インフィニット・ストラトス 蒼炎の炎   作:クロスボーンズ

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第一章 1学期編
第1話 復讐の狩人


 

夜の埠頭はギャングや裏世界の人間の取引場所にはもってこいの場所であった。今もこの場で、ある裏取引が行われようとしていた。

 

「へっへっへ。今日のブツはかなりの上物に見せることができる。うまく売り捌けば、ガッポガッポ大儲け出来そうだぜ」

 

「ボス。そろそろ取引相手の指定した時間です」

 

「あぁ。わかってる。売り捌く気なんてねぇ。金を頂いたらバラせ。この手法ならまだまだ稼げるぜ。グワッハッハ!」

 

如何にも悪人らしい考えである。やがて足音が廃倉庫に規則正しい足音が響いた。その足音は目の前の扉で止まる。

 

【コンコン】

 

「あぁ。お待ちしていましたよ。お入りなさい」

 

【コンコン】

 

「ええ。入れ」

 

【コンコン】

 

「テメェ耳ついてんのか!?とっとと入れやクソ野郎!!」

 

【コンコン】

 

しかし相手は入ってこない。一向にコンコンと扉をノックしている。ついに痺れを切らしたらしく、部下の一人が扉に近づいた。

 

「畜生が!ボスが入れって言ってるやろ!!」

 

【ドン!】

 

次の瞬間、扉が蹴破られた。前にいた部下の一人は扉の下敷きとなった。扉の向こうにいたのは取引相手ではない。黒装束を纏い、顔はフードで隠れて見えない。

 

「てっ、テメェ!何者だ!!」

 

「・・・」

 

部下の一人が銃を抜き出す寸前、部下の頭部に蹴りが入った。間違いなく骨にヒビが入っただろう。壁に強く叩きつけられた後、項垂れる様に倒れ込む。

 

一通りの部下を片付けた後、ボスの前へと立ち塞がる。

 

「なっ、なんなんだよお前!」

 

「答えろ。こいつに見覚えがあるか」

 

首を握り締め、持ち上げる。苦しそうに足をジタバタさせるも、効果などない。呻くだけの男に苛立ち、更に力を入れる。ボスが苦しそうに薄目を開け、目の前に突きつけられた紙の絵を見る。

 

十字架にドクロが架けられている。見た限り言えるのはただ一言。不気味だ。

 

「質問に答えろ!お前はこいつを知っているか!?」

 

「しっ、知らねぇ!そんな絵、俺は知らねぇ!!」

 

「本当だな?」

 

首を絞めている手に力が加わる。ミシミシと嫌な音が聞こえてくる。

 

「ほっ、本当だ!本当に俺は知らねぇ!!」

 

「・・・チッ!ハズレか」

 

苛立たしげに男を、近くの廃材置き場へと放り投げた。すると例の商品の入ったケースを弄り始めた。後退りしながら、背後の扉から逃げようとする。

 

「動くな。事と次第ではお前を持っと締め上げるつもりだ。つまらん考えは自身の身を滅ぼすぞ」

 

ボスを睨みつける。完全に目の前の存在との差を見せつけられ、ボスと呼ばれた存在は小鹿の様に震えている。

 

「・・・ここにあるのは既存パーツやガラクタなどを誤魔化してるだけのジャンク品。どれもIS関連のパーツとしては2流以下。どうやら、本当にただのハズレの様だな」

 

すると例のケースをボスの方へとぶん投げた。

 

「最後に確認する。お前、ネクロノミコンを知っているか?」

 

「ねっ、ねくろのみこん?」

 

「・・・どうやら、本当にただの裏の武器商人か。ならもう貴様に用はない」

 

そう言うとまるで何事も無かったかのように、フードの男はその脚を出口へと向けて歩き出していた。

 

「てっ、テメェ一体何者なんだよ!!何が目的で、こんな・・・」

 

その言葉に足を止め、顔だけが振り返った。一瞬だけフードの隙間から見えたその目は、激しい怒りで燃えていた。右眼下部分から頬に流れる刺青の様な傷跡の黄色のマーカーも合わさり、とにかく不気味であった。

 

「・・・復讐。それが俺の目的だ」

 

それだけ言うと男はフードをより目深に被り、倉庫を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夜が明けた。時間は朝の9時。もう学生達は学校へと行き、外を出歩く人間の大半は20から50代であった。

 

街の広場では、皆が活気付いている。昨日のテロ紛いの騒動が嘘のように。買い物袋をぶら下げる主婦。幼稚園の園児が集団で遊んでいる公園。そしてお魚咥えたどら猫を裸足で追いかける主婦。

 

しかしその全てが、この男とは無関係のように感じられた。適当な新聞雑誌を顔に載せて光を遮り、ベンチで横になって寝むり始める。

 

そんな安眠を妨げる邪魔者が襲来した。補導員だ。

 

「ちょっと君。こんな時間に何をしているんだ」

 

「・・・」

 

