ハイスクールSEKIRO   作:エターナルドーパント

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第11話 駒王に尖兵

「では、入って来て下さい!」

先生の言葉に従い、志狼達は教室の戸を開ける。

おぉ、と声が上がる中、2人はは教卓に上がった。

「葦原志狼。趣味は旅行と鍛錬。特技は料理と古武術。宜しく頼む」

「俺は兵藤一誠!趣味は筋トレと漫画集め!宜しくな!」

自己紹介が締め括られると、教室の女子からは黄色い歓声が上がる。双方共に締まった身体をしたかなりのイケメンなので、当然と言えば当然である。

尚、教室の男女比は志狼ら含めて3対7程。かなり偏っている。極近年まで女子校であり、其処から共学化した為だ。

「それと、隣のクラスにも俺らと同じ編入生が居るぜ!」

「共々、宜しく頼む」

「宜しくお願いします!葦原君の席は右後ろ、兵藤君は前方中央です!」

2人は担任に示された席に座り、馴れぬ景色に眼を馴染ませんと前を向いた。

 

(志狼サイド)

 

「だっはぁ~、疲れたぁ・・・」

「うむ・・・」

ぐでっと机に伏せるイッセー。つい今し方まで、クラスメイト(主に女子)から質問責めに遭っていたのだ。

かく言う俺も、かなり疲れた。

「と、急がねぇと。体育館だもんな」

「あぁ、行こう」

体育館シューズを手に席を立ち、歩きながらに頭を回す。

この学校・・・駒王(くおう)学園は、聖書の悪魔が仕切っているらしい。一応、日本神話とは正式な契約を交わした上で土地を借りているようだが・・・どうにも管理がお粗末であるとの事。何でも、貴族の統治の演習として、この街を治めているとの事。真面目ではあれども、まだまだ未熟。実際、黒歌とは違う類いのはぐれ悪魔も度々入り込んでいるらしい。

