インフィニット・ストラトス 蒼炎の炎   作:クロスボーンズ

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第3話 仮初の旅立ち

 

 

談話室。ここでは織斑千冬と山田真耶の二名と、対話している如月さん。そしてその隣でマスクとゴーグルの修理を行なっているユーゴがいた。

 

「いやぁ本日はお騒がせしてしまい、誠に申し訳ありません。あっ、私、こう言う者です」

 

名刺の様な物を差し出され、それを受け取る

 

「独自IS研究開発社、社長の如月慎吾さん?失礼ですが、ISの開発関係の方ですか?」

 

「えぇ。まぁ正社員は私一人だけで、ユーゴはお手伝いさんという、とても規模の小さい会社です。ですがついに試作のISが完成したんですよ。で、そのテスト飛行をしていた際に先程戦った謎のISと遭遇。やむなく迎撃したって訳ですよ」

 

とりあえず何故IS学園に来たのか。その点について説明しているらしい。

 

「ですが、ISは知っての通り女性にしか動かせないはずです。唯一の例外として発見されたのが織斑一夏君の筈です」

 

「いやぁ、その件については本当に驚きましたよ。おふざけでデータを取ってみたら仰天ビックリ!まさか男の彼にIS適性があるとはねぇ。ユーゴに適性があるのは昔から知ってましたよ」

 

「ですが、私としては大々的に取り上げては返って彼に対しての心的ストレスが溜まると思い、敢えて黙ってましたよ。まぁ今回の一件で貴女達に知られてしまいましたがねぇ」

 

その言葉に千冬が多少眉を顰める。思い当たる節があるのだろうか。

 

「成る程。今回の一件に介入した理由、そしてテロなどとは無関係だと言う事か」

 

「そうですね。あの、失礼ですが少しユーゴと二人きりにさせて貰えませんか?今後の事について話し合わねばならないので」

 

「よし、いいだろう。その間に私達は今回の件に関する事態を理解しておこう。少しの間、席を外すぞ」

 

山田先生と織斑先生が部屋を後にする。すると如月さんは何かを取り出して、周囲を見渡した。どうやら盗聴されてないか気にしているらしい。

 

やがて指でオッケーサインを出す。盗聴のの危険はないらしい。

 

「・・・一体なんの茶番ですか?小さい会社の社長って。如月さんはアイスクリームの移動販売が仕事でしょうが」

 

「あれ?知らないのか?活動拠点として実際にさっきの会社は存在するぜ。まぁペーパーカンパニーに等しいがな。それより、例の物は取り出したか?」

 

「あぁ。ここにある」

 

例のコアを机の上に置くと、如月さんは特殊な光を当てはじめた。どうやら何か検査をしているらしい。やがて検査結果の様なものが出た。

 

「・・・間違いない。反応通りだ。このコアはこの世界に存在する467のISのコア。そのどれにも当たらないタイプのコアだ」

 

「なのに目の前にそのコアはある。って事は?」

 

「可能性は三つだな。一つ。この地球に存在する467のISのコアを作った張本人、篠ノ之束博士。彼女が新たにコアを作った。二つ。本来ブラックボックスであったコアの解析が何処かの国や企業で成功。新たなコアを束博士以外の人間が作った」

 

「そして三つ。二つ目と多少被るが、遂に奴等が動き出した」

 

「ネクロノミコン・・・」

 

二人の面持ちが重いものとなる。やがて先生達二人が戻ってきた。すると如月さんはそそくさと帰りの身支度をし始めた。

 

「では、我々はここで。もし今回の一件においての修理費などが必要な場合は、名刺の裏に書いてある番号にお掛けください。さてユーゴ。帰るぞ」

 

如月さんはコアを両手に抱え、椅子から立ち上がった。

 

「待て。何故そのコアをお前達が持っていく事になる。それは置いていけ」

 

その言葉に如月さんが待ってましたと言わんばかりに、一瞬笑みを浮かべた。その顔はすぐに真顔へと戻された。

 

「何言ってるんです?このコアは、私の優秀な助手が命をかけて秘密を知られて頑張ってその手で手に入れた戦利品です。まさか土地を言い訳に人様のものを横取りするおつもりですか?」

 

自分達に有利な事を強調しながら合っている。

 

「でっ、ですが!登録されているISのコアは、軍事的な利用を防ぐ為にアラスカ条約で明確な扱いが決められていて・・・」

 

「このコア。アラスカ条約に登録されている467個のコアに登録されてませんよね?既にこちらで確認も取れてます。ならアラスカ条約もこのコアには適用されないはずでは?」

 

「うんうん!だってそのコア。束さんが久しぶりに作ったコアだもん!」

 

「やっぱりそうか。じゃあアラスカ条約は効かな・・・え?」

 

当たり前の様に会話に入ってきた存在に注目する。まるで初めから居たかの様に席に座っており、当たり前のようにお茶を飲む存在。

 

「たっ、束!いつからそこに!」

 

「ひっさしぶりぃ!会いたかったよちいちゃーん!」

 

何の躊躇いもなく抱きついた。

 

「おいっ束。とりあえずいったん離れろ」

 

