「九朗様・・・」
夜風に
そしてその傍に跪き絡繰り仕掛けの左手を添える、山吹色の服を着た中年の男。
男の名は、狼。この少年、九朗の忍だ。
「最後の不死を、成敗致す」
九朗を優しく地面に寝かせ、背中に背負った大太刀を抜く。《拝涙》の名を持ち、不死斬りと呼ばれる大太刀を。
そしてそれを、己の首に添えた。
「どうか・・・人として、生きて下され」
その瞬間。今までの記憶が、狼の脳裏を駆ける。
古井戸の底から駆け上がり、九朗と再会。その後は、この葦名の國で様々なモノと戦い、また縁を結んで来た。左腕を失ったが、今は補って余りある
そして、親は絶対と言う鉄の掟を破り、初めて
―――ほれ、どうした狼。お主の為にこさえたおはぎじゃぞ?食うてみよ―――
―――・・・!美味い・・・―――
(あぁ、しかし何より・・・)
―――この戦が終われば、何処かに腰を落ち着けて、茶屋でも開いてみるかの―――
―――九朗様の技量ならば・・・大層、繁盛致しましょう―――
―――ふふふ、褒めても何も出ぬぞ?狼よ―――
照れ臭そうに笑う、九朗の顔が浮かんだ。あの甘さが控え目な、大変美味かったおはぎの味も。
(共に茶屋を営めぬ事だけは・・・無念だな)
フッ、と小さく、寂しげに笑う狼。しかし再び口を横一文字に結び、己の首に刃を斬り込んだ。
―ジャクッ―
「ぐっ・・・」
血と共に、桜の花びらが舞い散る。狼は死せども生き返る《回生》の力を持つが、不死斬りはそれを見事絶った。
(これで良い・・・成すべき事を、成した・・・のだ・・・)
薄れ行く意識の中で、狼は微笑んだ。
(狼サイド)
「おめでとー!」
「・・・」
遠近感が職務放棄をしたような、手前と奥がぐちゃぐちゃに入り交じった空間。そこで奴は歓声を上げ、パチパチと拍手をしていた。
黒い肌に、黒い燕尾服。長い黒髪に、黒い眼。何もかも黒いその男は、唯一白いその歯を見せて笑っている。
そして、此処に来て全てを思い出した。
この目の前の存在に、面白半分で殺され、娯楽の駒とされるべく魂を呼び出された事。
異世界に送り付ける前に特典を与えると言われ、好きだったSEKIROの世界での技の習得、そしてSEKIRO含むフロム・ソフトウェアのゲームに関する
「相変わらず、喧しい」
「オヤオヤ、口調引っ張られてるねぇ。まぁ良いや。
最終確認!これで、良いんだね?」
「あぁ、これで良い」
漸く真面目な空気になったそいつに、俺は応と答える。
「いやはやそれにしても、最初は養父に従い修羅√。2周目は九朗クンに従い不死絶ち√。そして3周目最後は、九朗クンを生かす為に人返り√か。割と的確な周回をしたねぇ?」
「黙れ」
「おぉ怖い怖い。愛想無しだねぇ全く」
少し睨めば、こいつはそんな風にのらりくらりとおどけて見せる。
「まぁ良いや。君が行く世界の名は、《ハイスクールD×D》。因みに、君がいた葦名の世界線から直系の未来と言う世界線にしてあげよう」
「何?・・・初耳だが?」
「今決めたも~ん♪それに、君もその方が色々と便利でしょ?」
「・・・否定は、しないが・・・」
「あと、
「何だと!?」
こればかりは洒落にならないぞ!?