故に、最終手段として俺達が送られた。より良い関係の為、協力しろとのお達しだ。

「おい狼、また考え事か?」

「変わらないものですね」

「おっ、弦ちゃんに()()()()!」

と、背後から掛けられる声。振り返ると、其処には弦ちゃんと()()殿()が居た。

「久しいな、エマ殿。元気そうで何よりだ」

「ふふ。心配される程、柔ではありませんよ?」

「ッ!」

一瞬、エマ殿の気配が冷たく尖る。危険攻撃の前触れにも似たその殺気はしかし、数秒もせず霧散した。

「・・・成る程、磨きが掛かっている」

「一心様から、本格的に鍛え直して頂きましたから」

「なん、だと・・・」

修羅√で闘ったが、あの時点でエマ殿はべらぼうに強かった。あれが、まだ延びるのか・・・

「イッセー君!」

「おわっ!?」

と、そんな所にまた1人。女子がイッセーに抱き付いた。

「あぁ朱乃ちゃん、久し振りだな!」

「ずっと会いたかったんですわぁ♪」

言わずもがな、幼馴染みたる姫島朱乃殿。

甘え倒すようにイッセーに擦り付く彼女だが、実は3年生。俺達の1つ上の先輩だったりする。

「どうだ?お仕事は順調か?」

「あぁ~・・・大変ですわ」

そう言って遠い目をする朱乃殿。苦労が絶えぬのだろう。

「でも、着実に成長してはいますわ。熱心で真面目なのが美点です。

まぁ、ちょっと意地っ張りでプライドが高い所が玉に瑕ですし、まだまだ至らぬ所もありますが・・・」

「そうか・・・難儀だな」

「はい。でも、これも仕事です!可愛い後輩もいますからね!」

ふんすっ、と気合いを入れる朱乃殿。うむ、逞しくなったものだ。

「・・・おい、狼。何だあれ?」

「おぉ、弦ちゃん・・・あぁ・・・」

合流して来た弦ちゃん。その先に居たのは、数少ない俺達の男のクラスメイトの2人組。センターで髪を分けた眼鏡と、糸目の坊主頭だ。

その2人は、それはもうえげつない敵意を込めた眼で、イッセーを射殺さんばかりに睨み付けていた。

「クソッ!我が校の二大お姉様たる姫島先輩と何故あんなに親しげにッ!」

「しかも聴いたか!?朱乃ちゃんって!ちゃん付けだぞちゃん付け!ックゥ~、羨まけしからんッ!」

「・・・捨て置け。嫉妬だ」

「哀れなものだな」

「「イケメンは死ねェェェェッ!!」」

・・・何と言うか、稚拙な罵倒だ。それとも、挨拶感覚で罵倒を投げ付ける文化でもあるのだろうか。

あれではヤーナム野郎と大差無い。違いと言えば、湧いて来るのが苛立ちか共感性羞恥かぐらいである。

「行きましょう。彼ら、覗きの常習犯なんです」

「え、マジかよ朱乃ちゃん。今時覗きって・・・」

「それは頂けないな」

「えぇ。ですが、私には少し熱めのお灸を据える計画があります。準備も整い、今日実行するので、ここは1つお任せ下さい」

「お、おう・・・」

エマ殿の微笑みに、燃え盛る阿修羅像が重なって見える。これは、確実に地獄を見る嵌めになるな・・・

「・・・行こうか、シロー」

「そうだな・・・」

もうそろそろ良い時間だ。いい加減、体育館に行くとしよう。

 

───

──

 

「ふわぁ・・・話長かったなぁ・・・」

「全くだ。無駄に何度もループして、同じような話が堂々巡り。要点を掻い摘まんで話さねば、聴く側の頭にも残らず士気を落とすだけだと言うのに・・・」

 

校長の話が終わり、イッセーと弦ちゃんがグチグチと悪態を吐いている。だが、それも致し方無かろう。実際、こう言う場で校長が話せば、長いだけで全く頭に入らないものになりがちだからだ。

 

『新任教師、紹介』

 

司会のアナウンスと共に、檀上に1人の男が上がる。

新しい教師であろう彼は緩く波打った癖毛を揺らし、黒いシャツの上にワインレッドのベスト、同じくワインレッドのネクタイに黒いブレザーを着熟したその様を魅せる。

所謂日本人的な、其処まで秀でた特徴がある訳では無い顔立ちでありつつも、不思議な色気があり、独特な雰囲気を醸し出していた。

当然、女子生徒達は色めき立つ。

 

『えー、今年から、この駒王学園で勤務する事になりました、塗原(ぬりはら)畔裏(ほとり)と申します。

年齢は24歳。担当科目は家庭科と音楽。過去に古武術を嗜んだ経験があります。

自分で言うのも何ですが博識な方だと思うので、分からない事があれば気軽に頼って下さい』

 

柔らかく微笑みながら、洗練された一礼をしてみせる塗原先生。しかし、あの動きは・・・

 

「狼、気付いたか」

「あぁ・・・隙が無さ過ぎる。嗜んだと言う程度では無い」

 

弦ちゃんも気付いたらしい。あの男、中々の実力者だ。

「・・・しかし、まずは悪魔だ。今日、管理者と顔を合わせる。今はそれに尽きよう」

「・・・そう、だな。ああだこうだと言っても、今の所はさして怪しい点も無し。任務を優先するべきか」

弦ちゃんは頭を振り、思考を切り替える。

敵であると確認しないまま攻撃的な態度を取ると、碌な事にならない。

・・・それにしても、何か既視感があるような・・・気のせいか?

 

(NOサイド)

 

「兵藤君と、葦原君はいるかな?」

放課後。志狼達のクラスに、他クラスの男子がやって来た。

金髪でスリムで高身長。更に若干童顔なイケメンと言う女子の好物欲張りセットのような彼が来ようものならば、当然クラスの女子はさながら瞬間湯沸かし器のように沸騰する。

更に、ここは名門駒王学園。それも近年までお嬢様学校だった。当然、マナー等を口酸っぱく叩き込まれた女子が多い訳である。

「キャァァァ!木場君よぉぉ!!」

「葦原君と兵藤君を指名・・・閃いたッ!」

「薄い本が熱くなるわね!」

その結果がこれだ。多くの者が、ものの見事に腐れに飲まれた。

抑圧が強くなる程、その反動で趣味は捻じ曲がりやすくなる。お嬢様の集まるマンモス校ともなれば、最早純情のヘムウィック墓場街と言って良いだろう。校門の側にギロチンがありそうだ。

