インフィニット・ストラトス 蒼炎の炎   作:クロスボーンズ

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第21話 第四世代型IS

 

 

朝、朝食も早々に終わらせたユーゴ達はとある岩場に集まっていた。臨海学校の2日目は各自のISのデータを取る事。

 

だが専用機持ちは国や企業に提出する為のデータを取る為、より精密なデータが求められる。故に普通の生徒達とは別の場所でデータを取ることになっている。

 

「よし、専用機持ちは全員揃ったな」

 

その場には織斑先生を含め、8人が集まっていた・・・8人?一人多くないか?

 

「ちょっと待ってください。箒は専用機を持ってないでしょ?」

 

鈴が発言する。確かに彼女は国家代表候補生でも、試作機のテストパイロットでも無い。故にこの場にいるのはおかしいのだ。

 

「そっ、それは・・・」

 

「その事について、私から説明しよう。実は・・・」

 

「ヤァッッッホォォォ!!!」

 

突然、靴を地面で擦る様な音が響いた。大の方を見ると誰かが斜面を滑って来ている。ある程度滑り終えると、うさぎの様に点高く飛び跳ねた。そして着地点は箒の立っている場所であった。

 

まるで予想していたのか、彼女はその場をすんなり離れる。すると着地した存在は織斑先生に抱きつこうとした。

 

「やぁやぁ会いたかったよちーちゃん!さぁハグハグしよう!愛を確かめ会おう!」

 

「相変わらず煩いぞ。束」

 

「おおっ!ちーちゃんも相変わらず容赦の無いアイアンクローだね!」

 

「じゃじゃーん!やぁ!」

 

「・・・どうも・・・」

 

すると彼女は岩陰に隠れていた箒の方へと寄ってきた。箒の方は彼女が苦手なのか、何処かぎこちない返事だ。

 

「久しぶりだね。箒ちゃん。こうして会うのは何年振りかな?大きくなったねぇ箒ちゃん!特におっぱいが」

 

【ゴスッ!】

 

鈍い音が響いた。箒は何処に閉まってたのか木刀を取り出すと、彼女に突きを喰らわせていた。

 

「殴りますよ?」

 

「殴ってから言ったぁ!箒ちゃんひど〜い!いっくんも酷いと思うよね!?」

 

「えっ、その・・・」

 

「おい束、自己紹介くらいしろ」

 

ここまでは埒があかないと判断したのか、遂に織斑先生がストップをかけた。

 

「えぇ。面倒臭いなぁ・・・コホン」

 

一つ先払いの後、自己紹介を始めた。

 

「私が天才の束さんだよ。ハロー!・・・終ーわりー!」

 

随分とあっさりとした自己紹介。皆呆然としていた。だが彼女達が呆然としているのはそれが理由ではない。束と言う名前だ。

 

「束って、まさか!」

 

「ISの開発者にして、天才科学者の!?」

 

「あの篠ノ之束!?」

 

彼女達は驚きを隠せていない。これまで教科書などでその名を聞く機会こそあれど、こうして実物を生で見るのは初めてだ。

 

「ふふーん。それでは大空をご覧あれ!」

 

束の指差しにつられ、皆が空を仰ぐ。すると空に何かが光り急降下して来た。着地点は一夏のいる場所。

 

「あっぶね!」

 

慌てて一夏達がその場を離れた。それと同時に地面に何かが落下し、衝撃が地面に襲いかかる。

 

そして砂埃が引いて来た頃、クリスタル状の物体から、紅色の何かが姿を表した。

 

「じゃっじゃじゃーん!!これが箒ちゃん専用機こと、紅椿だよ!!全スペックが現行ISを上回る、束さんお手製だよ~!なんたって赤椿は、第四世代のISなんだから!」

 

「「「「第四世代!?」」」」

 

口を揃えて、驚きを露わにする。

 

「各国は第三世代の量産が目標とされ、その試作機がやっと軌道に乗ったのに」

 

「もう第四世代なのかよ」

 

「ウチなんて、まだ第三世代の試作機すら作れてないのに」

 

「そこがほら、天才の束さんの実力だから」

 

得意げに話す束さん。生粋の天才とは彼女の様な事を言うのだろう。織斑先生が口を開いた。

 

「これが篠ノ之がこの場にいる答えだ。篠ノ之箒には、白銀の様に試作ISのテストパイロットを務めてもらう事になった」

 

「という訳で箒ちゃん。今からフィッティングとパーソナライズを始めようか!」

 

何やら電子パネルで小難しい事を色々とセッティングしているらしい。その間、6人はリラックスして話していた。

 

「そう言えばユーゴのISって、会社が造ったんだよな」

 

「あぁ。といってもデュノア社見たいな量産化を目的とせず、接近戦特化や遠距離戦特化など独自のISを造る、言わばオーダーメイドタイプだな」

 

「・・・ねぇ、前から気になったんだけど、ユーゴの勤めてる会社は、日本政府からコアの支給がされているの?」

 

この世界に存在するコアの数は467個。新たに造られたゴーレムや赤椿のコアはノーカンウントとする。その内の322機が実戦に配備され、コアの研究などに支給されたのが145である。

 

「悪いがそういう事については企業秘密で答えられん」

 

彼は一番無難な回答である。そうこう話している内に赤椿のセッティングが完了したらしい。

 

「さぁ箒ちゃん!試運転行ってみよう!箒ちゃんのイメージ通りに動くはずだよ!」

 

一呼吸おいた後、宙に浮いた。そして空目掛けて飛び立ったと思った次の瞬間、もう赤椿は皆の予想より遥か上空に到達していた。

 

