インフィニット・ストラトス 蒼炎の炎   作:クロスボーンズ

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第10話 炎と油(最悪)の組み合わせ

 

保健室。セシリアと鈴の二人がベットで横になっている。その身体の至る箇所包帯が巻かれており、先程の戦いの痕を痛々しい程示していた。

 

「全く!別に助けなんていらなかったのに!」

 

「あのまま続けていれば、私達は勝ってましたのに」

 

うん。この様な事が言える辺り、どうやら本気の重症ではないらしい。

 

「またまた。二人とも無理しちゃって。好きな人の前でカッコ悪い所見せて、恥ずかしいんだよね?はい、お茶」

 

「ななな!なにを言ってるのか!?全然分かんない!」

 

「別に私、無理なんかしてませんわ!」

 

シャルルの言葉に二人が明らかに取り乱している。お茶を持っても、目に見えて震える程に動揺している。

 

「そもそも、何でラウラとバトルする事になったんだ?」

 

一夏の言葉に、二人が飲んでいたお茶がむせたのか、咳き込み始めた。

 

「あぁ!もしかして一夏の事が・・・」

 

「わー!わー!ちょっと少し黙ってなさい!」

 

「一言余計ですわよ!!」

 

慌てて二人がシャルルの口を手で塞ぐ。この様な場面に限り一致団結出来ている辺り、その思いは二人共本物なのだろう。そんな会話をしていた最中、突然医務室の棚の薬剤瓶がカタカタと揺れ始める。地震にしては妙な感じだ。

 

「何だ?これ・・・」

 

すると突然保健室の扉が破壊され、女子達が流れ込んできた。

 

「ねぇ一夏君!これ!」

 

「デュノア君も!はい!これ!」

 

女子達が一斉にある紙を一夏達に突きつけてきた。

 

「何々。今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行う為、二人組での参加を必須とする。二人組が出来なかった場合は、抽選により選ばれた者と組む事とする。締め切りは」

 

二人組でなければいけない。成る程。彼女達の意図が読めた。

 

「とにかく!私と組んで、織斑君!」

 

「私と組もう!デュノア君!」

 

「えっ、ええっと・・・そういえば、ユーゴはどうしたんだ?」

 

「実は私達、さっき白銀君にも声をかけたんだけど、彼、その時丁度ISのメンテとかをしててね。一気に押しかけたもんだから・・・」

 

「私達、彼の工具箱を蹴飛ばしちゃって、中身をぶちまけちゃってね。その事で怒らせちゃって、部屋から逃げてきたんだ」

 

「うんうん。あの時のゆーゆー、頭の頂点にスパナが落ちてきて、とても痛がってたね」

 

彼女達の行動を説明しているのが、鷹月静寐と谷本癒子。そしてユーゴの事をゆーゆーと呼ぶのは、1年1組の布仏本音。通称のほほんさんだ。

 

まぁ、この大人数で向かってくれば、それは工具箱の一つくらいひっくり返ってもおかしくないだろう。そう思い4人が苦笑いをした。

 

「というわけで織斑君!これにサインを!!」

 

「皆!悪い!俺、シャルルと組む事になってるんだ!」

 

「何だ。そう言うことか。ならしょうがないね」

 

「男同士って言うのも絵になるし」

 

「ここは素直に引き下がりましょう」

 

素直に引き下がった。だが、これに納得していない人が二名いた。

 

「ちょっと一夏!アタシと組みなさいよ。幼なじみでしょうが!」

 

「一夏さん、クラスメイトとして、ここは私と・・・」

 

「駄目ですよ」

 

いつから居たのか、医務室に山田先生が入ってきていた。そして二人は一夏とペアを組まないと言い始めた。無論、理由もある。

 

「二人のISは、損傷などのダメージレベルがCを超えています。よって安全面を考慮して、トーナメント参加は教師として許可出来ません」

 

「そんな!?アタシ十分に戦えます!」

 

「私も納得出来ませんわ!」

 

「駄目と言ったら駄目です!当分は修復に専念しないと、後で重大な欠陥が生じますよ!?」

 

「なんて事!このまま一夏が・・・」

 

「そうですわ!一夏さんが!一夏さんが・・・」

 

(待てよ?一夏と付き合えるのは、優勝した生徒になる)

 

(そして一夏さんは、同じ男子同士のシャルロットさんとペアを組まれました)

 

((ならばここは・・・))

 

二人が目くばせをする。お互いに同じ結論に辿り着いた者の眼をしていた。その視線は一夏へと向けられた。

 

「良い?あんた達!絶対優勝するのよ!今のあんたならユーゴだっ倒せるわ!」

 

「お二人とも、私達の分まで頑張って下さいな!心から応援致しますわ!」

 

「おっ、おう。任せとけ」

 

「はははっ。僕も、精一杯頑張るよ」

 

「ふふっ。美しい友情ですね」

 

この思惑の裏を、山田先生は気づいていない。

 

 

 

 

 

その頃、箒は屋上へと来ていた。先程の女子達に混じり、一夏とペアを組もうとしたが、組めなかったのだ。

 

(全く。何故一夏が景品の様な扱いとなっているのだ。そもそも、優勝したら付き合える件も、元は私が優勝した時の話だったはずだ!)

