インフィニット・ストラトス 蒼炎の炎   作:クロスボーンズ

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第4話 ボーイ・ミーツ・ダブルボーイ

 

IS学園。アラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校。操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成される。また、学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約がある。

 

まぁ平たく言えば国立の教育機関の事だ。(違うような気がする)

 

その1年1組。現在この学年はある話題で盛り上がっていたが、その話題について触れるのは次回辺りにしよう。

 

このクラスに在籍している者の中に、あの織斑一夏がある。他にも篠ノ乃箒。セシリア・オルコットもこのクラスに在籍している。なお、凰鈴音は2組に在籍中だ。

 

織斑千冬はここの担任。山田真弥先生が副担任を務めている。

 

「はーい。皆さん。今日は、皆さんに嬉しいお知らせがあります。なんとこのクラスに転校生が二人、やってきました。それではどうぞ」

 

扉が開かれた。そこから現れた人物に、皆が唖然とした。

 

「シャルル・デュノアです。よろしくお願いします」

 

「・・・男?」

 

ようやく発した第一声がこれである。目の前の人物は美男子。この言葉はこの人物の為に生まれたと言っても過言では無いほどに当てはまっている。

 

「ええ。こちらに僕と同じこちらに僕と同じ境遇の方々が居ると聞いて、本国より転入を・・・」

 

「「「キャーーー!!!」」」

 

「大丈夫ですか!?何かありましたか!?」

 

「不審者ですか!?それとも痴漢ですか!?」

 

その歓喜の声は廊下にまで響いてきた。喜びが限界突破する。これに何事かと廊下に顔を出す2組以下の面々。クラス担任など慌てて来てしまい、現在山田先生が必死に謝っている。

 

「!?」

 

この騒動で一番驚いているのは、あるシャルロット本人であった。

 

「男子!本物の男子!」

 

「しかもウチのクラス!」

 

「美形!守ってあげたくなる系の!」

 

「騒ぐな!静かにしろ!先生方、何もないです。教室にお戻りください・・・っておい。次はお前の番だ。早く入ってこい」

 

再び扉が開かれる。その顔に一夏、箒、そしてセシリアが真っ先に反応した。

 

「「「あぁ!お前はあの時の!」」」

 

「白銀ユーゴだ。既に見知った顔触れも数人いるが、よろしく頼む」

 

「「「キャーーー!!!」」」

 

「大丈夫ですか!?何かありましたか!?」

 

「不審者ですか!?それとも暴漢ですか!?」

 

再びクラスメイト達の興奮のボルテージが限界突破された。今度は何事かと各クラスの担任が駆け付けてきた。現在山田先生が超必死に謝っている。

 

「三人目の男!こっちも結構美形!」

 

「新たな男子属性!ツンツン系!!」

 

「守られたいタイプ!!!」

 

幾ら何でもオーバーリアクション過ぎる。シャルロットと同じ様に、ユーゴも心の中で結構動揺していた。

 

「騒ぐなと言ったはずだ!!」

 

その一言で再び教室は静かになった。ユーゴにとって、とりあえず担任である彼女の強さと言うものが窺えた。

 

「一夏。二人の面倒を見てやれ。同じ男子同士だろ。今日の一限は2組との合同演出だ。各人は着替えて、第二グラウンドに集合だ!遅れるな!」

 

その後、道中でそれなりの厄介があったが、それは割愛で。三人はロッカールームへと辿り着いた。

 

「二人とも。これから宜しくな。俺の事は一夏でいい」

 

「よろしく一夏。僕はシャルルでいいよ」

 

「よろしくなシャルル。じゃあ白銀はなんて・・・」

 

「好きな様に呼んでくれ」

 

それだけ言うと、ユーゴは黙ってロッカーを開け、荷物などを漁り始めた。

 

(無愛想な奴だな)

 

「ってやべ!時間がねぇ。二人とも早く着替えちまおうぜ」

 

「うわっ!」

 

すると突然シャルルが目を押さえ、背を向けた。

 