「何これ、速い!」

 

「これが、第四世代の加速なの・・・」

 

遠くでもわかる様に、赤椿は空で紅く光っている。その光の移動速度は、正に圧巻の一言に尽きる。

 

「次は刀を使ってみようか。右が天月で左が空裂ね。武器データ送るよ」

 

彼女はまず天月を使用する。これは斬るのではなく突きの方に向いている。その際に出たレーザーが、宙に浮かぶ雲を引き裂いた。

 

「おおっ・・・」

 

その威力に箒が驚く。束の方は予想通りといった反応を示している。

 

「いいねいいね。次はこれ撃ち落としてみて」

 

量子化されていたミサイルが展開され、赤椿目掛けて突き進んできた。それに対し赤椿は空裂を使用。ビーム状の刃を形成し、ミサイル群を全て斬り落とした。

 

「たったの一振りで、あのミサイル群を撃ち落とした」

 

「すげぇ・・・」

 

皆が赤椿の動きに注目していた。これが第四世代の力なのか。

 

「やれる。この赤椿なら・・・私にも」

 

「さて。それではテストを開始する。まずは・・・」

 

「ちょーと待ってよちーちゃん!ほんの少し、束さんに付き合ってくれない?そうそう!忘れるとこだったよ!君もついて来てくれない?」

 

束の指は真っ直ぐにユーゴを指さしていた。

 

「え?俺も?」

 

「白銀も?・・・まぁいいだろう。予定のテスト開始時間にはまだ余裕があるからな。では各自、私が戻ったら直ぐに各種装備のテストを始める。それまでに自分のISを温めておけ」

 

(あれ?俺の意思は無視なの?)

 

そんな事を思いながらユーゴと織斑先生が束の後を歩いて行った。その足はやがて、人気の無い森の中で止まった。

 

「さて、ここに君を呼んだのは他でも無い。君に頼みたい事があるんだよ」

 

「何ですか?要件なら手短に」

 

「じゃあ簡潔に言うね。君にはIS学園を辞めて欲しいんだ」

 

「・・・・・・は?」

 

最初、ユーゴは言われた言葉の意味が理解できなかった。それは織斑先生も同じであっただろう。

 

「おい束。いきなり何を言い出すんだ。こいつをIS学園に入学させたのは、他ならぬお前だろ」

 

「うん。でもそれには理由があってさ。私がとある調べ事をするまでの間、彼放浪させない様に縛り付けておく必要があったんだ。で、調べ物も終わったわけ!そしたら束さん、君のことを調べてたら興味が湧いちゃったよ。だから学園を辞めて、私の所においでよ!ね!そうし・・・」

 

「おいおい。白昼堂々と人様の会社の社員をヘッドハンティングしてんじゃねぇよ」

 

不意に呆れる様な声が聞こえて来た。見ると近くに車が止まっていた。そして車体に寄りかかりながら、煙草を吸っている男がいた。

 

「お前は、如月慎吾!」

 

「おお!会社の上司が直々に現れたか!まぁ実態はペーパーカンパニーだけどね」

 

「・・・その口調に態度。こっちの事情を知ってるのか?」

 

「うん!とっても知ってるよ!君達に関するデータが不自然な程に無いってことをね!でもこれだけは知ってるよ。蒼炎の狩人。変な名前だねぇ。厨二病かな?」

 

「それだけ知ってたら上出来だな。これを機に俺達について調べるのを辞めたらどうだ?ネズミみたいに、ウロチョロ嗅ぎ回ろうとするのは。あっ、見た目はうさぎか」

 

互いに直接的な言葉で口にこそ出していないが、激しくいがみあっている。これ以上この行為を続けるのは不味いと感じ、止めに入ろうとした織斑先生。

 

「落ち着けお前ら。とりあえず話をだな・・・」

 

だが、それを掻き消す様に電子音が鳴り響いた。

 

【ビーッ!ビーッ!】

 

「ん?ちょっと待て。パソコンが呼んでる」

 

突然彼は車内に戻りパソコンをいじり始めた。そしてPCに向かう彼の目の色が変わった。

 

「裏サイトの垂れ込み情報だ・・・アメリカとイスラエルの共同開発のISが暴走!?詳細データは!?」

 

時を同じくして、その情報は織斑先生の元にもやって来た。山田先生が走って伝えに来たのだ。

 

「匿名任務レベルA。現時刻より対策をとられたし・・・白銀!お前は織斑達の所に行って、直ぐに宿に戻る様に伝えて来い!」

 

「分かりました。如月さん。車出して。ルート指示するから」

 

ユーゴが後ろの荷台に転がり込み、車は一夏の元へと向かった。

 

「既に対策本部を設置しています。織斑先生も急いで」

 

「分かった。直ぐに向かう」

 

二人が駆け足で宿に戻ろうとした。だがその時、織斑先生の肩に手を乗せた存在がいた。束だ。

 

「おい束。今はふざけてる場合じゃ・・・」

 

「ねぇちーちゃん。これは親友として警告させて。あの子をIS学園から排除しないと、本当に取り返しのつかない事になるよ。それこそ、IS学園や生徒を巻き込んで・・・」

 

織斑千冬が一瞬怯んだ。

 

彼女は束と長い付き合いだ。だから彼女の人柄についても詳しく知っている。

 

普段からふざけており、特定の人物以外にはほぼ無関心。だが、今、目の前にいる彼女はその付き合いの中で一度も見せた事のない程、真剣な顔をしていた。

 

その表情の何処かに、何かに怯える様な影が見え隠れしていた。それだけ言うと彼女は、うさぎの様に飛び跳ねながらその場を後にした。

 

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