インフィニット・ストラトス 蒼炎の炎   作:クロスボーンズ

10 / 32
第9話 蒼炎の狩人と黒き兎

 

シャルルが女性だと分かった後も、俺と一夏の三人部屋は続いた。隠し通していた為に絵面こそかなり危ないが、周りに知られてないが故に、これまでと変わらない生活を送る事には、然程の苦痛はなかった。

 

この出来事の後から、ユーゴ自身も彼なりにではあるが、多少丸くなっていた。

 

ある日の放課後。誰もいないアリーナを使い、特訓をしにある人物が現れた。鈴だ。

 

「あら?早いのね」

 

「てっきり、私が一番乗りだと思っていましたのに」

 

そこにセシリアもやってきた。両者共にISスーツを着込んでおり、今度のトーナメントの優勝を目指し、特訓に来ているらしい。

 

「アタシはこれから学園別トーナメント優勝に向けて特訓するんだけど?」

 

「私も全く同じですわ」

 

二人が静かに睨み合う。磁石の様に、似た者同士は反発し合うと言う事だろうか?

 

「この際、どっちが上かハッキリさせておくのも良いわね」

 

「よろしくってよ?どちらがより強く、優雅であるか、この場で決着を着けて差し上げますわ」

 

「勿論、アタシが上なのは分かりきってる事だけど」

 

「ふふっ、弱い犬程よく吠えると言うけど、本当ですわね」

 

「どういう意味よ?」

 

「自分が上だって、態々大きく見せようとしている所なんか、典型的ですわよ」

 

「言ってくれたわね!その言葉、そっくりそのまま返してあげる!」

 

売り言葉と買い言葉の応報は、その言葉を皮切りに、激突へと変わった。両者共にISを展開し、ぶつかり合う瞬間、何者かの砲撃によって妨害された。

 

「っ!?」

 

「なんですの!?」

 

妨害した張本人は、ラウラだ。彼女もISを装着しており、二人を見下ろしている。

 

「ドイツ第三世代、シュヴァルツェア・レーゲン!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「どういうつもり!?いきなりぶっ放すなんて、良い度胸してるじゃない!」

 

「中国の甲龍にイギリスのブルー・ティアーズか。ふっ、データで見た時の方が、まだ強そうだったな」

 

ラウラが挑発する。これに黙っているセシリアや鈴ではない。

 

「何?やるの?態々ドイツくんだりからやって来てボコられたいなんて、大したマゾっぷりね。それとも、ジャガイモ農場じゃそういうのが流行ってるの?」

 

「あらあら鈴さん。こちらの方はどうも共通言語をお持ちで無い様ですから、あまり苛めるのは可哀想ですわよ?」

 

二人も、ラウラの挑発に挑発で返す。

 

「貴様達のような者が私と同じ、第三世代の専用機持ちとはな。数くらいしか能の無い国と、古いだけが取り柄の国は余程人材不足と見える」

 

二人の挑発をものともせず、更に煽るラウラ。最終安全装置が解除される。

 

「この人!スクラップがお望みみたいよ!!!」

 

「そのようですわね・・・!」

 

完全に手がつけられない。こうなってしまってはどちらかが根を上げるまでぶつかり合うしかない。

 

「ふん!二人掛かりで来たらどうだ?下らん種馬を取り合うような雌ごときにこの私が負けるものか」

 

この言葉で二人は完全にキレた。

 

「今何て言った!?アタシの耳には、どうぞ好きなだけ殴って下さいって聞こえたけど!?」

 

「この場に居ない人間の侮辱までするなんて、その軽口、二度と叩けぬ様にして差し上げますわ!」

 

「御託はいい。さっさと来い」

 

そう言いながら、手を自身の方に向けて挑発のポーズをとる。

 

「「上等!!!」」

 

ラウラの一言を皮切りに、二人が彼女に殺到した。

 

(そうだ。私はこんな奴らに、負けるわけにはいかないんだ!)

