箒達が戦闘をしている事。それは島の司令部にも届いていた。山鳩が慌てて司令部に駆け込んできた。
「福音が発見されただと!?」
「えぇ。現在、動ける専用機持ちが対処に当たっています」
「ふざけるな!命令違反だぞ!直ぐに戻させろ!プロメテウスを向かわせれば済む話だ!」
「いいえ、このまま戦闘を続けさせます」
「言ったはずだ!これは我々が対処するべき問題であり、専用機持ちの力は借りんと!!」
「我々は上層部から作戦中止の命令を受けていない!よってまだ、我々の作戦は継続しています!」
織斑先生と山鳩総理の睨み合い。両方ともに一歩も引き下がろうとはしていなかったが、やがて山鳩が根負けし、視線を逸らした。
「もしまた失敗してみろ!この事をIS学園の上層部に報告させてもらうぞ!!」
「ご自由に」
「フン!プロメテウスはいつでも出せるようにしておけ!では見せてもらおうではないか。専用気持ちの強さとやらを・・・」
司令部にいる全員が、5人の戦いに注目した。
戦場にて。福音にレールガンは命中したが、それだけでは倒せない。
爆炎が引いた時、その場に福音は何事もなかったかの様に佇んでいた。砲撃された側にセンサーを向け、こちらに攻撃姿勢を見せる5機のISを敵だと判断し、急接近してきた。
「くっ!続けて砲撃を行う!」
しかし先程の不意打ちとは違い、今度は真正面から警戒をされている。放たれたレールガンの砲撃を、福音は容易く回避する。
そのままの速度で、福音は一気に加速してきた。
「今朝に渡されたデータより遥かに速い!」
ラウラの援護として放った、セシリアのブルー・ティアーズとレーザーライフルすら、福音は余裕で避けてゆく。
「くっ!」
遂に福音との距離がかなり詰められた。この距離で銃では隙が大きすぎる。
そこに鈴の甲龍の持つ双天牙月が斬りかかる。数のアドバンテージはこちらにある。AI制御の福音とて警戒は常に怠らないが、全方位に神経を研ぎ澄ます事は出来ない。
バランスを崩した福音が落下してゆく。そこに追撃としてシャルロットのISが仕掛ける。アサルトライフルによる銃撃が福音に襲いかかる。
「もらったよ!」
ラピッドスイッチによる武器の高速切り替え。多数の銃火器による手数の多さで、福音を圧倒してゆく。
移動の際の反撃、福音の弾幕がシャルロット目掛けて降り注いで来た。
「このぐらいじゃ、シールドは破れないよ!」
咄嗟に福音の反撃を、シールドで防いでゆく。しかしその際、攻撃は途切れた。福音はシャルロットから距離を取り、セシリアとの戦闘を開始した。
「福音を誘い込む!行くわよラウラ!」
「任せろ!」
ラウラのレールガンと鈴の龍砲の連続砲撃。しかし福音は、まるで先読みをしてるかの様に避けてゆく。
とはいえ、これで福音の道は絞られた。福音の移動ルートに先回りし、箒が赤椿の持つ二刀で斬りかかる。
「貰った!」
初撃はクリーンヒットし、福音のボディに傷をつけた。このまま連撃をくりだそうとしたが、今度は福音が二本の刀を容易く受け止めた。
「なっ!?」
両方の刀を握られた事で、箒の動きに制限がかかる。福音は片方の翼部分からビーム砲をチャージし始めた。この近距離で放つつもりなのだろう。
「箒!武器を捨てるんだ!!」
「くっ!なら!」
脚部に展開装甲を展開した。そして、踵落としの様な一撃が福音へと決まる。その一撃は、福音の左側の翼を破壊した。
翼を壊れてバランスを崩した福音は、海面目掛けて降下していった。
「無事か!?箒!」
「私は大丈夫だ。それより福音は・・・」
福音は海面に衝突したまま、浮上してこない。
「・・・浮かんで、こないね」
「ではやりましたの?」
「・・・!いいえ!まだよ!」
福音は海中から再び這い上がってきた。破損した翼の箇所は、光の翼の様な物が形成されており、修復されていた。
「不味い!アレはセカンドシフトだ!!」
福音の両翼が、光の翼で構成される。今の福音は全身が膨大なエネルギーの塊である。福音の所持する全ビーム兵器の出力は上昇し、先ほど以上にを焼く存在である。
光の翼が生えた福音は、その獰猛な力をぶつけてきた。
「くっ!さっきまでの福音とは、桁違いの強さだ!」
「リミッターが外れたとでも言うのですか!?」
「ぐうっ!」
赤椿がビーム砲の直撃を受けた。シールドで軽減こそできたが、ISと一緒に箒の身体は、真下に叩きつけられ、近くの岩場に落下する。
「箒さん!」
セシリアの声に反応したのか、福音は今度はセシリアをターゲットにした。距離を取ろうとするセシリアに一瞬で追いつき、近距離のビーム砲で始末する。
「セシリア!くっ!こいつ!!」
甲龍にラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。シュヴァルツェア・レーゲン。どのISも、今の福音の前には、等しく無力であった。
しかし、誰も逃げようなどとは考えていない。必ず隙が生まれる。逆転のチャンスがある。そう信じているから。
