今回でアニメの一期編はお終いです。その為後半部分はオリジナルシナリオに繋がる為にかなり改変されています。
IS学園の生徒達が止まっている旅館。そんな宿の前には現在、専用機持ちが並べさせられていた。
「作戦完了!・・・と言いたいところだが。馬鹿者!!」
開幕早々、織斑先生の雷が襲ってきた。
「お前達は重大な違反を犯した。帰ったら直ぐに反省文の提出。そして懲罰用のトレーニングも用意してある。覚悟しておけ」
皆、こうなる事は覚悟していた。とはいえ、いざ実際に雷が落ちると、その迫力は凄まじい物であった。
「織斑先生。そろそろこの辺で。みんな、疲れてるでしょうし・・・」
山田先生が助け舟を出す。
「とりあえず・・・お前達、よくやったな。今日一日は、ゆっくりと休むと良い」
「だがその前にもう一つ。白銀。説明をしろ」
やっぱりといった顔をしている白銀。福音戦の際に見せた、もう一組の腕。それの事を指しているのだろう。
「教官。これは・・・」
「いいんだラウラ。知られた以上、ちゃんと説明はしておいた方が、後々付き纏われずに済む」
観念したらしく、彼の両脇からは再び腕が生えてきた。隠し腕。皆がマジマジとその腕と自分の腕を見比べる。
本人によると義手らしいが、自分達の腕と見分けがつかない程、精巧な造りである。
「俺は普通の人間じゃない。サイボーグなんだ」
「サイボーグ?アンドロイドという奴か?」
「いや、俺はサイボーグだ。アンドロイドじゃない」
「違いがわかんねぇ。分かりやすく説明できないか?」
「サイボーグってのは生身の身体に機械を埋め込んだ人間を指す言葉。アンドロイドとは、初めから人工的に造られた人間の事を指す。様は人造人間の事だよ・・・少し待ってな」
突然ISスーツの上半身を脱いだかと思うと、自身の臍をワンプッシュした。すると腹部を中心として、腹が縦で左右に開かれた。
そして論より証拠として、中の機械部品を見せてきた。彼の胃袋は言葉通りの鋼鉄製であった。皮膚こそは間違いなく人間のそれだが、その下は明らかに人工物で構成されていた。
皆が何も言えずにこの光景を見ている。
「・・・この話をしたのは、あんたらで3人目だ。今から7年前、俺はある事故に巻き込まれた。その時に、生身の身体はボロボロになって、こんな身体になった」
「医者が言うには、機械に換えられた箇所から見て、事故に巻き込まれた時、そもそも生きていたのが奇跡だってさ・・・正直に言うと、この身体になってから、不便な事しかない。身体の中の異物感が拭た事はない。内臓の半分以上はメカ状態。食に関しては何を食べても、何も感じない始末だ」
(そうか!だからユーゴの奴、セシリアのサンドイッチを普通に食べてたのか!)
(味がわからないんじゃ、当然だよね。ゲテモノ好きじゃないんだね)
一夏とシャルロットが何かを納得している。そんな中、彼は開いた腹部を収納していた。
「とにかく結論として、俺はサイボーグだ。解ったか?」
「・・・・・・」
その言葉に皆が唖然としていた。何と反応すればいいのか分からないのだろう。
しかし次の瞬間。
「うむ!わかった!」
「ユーゴさんはサイボーグなんだですね。では、そういう事にしましょう」
それはあっさりした程、この場の人達が納得しているという結論が出ていた。これには流石のユーゴも少し驚いた表情を浮かべている。
「・・・随分と呑み込みが早いな。俺がこの事実を受け入れるのには一ヶ月以上かかったのに」
「だって、目の前でこんな物を見せられたら、否定する訳にもいかないよね」
「そうだ。気にするなユーゴ。それに、お前の定義で言うなら私は戦う為に造られたからアンドロイドという事になる。だがお前は気にしていないだろ?それと同じだ」
一夏や箒。シャルロットやラウラ達の雰囲気。それはユーゴが数年程前に忘れてしまった何かを思い出させてくれる。
「・・・ったく。本当にあれだな。一夏だけじゃなく、お前達みんな・・・可笑しな奴等だよ」
その言葉と共にこの場は解散となり、一夏達は旅館へと入っていった。そんな中、この場にユーゴと教師だけは残っていた。
「ユーゴ。7年前の事故。一体何が起きたんだ?」
「・・・飛行機事故だよ。乗っていた飛行機が突然爆発したんだ。そこからの記憶は途切れ途切れ。でも行き先は覚えてる。丁度夏休みの頃のハワイ」
それだけ言うとユーゴも一夏達の後を追い、宿へと入っていった。
(飛行機事故か・・・それにしてもあいつ。肝心な事を上手くぼかしたな。アステカの祭壇については、一切触れなかった・・・)
臨海学校は一日延長された。2日目に行われるISのテストなども、一般生徒は既に殆どが終わっており、専用機持ちについては実戦での莫大なデータが得られている。