「名前は、そうだなぁ・・・
「何を勝手に・・・何より、竜胤の力を扱うには、因果の中心点たる竜胤の御子の中に、我が身の設計図を入力せねばならぬ筈・・・」
「あーそれはダイジョブダイジョブ。桜竜の魂そのものにキミの情報インプットしといたから」
こういう無駄な所で無駄に手際が良いのは、コイツが快楽主義の邪神故なのだろう。コイツと同系列の神性に同情・・・出来ないな。そもそもコイツの神話体系でこんなにハッキリした人格持ってるのがコイツぐらいだったな。
「と言う事で、いっちょチュートリアル行ってみよー!」
「急だな」
「新しい力なら、慣らしは必要でしょ?何より、せっかくボクが化身を弄って相手を作ったんだもん。使って貰いたいよ」
「・・・良いだろう。そもそも、此方に拒否権があるとは思えん」
「ひゅ~♪分かってるぅ♪」
コイツが鬱陶しさ全開で指を鳴らせば、周囲はたちまち真っ白に染まる。同時に、目の前には巨大な異形が現れた。
黒く、紫っぽくもある巨体。添え物程度の小さな翼に、奇怪な6本の脚。そして何より、下顎が無く腹が全て開いた巨大な口・・・うん。
「貪食ドラゴンじゃねぇかッ!!」
「あ、流石に素に戻ったか」
何つーモノを再現してくれやがる。つかよく見たら口の中にまで目玉が・・・咄嗟にまだら紫の曲がり瓢箪を取り出し一口呷る。危うく怖じ気付く所だった。
と言うか、俺はダークソウルはプレイした事無いぞ?
「心配ないよ。見た目が良かったから形を似せただけで、中身は別物にしてあるから」
「確かに、お前の好みそうな見てくれだ」
取り敢えず忍義手の忍具を確かめ、右手で腰の楔丸を抜刀し構える。
「じゃあ、チュートリアル開始!
言われるがままに眼を向け、軽く念じる。
胸の前に文字が現れ、消えた。
敵は龍。鱗を持つ不朽の存在。
鱗あるならば木行。金行の攻めが有効か。
「・・・ならば、これか」
義手忍具を、《錆び丸》に切り替える。
「じゃ、貪食ちゃんを動かすよー!」
『ギャオォォォォォッ!!』
右腕の凪払いが来る。角度と瞬を見極め、楔丸で弾き上げる。
「くッ・・・剛力だ」
体幹が大きく削られた感覚があった。このまま次あれを受ければ、確実に体勢を崩され殺られるだろう。
「あぐっ・・・ギリッ」
剛幹の飴を噛み締め、片足立ちで両手を左右にピンと伸ばす。身体の軸が定まり、力が籠るようになった。
『ギャオォォォォォ!』
今度は左腕の凪払い。再び楔丸を握り、上へとカチあげる。やはり剛幹の飴のお陰で、かなり耐えられるようになった。
「フッ、ハッ、タッ!」
故に捨て身で飛び込み、左後ろ脚を連続で斬り付ける。鱗はやはり堅いが、血を流す事は出来た。
「錆び丸ッ!!」
此処で義手忍具を展開。楔丸で付けた真新しい傷口を、青錆びの毒に
『ギシャァァァァッ!!』
「ぬぅっ!」
貪食ドラゴンは脚を前に踏み出し、長い尻尾で打ち付けてきた。これは下段攻撃、跳んで躱す。
そのままヒョイヒョイと飛び退き、傷薬瓢箪を一呷り。先程の受け止めで負ったダメージを癒した。
再び貪食ドラゴンの脚を見遣ってみれば、毒が然程廻った様子も無い。殆ど効き目が無いようだ。
「思い出してー!ダクソの龍にとって、1番の毒は何だったかなー?」
「龍の、毒・・・ッ!」
命無き龍を殺す毒。それ即ち、
「最初の死者ニトが火から見いだしたモノ・・・熱による、代謝の促進ッ!死へと向かい、その過程にて生を活性化する力ッ!」
道理で毒が効かぬ訳だ。古龍は本来生物ではない。生きていないモノは、只の毒では殺せない。
ならば、
「まずは、下準備だ」
油が詰まった壺を取り出し、貪食ドラゴンに投げ付ける。壺は容易く割れ砕け、中の油が貪食ドラゴンの鱗を濡らした。
「からの、息長の火吹き筒ッ!」
―バゴォンッ!―
瞬時に義手忍具を切り替え、油が掛かった貪食ドラゴン目掛けて放つ。
『ギィエェェェェェッ!!』
暴れまわる貪食ドラゴン。その脚や尻尾を躱しながら、俺は更に炎で炙る。すると、先程の脚の傷から血が吹き出し始めた。限り無く滞っていた新陳代謝が、無理矢理活発化された証拠だ。
