インフィニット・ストラトス 蒼炎の炎   作:クロスボーンズ

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第7話 シャルルの秘密

 

「こうズバーッとやってから、ガキン、ドカン!と言う感じだ!」

 

「何となく分かるでしょ!?感覚よ感覚!はぁ!?何でわからないのよ!」

 

「防御の時は、右半身を斜め上の前方へ5°回避の時は後方へ20°ですわ!」

 

「わかったか!」

 

「わかりましたか!?」

 

「わかった!?」

 

「・・・いや、マジで全然分からん」

 

「あぁ。それはあまり効果的な説明じゃないぞ」

 

現在一夏は箒、セシリア、鈴の3名からISについての指導を受けていた。しかし一夏には理解できずさっぱりだ。とはいえ三人の教え方も、擬音多すぎ。フィーリングに頼りすぎ。細かく指示しすぎ。と悪い点があるのだが。

 

その横では、ユーゴがナイフを使って投擲の技を編み出そうとしているが、こちらも上手くいかない。こちらについては一言。ナイフは投げるものじゃない。

 

「ねぇ一夏。ちょっと模擬戦に付き合って欲しいんだけど。白式と戦ってみたいんだ」

 

三人に詰め寄られた一夏に、助け舟の様に出された模擬戦の申し込み。相手はシャルルである。

 

一夏とシャルルが対峙する。注目の対戦カードにギャラリー達も集まってきた。

 

「デュノア君の専用機!あれってラファール・リバイブだよね!?」

 

「ねぇ白金君。あれってどんなISなのか分かるの!?」

 

クラスでのユーゴの評価はISマニア。その様な感じで纏まったらしい。最もユーゴ自身、自分から進んでしゃしゃり出てくる事がない為、その様なイメージは薄いのだが。

 

「流石に専用機とかの情報はそんなに流れてはこない。だが多少は知っている。ラフェール・リバイブ・カスタムII。特徴は大容量の拡張領域(バススロット)高速切替(ラピッド・スイッチ)による武器の切り替え機構」

 

「これにより距離に関係なく戦闘を行えるのが強みだな。ただし武器の切り替えや残量エネルギー管理など、かなり要領がよくないと使いこなせない」

 

「じゃあデュノア君。結構な腕前なんだね。あっ、もう模擬戦終わった」

 

模擬戦は一夏の敗北で終了した。今は先程の模擬戦でなにがいけなかったのかを検討中らしく、先程の箒達より分かりやすい説明をしていた。

 

「一夏が勝てないのは、単純に射撃武装の特性を把握してないからだよ」

 

「そうなのか。一応理解してるつもりだったんだけどな」

 

「この白式って後付武装(イコイライザ)が無いんだよね?」

 

「あぁ、拡張領域(バススロット)が空いてないらしい」

 

「多分だけど、それって単一仕様能力(ワンオフアビリティ)の方に容量を使っているからだよ」

 

「ワンオフ?」

 

「ISが操縦者と最高状態の相性になった時に自然発生する能力。白式の場合は、零落白夜がそれかな?」

 

「はぁ。お前の説明って分かりやすいな!」

 

楽しそうにシャルルと話す一夏。その様子を隠れて見る三人の少女がここにいる。

 

「ふん!私のアドバイスは聞かないくせに」

 

「あんなに分かりやすく教えてあげたのに!」

 

「私の理論最善とした説明に何の不満が・・・」

 

言わずもがなである。

 

するとシャルルが銃のセーフティを解除し、一夏に手渡した。本来ISは他人の武器を使う事は出来ない。だが持ち主がセーフティを解除すれば話は別なのだ。

 

「じゃあ、試しに射撃の訓練をしてみようか」

 

訓練用の的が宙に展開される。シャルルからアサルトライフルを渡された。重い。真っ先に一夏が感じた感想だ。雪片弐型より重い。きっと初めて銃を撃ったら、速いと感想が出るのだろう。

 

白式には銃などの射撃系の武器がない。その為一夏自身も、何かを狙うと言った経験が疎い。よってシャルルからの手ほどきを受ける事になった。

 

「構えは、こういった感じか?」

 

「ちょっと違うね。脇を閉めて。後左腕はこう。片目でスコープを覗いて、狙いが定まったら撃つ!」

 

ライフルから弾丸が放たれ、的の真ん中から左腕を撃ち抜いた。

 

