インフィニット・ストラトス 蒼炎の炎   作:クロスボーンズ

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第13話 アステカの祭壇と越界の瞳

 

「お久しぶりですねぇ。今は白銀ユーゴと名乗っていましたか。先程のシステムを使ったIS強化とナイフの連撃。とても見事なものでしたよ」

 

「あんなIS。見た事ないよ!」

 

「ユーゴ。あいつと知り合いなのか?」

 

だがユーゴは一夏達の質問に答えない。先程の一夏以上に怒りを剥き出しにしていた。

 

「・・・許さない!お前は!お前達だけは!!」

 

「冷たいのですねぇ。久しぶりの再会ではなく、遂最近、顔を合わせたからですかねぇ。あのISの整備室で、私に気づかないとは。最も、あの時は素顔を偽っていたので、仕方ないですがね」

 

「あの時、ラウラの背後に立ってた奴か!」

 

「それと残念ですが、私達ネクロノミコンは、誰かに赦しを乞う様な軟弱な組織ではありません」

 

「教師部隊!侵入者を拿捕せよ!」

 

メインルームの織斑先生が、教師部隊に敵の捕縛を要請した。教師達がジリジリと距離を詰めてゆく。数で負けているのに、クイーンと呼ばれた存在は余裕であった。

 

「おやおや。第二世代のリヴァイヴ如きで、このFS-Eタイプのコアを持つIS。ソード・ヴォルフとこの私に挑むとは。その愚かさを教えてあげましょう!」

 

すると彼女のISから鋭利なワイヤーが飛び出し、周囲にいた教師部隊を意図も容易く蹴散らした。遂にワイヤーがISのボディを4機とも貫き、地面へ何度も叩きつける。

 

シールドエネルギーが一気に無くなり、教師部隊のISが強制解除される。

 

そのワイヤー捌きは、まるで尾の様に自分の身体の一部として扱っていた。そのままワイヤーを一気に遠くに伸ばし、壊れかけのシュヴァルツェア・レーゲンから何かを引き摺り出す。

 

「あれは、VTシステムの本体!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。彼女はどうやら、私達の理想の期待値を出すには不適合な存在でした。所詮は失敗作・・・ですが今回の一件で、今後の研究に実に良いデータが取れたのもまた事実。その点に関しては貴方達の実力に、素直に敬意を表させて貰います」

 

「さて、今日は君への顔見せとVTシステムのデータ取得が目的です。それが果たされた以上、もうこんなところに要はありません。それでは皆さん。またのご機会にお会いしましょう」

 

「待て!テメェには聞き手で事が!!」

 

しかし敵のISはアリーナの遮断シールドを再び壊し、去っていった。もうISのレーダーにも映っていない。

 

「くそっ!くっそぉぉぉッ!!!

 

ユーゴが悔しそうに地面に拳をぶつける。やり場のない憤りである。

 

「ユーゴ。ネクロノミコンって、確か」

 

「以前お前が言ってた復讐の対象って奴か」

 

「・・・・・・」

 

今のユーゴは何も答えようとしなかった。痛む手を抑えながら、その顔を一夏に見せない様に。やがて救護班がやってきて、ラウラと負傷した教師部隊を乗せて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室。

 

「ん・・・んんっ」

 

「目が覚めたか」

 

ラウラが気づいた。目の前には知らない天井が映し出されている。隣を見ると織斑先生がいた。

 

「教官・・・私は、どうなったのです?」

 

「本来なら機密事項であり、重要案件なのだが、当事者たるお前には教えておこう。VTシステムは知っているな」

 

「ヴァルキュリー・トレースー・システムの事ですね」

 

「その通りだ。アラスカ条約で使用は愚か、開発と研究すら禁止されている、禁断のシステム。それがお前のISに搭載されていた」

 

「私のISに、そのシステムが」

 

「・・・以前ドイツから派遣された、マリーネ・シルファスという人物を、知っているか?・・・ついさっきドイツ軍に問い合わせてみたが、そんな人間は知らないの一点張りだった。だが、お前は覚えているな?そいつの事を」

 

「・・・えぇ。覚えてます」

 

「そうか。ではこの話はここまでだ。そしてそのVTシステムの発動条件はお前の精神ダメージ。蓄積ダメージ。そして操縦者の意思。いや、願望と言うべきか。それがが渾然一体となった際に、起動したと言うべきだな」

 

「・・・私が、力を望んだからですね」

 

あの時感じたドス黒い感じ。あれに飲み込まれたのは誰のせいでもない。自分のせいだ。その事はラウラ自身が、一番理解していた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」