流石の織斑先生も、このスキンシップには困惑していた。なんとか束を強引に引っ剥がす。すると束が頬を膨らまさせ、不満を表にした。

 

「おい束。まさかとは思うがこのコアとISは」

 

「うんうん。この束さんが新たに作ったコアだよ!まぁ暴走しちゃったけど、仕方ないねぇ!それより君!暴走したISから見てたけどすっごい腕だね!IS学園でその腕を磨いてみない?」

 

「興味ない」

 

束の方を一度も見る事なく、ユーゴは答えた。

 

「なんでなんで!?そんな腕があるのになんで!?」

 

「俺は俺のやり方でISの操作から整備調整までを覚えた。今更他人の教えや力を借りたり頼ったりするつもりはない」

 

「確かに、あのIS技術は生半可な付け焼き刃じゃない。熟練されたってのは見てて分かるよ!でもさ、独学ってのはあまり良くないよ!なんせ人間、一人じゃ何も出来ないって言うし!」

 

「・・・・・・それをお前が言うか」

 

彼女1人でISの基礎理論を考案、実証し、全てのISのコアを造った IS開発者の束博士。うん。いい意味と悪い意味の特大ブーメランが突き刺さってるね。

 

「知ってる?男のIS操縦者は今のところ二人。君といっくんの二人。ちーちゃんはいっくんを悪〜い大人に利用されない為に、ここで保護してるんだよ!」

 

「あっ、それについてはご安心を。我が社が命に変えても彼を保護しているので。この話はもう結構です。では」

 

如月さんは彼女のペースに呑まれない内に話を切り上げる事とした。

 

「むー!石頭だね。こうなったら、束さんの切り札、最終決戦対頑固者書類兵器だ!」

 

【バン!】

 

似合わない音と共に机の上に置かれた書類。それは対象の人間を強制的にIS学園に入学させる契約書の様なものであった。もし逆らえば実刑判決は免れない、問答無用な極悪アイテム。

 

なおこれは、織斑一夏の強制入学にも使用されている。

 

「おい束!こんな書類をどうやって作った!」

 

「ふっふっふ。束さんに不可能はないんだよ。じゃあねちーちゃん!本当なら箒ちゃんにも会いたいけど、箒ちゃんを驚かせる為のプレゼントが造り終えるまで、会うのはがまんがまーん。じゃーね!」

 

それだけ言うと束さんは風のように何処かへと消えていった。

 

「相変わらず凄く、個性的な人ですね。篠ノ之博士・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

その後、お互いに気まずい場面が続いていった。

 

「と、とにかくですね。私は彼を学園などには・・・」

 

「・・・いいよ。学園。通っても」

 

「へ?」

 

相変わらず視線は合わせず、ゴーグルとマスクの修理が完了し、装着した。

 

「ユーゴ。今、なんと言った・・・」

 

「だから、別に学園に通ってもいいよ」

 

「・・・・・・ユーゴー!!!!!」

 

先程の気まずさから一変。今度は如月さんの絶叫が談話室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、既に夕焼けが空を覆っていた。車内では運転席に如月さん。助手席にユーゴが座っていた。あの後例のISのコアは、如月さん達からIS学園に、情報の提供の元に、コアを貸与する事となった。

 

その代わりとして、白金ユーゴの学園の入学を許可する。え?これって裏口入学?ちょっと知らない言葉ですねぇ。

 

「にしてもユーゴ。まさかお前から学校に通いたいとはな。驚いたぜ」

 

「すいません。やはり迷惑でしたか?」

 

「まあな。だがユーゴが動きにくくなる反面、IS学園に籍を入れるのは、例の事件を探る上でかなりのアドバンテージになる。あそこのセキュリティは強力だが、俺に突破できないわけではない。そこに侵入しやすくなる。そこからあらゆる方面を調べてみる」

 

「俺もそう思ってあえてあの話に乗ることにした。どうせあそこで断っても、あいつらが素性を調べようとするなりで周りをウロチョロされたらたまらん。なら敢えて、こちらから出向く事で、奴等の目を如月さんに向けないようにする」

 

やがて交差点に差し掛かる。本来なら直進するが、この時、ユーゴが突然叫んだ。

 

「あのっ!右に曲がって、そして車止めてください!」

 

「ユーゴ?」

 

言われた通りに車を操縦する。すると車は病院の目の前で止まった。

 

「・・・先に戻ってください。俺はちょっと、寄りたい所があるんで」

 

「・・・分かった。ある程度時間が経ったら迎えに来る。夕飯はコンビニおにぎりだ」

 

その場でユーゴを下車させ、また迎えに来る事を伝えた後に車を再発進させた。

 

数分後、ユーゴは病院のエレベーターに乗っていた。ここに通って数年が経過している。一階の花屋さんには、顔や名前まで覚えられ常連さん扱いである。

 

いつも買っているのと同じ花束を買い取り、そして目的の階へと到着する。まだ廊下には色々な患者さんがいたが、自分の様な面会の人はいない。やはり夕方に面会は、時間的に遅いみたいだ。

 