つまり延長された今日一日は、初日同様自由時間である。
「それ、スマッシュ!」
「ピンポイントガード!」
初日は殆ど姿を表さなかったユーゴだが、今日はビーチバレー大会を楽しんでいた。2対2のトーナメント形式で行い、優勝品はかき氷だ。
そしてその決勝戦が、今まさに、開かれていた。相手は並々ならぬ威圧感を放っている。
「さて白銀。そしてボーデヴィッヒ。お前達のペアはクラストーナメント戦以来だな。あれからどれ程成長したか、私に見せてみろ!」
「はっ!教官の胸を借りるつもりで、全力でぶつからせて頂きます!」
少年漫画かな?この二人のテンションについていけないユーゴと山田先生。
「では、両者位置について・・・」
「・・・初め!」の掛け声がかかる直前、ふと布仏さんが辺りをキョロキョロし、そして呟く。
「それにしても、初日に姿を見かけなかったゆーゆーが現れたと思ったら、今度はおりむーの姿が見えないよ」
「そう言えば篠ノ之さん達の姿も見えないね。ひょっとして何かしてる・・・」
【ドーーーン!!!】
「たーすーけーてー!!!」
「待ちなさい!!一夏ァ!!!」
「見かけないから心配したのに!!」
「もう勘弁できませんわぁ!」
ここから離れた岩場から、一夏の悲鳴と一緒に爆発の様な音が聞こえてきた。どうやら鈴やセシリア達と元気に駆けっこをしているらしい。
きっと箒もいるんだろう。あっ箒を抱えながら一夏が逃げてる。
「あいつらぁ!山田先生!すいませんがこの試合は棄権と言う事で!」
そう言うと織斑先生は全速力で岩場に向かって走っていった。余りの速さに皆が呆気にとられてる中、織斑先生は宿に戻って行った。
無論、一夏達を引きずって。
そうして今、優勝賞品のかき氷を白銀が食べているとラウラが話しかけてきた。
「なぁユーゴよ。私は今、この生活が楽しい物だと思っている。人並みに笑う事が出来る、この生活が」
「奇遇だな。俺もだ。何せ、なんの味も感じないこいつが、少し美味く感じられるんだからな・・・」
こうして時は流れ、夕食の時間となった。因みに一夏達は罰として食事の量が減らされている。
すると一夏達の元に、谷本さんや鷹月さんが訪れた。
「ねぇねぇ。それで結局福音の暴走の理由はなんだったの?先生達は、何も教えてくれなかったし。よかったら教えてよ」
「そうだよみんなー。隠し事はなしだよ〜」
「だーめ。機密って言われてるし」
「大体、アタシ達も詳しい事は知らないのよ」
「それに、詳細な情報を聞けば、お前達にも行動の制限がつくぞ。それでもいいのか?」
「うっ!それは・・・嫌だね」
シャルルに鈴。ラウラ達の言葉に怖気付いたのか、引き下がる。するとユーゴが突然席を立った。
「どこに行くのだ?ユーゴ」
「用を足してくる」
そう言い食堂を後にする。
トイレを目指し歩いていたユーゴだが、廊下の先。自分の泊まっている部屋の前の男女二人を見てその動きを止めた。
二人とも手には重そうな荷物を持っている。表情を一切変えずに、ユーゴは二人に近づいた。
「何をしている」
「あ!君!この部屋を開けてくれ。頼まれた荷物を持っているから開けられないんだ」
どうやら室内に入りたいが、手が自由に使えずに困っているらしい。それは山田先生が頼んでいたISパーツの業者である。床に置けばいいのに。
【ガラッ】
開かれた扉に倒れ込む様に入る二人。
「ふーありがとう。助かったよ。私は・・・」
「鋼勇作と鋼祥子、ですよね」
「おや?私達の事をご存知とは。以前お会いしましたか?」
「ええ。6年前に一度。覚えていませんか?」
「6年前・・・すいません。その時期は丁度工場が忙しかった時期ですから」
その言葉にユーゴは何の反応も示そうとしない。そんな二人は荷物を指定されていた場所に置くと、部屋を出ようとした。その時、男のポケットから何かが床へと落ちた。
それに気づかず去ろうとした為、ユーゴが慌てて呼び止める。
「あの、これ落としましたよ」
男が落とした物、それはロケットであった。
「ん?あぁ、ありがとう」
男は何気なく受け取り、再び、当たり前の様にポッケに突っ込んだ。それを見ていたユーゴは、何処か寂しそうである。
「・・・それ、中身は見たんですか?」
「それがこのロケット、開閉部が歪んでいて開かないんだよ。まぁ中身は覚えてないから、きっと大した物じゃないよ」
「貴方。他の場所も廻らなくちゃ行けないんです。早くしないと、置いていきますよ〜」
「あぁ今行くよ。妻が呼んでいる。ではこれで失礼」
そう言うと二人は駆け足で宿を後にした。その背中をユーゴはずっと見続けていた。
その手には血の滲む程の力を込めて。
やがて彼はトイレの一番奥の個室に駆け込んだ。備え付けのトイレットペーパーを引きちぎり、目に当てる。吹いたその紙は血で汚れ、湿っていた。
