ハイスクールSEKIRO   作:エターナルドーパント

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第17話 異端の悪魔払い、聖女の苦悶

(志狼サイド)

 

「では、此方も独自に動くと言う事で」

「お願いするわ。力及ばず、申し訳無いけど・・・」

エマ殿と部長殿が、話を纏めた。

俺達も夜間、当番制で、交代でパトロールする事になったらしい。基本2人1組。俺とイッセー、弦ちゃんとエマ殿が、それぞれペアだ。

「でも、大丈夫なの?男子は兎も角、猩葦さんもパトロールって・・・」

「心配いりませんわ、リアス」

手入れをしていた仕込み杖の石突きを床に打ち付けて変形させながら、朱乃殿が微笑む。

「こう見えてエマさんは、私と引き分ける熟達の柔剣士。並大抵の相手では、相手にもなりませんわ」

「あぁ。俺も忍具無しには、勝率は7割を切る」

「その代わり、傘を持たれては一勝も取れなくなってしまいますがね」

朱乃殿と俺からの評価に、悩ましげに謙遜するエマ殿。しかし、本業が薬師と考えれば、これも驚異的な実力だ。

何より、女性特有の柔軟な肉体が放つ、神速の葦名十文字。最適な弾きを知らない者には、まず真面には防げまい。

「そ、そうなのね・・・では、お願いするわ。呉々も、気を付けてね」

「心得ております」

研ぎ澄まされた鋼のように透明感のある剣気を放ちながら、エマ殿は一礼する。その覇気に当てられ木場は冷や汗を一粒零し、塔城は髪をゾワリと逆立てた。

 

(NOサイド)

 

「此方も、異常無し」

「平和で何よりだな」

深夜。戦装束姿の志狼と弦一郎は、定められた通りに街を巡回していた。と言っても、同じく巡回している警官の類いとかち合わぬよう、軽業師のように屋根を伝って、だが。

そんな平和な巡回の中でも、志狼の眼は違和感を見逃さない。

「ん・・・弦ちゃん、彼処が怪しい」

「そうか?ならば行ってみよう」

志狼が指差したのは、ごく普通の一軒家。しかし志狼の眼には、その建物の入口を薄らと覆う、霧のような物が映っていた。

(あれは・・・ボスエリアに掛かる霧、か?・・・何にせよ、ただ事では無さそうだ)

腰の楔丸に手を掛け、警戒しながら家の前に降り立つ。正面から見れば、玄関は開け放たれており、何やら物々しい雰囲気だった。

「行くぞ」「ああ」

霧をくぐって玄関から踏み入り、曲がり角に注意しながら間取りを調べる。どうやら右手奥にリビングがあるようだ。

そして、若干の異臭・・・屍臭を、2人の鼻は嗅ぎ取った。

「黒だ」

「フン、憑いてるな」

顔を顰めて、皮肉を零す弦一郎。自らの第二の故郷を民草の血で穢される事が、度し難く赦せないのだろう。

「1」

「2の・・・!」

互いにタイミングを合わせ、ドアを蹴り開けてリビングに突入。その瞬間、2人は眼を見開く事になる。

「これは・・・!」

「なん、という・・・ッ!」

其所にあったのは、1つの男の死体だった。リビングにあると言うだけでも異質だが、問題はその状態。

爪は剥がされ、指は砕かれ、手足の関節に無事なものは無い。顔は頬肉を削ぎ落とされており、眼も鼻も潰され、口は歯が悉く折り取られている。所々には、焼き鏝でも押し付けられたのか、真っ黒に焦げた跡もあった。

何よりも冒涜的なのは、手足を釘で打ち付け、壁に磔にされている事だ。

そしてその壁には、雑な血文字で何かが書かれていた。

「くっ・・・」

「《“神に代わってお仕置きよ”》♪」

「「ッ!」」

「《って言うね、とあるエラ~いお方のお言葉を借りた次第で御座いますよォ》」

キッチンの奥から、巫山戯た口調で英語を話す男が現れる。キリスト教の神父服を纏った銀髪のその男は、銃身が十字柱型の特殊な拳銃と、刀身が光で出来た剣を装備していた。

よく見れば、手首や足首の袖口が血で汚れている。この惨状を造り出した下手人と見て、ほぼ間違い無いだろう。

「貴様・・・《この者が、一体何をした!貴様は何故、この者を殺し、辱めたッ!!》」

「《え~?だってコイツ、クソ悪魔と契約しちゃったゴミカス野郎なんですよォ~?あんなド屑共と連んでる時点で、有罪(ギルティ)じゃん!有害じゃん!生きる価値なんざナッシングじゃん!ってな訳でね。汚物は消毒しちゃった方が、世のため人のためってヤツでしょ?

