荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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東雲姉弟×鶴音姉妹 その5

 

お互いに連絡を取り合い、集合地点へ。

 

「お姉ちゃー……ん?」

 

その姿を見るや否や駆け出す文は、違和感を覚えて停止する。

それもそのはず。見ない内に随分といいセンスの服に変わっていたからだ。

姉にそんなセンスはない。となると選んだのは必然的に絞られる。

 

「文、東雲さんに迷惑かけなかった……文?」

「ぐぬぬ、お姉ちゃんがわたし以外の人に服買ってもらってる……しかもセンスいいし……」

 

そのセンスが憎いのか羨ましいのか、

よくわからない感情が入り交じった目で彰人を睨み付ける。

一方の彰人はその顔に対して自慢げに笑って見せた。

 

「確か前、姉のこと何も知らないのに~って言ってたよな。それで、感想は?」

「むぅ、一回くらいで調子に乗らないでください!」

「文、東雲君も冗談で言ってるだけだから」

 

その間に入ってなんとか文を宥める言葉。

割と冗談半分本気半分で言ったつもりであった為、間違いではない。

 

「へぇ、彰人にしては珍しいじゃん。女の子に服選んであげるなんて」

「これでも伊達にセレクトショップでバイトしてねーよ」

 

仕事では確かに女性に対しても助言することは多い。

しかしプライベートまでそれに付き合うことは少なかった。

 

「ところで絵名はどこ行ってたんだよ」

「私? それはねー」

 

ひどく上機嫌な絵名はスマホの画面を見せる。

そこには先ほど撮影した様々なケーキが写し出されていた。

 

「どれもうまそうだな……って、また食いに行ったのか? よくもまあそんな細い体に」

「残念でしたー。食べたのはほとんど文ちゃんですー」

「はい、ゴチになりました!」

 

あれからというもの2人はケーキを食していた訳だが、

その8割を文が完食したにも関わらず、その代金は割り勘していた。

割りに合わないかも知れないが、絵名からすればそれに足る十分な理由がある。そのお礼も兼ねていた。

 

「あ、ではその分は私が払いますね。レシートを見せていただけますか?」

「それは別にいいったら! そ・れ・よ・り・も!」

 

おもむろに財布を取り出す言葉に詰めより、その耳を借りる。

 

「アンタ、これだけいい妹がいるんだから、ちゃんとお礼言ってあげなさいよね!」

 

文には聞こえない様に呟いてすぐに離れた。それは当然彰人にも聞こえていない。

突然の奇っ怪な行動に首をかしげる2人。

 

「お姉ちゃん、絵名さんなんて言ったの?」

「あ、うん。それは「それ以上言ったらアンタとの連絡先削除するから!」……ごめん、秘密」

「えー! ずるーい!」

 

絵名の連絡先は今だ残っているものの、その必要性は感じられない。

しかし、そこを中継して瑞希や奏に連絡できるのは明らかな強み。いざという時に役に立つ。

瑞希と連絡先を交換すればいいだけの話だが、学校は今長期の休みに入っている為、

それも叶わぬ願いであった。

 

「もうこんな時間。私達帰らなきゃ」

「では、この辺りで解散しましょうか」

「あ、ちょっと待って。絵名さん、もし良かったら連絡先交換しませんか!」

「あ、そっか。まだしてなかったよね。いいよ」

 

文が解散の声を遮って絵名にスマホを指し出した。

短いやり取りでも手慣れた操作で連絡先の交換を済ませて文は言葉の元へと戻っていく。

 

「それじゃあ、また」

「ああ」

「絵名さん、また一緒にお買い物しましょう!」

「うん。またね、文ちゃん」

 

4人はいつもの姉弟姉妹に戻り、帰路へ着くのであった。

 

 

 

家についた絵名は落ち着いてからナイトコードを立ち上げる。

まだ25時にはほど遠いものの、早く仲間に今日の話をしたくなったのだ。

 

「(あ、Amiaがインしてる……そうだ、今日の写真自慢しちゃお)」

 

絵名にとっては話すには格好の的である。早速ボイスチャットで呼び掛けようとして。

 

『あ、えななんやっと入ってきたー。今日は早いね』

『? Amiaの方こそ今日は十分早いじゃない』

『それなんだけど、実はえななんに是非とも聞いてほしい話があってね~』

 

瑞希の声に先を越される。そのまま捲し立てるように話し始める。

ここまで強引なのは何かのイベントに皆を誘う時くらいだ。

 

『いやー、弟君もスミに置けないね。まさか彼女さんがいたなんて』

『は? 彰人に彼女? いるわけないじゃない』

『でもボク見ちゃったんだよ! 女の子と仲良くお店に入っていくのを!』

『どうせ一緒に音楽やってる子でしょ』

『違う違う! その子とは別の子!』

『え、嘘、ほんとに……?』

 

そんな話をまったく聞かないし興味もないが、いざ先に越されたとなると話が変わってくる。

親ともまったくそんな話をしないが、環境の変化で意識してそういう話題が上がるかもしれない。

嫌いな父親にそこまで突っ込まれたら、正直平常心で居られる自信もなかった。

 

『実はその時の写真があるんだけど、見る?』

『見せて!』

『ええー、ボクが苦労して手にいれた『どうでもいいから、早く!』はいはい、ちょっと待っててね』

 

いつにない剣幕で迫ってくるからか、それとも十分な反応を得られたからか。

瑞希は観念してその写真を送る。そこに写し出されていたのは──

 

『なにこれ、アイツじゃない』

 

彰人と言葉の姿であった。しかもその服を見る限り、今日の出来事である。

瑞希が偶然それを見かけ、誇張して話していただけだった。

 

『どう? 彼女さんかわいくない?』

『どうもなにも、今日撮ったんでしょこれ。私も別のところに居たから知ってるの』

『なーんだ。えななんはどこで何してたの?』

『アイツの妹ちゃんとお茶してた』

『え? 言葉の妹!? どんな子なの?』

『教えてあげない。それじゃあ私、作業するからミュートにする』

『えー! なんでさー!』

 

先ほどのお返しとばかりに絵名はミュートに入りペンを取る。

今日はいい絵が描けそうだ、と。

それからK──奏がやって来るまで、瑞希の抗議の声は止まないのであった。




ご無沙汰……というよりちょっとぶりです。kasyopaです。
数日前にデイリーランキングに載せて頂き本当にありがとうございました。
今までに類を見ないUA上昇率とお気に入り登録数でびびり散らしていました。

さて、今回はアンケートで選ばれた『東雲姉弟』と鶴音姉妹のお話でした。
ペイルカラーで絵名の父親が出てきたときは震えましたね。
ただ、彰人に似て口下手なんだわなこれが……ほんといいキャラしてるよ。

さて、次回は2話構成のちょっとしたお話です。お楽しみにー。
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