「何やってんだ?早く着替えないと遅れるぞ。特に、うちの担任は時間の遅れに煩いから」

 

「うん。直ぐに着替えるよ・・・でもちょっと、向こう向いてて」

 

「?・・・まぁ、別に着替えをジロジロ覗くつもりはないからいいけど。早くした方が・・・」

 

ほんの少し目を離しただけなのに、振り返ると既に二人とも既にISスーツに着替えていた。この間、僅か数秒である。

 

「二人とも着替えるの早いな。なんかコツとかあるのか?」

 

「いや、別に・・・ハハハッハハハハ」

 

「そうだ。コツじゃなくて慣れの問題だろ」

 

「慣れか。そうだよな。俺も早いとこ慣れないとな。これ着るときに裸になるから、ちょっと引っかかっちまって。その感覚苦手なんだけど、それに慣れないとな」

 

「ひっ!引っ掛かる!?」

 

シャルルが何故か赤面している。何を想像しているんだこの人は。

 

「二人とも、そのスーツ着やすそうだな。何処の製品なんだ?」

 

「俺のISスーツは自家製だ」

 

「手作りしたのか!凄いな。じゃあシャルルも?」

 

「ううん。僕のはデュノア社が作ったんだよ。まぁ、オリジナルだけどね」

 

「デュノア?確か、お前の苗字もデュノアだよな?」

 

「父が社長をしてるんだ。一応フランスで一番大きいIS関係の企業だと思う」

 

「デュノア社。フランスに本社を置く、量産型ISシェアが世界第三位の大企業。主製品のラファール・リヴァイヴはフランスのデュノア社製の第二世代型ISで、扱い易さと豊富な追加装備がウリの機体として、IS初心者向けとして有名だ」

 

これまであまり喋らなかったユーゴが、珍しく多く喋っている。

 

「・・・色々と詳しいんだな。ユーゴはそういうのとか調べてるのか?」

 

「まぁ、ちょっと仕事で色々なISのデータに触れる機会があって、その時に知った程度の情報だ」

 

「でも社長の息子か・・・どうりでな」

 

「どうりでって?」

 

「なんか気品があるって言うか、良いとこ育ちそうじゃん。納得した」

 

その顔にシャルルは何処か、哀しげな複雑な表情をしていた。その事に二人は気づいてはいない。

 

 

 

 

 

第二アリーナでは、1組と2組との合同実習が行われていた。

 

「本日からIS実習を行う。まずは戦闘を実践してもらう。凰!オルコット!そして白銀!三人は前に出ろ」

 

呼ばれた三人が前へとでる。そして三人が顔を見合わせると、凰が驚いた様に叫んだ。

 

「あー!あんた!この前の!」

 

「それ。今朝の集まりの時にも言われた」

 

「全く、なんで。こういうのは見せ物みたいで嫌ですわ」

 

「ふん。それは同じよ」

 

セシリアと凰の二人は何かと不服な愚痴を溢すが、織斑先生が何か二人に耳打ちをした途端、二人のやる気が全開になった。

 

「やはりここは、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットの出番ですわね!」

 

「実力の違いを見せる良い機会よね!専用機持ちの」

 

どんな魔法の言葉をかけたのだろう。一方の白銀は態度の急変した二人を、冷ややかな目で見ていた。

 

「騒ぐな。お前達三人の相手は上にいるぞ」

 

織斑先生が指を差した。その指さした方を皆が見た。快晴とも取れる青空、その遥か上空から何か降下、いや落下してきた。

 

「どいてくださーい!」

 

女子達が大慌てで逃げる中、運悪くその墜落場所にいた存在がいた。織斑一夏だ。

 

「うわっ!」

 

「一夏!?」

 

「・・・・・・!?」

 

砂埃が収まった頃、一夏が目の当たりにしたのは山田先生の顔であった。それもかなり距離の近い。慌てて手を見ると、彼女の乳の部分を触っていた。

 

