年上だったのよね。今更だけど、私達って馴れ馴れしすぎたかしら?」
あゆみ「ううん。気にしないで。今まで通り、あゆみって呼んでほしいな」
ちゆ「そういうことなら分かったわ。あゆみ」
あゆみ「うん。……あなたがキュアアースだよね?」
アスミ「はい。キュアアースと申します。真さんも、改めましてよろしくお願いします」
のどか「あぁ!? 変身前は風鈴アスミちゃんだからね?」
アスミ「はい。アスミちゃんです」
ちゆ「それにしても、あゆみ。一体どこでアスミのことを知ったの? 今日、私達と再会するまで、アスミのことを知る機会なんてなかったと思うんだけど」
ひなた「そうそう!! それ!! あたしも気になってた!!」
真「それに、このベルトとUSBメモリはどうしたんだ?」
あゆみは順番に説明することにした。
あゆみ「私がすこやか市に来る前に、風都っていう街にいる探偵さんの仲間が、キュアアースのことを検索して分かったことを私にも教えてくれたの」
のどか「探偵さん……の仲間?」
あゆみ「そう。真さんに渡したロストドライバーも、そのガイアメモリも、その探偵さん達と協力して作ったんだよ」
真「探偵が、これを?」
あゆみ「はい。ただの探偵じゃなくて、仮面ライダーWに変身する二人で一人の仮面ライダーなんです。そのWと協力して、ロストドライバーと真メモリを手に入れました」
あゆみは、真の手元のメモリを見る。
あゆみ「真さんのヒーリングボトルから、力を注入することもできました。仮面ライダーシンの力を再構成できたのも、そのおかげです」
アスミ「それに、私の風とプリキュアの力を加えたものが、仮面ライダーガイアという訳ですね」
あゆみ「そういうこと。本当に間に合ってよかった。皆が無事で済んで……」
あゆみは少しだけ視線を落とした。
あゆみ「あっ、でも、もう少し早く来ていれば、新君がさらわれることもなかったかもって思うと、やっぱり遅かったですよね」
真「気にするな、あゆみ。あの時、君が来てくれなかったら、俺も新も、皆もやられていたかもしれない」
あゆみ「そう言ってもらえると助かります」
ひなた「ホントホント!! ピンチの時にさっそうと現れたあゆみん、カッコよかったよ? でも、あそこはオートバイの方がもっとカッコよかったかな?」
あゆみ「うっ!? しょうがないでしょ!? まだ免許取ったばかりなんだから!? スクーターだって、お母さんに無理言って買ってもらったんだから!! はぁ~、アルバイト探さないとなぁ~……」
ひなた「ごめんごめん。冗談だって」
のどか「ところで、あゆみちゃん。仮面ライダーWなんてライダーと、よく知り合えたね?」
あゆみ「まぁ、私には二年あったからね。ただ待っていた訳じゃなかったんだ」
あゆみは静かに笑った。
あゆみ「あれから、知り合いのプリキュアに仮面ライダーのことを聞いて回ったの。キュアブラックやキュアホワイト達が七人ライダーと知り合いらしくて、その延長で、財団Xと戦ったことがある仮面ライダー達にたどり着いた」
ちゆ「ZOやJ以外にも、そんなに仮面ライダーがいたのね」
あゆみ「うん。仮面ライダーW、オーズ、フォーゼ。それにRXや七人ライダーの話も聞いた。そこで、もしもの時のために、真さんにもう一度“仮面ライダーとして戦う力”を用意できないかって考えたの」
のどか「あゆみちゃんの方も、大変だったんだね」
あゆみ「ううん。真さん達に比べると、私はまだマシだよ。私がお節介しただけだし」
真「お節介なものか」
真はロストドライバーを見る。
真「おかげで俺は、また大切なものを守るために戦える。君につけてもらった“仮面ライダー”という名に恥じない男になれるってものさ」
あゆみ「その言葉を聞ければ、私も翔太朗さん達も頑張って用意したかいがあります」
ちゆ「ところで、あゆみ。これからどうするの? 横浜みなとみらいから来たのよね。時間は大丈夫?」
あゆみ「大丈夫。今日はちゆちゃんの家にお泊りする予定だから」
ちゆ「へっ? 私の家? 聞いてないんだけど?」
