「はい!チョコミントとストロベリーのダブルでお待ちのお客様!」
あの後、ユーゴと分かれた如月さんは今日も街の広場の一角でアイスを売っていた。今日の売り上げも上々。ユーゴが共に行動できない為にペースが僅かながらに落ちたものの、上手く切り盛りして経営をしていた。
お客は商品を受け取ると、満足そうにその場を去っていった。
「またのご来店、お待ちしてますよ!」
一通りの客波が収まり、次の販売場所に移動するまでの時間もある為、多少なりとも寛ぎ始める。
【ピピーッ!】
その電子音が横になっていた身体を起き上がらせる。突然店を閉め、車外から開けられないように内側から鍵をかける。今の音は、パソコンの深層ウェブの裏サイトに、IS系の事に関する書き込みが行われたのだ。
その殆どが表沙汰には公表出来ない内容だ。そう言う情報を売り捌いて生計を立てる者もいる。そんな者達の為のサイトだ。無論、この様なサイトへの監視の目は強くある為、書き込まれた内容も、その殆どが一時間もたたずに削除されてしまう事が殆どだ。
彼のPCには、インターネットの裏サイトにISに関係する書き込みが行われると、自動で反応するソフトが導入されている。無論手作りだ。他にも、如月さんのPCは自家製のウイルスやウイルスバスターなどが備えられており、インターネットでは怖いもの無しだ。
「今回は裏サイトへの垂れ込みか。どれどれ・・・ISの研究所が謎の襲撃により壊滅」
これだけ聞くと、テロにでも巻き込まれたと思うのが、それなら普通に表サイトなりニュースなりで書き込まれるはずだ。こんな裏サイトに書き込まれる訳がない。それの根拠付けの様な内容も、この後に続いていた。
「今回壊滅した研究所は、表向きには問題ないが、その裏ではアラスカ条約で禁止されている、危険なシステムを研究していた疑惑が、常々持たれていた・・・か」
(アラスカ条約て禁止された危険なシステムか)
「・・・くそっ!これもハズレか」
その後もPCから裏のインターネット内の情報をかき集めるも、自分達の求める様な大した情報はない。これ以上こうしていても意味がないと判断し、そのデータを専用のフォルダなどに保存し、PCの電源を落とした。
こうしてこの場での販売を終了し、次の販売場所へと車を走らせる。
(ユーゴの奴。初日に問題起こしてないだろうな・・・)
時を同じく、ユーゴ達はというと。班を分ける作業で手間取っていた。
とりあえず専用機持ちはユーゴを含めて5人。これに織斑先生も加わって6人だ。だがここで問題が発生した。希望の班が偏ってしまうのだ。なんて言うか、案の定男三人、一夏とシャルルとユーゴの三人に集中した。
「織斑君、一緒に頑張ろう!」
「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」
「さっきの模擬戦。よかったと思うよ」
「・・・まったく。満足に班分けも出来んのか。出席番号順に並べ!!それで班を分けるぞ!」
このままではおそらく永遠に決まらないだろう。話し合いに埒があかない為、千冬さんが取り仕切る最も公平な出席番号というやり方を選んだ。こうして、6つの班に分けられた。
「勝手にあちこち触っちゃ駄目よ。怪我しても知らないからね?」
「まずは、順番に装着してみて下さい」
「いいか小娘ども。遊びじゃない事を留意しておけ」
その後も実習は進み、鈴とセシリア。千冬先生の三グループは順調の様だ。一方、残りの三グループはどうかというと・・・
「それじゃあ、出席番号から順に初めて行くか。まず一番は・・・」
「はいはいはーい!出席番号一番、相川清香。ハンドボール部、趣味はスポーツ観戦とジョギングだよ。よろしくお願いします!」
そう言って、右手を一夏に差し出した。
「ああ!ズルい!」
「私も!」
「第一印象から決めていました!」
後に続く様に、三人から右手を差し出されている。
「お願いします!」
「はい!よろしくお願いします!」
「・・・え?はい?」