「そうそう!上手だよ一夏!」

 

「やっぱ弾丸って速いんだな」

 

「ねぇ、あの二人。ちょっと仲良すぎない?」

 

すると訓練場の一部がざわめき出した。指さす方を見るとそこには、一つの黒いISが存在していた。

 

(確かあれは・・・シュヴァルツェア・レーゲンか?ドイツが開発している筈の第三世代型のIS。まだ本国でトライアル段階と聞いていたが)

 

そのISの操縦者に皆が注目する。特徴として覚えやすい左眼の眼帯。一組の面々はもう知っている顔だ。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「何!あいつなの!?今朝、一夏に難癖つけたっていうドイツからの転校生は!」

 

「織斑一夏」

 

「・・・なんだよ」

 

「貴様も専用機持ちらしいな。だったら話が早い。私と戦え」

 

「嫌だね。戦う理由がねぇよ」

 

「お前になくても、私にはある」

 

「別に今じゃなくていいだろ。もうすぐクラスリーグマッチなんだから、その時でも」

 

「・・・ならば」

 

シュヴァルツェア・レーガンに備えられたレールカノンから、砲弾が放たれた。突然の事に一夏の反応は遅れる。咄嗟にシャルルがISのシールドを展開させ、それを受け止めて、弾道を逸らす。

 

「いきなり戦いを仕掛けるなんて、ドイツの人って随分と沸点が低いんだね!」

 

「フランスの第二世代如きで、私の前に立つとは」

 

「未だに量産の目処が立たない、ドイツの第三世代型よりは動けるからね」

 

「・・・まぁいい。貴様のその腕前ならいつでも潰せる。それより今の私の狙いは別だ。白金ユーゴと言ったな。貴様、私と戦え」

 

「何故だ?」

 

「今朝の一件もあるが、私自身が貴様を倒さねば、気が済まないのだ。その頬にある・・・」

 

【maximum】

 

次の瞬間、ユーゴはナイフに蒼炎を纏わせると、一気にラウラへと襲いかかった。ラウラもプラズマ手刀でその一撃を受け止める。表情にこそ現れていないが、互いにメンチを切り合っている。

 

「その攻撃反応。やはり貴様。ただの試験機のテストパイロットでは無いな」

 

「その人の心にズカズカと入り込む行い。直さないと怪我じゃ済まなくなるぞ」

 

「そこの生徒達!いい加減にしないか!」

 

すると先生の注意がとんだ。流石にこれ以上の騒動は不味いと判断したのか、お互いが武器を収めて離れる。

 

「・・・ふん。今回は引いてやる。最後に、織斑一夏。これだけは言っておく。私は絶対認めない。お前が、あの人の弟などと、絶対に」

 

それだけ言うとラウラはISを解除し、黙ってその場を去っていった。ユーゴもジョーカーをISを解除すると、黙って天を見上げた。

 

「ちょっと一夏!」

 

「一体どういう事だ!?」

 

「あの方と貴女の間に、一体何があったのです!?」

 

箒達の質問に、一夏は何も答える事が出来ない。本当に一夏自身に心当たりがないのだ。ユーゴは何かしら知ってそうだが、今朝の一件がある以上、彼の地雷原を踏み抜く訳にもいかない。

 

その後、実習も終わりロッカールームでは一夏とシャルルの二人がいた。ユーゴはシャワーも早々に終わらせ、黙って部屋へと戻って行った。

 

「シャルル。さっきはありがとうな」

 

「別に気にしないでいいよ。じゃあ僕は、先に部屋に戻ってるね」

 

「あれ?ここでシャワー浴びてかないのか?シャワー室は空いてるだろ?」

 

「まっ、まぁね。僕はシャワーとかを浴びる際にはボディーソープを使うとか、そういうところに拘るから。一夏はゆっくりシャワーを浴びてなよ。その方がいいって!はっ、ハハハハハハ」

 

そういうとシャルルは逃げるようにロッカールームを後にした。

 

「・・・変なの」

 

 

 

その後、ちょっと長くシャワー浴び一人で寮への帰路に着く一夏。そんな彼は現在、ある場所で足を止めていた。

 

「答えて下さい教官!何故、こんな所で!」

 

「何度も言わせるな、私には私の役目が有る。それだけだ」

 

(この声は確か、ボーデヴィッヒ?それに千冬姉も?)

