ある島に招かれた一同。ここでは織斑一夏と篠ノ之箒が回収されており、現在治療室にいるらしい。
この島は一見、そこら辺にある普通の島であった。だがその地下には、日本政府が管理する武器工場が隠されており、専用機持ちと織斑先生と山田先生はそこに招かれたと言うわけだ。
しかし、織斑先生達招かれた者は治療室ではなく、現在ある場所へと集められていた。呼び出しは相手はこちらに気づくと、嘲笑の様な笑みを浮かべた。
「よく来たな。事態が事態な為に、歓迎の用意は出来てないが」
「早速ですがこの非常事態に、我々をこの場に呼んだ理由をお聞かせください。山鳩総理」
ユーゴ達の目の前にいる存在。それは以前IS学園を訪れた山鳩秀吉。今の日本の内閣総理大臣だ。ユーゴの手は自身の腰へと回しており、いつでも襲い掛かれる様にしている。
「私も忙しい身だ。なので手短に話をしよう」
【パチン!】
彼の指パッチンと共に、格納庫の奥方の暗がりが明るく照らされた。そこには一つのISが佇んでいた。
「これは、先程のIS!」
「紹介しよう。プロメテウスだ。日本が極秘に開発した第三世代の試作型IS。その強さは君達も見ただろう?特に右腕は様々なアタッチメントに変化可能だ。先程のキャノン砲は10%以下だが、それで福音を半壊させる事が出来た」
「すごい。あれで10%以下なんて。全力出したらどれぐらいなんだろう・・・」
「日本のISは日々進歩しているのだよ。何せIS発祥の地といっても過言ではないからな。
「・・・まさかこの非常時に、ISの自慢をしに我々を呼んだわけでは無いのですよね?」
織斑先生と山田先生の機嫌が明らかに悪くなっている。
「あぁ。本題に移ろう。最初の上層部の決定時に、福音の一件は我々も担当する事になっていてね」
「そっ!そんな話、上層部から聞いてません!」
山田先生が口を挟む。
「君達の上層部も一枚岩では無いというわけだ。兎に角、君達が失敗した以上、もう福音対策に専用機持ちの力は借りん。これからはこちらで引き受けさせてもらう。それを直接伝えさせて貰う。以上だ」
用はこの一件から手を引け。この男はそう言いたい訳だ。
「・・・とはいえ、あの撃墜された少年の容態は、今尚不安定だ。安定するまでは、この基地で待機していてもいいだろう。そして安定したら、彼を連れてとっとと帰ってくれ」
「そうそう、忘れる所だった。織斑先生。山田先生。お二人には対策会議で知恵をお借りしたい。少し、私の後についてきてください。それと白銀君。君も来た方が何かと利口だよ?」
そう言うと山鳩総理はこの場を後にした。残されたメンバーは顔を見合わせる。
「織斑先生。私達は、これから・・・」
「・・・何と言おうと、解除命令が出されてない以上、作戦は継続していると捉えるべきだ。たとえあの男が、あんな事を言っていようとな」
「ですが、我々はこれからどの様な手を・・・」
「それはまだ、何とも言えません・・・お前達。次の指示は追って出す。それまで各自、それぞれに割り当てられた部屋で待機していろ。二人とも行くぞ」
それだけ言うと三人は山鳩の後を追いかけ、何処かへと歩いていった。残されたセシリア達が、再び顔を見合わせる。
「・・・今は、教官の言う通りにするべきだな」
「でも・・・先生だって一夏の事が心配な筈だよ。お姉さんなんだよ?」
「ずっと目覚めてませんのに・・・」
「着いた時に手当ての指示を出してから、様子を見に行こうとしないなんて・・・」
この島に辿りついた時、丁度この島の救護班により、一夏が担架に乗せられて運ばれていた。その側では、箒が沈んでいた。
織斑先生が救護班に一通りの指示をした後、案内される形でその場を離れていった。そして最初に至る。
「だから、どうしろと?」
「箒さんにも声を掛けませんでしたわ・・・幾ら作戦失敗だからと言って、流石に冷たすぎるのではなくて?」
「・・・教官だって辛いはずだ。そんな中でも、やるべき事をやっているんだ。なら、我々の取るべき行動は、決まっているな」
今、自分達に何が出来るか。この場の全員が再び顔を見合わせた。やがてその意味を理解したのか、4人は強く頷いた。
丁度その頃、織斑先生と山田先生。そしてユーゴの三名はある部屋の前に辿り着いていた。
「さて白銀君。君にお客さんが来ている。この部屋の中だ」
開かれた扉の箇所から中を除きこむ。そこは電気が消えており真っ暗で、何も見えないし、何も見当たらない。