「ご指導、よろしくお願いします!」
「・・・何これ?」
シャルルやユーゴの班も、一夏と同じ様な状態になっていた。
(俺たち三人。これから大変だな・・・)
こうしている間に、一夏の班にISを届け終えた山田先生から、ユーゴとシャルルの元にもISが届けられた。
「二人とも、これが訓練用のISですよ」
「これは
「白銀君。ISについて詳しいんですね」
「えっ、ええ。まぁ。じゃあ早速一人目から・・・」
「あの、山田先生。これ、どうやって乗り込ませるんですか?」
「あっ」
実は山田先生は訓練用のISを、既に展開した状態で運んできてしまった。その為、本来行うべき展開が出来ない状態になっているのだ。
「すいません。これは初心者がよくやるミスなんです。で、こう言う時には出すね・・・」
「「「「キャーー!!」」」」
不意に聞こえた歓声。今日聞いた中でもダントツに一番だ。もし近くで聞いたら鼓膜が破けてたかもしれない。山田先生含め、皆が驚いてその方を見ると、一夏が箒をお姫様抱っこしていた。白式を展開して、箒を打鉄へと運んでいる。
「あの様に、リーダーの白銀君やデュノア君がISを展開して、乗せてあげてください。二人とも、IS学園での授業は初めてで、その上でのリーダーで責任は大変でしょうけど、頑張ってください!」
あっさり言い放ったその言葉と、班の女子達の視線が一気に強くなる。正直痛い。獲物を狙う猛禽類でも、ここまで強い視線は送ってこないだろう。
「じ、じゃあ一人ずつね。これと同じ様なミスは繰り返さないようにしないと」
「・・・はぁっ。やればいいんだろ」
尚、その後も何故かこれと同じミスが連発した。玉突き事故かな?結局二人とも最後は視線に根気負けし、基本的に彼女達をお姫様抱っこで担いで行くことになった。これは一夏の班も同じだが。
こうして、午前中の授業は終了した。
「授業って結構疲れるもんだな」
「そうだね。あっ、着替え終えたからもういいよ」
更衣室で着替えているユーゴとシャルル。シャルルの要望でいいと言うまで背後を振り返らないでと頼まれたので、互いに背中で語り合っている。今日入ってきたばかりの彼等にとって、周囲からの視線など、まだ一夏の様に慣れていない事ばかりである。そんな中、シャワーを浴びていた一夏が戻ってきた。
「お疲れさんシャルル。それにユーゴも。二人とも凄いんだな。国家代表候補生に試験機のテストパイロット。やっぱそれなりにISに触れて来たんだなぁ。なぁ二人とも。よかった昼、一緒に食べないか?箒に誘われてさ。セシリアや鈴も呼んでるんだ」
「いいの?」
「いいのか?」
「あぁ。二人ともまだIS学園に慣れてないだろ?それに、飯はみんな食えば美味しいからな」
ここで話は先程、一夏が箒をお姫様抱っこして打鉄に乗せた時に遡る。
「・・・おい一夏。昼に、何か用事はあるか?」
「?急にどうしたんだ、箒?」
「その・・・だな。今日の昼、何か予定が有ったりするのか?」
「いやぁ、特には」
「そうか!では偶には一緒に食事を取ろう!うむ!それが良い」
「あぁ、別に良いぜ」
この時の箒の表情は、この世の全てに打ち勝った、そんな嬉しさの笑みを浮かべていた。もう何も怖くない。
そして多分、いや間違いなく箒がわざわざ誘った理由を、一夏は理解していないだろう。
昼休みにて。
「一夏、これはどう言うことだ」
ほら言わんこっちゃない。一夏含め、屋上に集まった6人。その内の箒達が不服そうな顔をしている。先程言った通り、この場の現状が、彼女の中で思っていた状況と違う為だろう。
理想では、一夏と二人で楽しく食事を。だが現実では鈴にセシリア。そしてシャルルにユーゴがいる訳だ。
「だって、飯は大勢で食べた方が美味いだろ?それにシャルルもユーゴも、この学園に入ったばかりで、右も左も分からないんだし」
「それはそうだが・・・」
この時、女子三人の間で見えない火花がバチバチ散っている。一応補足だが、一夏は二人を思って、この様な形にした事は留意してほしい。