 

舞台は変わって、IS学園の廊下。現在ここでは一夏とシャルル。そしてユーゴの三人がいた。

 

「一夏にユーゴ、今日も特訓するよね?」

 

三人でたわいない会話をしながら廊下を歩いて行く。三人の行き先は勿論アリーナだ。

 

「おう。トーナメントまで日が無いからな」

 

「どうせやる事は限られてるんだ。如月さんから、新武装がそろそろ届くって連絡が来た。ならば今、自分が得た技を一度確認してみるか」

 

「へぇ。武装を造ってるんだ、あの人」

 

「あぁ。如月さんはかなり凄い人だ。新しい武装も、こちらの要望通りで、遠距離型兵装らしいし」

 

「じゃあさ。一夏と一緒に射撃の訓練をやってみない?」

 

「あぁ。よろしく頼む」

 

するとふと三人はある事に気がついた。今日は妙に、女子達の数が多い。後ろから抜き去って行く者が多くいるのだ。

 

「第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦やってるって!」

 

その言葉と共に、数人の女子がアリーナに向かって走って行った。無論、ユーゴ達もその言葉は聞こえている。

 

「えっ?」

 

一夏達三人も、第三アリーナへ急行した。既にアリーナにはそれなりの人が来ており、立ち見となっていた。後から来た箒も合流した。

 

「ん?箒じゃないか」

 

「きゃあああ!!?」

 

物凄い爆発音と共に、知っている二人の悲鳴が聞こえた。

 

「凰さんとオルコットさんだ!」

 

「相手は、ラウラ・ボーデヴィッヒか!」

 

どうやら、鈴、オルコット対ラウラで模擬戦をしていた様だ。だが、二人が膝をついているのにに対し、ラウラは余裕で立っている。

 

「何してるんだ、あいつら?」

 

「くらえぇっ!!」

 

「無駄だ!この停止結界の前では!」

 

鈴が龍咆を全力で発射する。しかし、発射されたは龍咆ラウラに届く事なく、ラウラの手前で爆発した。

 

「なっ!?龍咆を止めた!?どうなってんだ!?」

 

「AICだ」

 

一夏の驚愕の声に対し、シャルルが答えた。

 

「そうか、あれを装備していたから龍咆を避けようともしなかったのか!」

 

AICという言葉に箒が納得する。ユーゴも黙って頷いている。

 

「AIC?何だよそれ?」

 

「シュヴァルツェア・レーゲンの第三世代型兵装の名称、アクティブ・イナーシャル・キャンセラー。略してAIC。慣性停止能力とも言う。一言で纏めれば、物体の慣性の動きを停止させる事ができる」

 

ユーゴがあっさりとした解説を行うが、そこで語られた内容は一夏の想像を越すものであった。

 

「・・・なぁ一夏よ。わかっているのか?」

 

「まったく。でも、今見たので十分だ」

 

戦いは尚も続く。今度がラウラから攻撃を繰り出した。彼女のISからワイヤーの様な者が伸び、鈴を捕らえる。そのままセシリアの攻撃を難なく回避しながら、鈴を振り回してセシリアめがけて放り投げた。

 

「きゃああぁっ!」

 

二人が墜落し、それを更に追撃を仕掛けようとするラウラ。しかし、ブルーティアズから放たれたミサイルが爆発。二人はなんとかそこを離れることが出来た。

 

「やりましたの!?」

 

煙が徐々に晴れて行く。そこにはラウラが何事もなかったかの様に佇んでいた。再び彼女のISからワイヤーが伸び、今度は鈴とセシリアの首に直接絡み付く。

 

「おいおい!やりすぎだろあれ!!」

 

「酷い。あれじゃシールドエネルギーが持たないよ!」

 

「もしダメージが蓄積し、ISが強制解除されたら二人の命に関わるぞ!」

 

【ガンッ!】

 

何か鈍い音がするのでその方向を見る。二人のISからは既に危険だと警告は発せられるが、ラウラは止めるどころかさらに痛ぶり続ける。

 

「止めろラウラ!止めろ!!」

 

一夏が観客席のバリアを叩きながら叫ぶ。しかしラウラはそんな一夏を嘲る様な笑みを浮かべた。

 

「あいつ・・・!」

 

その顔を見た一夏が数歩下がり、ISを展開した。そのまま、観客席のバリアを粉砕し競技場に内乱入し、ラウラへと突撃した。

 

「その手を離せぇぇ!!」

 

一夏がラウラに斬り掛かる。だが猪突猛進なその一撃は、ラウラに届く事なく、AICによって封じられた。

 

(これがAICかよ!身体が、動かねぇ・・・)

 

「感情的で直線的、絵に描いたような愚図だな」

 

だが、この隙に鈴とセシリアの拘束は解かれた様だ。

 

「やはりこの私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では、有象無象の固まりに過ぎん。消え失せろ」

 

「一夏!」

 