「嘘つくなよ。俺の知り合いがこんな場所に・・・!!?」
「ご・・・うご」
今にも消えそうな声で、男の声が確かに聞こえた。
「織斑先生。今、何か聞こえませんでした?」
「あぁ。確かに私にも聞こえました。でもなんと言ったか」
二人にはその言葉の主も、声も理解できなかった。だがユーゴは違う。あの声を聞き逃さなかった。
「おじさん?・・・間違いない。一馬のおじさん!!」
駆け出したユーゴが部屋の中に入る。すると彼が入った瞬間、背後の扉が閉ざされて部屋の電気がつけられた。その部屋は長方形である。中には誰もいないし、何も無い。
いや違う、たった一つだけ、その部屋にはある物が置かれていた。一枚の薄汚れた毛布。その瞬間、彼の全身の毛が逆立った。本能が危険な何かを知らせている。
「・・・!!!出せ!ここから出せよ!!おい山鳩!!!」
背後にある扉を何度も叩き、蹴飛ばした。ナイフを突き刺す事もする。だが扉は頑丈なまでに硬く、開く気配は微塵も感じ取れない。
ISを展開しようとしたが、電波などでジャミングされているのか、展開が出来ない。
「おい!!聞こえてるのか!!!おい!!!おい!!!おい!!!!」
外にいた三人にも、その怒声は聞こえてきた。だがそれも段々と声の質が変化する。そして最終的には言葉ではなく、ただ喚く様に叫んでいるだけとなった。
「白銀君!?山鳩総理!!彼に何をしたんですか!?」
山田先生が問い詰めるも、彼の方は澄ました顔をしている。
「おやこれは失礼。どうやら部屋を間違えてしまいました。ですが困りました。この扉は時間で開く様になっていて、確か、一時間経たないと開かないんですよ」
「・・・わざとらしい真似をする。随分と白銀の奴に恨みがあるのだな。そんなにあいつが目障りなら、排除でもしたらどうなんだ?」
織斑先生が軽蔑の目を向けた。しかしそれと同じ軽蔑の目を、彼は二人に向けた。そして織斑先生の質問に答えずに、彼は話し出した。
「IS学園に失望しました。あの少女には、作戦を妨害する戦闘機を破壊するチャンスがあった。例え乗り手を殺したとしても、状況的に考えれば、戦闘機の撃墜行動は正しい」
「・・・なのにそれをつまらぬ罪悪感で躊躇した。その結果が現状だ。実に、愚かだと思わないか?」
「篠ノ之箒の判断は人道的には間違ってはいません。私は彼女に人殺しをしろとの命令はしていません。もし、それでも間違いがあるとすれば、それは指示を出した私の責任です」
「その人道的な考えが、織斑一夏をあの様にしたのですがね。正しい判断一つ行えない存在が、果たして専用機を持つに相応しいのか」
「その点、AIなどの機械はその時、その瞬間に最適な行動を行う。正に理想の強さだ。人間など比べ物にならん程にな」
「・・・山鳩総理。これはIS学園の教師としてではなく、初代ブリュンヒルデとして言わせてもらいます」
その声は普段の彼女からは予想も出来ない程の怒りが込められていた。
「強すぎる力は、時に全てを狂わせる。10年前の白騎士事件、各国はISの存在を宇宙開発に特化したマルチフォーム・スーツではなく、既存の兵器全てを上回る超兵器としてしか認識しなかった」
「ISの軍事的利用が禁止されている中での平和維持名目の軍備増強は大いに結構です。ですが、それが平和維持に必要かどうか、よく考えてみてください・・・」
その眼はこれまで以上に迫力がこもっていた。流石に予想外なのか、山鳩総理も多少尻すぼみする。
「・・・忠告として受け止めておこう。では、私は福音の対策会議があるのでこれで」
「お二人には司令部への立ち入りを許可してあります。そこで実際の現場でも見ていてください。現在スタッフが福音の所在地を探しています。見つけ次第、プロメテウスを出し撃滅する」
それだけ言うと、山鳩総理はその場を後にした。残された二人は、一度部屋の扉を見た後、司令部に行く為にその場を離れた。
そして部屋の中では、ユーゴが薄汚れな毛布の中でうずくまっていた。先程扉を何度も殴りつけたせいで、拳は血塗れ。
だが、今の彼を支配しているのは痛みではない。恐怖だ。狭い密室に閉じ込められた事へ恐怖なのだ。
「・・・一時間だ。一時間で出られるんだ!なら寝れば直ぐじゃないか!寝ればあっというまだ!」
彼にも先程の会話は聞こえていた。だからこそゴールが見えているこの監禁紛いの行為も、寝る事でなんとか乗り切ろうとしていた。
(寝るんだ!寝るんだ!!あの時みたいに!!!)