「・・・なぁ、あの女子達ってよ・・・」

「言うな。こう言った手合いは、火消しに何を言おうが逆効果だ。ほとぼりが冷めるのを、待つ他無い」

「うげぇ・・・」

げんなりとする一誠。一方の志狼も、表情こそ変わらないものの、内心では勘弁してくれ等と思っていたりする。

「あー・・・ンッン。初めまして、僕は木場祐斗。オカルト研究部のお使いだよ」

「成る程、分かった」

顔合わせの案内役を名乗る木場。成る程と2人は頷き、彼に着いて行く事となった。

途中で弦一郎とエマも拾われ、ぞろぞろと行進する。

「いやぁ、本来は副部長・・・姫島先輩が来る筈だったんだけど、急用が入っちゃったみたいでね」

「そりゃそうだよな。朱乃ちゃんこっち側だし。でもま、急用ならしゃあないか」

顔馴染みで気の置けない中である朱乃が来られないと言う事で、一誠は若干残念そうな様子である。

そうこうしている内に、目的地が見えて来た。校舎を抜けて暫く歩いた先、古い木造の旧校舎である。

「この旧校舎が、僕たちオカルト研究部・・・通称オカ研の拠点なんだ」

「危険じゃ無いのか?見るからにボロいぞ?」

「アハハ、大丈夫。中身はしっかり補強してあるよ」

弦一郎の疑問に答えつつ、木場は扉を開けて先行。志狼達もその後ろに続く。

少し進むと、黄色と黒のワーニングテープで封鎖されている区画が志狼達の眼に留まった。日常では見る事は無いであろうその虎縞模様に、思わず足を止める。

「ん、あぁ。彼所にはオカ研のメンバーの1人が住んでるんだ。人見知りが激しいから、入らないであげて」

「・・・承知」

湧き上がる好奇心に一時蓋をして、木場の案内に従った。そして旧校舎の奥、とある一室の扉を開く。

「ようこそ、オカルト研究部へ」

「おぉ・・・」

「あぁ・・・」

「うん・・・」

その部屋の内装に、志狼達はどう反応したものか困ってしまう。

赤黒い壁紙に魔方陣が描かれ、机には燭台(メノーラー)が置いてある。はっきり言うと、かなり趣味が悪い。

と言うか、仮にも悪魔がユダヤ教の祭具を用いるとはこれ如何に・・・

そして、部屋の中央に置かれた机を挟むように置かれたソファには赤毛の女生徒と、白髪の女生徒がそれぞれ座っている。

因みに白髪の方はかなり背が小さく、中学生と言って通用するレベルである。

「初めまして、日本のエージェント。

私はリアス・グレモリー。この街の管理をさせて貰っているわ」

まだまだ未熟だけどね、と笑ってみせるリアス。一方、向かいに座っている白髪少女は、チラチラと視線は向けつつも机に置かれた小箱からクッキーを取り出し、口に運び続けている。