503号室。集中治療室のようなそこでは、一人の少女が眠っていた。年はユーゴより少し上くらいだろうか。その身体には点滴や生命維持装置など、厳重とも言える程重症であった。

 

何より頬には、ユーゴと同じようにマーカーの跡が刻印されていた。ユーゴはベットの隣の椅子に腰掛け、一人語り出す。

 

「なぁ(かなで)。俺さ、学校に通う事になったんだ。だからここに、あまり来れなくなるかもしれないんだ・・・お前はどうなんだ?夢の世界には学校があるのか?そこで友達いっぱいできたのか?とにかく、絶対に治療法を見つける」

 

「それにきっと、復讐してみせる。忘れもしない。お前やオレを、あんな目に合わせたあいつらに・・・必ず」

 

「・・・だからお願いだ。早く・・・早く目を覚ましてよ」

 

「白銀君。今日もお見舞いですか?」

 

一人の看護婦が病室へとやってきた。もう何年もここに通っている為、名前を覚えられた様だ。

 

「えぇ。それより彼女の容体はどうです?何かワクチンなり薬なり、解決の糸口は見つかりましたか?」

 

「ごめんなさい。成分の分析は一向に進まないわ。治療法も・・・」

 

「そうですか」

 

「・・・さっきの話、聞いてたわ。学園に通うんですってね・・・貴方の人生は貴方の物。だから私が口出しする事じゃないかもしれないけど、これだけは言わせて。復讐に囚われて、前に進めなくなる事を、彼女はきっと望んでない。前を向いて歩くべきよ」

 

「・・・だからです。俺が前に進む為にも、過去に決着をつけるんです。そして必ず助けるんです。だって・・・友達だから。俺の、たった一人の・・・」

 

「白銀君・・・」

 

復讐者としての仮面は今ははずれていた。花瓶の花と水を取り替えると、その病室を後にした。出る直前、彼は右頬の痣の様な刻印に触れた。鉄の様に冷たく、温もりなど微塵もない。自分の様に・・・

 

病院を出ると、如月さんの迎えがきていた。時間が経つのを忘れていたのか、空にはもう月が顔を出していた。

 

夜道をひたすらに走り続ける車。その車内では音楽だけが流れており、誰も口を開こうとしなかった。しかし、ついに如月さんが口を開く。

 

「ありがとな。妹の見舞いをしてやってくれて」

 

その言葉になんの反応も見せず、フードを目深に被り、ユーゴは眠りについた。右頬の辺りにあるマーカーが、妙に痛々しく見えた。

 

 

 

ちょうどその頃、IS学園の一室では、ある事を調べている山田先生と織斑先生がいた。

 

「やはりそうです。今はデータが少ないですが、白金ユーゴのISのコアも、アラスカ条約に登録されている467個の登録データには無い、未知のコアです」

 

「あの謎のIS、束によるとゴーレムと同じ、コア情報の無い完全なオリジナルと言うことか。単純な考えでは束がコアを作ってやったが思い浮かぶが、あの時の様子からしてそれは無い。となると、あのコアは何処で造られたコアなんだ・・・」

 

「それと二人についてなんですが、インターネットなどで調べても手がかりが殆ど見つかりません。如月慎吾については多少ですが検索がヒットしました。機械工学や電子工学などで多少名が知れ渡り、将来を有望視されていましたが、7年前に突然通っていた大学を中退。その後の足取りは不明です」

 

「白銀ユーゴ。こちらについては、インターネットを調べても何も出てきません」

 

「そうか・・・」

 

(それにしても、一つだけ気になる事がある。束のやつがあいつの頬を妙にチラチラ見ていた事だ。あの傷跡の様な物に何かあるのか・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

それから時間は流れた。モノレール乗り場にて、IS学園の制服を着込んだユーゴは如月さんと会話をしている。尚、IS学園の制服は、個人カスタムが許されており、ユーゴはフードを自前で制服に取り付けた。

 

「じゃあ、暫く対面ではお別れだな」

 

「こちらでも定期的に連絡などは入れるつもりだ。だからお前はお前の人生を堪能してくれ」

 

モノレールの扉が閉まる直前であった。

 

「ユーゴ!これ、お守りとして持っていけ」

 

投げ渡された一枚のカード。しわくちゃな程にぼろぼろなトランプのジョーカー。これまでの彼がお守りとして大切にしていたカードだ。

 

「・・・ふっ。お守りか」

 

カードを大切に制服の裏ポケットへと仕舞い込む。モノレールはもう駅を出ていた。下を覗くと如月さんの車が見える。今正に乗り込んだ。

 

「鬼が出るが蛇が出るか。何であれ、これで俺たちの中で停滞していた時は動き出す。ゆっくりとだが、確実に・・・」

 

それだけ言うと如月さんは車を発進させた。

 

「ねぇ君。ひょっとしてIS学園の転校生?」

 

モノレールに乗って窓から外を眺めていると、不意に声をかけられた。声の方を向くと、目の前に自分と同じ制服の人物がいた。

 

「・・・あぁ。そうだ」

 

「僕もだよ。僕はシャルル・デュノア。よろしくね」

 

「・・・白銀ユーゴだ。よろしく」

 

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