 

(・・・いや、問題ない。私が優勝すればいいだけの話だ)

 

一夏の顔とシャルルの顔が思い浮かぶ。だがそのすぐ後にユーゴの顔とラウラの顔が浮かび上がってきた。

 

(・・・ユーゴとラウラ。あの時の二人の戦い方。昔の私と似ていた・・・嫌な思い出だ)

 

篠ノ乃箒。彼女は剣道を嗜んでいる。昔は一夏も箒と一緒に、箒の実家の篠ノ之神社で一緒に剣道を習っていた。だがそれは昔の話であった。

 

彼女の姉、篠ノ乃束。彼女がISを発表した事が、全ての原因となった。各国は直ぐにISの持つその脅威的な性能から、軍事利用できないかと模索。箒達は重要人物保護プログラムの名の下に、実質家族と引き裂かれた様なもので有る。

 

(気がつけば両親とは離れ離れ。姉さんは行方知らず。そして私は、必要なまでの監視と聴取を幾度となく受け、心身共に参っていた)

 

(・・・それでも、剣道だけは辞めなかった。それが唯一の一夏との繋がりだと思えたから。元々剣道を習っていた事もあって、気がつけば全国大会に出場出来る程の腕前となっていた)

 

(だが、あの大会での私はとても醜かった。あの時の私は、鬱憤を晴らすかの如く、只相手を叩きのめす為の憂さ晴らしの剣道をしたのだ。あんなものはただの暴力で、強さとは言わない・・・)

 

先程の模擬戦のユーゴとラウラの眼。互いに相手を本気で潰し合おうとしていた者達の眼だ。昔の自分も、相手に対してあんな眼をしていたのだろうか・・・

 

(・・・いや!今回はあの時とは違うんだ!私は変わったんだ。必ず優勝して見せる。今度こそ勝ってみせる!己自身に!)

 

 

 

 

 

 

 

さて、場面は変わりISの整備室。ユーゴは先程女子達が走ってきた際の振動でひっくり返った工具箱の中身を集めていた。

 

「ったく。何なんだあいつらは。まだ頭ジンジン痛むし」

 

そして如月さんから届けられた箱の包装を引っ剥がし、遂に箱の中身とご対面した。

 

「これが如月さんの開発した、新たな武装か・・・」

 

それは遠距離型兵装であった。これまでナイフのエネルギー弾で賄ってきた撃ち合い戦。これで確実は戦力の増強が見込めた。

 

ただ一つ、問題があるとすればその武装そのものだ。その武装は。セシリアやシャルルのISの様の持つ様な銃に近いが違う。最も、鈴やラウラのISの持つ砲台でもない。

 

美しいフォルムの半月型。ピンと張られた弦。

 

ジョーカーの遠距離武装として、何故か銃などではなく弓矢が届けられたのだ。矢はISなどのエネルギーを固形化する仕様らしい。

 

(これはファストナイフの様に携帯するのは無理そうだな。量子化させる事で記憶領域に入れ、取り出す形にしよう)

 

その後、機体とのパッケージ登録や技の技法など、一通りの作業も終わりユーゴはISを勾玉状の待機形態に戻して、ペンダントとして首にかける。

 

部屋を後にしようと、扉に足を進めた。すると扉が開かれた。目の前にはラウラがおり、彼女の背後には一人の女性も立っていた。ラウラと違い、眼帯などは付けていない。

 

「あっ、こんにちは」

 

「こんにちは」

 

「・・・・・・」

 

背後の人の挨拶にユーゴも返答する。しかしラウラは何もいう事なく、ユーゴもラウラに何もいう事なく、お互いに素通りした。背後に立っていた人もそそくさと後に続いていった。入れ替わりで部屋に来たラウラは、自身のISを展開させた。

 

「では、始めますね」

 

「早く終わらせてくれ」

 

以前ドイツ軍総司令部からの通信で、ラウラのISにチューンアップなどの改良を施す事が決まっていた。その担当者が遂にやって来たのだ。とは言え、改良する箇所自体が少なかった為、ユーゴが行っていた作業よりもより速く終わったが。

 

「はい。これで、シュヴァルツェア・レーゲンのチューンアップは完了です。エネルギー効率から武器の火力の増強まで、出来る事は全てやりました」

 

「成る程。後は私の腕次第という事か」

 

「えぇ。期待していますよ。今度の学年別トーナメントは、貴女の力を見せつける良い機会です。それだけじゃなく、母国のドイツの技術力などを見せつける場にもなる。是非、その力を存分に奮って下さい」