「「「・・・」」」

「・・・あげません」

「こら小猫!」

その様子が気になってつい凝視してしまった志狼達に対し、白髪少女・・・塔城小猫はジト眼で睨みながらクッキーの箱を抱き寄せ庇う。大した食い意地である。

「あー、ごめんなさいね?この子は塔城小猫。1年生よ」

「ふむ・・・塔城、か」

何かを思い立ち、志狼は懐をまさぐる。そして、その中から何かを取り出し、小猫に向き直った。

「おい」

「?」

「おはぎ、食べるか」

「!」

志狼が取り出したのは、綺麗にラッピングされたおはぎだった。無論、服の中に入れていた訳では無い。竜胤の業で収納していたものだ。

「頂きます・・・!おいしい・・・!」

先程までの警戒心は何所へやら、早速ラッピングを剥がし、口に運ぶ。すると表情は驚きに染まり、眼はキラキラと輝き始めた。

「口に合ったのなら、良かった」

「これは何所で?」

「自作だが・・・?」

「これが・・・いや、確かにこの絶妙に不均等な形は手作り・・・」

うむむと唸りつつ、口は休む事無くおはぎを食み続ける。拳より一回り小さい程度の大きさのおはぎがその胃袋に収まるまで、20秒も掛からなかった。

「・・・ごちそうさまでした」

「あぁ」

態度は素っ気ないものの、明らかに雰囲気が柔らかくなる小猫。志狼は自分の選択が最善であった事を確信しつつ、リアスへと向き直る。

「ま、まぁ小猫ったら・・・ンッン。改めまして、ようこそオカルト研究部へ。葦原志狼君に、葦斑弦一郎君、兵藤一誠君、猩葦(あかよし)エマさん」

仕切り直して、にっこりと微笑むリアス。この時、一誠はかなりにやけそうになるのを我慢していた。

「朱乃からは、3人とも凄く強いと聞いているのだけれど・・・良ければ、うちの祐斗と手合わせして頂けないかしら。勿論、嫌なら構わないけど」

「ふむ・・・狼、どうする?」

「・・・俺は、イッセーを推薦する」

「え、俺ぇ!?」

驚く一誠に対して、志狼は淡々と続ける。

「イッセーの装備は、地獄の主戦力とほぼ同じ。脅威性のアピールとして、良い指標になるだろう」

「うーん、そっかぁ・・・」

実際、一誠の仕掛け武器は有事の際に兵士として駆り出される獄卒達にもかなり人気であり、《これが数万人規模で戦う》と言う基準を見せるにはもってこいである。

更に、基本手数がそもそも少ないので、相手に抜かれるデータそのものを抑えられると言う狙いもあった。

「えーっと・・・流石に対人で爆発金槌(バクツイ)はヤバいよな?」

「無論」

「じゃあパイルで」

パッと差し出された一誠の右手に、志狼がパイルハンマーを渡す。慣れた手つきで装着し、グリップを軽く握り込んだ。

(相棒、俺は使わないのか?)

(んー・・・ま、危なくなったら使うよ)

(・・・あぁ、分かった)

脳内でドライグと話しつつ、 一誠は木場の後ろに続く。旧校舎前の小振りなグラウンドで、5m離れた所で向き合った。

左足を引き、右腕を胸下に添えるような一礼・・・狩人の一礼をする一誠。それに対し、木場は剣道式の礼で応じる。

「では、始めッ!」

リアスの掛け声をゴングとし、木場は最短距離を突貫。そして虚空から一振りの剣を生み出し、鋭い突きを放った。

「よっと!」

一誠はその切っ先を避けつつ、右足でその剣の腹を踏み付ける。鍛え抜かれたストンプに耐えられず、切っ先を地面に埋められた剣は甲高い音と共にへし折れた。

「なっ!?」

「フンッ!」

重心の崩れと動揺で、思わず硬直する木場。それを好機と見た一誠は、パイルハンマーの鏃を突き出す。

「くっ!」

「っと、惜しい」

木場は重心を起こす事を瞬時に諦め、逆に左手を地面に着いて左前方に飛び込む事で回避。図らずも、ヤーナムローリングに良く似た回避を行った。

「うりゃっ!」

「うおっ!?」

しかし、一誠も梟相手に良い所まで行ける実力者。前に出た左足を踏ん張って強引に反転し、パイルハンマーの変形攻撃で斬り返す。

一誠の強靱な体幹に驚きつつ、バックステップで距離を取ろうとする木場。だが、開けようとした距離も一誠の大きな前ステップで一気に潰され、更なる追撃が振り抜かれた。

 

─ガギャンッ!─

 