その頃、医療室にいた一夏は。
「・・・・・・ここは?」
気がつくと一夏は、何処かわからぬ場所に立っていた。ここは一夏の夢の中である。目の前には、一つのISが佇んでいる。搭乗者の顔は分からない。
しかし一夏には、そのISの正体が何なのか、理解出来ていた。
「白・・・騎士?」
10年前の白騎士事件。日本に放たれたミサイルを全て迎撃し、そして各国の捕獲部隊を圧倒した伝説のIS、白騎士。それが自分の目の前にいた。
「力を欲しますか?」
目の前のISに乗る存在が語ってきた。
「・・・・・・」
言葉はいらない。その質問に無言で頷く一夏。するとISは再び質問をしてきた。
「何のために?」
「そうだな・・・友達を、仲間を守る為。かな?」
「仲間を・・・」
「ああ。何て言うか・・・世の中って、結構色々と戦わないといけないだろ?道理の無い暴力って、結構多いぜ?そう言うのから、出来るだけ仲間を助けたいと思う」
「この世界で一緒に戦う仲間を・・・」
「だったら、行かなきゃね?」
ふと、声がする。目の前のISからではない。一人の少女が、一夏の隣にいた。白いワンピースに白い髪。白い帽子を被っている。
「・・・あぁ。そうだな」
(何故だろう。懐かしい・・・)
そんな事を思いながら、差し伸べられた手をしっかりと握る。その瞬間、一夏のいる世界は、光に包まれた。
時を同じくして、ユーゴの意識が覚醒した。薄暗い室内だが、そこは見覚えがあった。窓のない長方形の室内。自分が寝たあの部屋だ。
(この感じ、まさか・・・)
自分の身体に触れる。身体の数箇所に電流でも浴びたかの様な焦げ跡が見られた。そして、身体中に感じる異物感。
(この感覚。覚えてる。何年も夢で見てきた。確かこの後は・・・)
【シュッ】
ドアの隙間から、何かが滑り込んで来た。何かと思い拾い上げる。答えは既に出ているが。
その札はトランプの一枚、ジョーカーであった。
扉越しに、誰かの声が聞こえる。自分はこの声の主を知っている。
「君の切り札だ。切り札は常に自分の物になる。そう思っていれば、いずれは本当にそうなる。だから君自身が切り札になるんだ」
でも、誰なんだろう。思い出せない。知っている筈なのに、思い出せない。
ここから先、どうなるかを彼は知っている。重い身体を引きずり、ドアの方へと這い寄る。すると彼の周りの空間が歪んだ。
それはこの夢がここで終わる事を意味していた。
(待ってくれ!まだ終わらないでくれ!夢よ!頼む!)
だがそんな思いは虚しく、ユーゴの視界は暗転した。
その頃現実世界では、福音との戦闘により、箒が岩礁に叩きつけられていた。全身が痛む。彼女には、自分がこのまま死ぬのではないかという錯覚を覚えていた。
(私は・・・死ぬのか。しぬというのなら・・・会いたい・・・一夏に会いたい・・・)
「・・・箒。待たせたな」
(この声・・・懐かしい)
その声は、彼女が会いたがっていた人物の声である。朧げな目を開く。彼女のぼやけた視界の中に、白い何か映り込む。
「一夏・・・一夏!?」
それが一夏だと認識した瞬間、彼女のぼやけた視界は完全に回復した。目の前には確かに一夏がいた。
「一夏!!お前、身体は!?傷は!?」
「大丈夫だ。戦える。ユーゴには止められたけどな」
「ユーゴだと!?」
上空を見上げる。そこでは高速で移動する光の翼と、それに負けじと喰らいつく蒼炎がぶつかり合っていた。その人物から通信が送られてきた。
「止めるだろ!普通に考えれば!!」
その通信相手は、白銀ユーゴであった。
「ユーゴ!お前もやっと来たのか!」
「大体の経緯は分かる。こいつをぶっ壊せばいいんだろ!?」
現在、彼の頬にあるマーカーは赤色に変色している。それはアステカの祭壇を起動させ、反射などの感性を高めている事を意味した。
「さて、こっちは一人で押さえ込むのだと数分しか持ちそうにない。一夏!とっととお前の用事を済ませろ!後鈴達は下がってろ!矢の餌食になる!」
それだけ言うとユーゴは福音から距離をり、ナイフをしまって弓矢を取り出した。ジョーカーのエネルギーを矢に変換し、上空目掛けて射る。
少しした後、矢は空中で無数に分裂し、福音の周囲目掛けて勢いよく降り注いだ。福音の一点を狙うのではなく、福音のいる面を制圧する。その行為に、福音も回避で必死となる。
その頃、箒と一夏のいる岩場では。
「一夏。良かった。本当に・・・」
「なんだ箒。泣いてるのか?」
「なっ!泣いてなんかいない!目に、ゴミが入っただけだ!」
必死になって照れているのを隠す箒。すると一夏は、何かを思い出したらしい。
「箒、これ。いつもの髪型の方が似合ってるぞ?」
一夏が手渡した物。それは一夏を看病していた時に、一夏の側に置いていたリボンであった。普段、髪を縛っている箒の私物であった。
「今日は、7月7日だろ?」
「一夏・・・覚えて、いたのか」
「あぁ。突然だろ?誕生日おめでとう」
「一夏・・・」
「じゃあ箒、行ってくる!」
一夏は空に飛び上がった。ユーゴ達が戦う戦場の空に。