 

一夏が反射的に近くの木陰に隠れる。顔を少しだけ覗かせると、ここから少し離れた場所で、織斑先生とラウラが口論していた。

 

「こんな極東の地で、何の役目が有ると言うのですか!お願いです教官。我がドイツに戻り、再びご指導を!ここではあなたの能力は半分も活かされません!」

 

「ほう?」

 

「大体!この学園の生徒は教官が教えるに値しません!危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている。その様な者共に教官が時間を割かれるなど・・・」

 

「そこまでにしておけよ、小娘」

 

織斑先生が静かに、だが有無を言わせない程に強く言った。

 

「ッ!?」

 

「少し見ない間に、随分と偉くなったな。15歳でもう選ばれた人間気取りとは、恐れ入る」

 

「わ、私は・・・!」

 

「寮に戻れ、私は忙しい」

 

「・・・せめて、一つだけ教えてください。教官は気づいているのですか?白銀ユーゴの頬にあ・・・」

 

「やめろ」

 

先程と同じように、全て言い終わる前に織斑先生が話を止めさせた。

 

「本人は自分のいない所でなら好きに言えと言っていたが、私は他人の陰口など聞きたくはない」

 

その言葉を聞いた後、ラウラは走り去ってしまった。一夏はそのやりとりを全て、木の裏側で聞いていた。

 

「・・・そこの男子!盗み聞きか?異常性癖は人として感心出来る行いではないぞ?」

 

「なっ、何でそうなるんだよ、千冬姉ぇ」

 

「学校では、織斑先生と呼べ」

 

「は、はい・・・」

 

このやりとりも二人の中では最早定番となっていた。

 

「下らん事をしている暇が有ったら実施訓練でもしていろ。このままでは月末のトーナメントで、初戦敗退だぞ?」

 

「分かってるよ!」

 

「そうか。なら良い」

 

そのまま立ち去ろうとする織斑先生。それを一夏の言葉で静止させた。

 

「待ってくれ!さっきのラウラって奴が言ってた事・・・千冬姉の弟とは認めない・・・あれってやっぱ、俺のせいで千冬姉が、二度目の優勝を逃した・・・」

 

「終わった事だ。お前が気に病む必要は無い。ではな」

 

一夏の方を見る事なく、織斑先生は立ち去っていった。その場に一夏だけが残される。

 

(・・・俺が中学生だった頃、つまり今から3年前。俺は突然誘拐された。気がついたら何処かよくわからない倉庫の中で、拘束された状態で監禁されていた)

 

(そんな俺を助けに来てくれたのが、千冬姉だった。その日千冬姉は、モンド・グロッソの決勝戦が控えていたが、それを放棄して俺を助けに来てくれた)

 

(当時、誰もが二連覇を信じていただけに、千冬姉が試合を欠場して不戦敗となった事は大きな衝撃だった)

 

(そしてその時、俺の監禁場所についての情報を教えてくれたのが、ドイツ軍だった。その時の借りを返す為に、千冬姉は一年程、ドイツ軍で教官をしていた)

 

(結局、あの誘拐事件が何の目的で起きたのか、それは未だに不明だ。いや、この誘拐事件の報道事態が、表では事件の数日後から突然、一切取り上げられる事すらなかった為に、この事を知るものすら、あまりいない)

 

当時、この事件で最も疑われた存在がいた。千冬姉の対戦相手のアリーシャ・ジョセスターフ。根も葉もないただの憶測としての悪評。この誘拐は彼女が勝つ為に行った番外戦術と噂されたが、彼女は千冬との決着はついていないとして、ブリュンヒルデの受賞を辞退。

 

その姿勢に心打たれたマスコミ達が、取り扱うのをやめたとも言われているが、結局のところ、真相は闇の中である。

 

(私は認めない。貴様があの人の弟であるなどと、認めるものか!)

 

今朝ラウラが放った言葉が脳内で繰り返される。自分のせいで千冬姉の栄光に泥が塗られた。そんな思いが、一夏に襲いかかる。気にするなとはいったが、そんな事は一夏には簡単には出来ない。

 

(・・・情けない弟だよな。いつまでも千冬姉に守られてちゃ、駄目だ!)