シャルルとユーゴもISを展開して、一夏の援護に入った。攻撃が放たれる直前にラウラへと攻撃し、それを回避する為ラウラが動いた事で、攻撃が逸れる事となった。

 

「雑魚共が!!」

 

「二人とも!こっちだ!」

 

一夏とシャルルの二人がセシリアと鈴の救出を、そしてユーゴはというと、ラウラと戦闘をしていた。大口径レールカノンを、ビームシールドとマントの二段構えで受け止める。

 

だがシールドを張っていた左腕に、ワイヤーロープが絡まり捕縛された。

 

「ふん。相変わらずデータになく見た事もないタイプのISだが、どうせ何処か小さな町の小さな町工場が、見様見真似で作ったもどきだろう」

 

「・・・遺言はそれで終わりか?」

 

「何!?」

 

次の瞬間には、捕縛されたワイヤーで一気に距離を詰めてきた。ラウラは避けようにも、ワイヤーで繋がれている為その動作は妨害された。目の前に来たジョーカーがナイフを突き刺してくる。シールドに防がれたものの、刺す際の衝撃がラウラを襲う。

 

「くっ!貴様っ!」

 

ラウラが腕からプラズマ手刀を出した。こちらもファストナイフにエネルギーを纏わせ、迎撃する。

 

【maximum】

 

エネルギー同士がぶつかり合う。違いに全力のぶつかり合い。やがてエネルギー残量の差か、ファストナイフが右腕のプラズマ手刀を力ずくでへし折った。

 

そのままナイフを突き刺そうとするも、咄嗟にラウラが後ろに下がった為、ナイフは地面に深く突き刺さった。それを直ぐに引き抜き、再び襲いかかる。

 

「おっ!おいユーゴ!もうその辺で」

 

「一夏!あの二人、このままだと不味いよ!!」

 

セシリアと鈴との一戦は模擬戦という名の一方的な暴力とするなら、今の二人の一戦は模擬戦のレベルを超え、本物の戦いへと昇華していた。

 

二人の目は完全に互いを殺し合おうとしている者の目へと変化していた。ここで引いたほうが負ける。生き残るには勝つしかない。人間の持つ闘争本能の様なぶつかり合いが、繰り広げられている。

 

それを見ていた箒の表情は、とても複雑であった。

 

(私にも、専用機があれば・・・私は!見ているだけしか出来ないのか!?)

 

ユーゴとラウラが再び急接近する。互いに武器を手に持ち、斬り合おうとした。

 

「これで!!」

 

「トドメだ!!」

 

【カキンッ!】

 

【カキンッ!】

 

二人の間に割って入った者。それはIS用ブレードを握った織斑先生だった。ユーゴとラウラの一撃を、両手に持った剣一本でそれぞれ受け止めている。

 

「なっ!教官!?」

 

「・・・織斑先生」

 

「やれやれ。これだからガキの相手は疲れる」

 

「千冬姉?」

 

「模擬戦をするのは構わん。だがアリーナのバリアまで壊されては、教師として黙認しかねん。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」

 

とりあえず、この場を何とか収める事が出来そうな事に一夏達が安堵する。だが、ユーゴとラウラだけは、不服の意を示す視線を送っていた。

 

「何故です教官!?あのまま続けていれば、私には勝機がありました!」

 

「そもそもバリアの破壊は外野が原因だ。さっきまでの俺達の戦いとの直接的な関係は・・・」

 

「中止と言った筈だ!!」

 

千冬先生の言動が荒々しげになる。語気を強めた有無を言わさぬその言葉に、二人も遂に折れた。

 

「・・・教官がそう仰るなら・・・」

 

「ッ了解!」

 

ラウラは、口では認めつつも内心は大荒れしているのだろう。それはユーゴも同じであった。苛立たしげにユーゴとラウラがISを解除する。

 

「織斑もデュノアもそれで良いな?」

 

「あ、あぁ」

 

「教師にははいと答えろ。馬鹿者」

 

「はっ、はい!」

 

「僕も、それで構いません」

 

「では今後!学年別トーナメントまでの私闘の一切を禁止する!解散!」

 

こうしてこの戦闘は収束したのだった。

 

戦闘が終わり、アリーナから立ち去ろうとするユーゴを、千冬先生が呼び止めた。

 

「いかん、忘れるところだった。白銀。お前宛に荷物が届いている。差出人は如月慎吾からだ。後で受け取りに来い」

 

「わかりました」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。