 

俯くラウラに何かを思ったのか、織斑千冬が、ドイツ軍所属時の教官時代の様なら雰囲気へと変化した。

 

「はっ、はいっ!」

 

「お前は誰だ?」

 

「えっ?私は・・・」

 

「誰でもないなら丁度良い。お前は今から、IS学園に通う生徒の一人、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。それと、お前と話したい奴等が来ている。せめて話だけでも聞いてやれ」

 

「そして最後に、お前は私になれないぞ」

 

そう言うと千冬先生は医務室を後にした。そして入れ替わる様に、一夏とユーゴ。そしてシャルルの三人が来ていた。

 

「お前達か」

 

「僕達もさっきまで、簡単な検査を受けてたんだ。とりあえずみんな、身体の何処も大きな負傷をしてなくて良かったよ」

 

「ラウラも。身体、何ともなかったんだってな。良かったよ」

 

「織斑一夏。貴様は本当に可笑しな奴だ。お前を憎んでいた私の心配をするとは」

 

「その憎む原因って、やっぱり、俺のせいで千冬姉の栄光に泥がついたからか?その事でなら言い訳はしない。本当に情けない弟だよな」

 

「・・・でもよラウラ。何で織斑先生がドイツで教官をしてたか、分かるか?」

 

その言葉をかけたのはユーゴであった。

 

「織斑先生は、一夏の監禁場所について情報を提供してくれたドイツ軍に感謝していた。そしてその借りを返す為に、ドイツで教官をしていたんだ」

 

「教官に、その様な事が?」

 

「もし、一夏が誘拐されなければ、織斑先生がドイツ軍に教官として行く事は無かった。そうなれば、お前と織斑先生が出会う事だって、無かった事になる」

 

「ジレンマって言うんだっけ?そう言うの?」

 

「矛盾でいいだろう。変にカッコつけないでそっちの方が分かり易い」

 

「・・・つまり、織斑一夏のおかげで、私は教官と出会ったという事か?」

 

「そこまでは言うほどの事ではない。だが、少なくても、その一件に関して、織斑一夏を恨むのはあまりに逆恨みだ。それはやめておけ」

 

「・・・織斑一夏。済まなかったな。私の身勝手な逆恨みに巻き込んでしまって」

 

「気にすんなよ。もう終わった事なんだし。てかユーゴ。その事件の事知ってるんだな」

 

「まぁな。所で一夏。それにシャルル。悪いが席を少し外してくれないか?ラウラと一対一で話したい事がある」

 

そう言われ一夏達は部屋を去って行った。夕焼けが差し込む医務室の中はユーゴとラウラだけどなった。

 

「・・・あの空間で、俺はお前の過去を見た。そこで知った。お前が強化人間だと言うことを。闘い以外に何も知らない事も」

 

「私もだ。あの時、私にもお前の過去が見えた。お前は私と同じと思っていた。だからこそ、私より上なお前が憎かった」

 

「・・・でも違っていた。お前には普通の人間としての祝福があった。だが、7年前の出来事で、お前の幸せは全て奪い取られた。初めから幸せなど無かったと思っていた私なんかよりも、その衝撃は大きかったのだろう」

 

「・・・勝手な話だが、私はお前の過去を見た時、お前の事が少しだけ分かった気がした。何故お前が強いのか。単に私には無い強化があるからでは無いと言うことに」

 

「奇遇だな。俺も同じだ。お前の事を、少しだけ理解出来た様な気がする。じゃあな。長話はするなって織斑先生から止められてるんでね」

 

「・・・待て」

 

部屋を去ろうとしたユーゴを、ラウラが呼び止めた。顔を振り替えらせると、ラウラが僅かにだが微笑んでいた。

 

「お前の右頬にあるマーカー。中々かっこいいぞ」

 

「・・・お前も、左目の金色の瞳。結構綺麗だぞ」

 

今度はナイフを投げつける事なく、それだけ言うとユーゴも微笑みを返した後、今度こそ医務室を後にした。

 

ふと、ラウラが側に置かれた机を見ると、眼帯や通信機など自分の所持品が置かれていた。すると彼女は通信機を取り、自分の部隊、シュヴァルツェ・ハーゼ(黒うさぎ隊)の副隊長と連絡を取り始めた。

 

「・・・クラリッサ、私だ。お前は確か、日本文化などの知識に富んでいたな。その知識を見込んで、相談したい事があるのだが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある場所ではクイーンと呼ばれたものが室内に来ていた。机を囲みクイーンを含めて3人が座っている。