「良いね良いねぇ!じゃあこういうのが来たら、どうするんだっけ?」
―バヂヂヂヂッ―
「雷ッ!?」
貪食ドラゴンが鎌首を
(そうか、木行ならば当然か。と言うか、魔改造にも程があるだろう)
しかし、雷の相手も今や慣れたもの。焦らず直上に飛び上がり、雷のブレスを身で受ける。
そして高電圧を帯電したまま、右手の楔丸を貪食ドラゴン目掛けて振り抜いた。
「雷返し!」
―ビシャァンッ!―
『ギャァァァァアァァァァァッ!?』
己の雷を真っ向から受け、大きく仰け反る貪食ドラゴン。その頭に、紅い点が見えた。
「勝機ッ!」
頭に忍義手から鍵縄を放ち、引き寄せて取り付く。その脳天に狙いを澄まし、右手の楔丸を一気に突き刺した。
『ギシャァァァァッ!!?』
暴れまわる貪食ドラゴン。振り落とされぬよう堪えながら、再び脳天を貫く。そして鼻先まで大きく斬り裂き、倒れ付した貪食ドラゴンの前に降り立つ。
「すっごーい!まさか倒しちゃうなんて!」
「・・・」
アイツが笑いながら近付いてくるが、あの笑顔・・・相手が悪戯に引っ掛かるのを今か今かと待ち構える子供のそれだ。そもそも、コイツが一度殺せば死ぬ程度の甘い敵を作る程、性格が良い筈が無い。
妙な確信を持って、俺は背中にあった不死斬りを抜刀。貪食ドラゴンの眼を、横から2つまとめて貫いた。
『ギシャァァァオォォォォ!!』
「・・・」
「あーらら、バレちゃった♪」
「貴様ならばこの仕様にすると思うた」
「流石にちょっと安直だったかー」
そう言い、コイツはケラケラと笑う。最後は伸びた眉間の皺が、また寄ってしまった。
「さて、チュートリアルは終わり!それと、キミの使ってた瓢箪とかそう言うアイテムは、変わらず使えるようにしとくからね!」
「・・・竜胤の、業か」
「あ、でも不死斬りと忍義手、あと楔丸はお預けね?」
「ぬぅ・・・だが、致し方、無しか」
現代日本では、刀など持てる訳も無いからな。
「じゃあ、狼クン。キミの戦いは、面白可笑しくボクが観ておくから。存分に楽しんでね!」
「フン、性悪が」
「それこそがボクだからね!じゃ、行ってらっしゃ~い♪」
―ガコンッ―
「何ィ!?」
突如開く足元。開いた暗い穴の中に、俺は吸い込まれていった。
(NOサイド)
「オギャア!オギャア!」
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
ある産婦人科にて、1人の男の子が生まれた。生まれつき白髪混じりのその子は、母に抱かれて元気に泣く。
(此処から自我あるとかあの性悪邪神めェェェ!!)
尚、産声の内容は自分を転生させた神への怨み節だった。
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
隻狼
今作の主人公。一般人→隻狼→D×D世界という順で転生。
と言っても、隻狼に乗り移ったのは古井戸で目覚めた時からである。
修羅、竜胤絶ち、人返りの順で周回した。義手忍具は最終強化されており、流派技も秘伝一心や竜閃含め全て修得済み。
前世ではとあるフロムゲー考察系YouTuberのファンであり、彼のフロムゲー考察動画の内容は全て覚えている。
ハイDに関しては名前しか知らない。
オリジナル神器、
今世での名前は未だ考え中。
特殊エフェクトの打ち込みが大変。
黒い男
隻狼を面白半分で殺し、転生させた邪神。
曰く、「特典だけ強請るかと思ったら、現地で修行もさせて欲しいとか言って来た奴は初めてだったから気に入った」との事。
この台詞から分かる通り、既に複数の人間を相手にこの愉快犯的転生をさせている。
しかし、主人公補正があると思い込んで特攻しすぐ死んでいったり、原作崩壊のパターンが在り来たりだったりで、正直飽き掛けていた所だった。
飽きてくれればよかったのに。
もうこんだけ要素出せば説明せずとも正体分かるでしょ。