あゆみ「違うよ。ちゆちゃんの家の旅館にお泊りするの」
ちゆ「あぁ、そういうこと」
あゆみ「そういうことで、今日はお世話になります。若女将さん? イクメンの仲居さん?」
ちゆは軽く咳払いをした。
ちゆ「ようこそ、おこしくださいました。坂上あゆみ様。すこやか市にようこそ」
真「当旅館従業員一同、心からおもてなしをさせていただきます」
ひなた「わっ!? ちゆちー、早速女将モード発動した!? 真さんも切り替え早!?」
のどか「ふふっ。お仕事してるって感じかな」
その後、あゆみはのどか達とすこやか市を観光した。
夕方には、予約していたこともあり、ちゆの家の旅館でスムーズに部屋へ通される。
あゆみは部屋でくつろぎ、非番だったちゆと真も急遽シフトを入れて、あゆみをもてなすことにした。
連れてきていたグレルとエンエンも、ペギタンと一緒に、ちゆの部屋でこっそり用意されていた御馳走を堪能する。
隙を見て、真がグレルとエンエンをペット用の温泉へ連れていった。
あゆみ達も、すこやか温泉を満喫する。
その日の夜。
時刻は遅かったが、足湯はまだ開いていた。
あゆみとちゆは「せっかくだから」と一緒に浸かり、夜の風景を眺めていた。
あゆみ「でね? そしたら、のぞみさんとみゆきちゃんがぴったり同じタイミングで転んじゃって、二人でハモりながら『はっぷっぷ~』だって。おかしいよね?」
ちゆ「ぷっ!! 確かに。似た者同士でも、そんなに息ぴったりなんて、そうそうないわよね。ふふふ」
あゆみ「ふふふ……はぁ~……本当にいい所なんだね。すこやか市って」
ちゆ「えぇ。本当に」
あゆみ「仮面ライダーや、ライダー達から話に聞いたスーパー戦隊。それに私達プリキュアが守っているものって、“地球の平和”って盛大に言うけど、本当はこういう何でもない日常のことなのかもね」
ちゆ「かもね……。ねぇ、あゆみ。聞いてもいい?」
あゆみ「何?」
ちゆ「あゆみはあれから二年もの間、私達がいない間も、ネオ生命体やビョウゲンズみたいな相手と戦ってきたの?」
あゆみ「うん……戦ってた」
ちゆ「そう……ごめんなさい。それだけの期間、一人で戦わせてしまって」
あゆみ「気にしないでよ。私は大丈夫。一人じゃないしね。それに、そこまでしょっちゅう戦ってた訳じゃなかったし」
ちゆ「でも……ほら、私達って一度は同じヒーリングっど♡プリキュアって名乗りを一緒に挙げた仲じゃない? 親近感のようなものが湧いてきたというか……」
あゆみ「ありがとう。でも正確に言えば、私はどのプリキュアのチームでもないからさ」
ちゆ「それでも、何も知らずに二年も私達はのうのうと過ごしてきた訳じゃない。そう思うと申し訳なくて……」
あゆみは、湯の中の足を少し動かした。
あゆみ「ねぇ、ちゆちゃん。昭和の時代に誕生した仮面ライダー達の戦う動機って、何だったと思う?」
ちゆ「えっ? そうね……平和のため?」
あゆみ「仮面ライダー1号達も、一度は復讐に燃えて戦ったんだって」
ちゆ「一度は、って?」
あゆみ「でも、因縁のあった組織が壊滅した後も、彼らは戦い続けた。自分達の力が必要とされる限りね」
あゆみは夜空を見上げる。
あゆみ「だから私も、プリキュアの力が必要になることがなくなるその日まで、私なりに戦い続けるつもり」
ちゆ「そんな日が来るのかしら?」
あゆみ「きっと来る。少なくとも私は……ううん、私達はそれを信じて戦う。……って、何言ってるんだろうね、私。あははっ」
ちゆ「ありがとう。色々思いつめちゃった私を、気に掛けてくれてたんでしょ?」
あゆみ「うん……まぁね」
ちゆは、少しだけ黙った。
そして、別の不安を口にする。
ちゆ「真さんも、これから仮面ライダーとして、歴代ライダーのように戦いに明け暮れる日々に身を投じるのかしら」
あゆみ「それは真さん次第だと思う。私はただ、また仮面ライダーの力を必要とする日が来るかもしれないと思って準備していただけだから」
ちゆ「でも、本当に普通の生活を送ってもらいたいのなら、あの力を取り戻す必要なんてなかったんじゃない?」
