今回から暫くは、原作に無い、オリジナルシナリオになります。
なので予め言っておきます。2章の本編は、基本的に私のやりたい放題やります。
第28話 仕組まれた罠
一夜明けた臨海旅館。この周囲には警察や世界中のマスコミなどが殺到していた。IS学園の生徒達を人質に立て籠った極東赤軍の旅館ジャック事件。
国際機関であるIS学園が絡んだ事件。各メディアにとって、これ程人々の関心を集め興味をそそられるネタはそうないだろう。
臨時の対策本部には、偶然旅館に居なかった織斑先生も合流していた。
「あの旅館には本来、特殊な警察が警備をしていた筈だ。それなのにこの様な事件が起きるとは・・・」
「織斑先生。今は起きた原因を追求するのではなく、如何にこの事態を収束させるかが課題です」
「それは分かっている。それで、極東赤軍の要求はなんでだ?やはり仲間の解放か?」
「今現在連中は、政府などに対して何一つの要求をしてきていません。我々としては内部の情報が欲しいです。テロリストの総数や、人質のいる大体の場所など、それらのデータが・・・」
「・・・実は先程、山田先生の携帯にかけてみたらテロリストが出てきました。その時の情報では、従業員や教師は別の場所に閉じ込めている。片方が抵抗したら、もう片方の人質に危害を加えると・・・」
「いやらしいやり方だな。一体どうなる事か・・・」
その頃、食堂内ではテロリスト達が人質の生徒達に銃を突きつけた。生徒達は身を寄せ合い、震えている。ここにいるテロリストは5人。残りの15人はあの後部屋を後にしたきりである。
【ボーン。ボーン。ボーン】
壁に架けられた振り子時計が9時を知らせる。するとテロリストの一人が口を開いた。
「誰でもいい。携帯を持ってるなら出せ」
すると生徒の一人が恐る恐る、ガラケーの携帯を取り出した。テロリストは荒々しく受け取ると、慣れた手付きで何処かに電話をかけだした。
「対策本部か?まぁどこでもいい。日本政府に告げる。我々極東赤軍の要求は一つ!伊豆等に収監されている我々の同志全員の即時開放だ」
それは如何にもテロリストらしい、ありきたりな要求であった。
「三時間の猶予を与える。もしそれまでにこの要求に良い返事がない場合、生徒の人質から一人を、見せしめとして処刑する。言っておくがこれは脅しでもなければ忠告でもない。ただの決定事項の通達だ。以上」
【バァン!】
それだけ言うと女は携帯を銃で破壊した。銃声の音に皆が頭を抱え、震えていた。
そんな中でも、一夏達専用機持ちはなんとかこの状況を打開しようと模索していた。
「ラウラ。軍人として、この場面をどう見る?」
「この場に銃を持っている人間が5人いる。その内の三人はIS持ち。何かしらの隙が生まれれば私達でも制圧できるが、隙が生まれないと、他の生徒達に危害が及ぶ危険が高い」
小声の一夏の質問に、ラウラははっきりと答えた。
「最初に部屋に現れた際、テロリスト達は合計20人いた。そうなると残りの15人。従業員など他の人質の方へと危害を及ぼす可能性が・・・」
「とにかく今、俺達出来る事は耐える事だ。耐えて耐えて、耐えぬくしかない・・・」
有効な手が見つからない一夏達。その頃、対策本部では、先程の要求について議論されていた。
「やはり要求は囚人の解放ですか。超法規的措置を使用して伊豆の囚人島に要求すれば、12時までには間に合う事が・・・」
「いや、連中の要求は無視する。テロリストに屈しない。これは国際常識だ」
「それでは!人質達は見捨てるつもりか!?」
「ここで国際機関だからやむなく、日本政府がテロリズムに屈したとなれば、日本だけでなく世界がテロを承認した事にも繋がりかねない。それにこれは、もう既に日本政府が決めていた内容なんだ」
「日本政府が!?」
