荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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投稿大幅に遅れて申し訳ないです……

全5話構成、時系列は「満たされないペイルカラー」後になります。


外伝 幕間の物語
東雲姉弟×鶴音姉妹 その1


日はまだ高くもうすぐお昼時というところ。

とある街中を2人の男女が早足に通り抜けていく。

 

「ほら、早く行かないと他のお客さんが来ちゃうでしょ」

「んなこと言っても、休みの日じゃどこだって満員だろ」

 

少し不機嫌そうに先を歩くのは東雲絵名と、

その後ろに続くのはその弟である東雲彰人。

珍しく早起きしたかと思えばいきなり外に連れ出され、

いつものように付き合うことを強要されている。

 

どうせこうなれば荷物持ちか自撮りに付き合わされるかのどちらかである。

しかし最近特に不調だった絵名の事を思えば、

この強制連行こそ彼女の調子が戻った証でもあった。

 

その確認もかねて致し方なしと付き合うことになったわけで、今回限りの特例である。

 

「で? 今日はどこに行くんだ」

「保護猫カフェ」

「は?」

「だから、保護猫カフェ。最近話題になってる場所があるからそこに行くの」

 

意外な場所ではあったが、一度サークルメンバーで行ったという話を聞いた気がする。

そこかは解らないものの、あまり動物に関心のない彰人からすればどうでもよかった。

 

「そんなとこに行ってまた自撮りか? まあよく飽きないで……」

「別にいいでしょ。料理とかデザートも全部手作りに拘ってて、凄く美味しいらしいし。

 ほら、これお店のアドレス」

 

連絡用のアプリから送られてきた情報を確認すると、確かにレビューの大半が高評価で占めている。

そして猫の写真もさることながら、料理の写真も多数投稿されていた。

無論その中には東雲姉弟が好きなパンケーキの画像も含まれている。

 

「へぇ、結構旨そうだな」

「でしょ。それに再放送でテレビにも出てたから」

「それならなおさら自撮りとか無理だろ。それこそ開店前に並ぶとかしねーと」

「そこらへんはちゃんと調べてますー。

 開店時だと確かに多いらしいけど、1時間ぐらいで捌けちゃうんだって。

 それからお昼時まで少ないらしいから……あった!」

「うおっ!?」

 

喋っている途中で急に足を止めたため、ぶつかるギリギリのところで停止する彰人。

目的地と思わしき建物の窓際では猫が日向ぼっこをしていた。

 

「可愛い~!」

 

黄色い声をあげつつも早速何枚か写真を撮っている絵名。

その間に店内へと視線を向ければ、確かに客はいない様子だった。

 

「とりあえずオレは先に入っとくぞ」

「あ、ちょっと待ってよ!」

 

扉を開き2人は店内へ。

取り付けられたベルが小さな音を立てて入店を知らせた。

 

「いらっしゃいませー。2名様ですか?」

「はい。予約とかしてないんですけど大丈夫ですか?」

「ええ、ちょうどお客さんも引いたところですから。ご来店は始めてですか?」

「そうですね」

「では当店のルールを説明させていただきますね」

 

彰人がオーナーを思わしき女性と話している間、絵名は店内を見渡している。

そんな中でふとレジ横のクッションに鎮座する黒猫を見つけた。

視線を合わせると、器用に片方の前足をあげてこちらを招いている。

この猫こそ絵名がここに来た真の理由であった。

 

「店員さん、ここって写真OKですよね」

「ええ。フラッシュさえたかなければ問題ないですよ」

「ありがとうございます!」

 

2人の会話に割り込むように許可を得た絵名は早速件の猫を撮り始める。

一方の彰人は写真についぞ興味もないため、説明を聞き終えてからは触れ合える場所へと移動した。

店内には先程の日向ぼっこをしていた猫の他に数匹の猫が自由気ままに過ごしている。

ふと歩き回っていた猫が足元にすり寄ってきた。

ゆっくりと手を伸ばして撫でようとしたところで。

 

「うう~!」

 

絵名が卯なり声をあげて隣に座り込む。その声と衝撃に驚き猫は逃げてしまった。

 

「どうしたんだよ急に。写真撮ってたんじゃなかったのか」

「だってあの子、全然あそこから動いてくれないんだもん!」

 

彼女の指差す先で先程の黒猫が丸まっていた。

話を聞くには、あの場所は光の辺り具合が悪く綺麗に映えないらしい。

そして自分と一緒に撮る為にも側に来てくれるのが一番なのだが、

何をしても一向に動かないんだとか。

 

「ごめんなさいね。あの子、ほとんど人に懐かないの」

 

申し訳なさそうにオーナーが声をかけてくれる。

ふれあいコーナーとはまた別のところにあるテーブルの上に料理を配膳していた。

 

「ウチの看板猫で引き取りたいって人も多いんだけど……

 ほらオニキス、こっちにいらっしゃい」

 

オーナーがその名前を呼ぶも動く気配はない。

それでも入店した接客対応が話題を呼んでいるのは事実。

自分ならと彰人も考えたが、姉の前でみっともない結果を見せるのだけは勘弁であり、

挑戦する前から諦めてテーブル席へと移動する。

 

そんな時、店の扉が開かれ2人の少女が姿を表した。

 

「こんにちわオーナーさん、来ちゃいました!」

「あら文ちゃんいらっしゃい。お姉さんも」

「はい。割引券、ありがとうございます」

「「げっ……」」

「「あっ」」

 

それはプライベートでは絶対に会いたくない存在──鶴音姉妹。

 

「ど、どうしてアンタがここに!?」

「どうして、と言われても叔母から割引券をもらったので」

「というか妹まで一緒かよ……」

「むー、それってどういう意味ですかー!?」

 

東雲姉弟は図らずも重いため息を吐くのであった。

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