 

「これで集まったか。さてクイーン。今回の行動の結果を教えてくれたまえ」

 

「はい。本来の目的は概ね達成されました。唯一達成できなかったものが、VTシステムの課題である、発動条件の簡易化です。ですが、起動したVTシステムからのデータを得る事には成功。よって、本来の計画は達成したと言えます」

 

「そして並行して行っていた、デュノア社に潜入し、内部からの株の操作に成功。そしてドイツ軍への潜入にも成功し、AICのデータを得る事にも成功しました」

 

「そのAICのデータが入ったフロッピーが、ここにあります」

 

机の上にフロッピーディスクが置かれる。それを部屋の外から人間が受け取り、持っていった。

 

「これでデュノア社の株主は、実質我々になった。あそこはかなり使い勝手が良い企業だから、大事に扱わねばな」

 

「そしてAICはドイツが専門であり、裏ルートで回る事はなかったが、データを入手した事で、我々の立場が優位性がより保てますね」

 

「・・・所でクイーンよ。一つ聞きたい事がある。7年前の事件の生存者がいる。それを目の前にして、実質逃げだしたそうではないか」

 

一人の男が、話を切り出した。するとクイーンの眉が僅かに吊り上がる。

 

「逃げだしたは悪い言い方ですね。私の時の任務はあくまでデータ集め。戦闘はあくまで自衛目的で、基本は避けるものですからね」

 

「つまり尻尾を巻いたと言うのか。臆病者め」

 

「言ってくれますねジャック。戦略的撤退の五文字が無い人間は、頭の中も筋肉で詰まって出来ているのでしょうかね?」

 

「やめろ。ここは作戦の成功の話を聞く場であり、つまらんケチを付け合う場ではない」

 

するとリーダーの様な人物の一言で、場が一気に静まり返った。その人物はこれまで喋る事なく、机の上にトランプを並べ、一人でモンテ・カルロをしていた。

 

(キング・・・)

 

「別に良いではないか。今回の一件で簡単な顔合わせはしたのだ。それに、戦いとは常に互いが同じ立場で行うもの。消耗した相手を一方的に殴るのでは、戦いをする醍醐味が無い」

 

「そう!相手の力の更に上を行き、その力で叩き伏せる!それこそが戦いの醍醐味!!その瞬間こそ、生きてると言う実感が湧き上がる!!!」

 

キングはそう言うと嬉しそうに、カルロで集めたトランプを辺りにぶち撒ける。その総数は53枚。本来ある筈の54枚の内、1枚が無くなっていた。

 

そしてその抜け落ちたカードは、一枚のジョーカーである。

 

「ところで、例のコアなど生産はどうなっている?」

 

「問題ありません。篠ノ乃束が創ったコアとは違い、能力的には劣りますが、僅差と言えば僅差です。今のところ順調に量産もされています」

 

「そうか・・・ならば良い」

 

その言葉は先程までとは違い、興味のない番組を見て、その感想を言うこども以上に、つまらなそうな言葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体何故です?」

 

その頃、織斑先生は電話である人と話していた。相手は日本政府である。

 

「だから言っただろう。今回のIS学園を襲撃した組織。確か、ネクロノミコンとか言ったな。奴等の正体などが分からない以上、下手な火種はごめんなのだよ」

 

「火種はごめんとか、そんな体裁を気にしている場合なのですか?これが世界的なテロ組織なら、日本だけでなく世界の脅威でもあるのですが」

 

「では聞くが?その組織は何を目的としているのかね?規模は?行動理念は?構成員は?君には分かるのかい?」

 

「それは・・・今の段階ではまだ分かりません。少なくても本日のVTシステム事件。それに絡んでいる事だけは間違いありません」

 

「ほら見たまえ。何も分からない。それが人々にとってどれ程恐ろしい事か。まだ、危険ながらもその思想などが分かりやすい極東赤軍の方がまだ可愛いものだよ。君は市民達を無闇に恐怖させ、混乱させる気かね?」

 

「別にその様なつもりは・・・」

 

「とにかく、IS学園には様々な特権がある。だが今回の一件は無闇に報道して、市民の恐怖心などを煽るべきではない。この件に関する一切の報道をするつもりは無い。後で纏めた報告書が提出される筈だ。それで確認させてもらう」

 

「・・・分かりました。では、失礼します」

 

それだけ言うと織斑先生は通信を終わらせた。

 

(騒動は嫌い、か。そこまで自分達が可愛いか。日本政府は)

 

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