「楽しい思い出で終わると思ったのに・・・何で、こんな気持ちになるんだよ・・・」
暫くの間、彼は固まっていたがやがてトイレで用を足し終えると、食堂に戻って行った。そこでは皆が、食事が既に終わっていたのに待機していた。
「あれ?なんで部屋に戻らないんだ?」
「さっき旅館の人から、織斑先生の伝言で、大事な話があるから生徒は全員食堂に待機している様にって・・・今、確認で山田先生が旅館の人と話しに行った所」
その少し前、夕日が地平線に消え月が空に浮かんだ頃、旅館近くの岩肌で、うさ耳を付けた一人の女性が白式のデータを見ていた。篠ノ之束である。
「本当、白式には驚かされるな。操縦者の肉体治療まで出来るだなんて。まるで・・・」
「まるで、白騎士の様だな」
声の主の方に振り返る。織斑千冬だ。
「ちーちゃん」
「・・・例え話がしたい。とある天才が、大事な妹を晴れ舞台でデビューをさせたいと考える。そこで用意するのが専用機と、何処かのISの暴走事件」
「暴走事件に際して、妹の乗る新型機を戦線に加える。妹は華々しくデビューという訳だ」
「すごい天才だね。その人」
「あぁ。10年前に、12ヵ国の軍事コンピューターをハッキングする様な、世界一の天才だからな」
「世界一の天才・・・か」
すると束は何処か自嘲気味に話し始めた。
「ねぇちーちゃん。今生きてるこの世界は楽しい?」
「似た様な質問を白銀にされたよ。答えは、まぁまぁだな」
「・・・そうなんだ・・・ちーちゃんのいる世界はそうだよね」
やがてその自嘲気味な話し方や表情は、昨日見た真面目な状態へと変化した。
「ちーちゃんよく聞いて。この夏、きっと世界は大きく変化する。蒼炎の狩人とネクロノミコンによって。それで世界がどう傾くのかは、私にも分からない」
「でも、もしちーちゃんがあの子の、白銀ユーゴの味方になるなら、これを渡しておくね」
投げ渡したのは一枚の紙切れであった。そこにはびっしりとしたアルファベットが羅列されていた。
「それは日本政府のメインコンピューターにアクセスできる裏コード。そこにこの世界の真実が眠っている。蒼炎の狩人が望む答えもね」
「それともう一つ。今回の福音事件。最初は確かに、私がハッキングしてた。でもね。あのISが現れてから、そのコントロールは突然遮断されたんだ」
「何?それはどう言う事だ?」
しかし束は織斑先生の質問には答えず、いつものに戻っていた。
「じゃあねチーちゃん。私はこれから、世界中を回らなきゃ行けないからさ。バイバーイ」
それだけ言うと束の姿はもう見えなくなっていた。彼女のいたその場には、一つのポケットラジオが転がっていた。
「これは、束のか?」
両耳にイヤホンを差し込み、拾い上げたラジオを弄る。周波数を適当に弄っていると、雑音混じりに歌番組や色々な番組が流れてきた。
そんな最中、あるニュース番組の周波数に合わさった際、織斑先生の手が止まった。
「現在入った速報です。立て篭もり事件です。先程、極東赤軍がホテルをジャックしたとの声明が発表されました。ジャックされたホテルは・・・」
「え?旅館?えー失礼しました。ジャックされた旅館は臨海旅館であり、現在IS学園の生徒達が泊まっている旅館です。この番組では、このニュースについて最新の情報を・・・」
織斑先生の耳には途中から内容など入ってこなかった。情報収集の為にラジオをポケットに突っ込ませ、駆け足で旅館を目指していた。
少し時間を遡らせる。食堂に待機している生徒達。最初は皆、これから何か楽しいレクリエーションでも始まるのかと期待していた。
しかし10分経っても何の変化も無いとなると、流石に周囲も何か変だと感じ始めた。
それから20分経っても、織斑先生も山田先生も戻ってくる気配がない。こうなるとただ事ではないと、生徒達は本格的に騒めきだした。
「一夏。あんた探しに行ったら?」
「そうしようか・・・」
【ガラッ!!バンバンバン!!!】
人は予想外の事態に遭遇すると思考が停止する。その事をこの場にいた全員が認識できた。
勢いよく開かれた襖と共に、3発の銃声が鳴り響いた。そして室内に雪崩れ込んで来た多数の人間。銃だけで無く、ISで武装している者までいた。
「お前ら動くな!この旅館は、極東赤軍がジャックした!!」
「「「・・・ほ、ほ、ホテルジャック!?」」」
2021年。7月7日。午後9時頃に発生した臨海旅館ジャック事件。後に世界に大きな衝撃を与える事になったネクロノミコン事件。
その事件の始まりがこの事件である事を、この時はまだ誰も、知りはしない。ネクロノミコンに因縁を持つ蒼炎の狩人。当のユーゴすら知るよしもなかった・・・