「だっ、だめです織斑君。困ります。生徒と先生の間で、こんな・・・でも、このままいけば織斑先生が義理のお姉さんということで、それはそれでとても魅力的な・・・」

 

この人は心までどっぷりと自分の世界に浸っている。慌てて事態を理解した一夏が飛び上がるも、その直後、横からビームが飛んできて、目先を通り抜けた。その主はセシリアだ。

 

「ウフフフフ。ザンネンデス。ハズシテシマイマシタワ」

 

セシリアの顔が笑っているが、心は完全に怒っている。言葉も片仮名だし、全身から殺意が溢れている。

 

「一夏ァァァァァ!!!」

 

鈴に至っては完全に殺る気スイッチが入っている。見て一瞬で気づくレベルだ。青龍刀の双天牙月を持ち出し、一夏目掛けてぶん投げた。

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

【バンッ!バンッ!】

 

目の前まで飛んできた青龍刀の軌道を逸らす弾丸が放たれた。山田先生だ。しかも、先程までのはほんと墜落した者とは思えない目つきで。

 

「織斑君。怪我はないですか?」

 

「は・・・はい。ありがとうございます」

 

「山田先生は元代表候補生だ。今の射撃など造作もない」

 

「やめてください。候補生止まりでしたし」

 

とはいえ、あの射撃は並大抵の人間が齧った程度で取得できる代物ではない。努力の積み重ね。それが今の一打まで成長したと言えるだろう。

 

「さて小娘共。そして青二才。お前達三人の相手は山田先生だ」

 

「ええっ!?本気なの!?」

 

「よろしくって?いくら三人共専用機持ちとはいえ、二人の代表候補生を同時に相手するなんて」

 

「安心しろ。今のお前達なら一枚のシールドも突破できずにすぐ負ける。白金もとっとと自分のISを展開しろ」

 

その言葉に二人が不服そうな顔をする。国家代表候補生。仮にも今後、IS乗りとして国家の誇りを背負う存在になるかもしれない立場である以上、そこに誇りやプライドは存在するのだ。

 

尚、ユーゴはそういうのには一切の無関心無反応であった。

 

「来い。ワイルド・ジョーカー」

 

ユーゴの呼びかけで1秒もたたずに、ISが装着された。そのISに生徒達が騒めきだす。

 

「ねぇあれ?あのIS!?蒼炎の狩人なんじゃ!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

「違う。それは他人の空似だ」

 

織斑先生がキッパリと断言した。

 

「えっ?でも」

 

「そいつは確か、ゴーグルとマスクを付けていたはずだ。俺はそんなもの付けてないぞ」

 

「確かに。じゃあ空似か。空似なら良くあるし、仕方ないね」

 

ユーゴが付け足す言葉に彼女達は随分とあっさり納得されたようだ。無論、織斑千冬と山田真耶の二名は、ユーゴの正体を知っているが、個人に関わる為、黙っている。

 

(ワイルドカード。万能の札を意味する言葉。そしてジョーカーは切り札。直訳すれば、万能な切り札か)

 

そんな中、ジョーカーを一度見ている一夏達は、ある疑問を感じ取った。背中に羽織っている黒マントだ。

 

(あれ?確か初めてみた時、あんな黒マントついてなかった様な気がするけど)

 

「では・・・始め!」

 

4人は上空へと飛び立った。

 

「手加減はしませんわよ」

 

「さっきのは本気じゃなかったしね」

 

「・・・」

 

「い、行きます」

 

言葉こそいつもの山田先生と同じだが、その目つきと表情は全くの別物である。次の瞬間には、セシリアと鈴の先制攻撃を難なくかわした。

 

「山田先生、凄い機動だな・・・」

 

ギャラリーからも感嘆や賞賛の声が漏れる。セシリアのIS、ブルーティアズのビット攻撃すら、難なくかわしている。彼女を見てきた人からすれば、普段と今のギャップに驚いているのだろう。

 

「デュノア、山田先生が使っているISの説明をしてみせろ」

 