「ほら君、名前は?学校は?住所は?」

 

「・・・」

 

「聞いてるのか!答えなさい!」

 

「うるさい、黙れ。俺はフリーだ。学校など通っていない」

 

「なっ!きっ!きっ!きっ!」

 

「すいません補導員さん。こいつ、俺の知り合いでして、今日は学校は休ませてセラピーとして外で寝かせてるんですよ。ちょっと口が悪くて、ほんとすみませんねぇ」

 

知ってる声が聞こえた為、身体を起き上がらせる。そこには一人の男性がいた。20代後半ぐらいの男で、エプロンを着ている。

 

「君が保護者か。全く、どんな躾をしてるんだ。大人の躾がなってないよ」

 

吐き捨てる様に呪詛の言葉を言い、補導員は去っていった。

 

「如月さん。今日はここでアイスクリーム売ってるんですか?」

 

「まぁな。それよりユーゴ。結構派手に暴れたみたいだな。廃倉庫でギャング同士の抗争。ネットの掲示板の噂で流れてるぞ、昨日の埠頭での出来事」

 

「まぁ簡単に締め上げた程度ですよ。それも無駄骨でしたけど」

 

「ったくお前ってやつは。生身でそう言うのをあまり表だって行動するなって言ってるだろ?変なボロを溢したら、ネットで揉み消すのだって面倒なんだぞ」

 

「善処します。それで。そっちの様子はどうです?」

 

「中々だぜ。店の売り上げ的にも黒字だし。はい、これ差し入れ」

 

アイスクリームを目の前に差し出した。バニラと抹茶のダブル。多少溶けたそれは太陽の光を浴び、宝石の様に輝いている。しかし、今のユーゴが聞きたい事はこれではない。

 

「・・・そっちじゃない」

 

「あぁ。情報の方か。今のところ変化なし。そして反応もなし。用はこれまでと変わらない。ほぼいつも通りだ」

 

「俺の方もだ。昨日の取引現場を襲撃したが、やってたのはただのISパーツの横流し。ボスらしき人間にも聞いたが、俺たちの探している連中との関係性はない」

 

「今回のトラップも失敗か・・・奴等の資金源でも特定すりゃ近づけると思ったんだがな。とにかく、昨日は疲れたろう。ここでの売買はお終いだ。次の売り時には手伝ってもらう。だから移動中だけでも車の奥のソファーで一休みしてきな」

 

「あぁ。そうさせてもらう」

 

車で移動しながら経営するお店、その中は狭いが簡単な寝床にはなっていた。多少ボロいソファーに横になり瞼を閉じる。ガタガタと揺れる車内。ぼーっとしていたユーゴの脳裏に色々な事が浮かんできた。

 

(いつもと同じか・・・あの事件からもう7年。如月さんと必死に手掛かりを追い求めてきた。だが、成果はまるで上がらない。時間だけが過ぎてゆく・・・)

 

近くの本を手に取る。栞のように本の間に挟んでいたが、そこから一枚のトランプカードを取り出した。しわくちゃのぼろぼろ。それほど彼が大切にしてきた一枚のジョーカー。

 

(君の切り札だ。切り札は常に自分の物になる。そう思っていれば、いずれは本当にそうなる。だから君自身が切り札になるんだ)

 

あの時、扉越しに声をかけてくれた人。そして扉の隙間から、これを送ってくれた人。顔こそ見えなかったが、一体何者だったのだろうか。

 

「あの時、これをくれたのは一体・・・」

 

【キキーッ!!】

 

うつらうつらし始めた頃、突然車の揺れが治った。少ししてソファーで横になっていた身体を激しく揺さぶられた。半分寝ぼけ眼を擦ると如月さんが血相変えていた。

 

そして次の言葉で、ユーゴの脳も一気に覚醒する。

 

「おい起きろ!例の反応が引っかかった!」

 

「なんですって!場所は!?」

 

「ポイントは割り出せてる。あと数分で、このポイントを通過する。そこを抑えろ」

 

「如月さん。出ます!」

 

急いで専用のスーツを着込み、ゴーグルとマスクを装着すると、車体から飛び出した。辺りは人気の無い森の中であった。そこで広めの場所へと出て目を閉じ、勾玉のペンダントを握る。

 

「・・・来い!WILD・JOKER(ワイルド・ジョーカー)

 

するとの身体に機械が装着された。そのISは白のボディを基調としており、その腕に蒼い炎が焼きつく。

 

「出るぞ!」

 

誰もいない森からその機体は、上空へと飛び立った。ある程度上空に達したところで、如月さんに通信を送る。

 

「どうですか、反応の方は・・・」

 

「そっち側に急接近している。そろそろ例のアンノウンと出くわすはずだ。3.2.1・・・」

 

次の瞬間、何かが通り過ぎるのがユーゴには理解できた。かなりの速度だ。急旋回をかけ、一気に機体を加速させる。少し経過し、ついにアンノウンの全貌が視認できた。

 