 

「分かっている。私は負けられない。そんな事くらい」

 

「・・・所でさっき、入り口ですれ違った彼ですけど」

 

「白銀ユーゴの事か。なにも言うな。今のところあいつは、織斑一夏以上に目障りな存在だからだ。放っておけ」

 

「へぇ。白銀ユーゴ君ですか・・・では、行うべき作業も終えたので、私はドイツに戻ります。IS配備特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ(黒ウサギ隊)」ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長。ご武運を!」

 

それだけ言うと彼女はIS学園を去り、モノレールに搭乗した。既に夕焼けが空を橙に染めている。そんな中、彼女はPCを弄っていた。

 

(・・・ふう。ほんと、演技って疲れるわね。ポチッとね)

 

ドイツ軍メインコンピューターに潜入完了・・・ドイツ軍所属。マリーネ・シルファスに関する全てのデータの完全削除を確認。これでもう自分とドイツ軍を繋ぐ線は完全に消えた。

 

そしてPCに入れていたフロッピーディスクを取り出して仕舞うと、満足げな笑みを浮かべつつ、夕焼け空を見上げた。

 

(さてと。ラウラ・ボーデヴィッヒ。いや、遺伝子強化試験体、C-0037。失敗作のモルモットらしく見せてもらうわ。VTシステムの力を・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ、遂に大会日当日となった。その日の生徒達の賑わいは、お祭り宛らであった

 

あの後、女子達の話し合いによって、ユーゴに関しては取り合いになると今後のクラス活動時に、遺恨が残る危険がある為、公平に当日のトーナメント時の抽選で決める事となった。

 

「へぇ。しかし凄いなこりゃ。各国からいろんな人が来てるんだよな?」

 

「うん。そうだよ。三年にはスカウトが、二年には一年間の成長などの確認の為に、それぞれ人が来ているからね。同然だよ」

 

「御国の偉い人は暇なのかな?ご苦労な事だな」

 

三人ともISスーツへと着替える。後は対戦カードの組み合わせが決まるのを待つだけだ。一夏とユーゴの二人がモニターを見続けている。

 

「二人は、ボーデヴィッヒさんとの対戦だけが気になるみたいだね」

 

「まぁな。あの時の戦いのケリはまだついてない。こちとら新武装もようやく慣れてきた頃だ。今度は引き分けになんてさせない・・・」

 

「なにを言ってるんだユーゴ?俺が闘って、勝利するぜ」

 

一夏にもユーゴにも、引けない理由があるのだ。

 

「全くもう。でも二人とも、どっちが闘うにしても、感情的にならないでね。ボーデヴィッヒさんは間違いなく、一年の中では最強クラスのレベルにいるから」

 

「あぁ。分かってる」

 

「俺も、あいつにだけは負けたくない」

 

【ピロン】

 

画面に何かが表示された。ついに対戦カードが公表されるのだ。

 

「あっ。対戦の組み合わせが決まったみたいだね。僕達は、どれどれ・・・ええっ!?」

 

「おっ!おい!!これって!!」

 

「・・・最悪だな」

 

女子更衣室では、その男子更衣室よりも、衝撃とざわめきが激しい。そしてあのラウラですら、僅かながらに眉を吊り上がらせた程である。

 

第一回戦の対戦カードがまさかのこれである。

 

   [織斑一夏&シャルロット・デュノア]

          VS

   [白銀ユーゴ&ラウラ・ボーデヴィッヒ]

 

この組み合わせである。ユーゴは抽選とはいえ、よりにもよって、倒したい相手であるラウラとのペアである。この組み合わせを考えた人間を恨むだろう。

 

「ユーゴ・・・」

 

「・・・互いに、いい試合にしよう」

 

それだけ言うとユーゴは黙ってその場を離れていった。

 

「マジかよ・・・一回戦から、一年の最強クラスの二人を相手にするのかよ」

 

「間違いなくこの一回戦。とても厳しいものになるよ。気を引き締めていこうね、一夏!」

 

「おう!頑張ろうぜシャルル!!」

 

固く手を取り握手し合った後、シャルルが慌ててその手を離し、赤面した。同じ頃、ラウラは既に会場の入り口へと来ており、そこにユーゴが辿り着いた。

 

「よりによって貴様と組むとはな。精々、私の邪魔だけはするなよ。一人で戦う方が効率的だ。もし私の足を引っ張る様な真似をすれば、貴様から潰す事を考えているぞ」

 

「でかいだけのデブリがフィールド上でうろちょろしようが、俺の戦いには何の関係もない話だ。せいぜい、つまらん事に気を取られない様にするんだな」

 

皮肉を言い終わったのちに、互いに睨み合った。一夏達とのペアとの相性は雲泥の差である。

 

果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか・・・

 

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