うっひゃー!俺っち偉~い♪》」

「・・・もう良い。黙れ」

怒りで全身から熱気を噴き出し、バリバリと放電で空気を焦がしながら抜刀する弦一郎。志狼も同じく楔丸を抜き放ち、左手には義手忍具を構える。

「《カーッ!何?あんさんら、俺っちと戦っちゃうつもり?2対1っつってもさぁ、こちとらテメェらみてぇなカス共を何十人も地獄にご案内してるのよねぇ。分かる?つまりさ》───」

 

──危──

 

─ガキキンッ─

 

「《は?何防いでくれちゃってんの?》」

何の構えも無い状態から、危険察知が働く程の殺気を感じた志狼は、瞬時に前に踏み出す。そして素早く左手の義手忍具、仕込み傘・磁鉄軸を展開し、音も無く飛来する弾丸を完璧に弾いた。

不意撃ちが不発に終わった神父はあからさまに苛立ち、ゴキリと首を鳴らす。

一方、弦一郎は志狼に正面を任せ、背後で1枚の護符を破った。

()()、此方雷狗(らいく)!・・・応答を!

・・・チッ、伝符が効かぬか。妙な結界を張っていると見える」

弦一郎が破ったのは、本来ならば通信機の役割を持つ《伝符》。しかし、何らかの結界に妨害されたのか、音信不通に終わる。

「《へぇ~?さっきは俺っちにキレまくってた癖に、連絡とかしちゃうんだ~。もしかして、勝てる自信が無いのカナ?やいやい弱虫ビビってるぅ~?》」

「耳を貸すな雷狗。うつけの戯れ言だ」

「おい()()、余り馬鹿にしてくれるな。報・連・相を知らぬ阿呆に気を揺るがされる程、俺は未熟では無い」

軽口のように志狼に返し、弦一郎は凶暴に頬を吊り上げた。

「《あーりゃりゃ。めーんどくせぇヤーツ》」

「キャアアアァッ!?」

「「ッ!?」」

唐突に響いた、絹を裂くような悲鳴。志狼と弦一郎が眼を向けると、其所には1人の少女が立ち尽くしていた。

「アル、ジェント・・・?」

その少女は、弦一郎が助け、案内したシスター・・・アーシア・アルジェントである。

「《げ、ゲンイチローさん?・・・何で、どうして・・・フリード神父!これは、どういう事なのですか!?》」

「《えー?何の事ぉ?》」

「《この!惨状の事です!何で、こんな酷い・・・》」

「《あー、このゴミ屑の事?コイツねぇ~、クソ悪魔なんかと契約しちゃうマジで屑などーしようも無いヤツだからさ。正義執行!って感じ?悪魔信望者なんざブッ殺コロしちゃうのが世のため人のため~って、教会でも散々言われてるでしょ》」

「《そんな・・・それでも!こんな、残酷に・・・》」

「《ハンッ、流石は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、悪魔だけじゃなく信望者まで庇っちゃうなんてホント終わって》」

「《黙れ》」

もはや黙って見ているのも限界となり、アーシアを庇うように前に出る弦一郎。強きは弱きを護るべし(ノブレス・オブリージュ)を信条とする彼には、フリード神父が放った罵詈雑言は聞き流せないものだった。

「《ゲンイチロー、さん・・・》」

「《アルジェントがどのような理由で此処に居るか、俺の知った事では無い。だが少なくとも、コイツは俺の知る吐き気を催す邪悪の類いでは無い。心清らかな、か弱い乙女だ。

故に俺は、アルジェントを貶させん。力を持つ者としてな》」

「《ハッ、感動的なラブロマンスですかァ?甘ったるいったらありゃしねぇなッ!》」

 

─ギャインッ─

 

フリードの光剣と、弦一郎の弓刀が交差する。並大抵の武器では一方的に溶断する光剣だが、それは相手が普通の金属だった場合の話。数千年使い込まれた地獄鋼から鍛造した葦名の弓刀は、その熱量にも容易く耐えて見せた。

「《ったく、何なんですかねぇそのサムライソードは。普通鉄ならズバッと切れちゃうってのに》」

「《お生憎様、地獄製の特注品だ。貴様の安物のライター如きで、焼き切れる代物では無いッ!》」

 

─ダゴグッ ドゴッ─

 

「ガハァッ!?」

弦一郎の前蹴りが、フリードの鳩尾に命中。其所から更に掴みに派生し、渾身の鉄拳を腹に叩き込む。

「隻狼!アルジェントを!」

「承知。《おい、こっちに》」

「《は、はい・・・》」

弦一郎に任された志狼は、アーシアの手を取りリビングを出る。一応玄関を確認してみるが、やはり悪夢の霧で閉ざされていた。

「ならば・・・試してみるか」

志狼は踵を返して階段を登り、バルコニーに出る。見立て通り、その縁には悪夢の霧は掛かっていなかった。白痴のロマのいるビルゲンワースでは、悪夢の霧を抜けても横に飛び降りる事で脱出出来る。それを思い出し、同じ事が出来るのではないかと期待した通りだった。

「《掴まれ》」

「《は、はい!きゃっ!?》」

節制生活で平均よりも軽いアーシアを抱え、外に跳躍。鍵縄で勢いを殺し、スムーズに着地する。

「《無事か?》」

「《は、はい、大丈夫です・・・あの、ゲンイチローさんは・・・》」

「《心配するな。弦ちゃんはあんな外道に負ける程弱くは・・・》」

 

──危──

 