溜めを最小限に、控えめの威力で撃ち出されるパイル。その先端は木場の顔を掠め、殺気を伴った圧をぶつける。

「まさか、ここまでとは・・・」

そう呟くと、木場の姿は掻き消えた。

一誠は一瞬混乱したものの、肌に感じる風と気配を読む事で、何とか後ろから振り抜かれた中段横一文字を弾く。そして左手で無防備になった首を掴み、腹に鏃の先端を添えた。

「ま・・・参りました」

「ふぅ・・・お疲れさん」

双方構えを解き、握手を交わす。

「こ、これにも反応するのか・・・自信無くしちゃうなぁ・・・」

「いや、一瞬マジで消えたかと思ったぜ」

そう言って笑う一誠だったが、普通悪魔の、それも速度特化である騎士の駒のスピードに、人の身で反応する事はまず不可能である。

「ほら、言った通り。強いでしょう?リアス」

「あ、朱乃!」「お、朱乃ちゃん!」

「只今戻りましたわ、リアス。そしてお疲れさまです、イッセー君」

音も無く現れた朱乃。それぞれに挨拶をして、一誠に歩み寄る。

「相変わらず、見事な戦いぶりですわね」

「へへ、まぁな!伊達に地獄で鍛えてねぇって!まぁ、それを知らなかったから油断しても仕方無かったし、最初からあのスピード出されたら流石に勝てねぇかもだけど・・・

と、そう言えば・・・」

一誠の視線が、朱乃の右手に移る。其処には、一本のステッキが握られていた。焼鉄色をしたその表面には、薄らと美しい波打ち模様が渋く光っている。

「その杖は?」

「あぁ、これですか?これは私の専用武器です。地獄工房から仕上がったと連絡があったので、受け取ってきたんですわ」

スルリと杖の表面を撫でる朱乃。志狼は勿論その杖の正体を知っていたが、敢えて黙っておく事にする。

「所でイッセー君?見ての通りリアスはかなりの美人で巨乳ですが、まさかあの胸にデレデレするような事は・・・

ありませんでしたわよね?」

「ヒェッ!?」

瞬間、その微笑みから温度が消え去る。その末恐ろしい気配に、一誠は身の毛が弥立つのを感じた。

「朱乃殿、その辺りで」

「・・・分かりました。志狼さんに免じて、今回は許してあげます」

「ふぅ・・・」

何とかギリギリ許され、胸を撫で下ろす一誠。後ろ暗い事があったらしく、どうやら彼女には頭が上がらないようだ。

「えーっと・・・そうだ、祐斗!貴方から見てみて、兵藤君はどうだった?」

「あ、イッセーで良いですよ」

「あら、ありがとう。それで、どうだった?」

「うーん・・・」

少し唸り、木場は回答を練る。そして、口を開いた。

「まず、とんでもない実力です。こんな見るからに暴れ馬な武器を使いこなす筋力も然る事ながら、3m以上の後退にピッタリと追随する踏み込みの鋭さ、武器を振るう時に的確に重心を操作するバランス感覚、僕の剣戟に容易く反応する反射神経・・・どれを取っても、人並み外れたものがあります。

何より、勘の良さには驚かされました。一瞥もせず背後からの奇襲を察知するなんて・・・」

「いやぁ、気配とか空気の流れで何となく・・・それに、パッと消えては死角に回って斬り掛かるって、俺がメインで教わってるおやっさんの常套手段だからよ。馴れてた」

「一体どんな人に教わってるんだい・・・?」

「シローの師匠の1人。因みにシローにはあと2人師匠がいて、1人以外は免許皆伝だって」

「へ、へぇ・・・」

明らかに引き攣った表情で、奇異なものを見る目を志狼に向ける木場。最早人間であるか疑わしいとでも言いたげである。

「そう言やぁ、木場って何本も剣出して使ってたよな。お前の神器か?」

「ん、あぁ、そうだね。魔剣創造、ソードバース。ありとあらゆる魔剣を創り出す事が出来る神器だよ」

「何だと・・・!」

その性質に、志狼は大きく反応した。

「おい、その魔剣創造とやら・・・もしや、創作物に登場する魔剣も創れるのではないか?」

「え?さ、さぁ、やった事が無いから判らな・・・ちょ、圧!圧が!圧が凄いんだけど!?」

「あー、シロー結構ヲタクだからな。アニメとかに出てきたモンが再現出来るかもって感じでワクワクしてるんだよ」

「こんな狼初めて見たぞ・・・」

のほほんと解説する一誠と、顔を引き攣らせる弦一郎。

一方志狼はこれでもかと眼を輝かせているのだが、如何せん無表情で眼だけをカッ開いてるものだから威圧感が半端では無い。

「よし、今度お勧めの漫画や小説を幾つか持って来る。血界戦線、Bloody cross、HELLSING、鬼滅の刃、仮面ライダーも捨てがたい。駄女神ユリス・・・は、止めておくか。呪いの三剣(トライ・カース)はデメリットが大き過ぎる。