それはISであった。しかし操縦者たる乗り手の姿は見えない。あれでもISなのだろうか。

 

謎のISは此方の追跡に気がつくと、追い払うかの様に手を向けてきた。開かれた箇所からは、ビーム砲が飛んできた。

 

咄嗟の攻撃を、ビームシールドで何とか防ぐ。だがその一瞬の隙に例のISは姿を眩ませていた。

 

「如月さん!奴の反応は!?」

 

「映像の解析はこちらでも行ってる。奴の消えた方向などから、奴の予測行動を導き出すに、あのアンノウンはIS学園に目指している」

 

「ならそこで奴を迎え撃つ!」

 

「本気か!?確かにIS学園ならゴリ押しで多少の融通は通せるかもしれん。だが、お前の秘密を外部の人間に知られるんだぞ!」

 

「覚悟の上です!これまでずっと探し求めていた手がかり。その欠片がやっと、手に入るかもしれないんです!ここで逃す訳には!」

 

「・・・ふっ。やっぱお前はそう言うと思ったぜ。地図のデータをモノクルに送り込んだ。こっちも手回しはしといてやる!」

 

目標地点へと到達した頃には、謎のISはビームを下のアリーナ部分へと目掛けて、打ち込んだ。ビームはアリーナの遮断シールドすら貫通し、謎のISは大地へと降り立った。

 

「逃がすか!」

 

追いかける形で、ユーゴもシールドの穴を通り抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少し前、IS学園ではクラス対抗戦が開かれていた。そこでは1組代表の織斑一夏と、2組代表の凰鈴音の二人が戦っていた。そこに、先程のビーム兵器が降り注いできた。

 

「なっ!何!?今の攻撃」

 

「試合中止!織斑!凰!直ぐに退避しろ!」

 

観客席の生徒達は戸惑い、そして二人は唖然としていた。突如として乱入した謎のIS。どう考えても友好的な存在ではない。

 

謎のISは、周囲の爆炎の中でもその姿を表している。表情こそ読み取れないが、完全に一夏達を睨みつけているだろう。一夏達のISにはロックオンされたと警告が出ていた。

 

「ロック。あいつに俺がロックされてるのか!?」

 

次の瞬間、ビーム砲が放たれた。咄嗟にそれを避ける。

 

「ビーム兵器持ち!しかもセシリアのISより、出力が上かよ!!」

 

そのISは尚もビームを乱射してくる。今の一夏達では避けるのに必死だ。

 

「あれがISかよ・・・お前、何者だ!何が目的だ!」

 

一夏の問いかけにそのISは何も答えない。腕を鈴の方へと向けた。

 

「危ねぇ!」

 

慌てて鈴を担ぎ、上空へと飛び立つ。すると抱えた状態でロックオンされた。

 

「ちょっと一夏!降ろしなさいよ!バカ!」

 

「殴るな!来るぞ!」

 

「・・・邪魔」

 

するとユーゴが二人の間に割り込む形でビーム砲を、先程と同じく再びビームシールドで受け止める。

 

「どけ。あいつは俺の獲物だ。引っ込んでいろ」

 

「なっ!お前、何者だ!」

 

「ちょっとあんた!一体何者!?あのISもあんたが連れてきたの!?」

 

「何とでも言え。とにかくあいつは俺が追っていた手掛かりになる。だから俺が狩る。邪魔をするな」

 

「・・・つまり、あのISと戦うってことだな。なら俺も手を貸す」

 

「はぁ!?ちょっと一夏!?」

 

「あいつを無条件で信じるつもりはない。けど、あのISと戦うのが目的なら、同じ目的を持つものとして、共闘くらいは出来るんじゃないか?」

 

「必要ない。それでもどうしてもあいつと戦うのなら、俺の邪魔だけはするな」

 

「ったく!ならあんた達!無駄話は後!あいつ、もう立ち直ってる!」

 

その時、一夏と鈴の二人に司令室から指示が出された。

 

「織斑君!凰さん!二人は直ぐにアリーナから脱出してください!直ぐに先生達が、ISで制圧に向かいます!」

 

「いえ、みんなが避難するまでの時間を稼がなくちゃ。それに、もし俺達が逃げたら、あのISは間違いなく、残った1機のISを集中的に狙います」

 

「そのISも所属不明なんですよ!敵の可能性だって!」

 

「・・・俺には、少なくてもあれと戦おうとしている人が敵とは思えないんです。だからやらせてください!お願いします!」

 

「私も。一夏が逃げない以上、私も逃げる訳にはいかないからね!」

 

「ちょっと、織斑君!?それに凰さんも!」

 

「本人達がやると言っているのだ、やらせてみたらどうだ?」

 

「織斑先生!?」

 

こうして司令室にいる織斑千早、山田真耶、イギリスの代表候補生、セシリア・オルコット。そして篠ノ乃箒の4人が見守る中で、3人は謎のISと対峙する事となった。

 

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