「あぁ。今回の一件に対して総理は、如何なる要求であろうと日本政府はその要求を受諾する事なく、犯罪行為に対して真っ向から立ち向かう。総理自らが、こう声明を出している」
「では、このまま指を咥えて見ていろと!?」
「だが下手な刺激は敵を凶暴にさせる!かといって敵に及び腰を見せれば敵は増長してつけ上がるんだぞ!とにかく今は現状待機だ!」
(なんなんだこいつらは。本当にこの一件を解決させようと思っているのか・・・私には、とてもじゃないが思えない・・・)
織斑先生が言い知れぬ不安を抱いている。こうしてこちらも有効な対策が見出せないまま、無情にも時間だけが流れていった。
そして遂に。
【ボーン。ボーン。ボーン。ボーン】
食道内にある壁に掛けられた振り子時計が、長針と短針が12で重なり音を鳴らした。遂にタイムリミットが来てしまったわけだ。
「要求は受け入れられなかったか。さて。処刑の時間だ」
ISのライフルを生徒達へと突きつける。怯える生徒達を尻目に、テロリストの一人は迷わずある人物の前まで歩いてきた。
それはユーゴである。鼻先には銃口が向けられており、今にも引き鉄は引かれそうである。
「この場で殺してもいいが、マスコミの連中に見せつけた方が、インパクトがある。立ちやがれ」
「・・・おっと!」
これまで座っていたのに、急に立ち上がった為か、彼はバランスを崩し地面に倒れ込む。
「ぼさっとするな!早く立ち上がれ!」
「わかったから・・・」
するとユーゴは両手を地面につけるフリをしながら、静かに右手を自分や腰へと手をやった。そこには慣れしたんだ握りがある。
【シャッ!】
【ガキッ!】
そして次の瞬間、ユーゴはナイフを取り出すとテロリストの喉元目掛けて切りかかった。咄嗟のことにテロリストの体勢も崩れるが、直撃を避けた後、直ぐに銃の持ち手で反撃した。
「この餓鬼ィ!!」
リヴァイヴに身体を握られ、そして通路目掛けて思いっきり投げ飛ばされた。テロリスト達は追撃目的にライフルをユーゴ目掛けて構える。
しかしこの時、テロリストの全員がユーゴの方を注目していた為、一夏達が襲いかかるのに十分な隙が生まれたのだ。
「来い!白式!!」
一夏達がISを展開しテロリスト達目掛けて襲いかかった。慌てて銃で抵抗する者もいたが、ISと普通のライフルでは、結果は火を見るよりも明らかであった。
そしてテロリスト達が一夏に気を取られているうちに、ユーゴもワイルド・ジョーカーを展開し、テロリストの一人に襲いかかった。
【ドスッ!】
彼の全力の腹パンにより搭乗者が気絶し、ISが強制解除される。
「よし。これで」
「ユーゴ!危ない!」
するとワイルド・ジョーカーに体当たりする様に、残り一機のリヴァイヴか勢いよく突っ込んできた。そのまま旅館の外壁を突き破り、外に出た。
そのままの流れで、ワイルド・ジョーカーとラファール・リヴァイヴが交戦する。
敵は一度離れた後、ライフルを使わずにレーザーブレードで接近戦を仕掛けてきた。負けじとユーゴもファストナイフを取り出し、斬りつけ合う。
「そのISを、機能停止に追い込む!!」
【maximum!】
ファストナイフが蒼炎を纏い、ラファール・リヴァイヴに襲いかかる。この状態ならシールドエネルギーは大きく削られ、敵ISのエネルギー残量ゼロになるだろう。
「これで終わりだ!!」
ナイフを構え、リヴァイヴ目掛けて一気に加速したその時であった。
【ニヤリ】
「!!」
ユーゴは確かに見た。相手のテロリストが笑みを浮かべたのを。それは試合に負け、勝負に勝った者が浮かべる笑みであった。
そして次の瞬間、なんとテロリストはISを緊急解除した。これによりユーゴの目の前には生身の人間が佇んでいる事になる。
「!?止まれユーゴ!!」
【ザシュッ】
「ぁ・・・あぁ・・・」
駆け付けた一夏が制止を呼びかけるも、それは既に遅かった。