兎に角、サブカルチャーには一度眼を通すべきだ。再現の出来る出来ずに関わらず、あれはお前の糧になる」

「マジで漫画で強くなった実例が居るモンなァ、うち・・・」

 

「ぶぇっくしっ!」

 

一誠が遠い目で呟いたと同時刻、地獄の某所で1人の男が盛大にくしゃみをかましていた。

「え、えーっと・・・早くも打ち解けたみたいで何よりだわ」

「打ち解けた・・・とは、ちょっと違うんじゃないか?」

呆れ顔の弦一郎の突っ込みが、空しく響く。しかしリアスは訂正しない。何故なら既に情報過多で、二日酔いするタイプのサメ映画を3周したような気分になっているからだ。

「あの、葦原先輩」

「どうした」

そんな中、小猫が志狼の袖を引っ張る。何やら気になる事があるようだ。

「あの、おかしな事を聞きますけど・・・黒い猫を、飼っていますか?」

「・・・あぁ。毛並みが綺麗な、自慢の愛猫だ」

「そう、ですか・・・」

複雑な顔をする小猫。その顔で、志狼は少なからぬ事を悟った。しかし、それを見て取られる程、志狼も未熟では無い。最早デフォルトと化したポーカーフェイスで、感情を隠す。

「毛でも、付いていたか」

「!あ、はい。袖の所に・・・も、もう取れましたから!」

「そうか・・・あいつは、干したての洗濯物の匂いが好きでな。良く畳んだ服の上で寝ている。その時に、付いたのだろう」

「そ、そうですか」

飽くまで知らぬ振りを通す為、出鱈目を言って小猫にフォローを入れる志狼。一方小猫はそれを聞いて、何とも言い難い、先程とは別ベクトルに複雑な顔をした。

(・・・後が怖そうだし、黒歌さんには黙っといてやるか)

(へぇ、黒歌姉にそんな趣味が)

因みに弦一郎は何かあると察したようだが、逆に一誠には黒歌に対する決して小さくない風評被害が生まれてしまっていた。

 

「すぅー・・・うん、良い香り!」

 

尤も、あながち完全に風評被害とは言い切れない所もあるようだが。

「所で貴方達、入る部活は決めてあるのかしら?良ければオカ研に招待したいのだけれど・・・」

「私は家庭科部と罰ゲーム研究会所属です」

「我々も、自分で部活を立ち上げるつもりだ」

「そ、そう・・・」

スカウトが玉砕し、ションボリと凹むリアス。志狼達の戦力が、かなり魅力的だったのだろう。

「因みに、どう言う部活にするつもりなんだい?」

「「「葦名・ヤーナム戦技同好会」」」

「これまた妙ちきりんな・・・あ、ごめん・・・」

思わず漏れた本音を謝罪する木場だったが、志郎達は気にしないと言う。どうやら馴れっこのようだ。

「だが、イギリスでは人気だったぞ」

「え?教えたの?」

「あぁ。向こうにもアーチェリーやらフェンシングやらクレイモアやら、武術系のクラブがあったからな。

是非見せてくれと言われたから、俺と狼の試合を()()()やった」

「・・・それで、結果は?」

「あぁ、彼奴ら面白いぐらいに大かぶれしてな。特にサブカルチャーヲタクの類いが。

で、もう口頭だけで何度も教えるのは面倒だから、ノートで指南書を作って基礎だけ教えてやった」

「因みに、俺と弦ちゃんの試合はSNSに投稿されている」

「えー・・・今度探してみよう・・・」

どうやらコイツら、イギリス留学中に割ととんでもない事をして来たらしい。

まぁNINJA VS SAMURAIなど、外国人のテンションが電子レンジで加熱された生卵みたく爆発して当然ではあるのだが。

「と、そろそろ良い時間ですね。この後、あの変態2人組に渡すものがあるので、私はこれで」

「あー、俺達も今日は帰らせて貰っても良いか?」

「え、えぇ。またね」

「では」

引き攣った笑みを浮かべて手を振るリアス。そんな彼女を背にして、志狼達はオカ研を後にするのだった。

 