「はい。山田先生のISは、デュノア社製、ラファール・リヴァイヴです。第二世代開発時の機体ですが、そのスペックは初期第三世代にも劣らないものです。現在配備されている量産ISの中では、最後発でありながら世界第三位のシェアを持ち、装備によって、格闘、射撃、防御の切り替えが可能です」

 

シャルルの説明が終ると同時に、上空で爆発。二人が悲鳴と共に墜ちてきた。どうやら二人は終わったようだ。

 

「アンタねぇ!なに面白い様に回避先詠まれてるのよ!」

 

「鈴さんこそ!無駄にバカスカと撃ちすぎですわ!」

 

こうしてあっという間に二人が撃墜された。二人とも即席とはいえ、共闘に全く慣れていないのだ。

 

(あの教員の動き。癖という癖がないな。教員とか関係なく、ISの腕前はかなりのものか)

 

「さぁ、後は白銀君だけですよ。遠慮せず、何処からでもどうぞ」

 

「では、遠慮なく」

 

二人が戦っている際は静観を決め込んでいたユーゴがついに動き出す。

 

次の瞬間、山田先生は急接近して来るジョーカーを銃弾で撃ち落とそうとした。しかしその弾を、黒マントで受ける事で機体への直撃を防いでいた。

 

「そのマント!実弾を防げるんですか!?」

 

あまりの予想外の性能に山田先生の反応も少し遅れる。距離があと僅かとなった所で、マントの下からナイフが顔を覗かせた。

 

その掻っ切った一撃で、敵ISのシールドが多少削られる。だが次の瞬間には、近距離からの鉛玉の雨の直撃を浴び、ジョーカーのシールドエネルギーが一気に削られた。

 

こうして山田先生は三人を相手に、ほぼ圧勝していた。

 

「ナイフの一撃は、シールドを少し削っただけか」

 

「さて白銀。その装備などについて解説しろ。防具と武器についてだ」

 

「この機体の兵装は三つ。一つ目は熱衝撃吸収マント。衝撃や熱を吸収する素材でコーティングされている為、実弾やビーム兵装に対して一定量まで無力化できる。とはいえ、あくまで気持ち程度の無効力の為、過信するのは得策ではない。利点として、製造過程で既にコーティングされている為、IS本体のエネルギーを使う必要がない事だ」

 

「次に二つ目。これはマントが来る前に使っていた兵装で、ビームシールドだ。これはISのメインエネルギーとは別の箇所からエネルギーを得ている。シールドバリアがあるがあれはISのエネルギー消費に繋がる為、これを出来るだけ使って攻撃などを防いでいる」

 

「そして三つ目の兵装。それがこれだ」

 

ナイフを取り出し、一回転させた。その手捌きは扱いに慣れた人間の物である。

 

「使用する武器はそのナイフだけか?」

 

「ファストナイフ。見ての通りミリタリーナイフだ。普段からISの腰の箇所に納めてる為、パッケージは必要ない。基本的にはこのナイフで斬りかかるのが俺の戦い方だが、強いダメージを与える場合にはISの一部エネルギーを纏わせる。武器としては今の所、エネルギーを纏わせる際を除いて、ISのエネルギーを使うことはない」

 

「なるほど。このISは織斑の白式の問題点たるエネルギーの消費。それを抑えるに抑えた機体らしいな」

 

「そうなるな」

 

【バシッ!】

 

ISを解除した直後、ユーゴに出席簿による重い一撃が振り下ろされた。それに何のリアクションも起こさない。

 

「痛いぞ」

 

「少しは敬語を使え。で、その装備はやはり」

 

「これらの装備のほとんどは独自IS研究開発社から、性能テストを名目として与えらた」

 

その会社の名前を聞いた時、周囲の人間が騒めきだした。

 

「独自IS研究開発社?」

 

「聞いたことないな。下町にある様な小さな会社なのかしら?」

 

「とにかく、これで教員の実力の程は理解してもらえただろう。これからは敬意を持って接するように。では次にグループに分かれてもらう。リーダーは専用機持ちだ。では分かれろ!」

 

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