 

多少暗い面持ちになりながらも、一夏は寮の自室を目指し再び歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一夏が千早と話しているそんな中、シャルルは部屋へと戻り、シャワーを浴びていた。最も、ボディーソープが無かった為、汗を流す程度ですましている。

 

シャワーを浴び終えたシャルル。その部屋の中には床に一つの塊が転がっていた。こんな時間なのに、既に寝袋で寝ているユーゴだ。

 

「ねぇユーゴ。まだ起きてる?良かったら夕食、一緒に食べない?」

 

「・・・」

 

「寝てるのかな?おーいユーゴ?ユーゴ?」

 

「・・・スーッ」

 

何度呼び掛けても何の反応も示さず、眼を閉じている。耳を澄ましてみると、微かだが寝息のような物も聞こえてくる。

 

するとシャルルが複雑な表情を浮かべる。

 

(・・・デュノア社の役員からの突然の命令。ワイルド・ジョーカーの待機形態データを読み取り、転送しろ・・・か)

 

昨日突然デュノア社の役員達から電話で直接送られてきた謎の命令。ある事情のせいで、シャルルには実行するしかなかった。

 

「・・・ごめんねユーゴ。君のIS、ほんの少し借りるよ」

 

シャルルはその手を慎重に、首元へと近づけていった。首にかけられている紐を切って、ISの待機形態の状態で持ち出し、そのデータをデュノア社に送信する。それが自分の役目だと言いかせて。

 

(慎重に、慎重に・・・)

 

「・・・」

 

【ガシッ!】

 

すると突然、シャルルは手首を強く握られた。その事に驚いたり反応したりする間も無く、シャルルは床へと叩きつけられた。

 

「痛っ!」

 

首筋に冷たい感覚がある。身体も重い。見るとユーゴが上にまたがっており、手にはナイフが握られていた。果物ナイフの様な生易しい代物ではない。今朝使われた、殺傷力に優れたミリタリーナイフ。それは躊躇いなくシャルルの首へと当てられていた。

 

「答えろ。お前は一体何者だ」

 

「なっ、何を言ってるのユーゴ。僕は」

 

「シャルル・デュノア。俺の仲間が調べた結果、そんな人間はデュノア社社長の御子息にはいない。さぁ答えろ。お前は何者だ」

 

「ゆっ、ユーゴ・・・」

 

その眼は酷く冷たい眼をしていた。今の彼には、冷たいながらも彼なりの穏やかさも温情もない。あるのは目の前の存在に対しての不信感と懐疑心。そしてその奥で激しく燃え上がる怒りだけだ。

 

まさに今朝、ラウラが彼の頬について触れた際と同じ状態だ。

 

「違うんだユーゴ。話を聞いて・・・」

 

「答えろ!お前は、ネクロノミコンなのか!」

 

ナイフを握る手の力が多少強まる。それにより、首筋にも多少強く押されている。

 

【ガチャ】

 

その時、扉が開かれた。

 

「いやぁ、すっかり忘れてたよ。なぁシャルル。シャワー室のボディーソープ切れてただろ?変えのボディーソープは棚の中に・・・って、おっ、おいユーゴ!お前何してんだ!!」

 

一夏が見た光景。それは明らかに喧嘩の度を余裕で超えていた。

 

「不用意に近づくな一夏!こいつは!」

 

「うわっ!」

 

次の瞬間、飛びかかってきた一夏によってユーゴは体制を崩し、ナイフは床へと突き刺さった。そして一夏も飛びかかった際の反動で、二人はシャルルの上に倒れ込む形となってしまった。

 

「迂闊すぎるぞ一夏!丸腰で飛びかかるなど!相手はテロリストかもしれない・・・?」

 

「どっちがテロリストだ!ルームのメイトの首筋にナイフ当てる様な・・・なんだ?この柔らかい感触は?」

 

【むにゅ】【むにゅ】

 

二人の感じたマシュマロの様な柔らかい感触。それは本来、男が持つべきものではない。一夏が恐る恐るその手の先を見た。答えは知れているのに。シャルルの胸部には、二つの山が出来ていた。

 

「なっ!シャルル!おっおっぱ!?え?え?え?」

 

「・・・・・・お前、まさか・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・///」

 

シャルルが赤面している。今日一番に気まずい場面だろう。

 

「とにかく、二人とも一旦落ち着け。そして俺も落ち着け。二人が喧嘩してた理由は聞くし、ちゃんと仲裁する。あっそうだ!緑茶でも淹れるよ!!」

 

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