(えぇっと、効くのはこれかしら)

その日、リアスはコンビニでキャベ〇ンを買い・・・

 

「・・・彼ら本当に人間なのかな」

木場は見付けた試合動画に絶句し・・・

 

「姉さま・・・」

小猫は久しく感じていなかった姉の匂いに、感傷を見出していた。

 

 

 

「なぁ、松田・・・」

「何だ、元浜・・・」

「俺ら、こんな時間まで何してんだろうな・・・」

「俺に聞くな・・・」

一方その頃(午後6時頃)。変態2人組は揃って仲良く、トイレの住人になっていた。エマの毒牙に掛けられて、まだ暫くは動けまい。

 


 

「・・・参る」

薄暗い洞窟を抜けた海岸。黄金色の異常な月が照らす、真っ白いエイのような異形の死骸が打ち棄てられたそこで、志狼は呟いた。

 

─ウゥゥ・・・アァァ・・・─

 

海を、その先の異形の月を見つめて、嘆くように泣く異形。

背は高いが痩せ細り、背中にはマントにも似た羊膜のような膜が垂れ、右手に握った肉塊は、肉の紐によってその異形の臍に繫がっている。その泡立つ肉塊・・・胎盤の縁には、金属質な刃のようなものが付いていた。

老いて朽ちた老人のような、または生まれたての赤子のような、歪な存在。

 

─────ゴースの遺子─────

 

志狼は楔丸を抜刀。柳に構えながら、ゴースの遺児目掛けて駆け出した。

 

「ほう、もう此所まで来たか。安心してクリアしろよ?お前の神器も、大丈夫なようにご都合主義的を掛けてやったからな・・・あばよ」

 

【NURIHARA!ACCESS GRANTED!】

 

それを崖の上から見下ろしていた、黒い影にも気付かずに。

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

葦原志狼
英国帰り戦国忍者。尚、英国で結構な事をやらかした模様。
前世からのヲタク気質故に、押しが強い。
留学という名目で英国遠征に行っていた。獲たモノは多い。
勿論天猫も一緒に行った。
で、まさかのゴースの遺子戦。まぁ色々とありましてん。

葦斑弦一郎
英国帰り弦ちゃん。志狼と同じくやらかした。
長い髪をポニーテールにしており、体育で走る様が良い絵になると写真部や新聞部から人気が出る事になる。
英国では一般生徒の前で普通に浮き船渡りやら桜舞いやらカマしてた。

兵藤一誠
人外レベルの原作主人公。練度がエグい。
梟を相手に五分五分以上に戦えるようになってきた為、背後からの殺気にとても敏感。半分は天性の才能だが。

猩葦(あかよし)エマ。
実は転生してたエマ殿。家庭科部と罰ゲーム研究会を兼部。
変態2人組にプレゼントしたのはチョコレートである。尤も、ヒマシ油*1とデナトニウム*2とサッカリンナトリウム*3を混ぜ込んだ劇物指定待った無しの殺人チョコレートではあるが。
因みに薬学専攻であり、今世でも医者を目指している。
葦名にコンタクトを取れたのは中学3年生になってから。

姫島朱乃
オカ研副部長。イッセーのヒロイン最有力候補。
この世界線では日本神話所属であり、工作員兼アドバイザー兼監視員としてオカ研に所属している。
悪魔にはなっていない。

リアス・グレモリー
オカ研部長。
一応常識人寄りにキャラメイクしたつもり。そして苦労人成分を小さじ1杯入れようとしたら計量カップに山盛り入れちゃった。ゴメン。
抜かる所はまだあるが、少なくとも原作のバイサーのような事件は起こらない。

塗原畔裏
まぁ、皆さん薄々気付いてるでしょう。なので多くは語りません。

*1
超強力下剤。ナチスが拷問に使ったとも言われる。3時間はトイレの住人になる。

*2
ギネス認定苦味物質。耳かき1杯で浴槽並々の水が苦くて舐められなくなる。摂取すれば味覚がぶっ壊れる。

*3
ギネス認定甘味物質。メタリックな甘味と形容され、単体で摂取すると神経がバグって信号が近い苦味まで感じる。味覚がぶっ壊れる。

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