かつて、この状況と似た様な事件が起きたと聞いた事がある。確かエライ会社の名を借りた会長が殺された事件だ。
ファストナイフはテロリストの胸部に深く突き刺さり、ナイフと肉の隙間からは赤い液体がだらだらと溢れてくる。
ユーゴが固まっている中で、そのテロリストは力無く地に倒れ伏し、やがて動かなくなった。それが意味する答えはただ一つ。
死。
そして最悪な事にその一部始終を、その場にいたマスコミ達に目撃された。カメラは確かに、先程の行為をリアルタイムで抑えたのだ。
この昼。各国のメディアの前で。ISを使った場面を。
「・・・き・・・きゃー!!!」
「人・・・殺し。この人殺し!!」
「皆さん!こどもには見せないでください!!」
「・・・・・・・・・・っしゃ!飯種GET!」
「ユーゴ・・・」
「・・・・・・」
周囲の悲鳴や怒声も、一夏達の呼びかけも、今のユーゴには届いていない。
こうしてこの臨海旅館ジャック事件は、実行犯のテロリスト達メンバーの逃亡と確保により、あっさりと幕を下ろす事となった。
人質となってきたIS学園の生徒達の証言から20人いたであろうテロリスト達は、食堂にいた5人を除いて忽然と姿を消したらしい。
不幸中の幸いか、人質は誰一人として怪我人や死者が出る事はなく、生徒達全員、何とか無事であった。
たった一人。白銀ユーゴを除いて・・・
次の日、ある時間の記事が新聞のトップを飾った。
【白銀ユーゴ容疑者釈放。これに納得できない市民の声が多数】と。その隣には白銀ユーゴの名と、顔写真が公開されていた。
そしてこの新聞記事を読んで、ご満悦な男がここに一人いた。山鳩総理である。
「よしよし君達。一通りは指示どうりに動いたみたいで、安心したよ」
彼の話し相手、それはなんとあの後旅館から逃亡した極東赤軍のメンバー達である。
「お前に頼まれていた白金ユーゴの殺害には失敗したが、少なくてもそちらの指示通りには動いたんだ。さぁ、早く釈放したリーダー達に合わせてくれ」
彼等はとある理由で手を組んでいた。極東赤軍が旅館ジャックを行う。その報酬は現在囚人であるリーダー達の解放の筈であった。
しかし山鳩は違う。
「リーダー?あぁ。伊豆の囚人島に捕らえられていた君達の親玉か。あいつらなら死んだよ」
その言葉を彼女達が理解するのに、数秒のラグがあった。
「・・・は?死んだ?何言って・・・」
「ついでに言うと、あの旅館ジャック事件の際に警察に捕まった4人も、ついさっき全員死んだようだ」.
【バァン!】
部屋にある備え付けの機関銃が、テロリストの一人を撃ち殺した。
「こういう風にな」
「お!おい!話が違う!!お前の計画に協力する報酬に、伊豆の囚人島のリーダー達を解放するはずじゃ!?それに、この計画で捕まった仲間達も直ぐに解放するって」
「必要なのはあくまで白銀ユーゴの死だ。仮に殺せなかったにしても、君達のお陰で第二の舞台が整った。だからもう、君達みたいな目に見えるだけの悪者は邪魔なんだよ」
「ま!まって・・・」
「精々最後は悪者らしく、惨たらしく死んで逝け」
【ババババババババッ】
機関銃の一斉掃射が、テロリスト集団に炸裂する。悲鳴と共に一人、また一人と血を吹き出し、ただの肉塊へと成り果てる。
やがてその場には、赤い絨毯と間違う程の鮮血が広がった。
「あーあ。これは掃除が大変だね」
「・・・よろしかったんですかね総理。今回の一件、上に相談せずに独断で動いて」
事の一部始終が終わり、部下の一人が話しかける。
「なぁに構う事は無い。私はあいつの様な戦闘狂じゃない。勝てる勝負は確実に勝つだけだ。どんな手を使ってもね」
「・・・さて。次の始末はユーゴ、いや、蒼炎の狩人だが用意は整ってる。後は学園上層部が首を縦に振るだけだよ」
それだけ言うと山鳩は、近くの肉塊を石でも蹴るかの様に跳ね飛ばした。