あゆみ「だと思う……。でも、真さんの宿命がそれを許さないと思う」
ちゆ「宿命が許さないって?」
あゆみ「仮面ライダーになった者としての宿命がね。たとえ力を失っても、仮面ライダーになった者は、良いものも悪いものも惹きつける。もちろん、私達プリキュアもね。この二年の間で、それがよく分かった」
ちゆ「たとえ力を失っても、向こうからやってくるってことね」
あゆみ「そういうこと。でも今日、真さんと新君、それに皆やアスミちゃんに会って安心したよ。無事に上手くやってるんだなぁって」
ちゆ「えぇ。真さんも今の仕事にやりがいを感じてくれているし、すこやか市の人達にも受け入れられてる。初めて会った時のような、ピリピリした雰囲気はもう感じなくなったわ」
あゆみ「そっか……ちゆちゃん」
ちゆ「ん?」
あゆみ「今までありがとう。これからも、あの親子のこと、よろしくね」
ちゆ「えぇ。任せて」
あゆみ「うん……ふあぁっ~……」
ちゆ「眠い?」
あゆみ「あぁ、ごめん。今日、朝が早かったから」
ちゆ「横浜みなとみらいからすこやか市まで、スクーターで来てるものね。それに、来て早々戦闘もあったし」
あゆみ「うん……悪いけど、今日はもう休むね」
ちゆ「えぇ。おやすみなさい」
あゆみ「おやすみ……」
翌日。
あゆみはチェックアウトを済ませ、ちゆを含めた従業員一同に見送られながら旅館を後にしようとしていた。
その中に、真の姿はない。
あゆみは「忙しいのかな」と思いながら、スクーターに乗り込もうとする。
その時だった。
真が新を抱いて駆けてくる。
あゆみ「あれ? 新君?」
ちゆ「真さん、遅かったですね。どうかしました?」
真「すまない。新が、あゆみの見送りをしたいらしくてな」
あゆみ「えっ? 新君が?」
ちゆ「なるほど。それじゃあ新君も、あゆみお姉ちゃんのお見送りしましょうねぇ~」
新は真に抱きかかえられながら、小さな手を振る。
その仕草に、あゆみもちゆも頬を緩めた。
ちゆはお客であるあゆみの前だというのに、にやけ顔を隠しきれない。
あゆみ「そうだ!!」
あゆみはポケットから小さなアクセサリーを取り出した。
ゆるキャラのようにも見える、手作りのお守り。
あゆみはそれを新へ渡す。
真「これは……」
あゆみ「新君にお守りです。ふーちゃん……私の、永遠の友達」
あゆみは少しだけ声を柔らかくする。
あゆみ「離れていても、姿が見えなくても、感じることができなくても、ずっと友達だよって。そういう想いを込めて」
かつて、美墨なぎさは雪城ほのかの誕生日に、メップルとミップルを模した手作りのプレゼントを渡したことがあった。
歴代の仮面ライダーについて尋ねた時、あゆみはなぎさからその話も聞いていた。
だからあゆみは、自分にとって大切な存在であるふーちゃんを模したアクセサリーを作り、お守りとして持っていたのだ。
それを今、新に渡す。
真「いいのか?」
あゆみ「はい。新君に持っていてほしいんです」
新は、小さな手でそのアクセサリーを握った。
あゆみは笑顔を浮かべると、今度こそスクーターのエンジンをかける。
ちゆ、真、新に見送られながら、旅館を後にした。
真「永遠の友達、か……」
ちゆ「真さん?」
真は、新を抱き直し、空を見上げた。
真「なぁ、ちゆ。のどかの言葉を借りれば、俺と新は今、この世界で……」
少しだけ笑う。
真「生きてるって感じ……なんだろうな」
ちゆは静かに頷いた。
ちゆ「えぇ。きっと、そうです」
こうして、風祭真の、いや、仮面ライダーシンの戦いは終わりを迎えた。
だが、これは仮面ライダーガイアの物語のための序章に過ぎないのかもしれない。
仮面ライダーガイア。
風祭真は、元改造人間である。
彼を改造した財団は、世界の裏で暗躍する死の商人である。
そして真は、地球の命を守るため、ビョウゲンズと戦う力を得た。
シンの力。
ガイアメモリ。
キュアアースの風。
三つが重なった新たな戦士。
その名は――。
仮面ライダーガイア。