「ッ!危ない!」

「《きゃっ!?》」

殺気を感じ、咄嗟にアーシアを突き飛ばす志狼。その直後、数本の光の槍が彼の背中を貫いた。

「がはッ!?」

「《え・・・うそ、いや!そんな・・・!》」

「全く、余り手間を掛けさせるなよ」

胴体に大穴を開け、倒れる志狼。アーシアは掌から光を溢れさせ身体に触れようとするが、空から降りて来た堕天使がそれを阻む。

「《いや!やめて下さい!やめて!》」

「暴れるな!クソ、人間風情が!」

「かはっ・・・!?」

腹を殴られ、アーシアの意識は暗転。倒れ伏す志狼はそれを睨むが、しかし身体は言う事を聞いてくれない。

「じゃあな、劣等種」

そんな志狼を嘲りながら、堕天使は飛び去った。

「《スタコラサッサ~、っと、あーらまくたばってやんの》」

隙を突いて逃げ出したのか、玄関から飛び出して来たフリードもまた、死に体の志狼を鼻で嗤う。そして足元に何かを叩き付け、出現したポータルに消えた。

「待てッ!・・・隻狼!大丈夫か!?」

「くっ・・・ガキッ」

 

──死──

 

自決用の青い丸薬(噛み締め)を噛み潰し、即座に死ぬ。中途半端な回復で死にきれなかった身体を、噛み締めの即効毒が瞬く間に殺した。

 

――回生――

 

「くっ・・・ここからでは、もう矢も届かぬか。外れたら大事になる・・・クソッ!」

弓刀を変形させたものの、歯噛みし握り締めるに留める弦一郎。

己の得物の間合いは、己が最も良く理解している。如何に葦名一の弓取りと唄われた弦一郎であれども、並の鳥よりも余程早く飛び去る的に市街地で矢を射掛ける程、己の腕には酔っていない。

「また・・・俺は、護れなかったか・・・」

「雷狗・・・聴け」

無力感に打ち拉がれる弦一郎に、志狼が語り掛けた。

「主は、絶対。命を賭して護り、奪われども、必ず取り戻せ・・・

父上の掟だ。彼女は、主に在らずとも・・・友では、あろう。ならば、取り戻すぞ。共に」

「隻狼・・・あぁ、そうだな。アルジェントは、今朝方街を案内した長い付き合いだ。

全身全霊を賭けて・・・彼女を救う!」

弦一郎の眼が、鋭く輝きを増す。その決意は心の刃となり、折れる事は無いだろう。

「そうだ・・・それと、済まなかった。俺が護れれば、最善だった」

「全くだ!熟々(つくづく)お前は、護衛に向かないと見える!」

「耳の痛い話だ」

「だが・・・」

容赦の無い批判から一変、声色に信頼が宿る。

「取り戻す事に掛けては、お前は手練れだ。お爺様の次にな」

「国盗りと比べられては、少々恐ろしいがな」

がちっと拳を打ち合せ、互いの気持ちに区切りを着ける。そして志狼は、懐から取り出した伝符を破った。

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

葦原志狼
またまた影薄い戦国忍者。コイツ主人公だよね?コードネームは隻狼。
またまた護衛対象を攫われた。飛んでくる槍から遠ざけたから仕方無いかも知れないが、そもそもその槍も元から志狼を狙って放たれたモノだったので、ぶっちゃけ普通に弾けば良かっただけだったりもする。まぁ咄嗟だからね。

葦斑弦一郎
ノブレスオブリージュ弦ちゃん。コードネームは雷狗。
大切なモノの為に頑張るけど報われない、健気可哀想な弦ちゃん。
オーズの「長い付き合い」と、デモンズの「全身全霊を賭けて」を使った。因みにデモンズはベルト音声が中の人ネタ。

猩葦エマ
交渉や説明を任されている薬師。
今の狼でも忍具無しには容易く勝てない達人級の柔剣士。弱点は傘。

フリード・セルゼン
ゲス神父。原作よりも拷問が苛烈。
原作描写では普通に日本語で喋ってたけど、多分悪魔の駒の翻訳機能だから今回日本語は喋らせていない。
実はキャラを掴みかねており、間違ってないかちょっと不安。でも確認しようにも原作はちょっと受け付けない。

アーシア・アルジェント
ド天然シスター。
何でフリードがこの子をひっ連れて来たかは謎。仕事終わりにオタノシミでもする予定だったんだろうか。
実はパニクりつつも志狼に治癒を施したが、そのせいで志狼はスムーズに回生出来なかったと言う、致し方無くはあれども戦犯行為を働いてしまった。

~アイテム紹介~

伝符
現代陰陽師が使う札の1種。天猫作。
手短な伝達の為に用いる使い捨て式通信用呪符であり、真ん中のミシン目で上下に破る事で起動する。下半分が送話符、上半分が受話符であり、送話符には《送耳》、受話符には《受口》の呪紋が描かれている。
親符と子符があり、志狼達の持つモノは子符。
親符は全体放送と選択送受が、子符からは親符と送受可能。それを傍受するだけならば、札を破る必要は無い。
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