彼が密室の中で寝た頃、夕焼けに染まるビーチ。現在、そこには箒がいた。普段髪を縛っている紐がなく、明らかにローテンションである。
「・・・なーに落ち込んでんのよ」
呆れた調子で、その場に鈴がやって来た。
「あ~あ。あんたって分かり易いわね。あのさぁ。理由はどうあれ、一夏がこうなったのって、結果的にはアンタのせいなんでしょう?」
「・・・・・・」
「それで、現在落ち込んでますってポーズ?・・・ふっざけんじゃ無いわよ!!」
鈴が勢いよく箒の胸ぐらを掴む。
「今はそれ以上に、やるべき事があるでしょうが!今戦わなくてどうすんのよ!?」
「・・・もう、ISは使わない」
「!!」
【パチン!】
鈴の平手打ちが、箒に命中する。特に抵抗するでもなく、箒は力無く倒れ伏した。
「甘ったれてるんじゃ無いわよ!専用機持ちっつうのわね!そんな我儘が許される様な立場じゃ無いの!」
「それともアンタは!!戦える時に戦わない臆病者な訳!?」
その言葉に、無抵抗に項垂れていた拳を強く握り、怒りで震え始めた。
「なら・・・ならどうしろと言うんだ・・・!もう敵の居場所も分からないんだぞ!!戦えるなら、私だって戦う!!!」
「・・・ふふっ、やっとやる気になったわね」
鈴の表情に笑みが戻る。それと同時に背後から足音が聞こえてきた。振り返るとそこにはセシリア、シャルロット。そしてラウラの三人がいた。ラウラはISの右腕だけを展開させている。
「ここから30km離れた沖合い上空に、目標を確認した。現在はステルスモードに入っているが、どうやら光学迷彩は持っていない様だ」
「また、先の戦闘で破壊された部位は何故か修復されているが、例の戦闘機は、この付近では確認されていない」
「さっすがドイツ軍の特殊部隊。やるわね」
「そう言うお前達はどうなんだ?準備はできているのか?」
「当然。今日のテストの為に持ってきた、甲龍の砲撃特化パッケージはインストール済みよ」
「こちらのストライク・ガンナーの用意も完了していますわ」
「僕も準備完了してるよ。いつでも行ける」
「まっ、待ってくれ。行くのか!?白銀がいないぞ。第一命令違反ではないのか!?」
「ユーゴは現在、教官と一緒に行ったきり行方不明だ。ユーゴの居場所を教官に聞くわけにもいかない。だから、我々でやるんだ」
「それにあんた、さっき戦うって言ったでしょ?」
「聞こう。お前はどうする?」
4人の問いを箒が自問自答する。いや、するまでもない。何故ならば、答えは既に出ているのだから。
「私は・・・戦う。戦って勝つ!!今度は負けない!!」
「なら決まりね。今度こそ確実に堕とす」
その場にいる5人が顔を見合わせた。考えは皆同じ。
夜も暮れ月が顔を出した頃、5機の専用機が空に浮かぶ福音を発見した。ラウラのIS、シュバルツア・レーガンがレールカノンによる遠距離からの狙撃を果敢した。
「初弾命中!!」
攻撃は福音に直撃した。そしてその砲撃を合図に、福音との戦いの第二ラウンドは開始された。