──セカイの狭間。
空も、大地もないそんな場所で、1人の歌姫が歌っている。
『キミ』は、いつか見たその光景を思い出しながらその歌声に耳を傾けているだろう。
「こんにちは。また会ったね」
キミが知り、キミをよく知る歌姫──初音ミクが話しかけてくる。
『こんにちは』と返事を返すと笑顔で応えてくれた。
「ここで会うのも3回目だね。セカイを見守るのも慣れてきた頃かな?」
キミが選んだのは、セカイを見守ること。
それを続けて、様々な歌が生まれる時を見てきた。
そのため普通なら彼女達の現実世界か、セカイを垣間見るのがいつもの事。
セカイの狭間に来るのは、特別な時しかありえなかった。
だからこそキミはミクに問いかける。『今日はどうしたの?』と。
「今日はわたし達にとっても特別な日だから、お話がしたいと思って」
確かにキミはこのセカイを訪れて半年あまり。
それを祝ってくれるのかと少しばかり期待してしまう。
「ふふ、それじゃあ始めよっか」
「──とっても素敵なおとぎ話を、ね」
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あるところに、とても可愛らしい女の子がいました。
森の畔で女の子はすやすやとお昼寝をしています。
「ん……あれ? ここは……」
あ、目を覚ましたみたい。
黒髪に大きな青いリボン、綺麗な青い瞳。
青のワンピースに白のエプロンドレス。真っ白なニーソックスに黒い靴。
この子の名前はアリス*1。
え? アリスは普通金髪じゃないかって?
ふふ、そこはこのセカイのおとぎ話だから。
「えっと、私は確か……あれ、どうして寝てたんだろう……」
アリスはちょっと混乱しているみたい。
それでもなんとか思い出そうと立ち上がり、回りの景色を見渡します。
「急がないとオーディションに遅刻しちゃう……!」
そんな中、赤いチョッキに身を包んだ白ウサギ*2を見つけました。
その手には懐中時計を握りしめていて、なんだかとっても急いでいるみたい。
そのまま森の中に入ってしまいました。
「あれって花里さんだよね……どうしたんだろう」
アリスは白ウサギを追いかけて森の中に飛び込みます。
木々がうっそうと茂る森の中ではすぐに見失ってしまいました。
アリスは思ったよりも勇敢みたい。
でもそのせいか、すぐ隣に落ちていた自分のスマホに気付くことはありませんでした。
・
・
それからしばらく周囲を散策したアリスでしたが、白ウサギを見つけることはできません。
「仕方ないけど、一旦戻ろうかな」
諦めて来た道を戻ろうとするも、道はどこにもありません。
どうやら勇敢すぎて目印をつけることを忘れていたようです。
「これじゃあ、戻れないよね」
「──♪ ──! ───♪」
するとどこからか不思議な歌が響いてきました。
それは1人でも力強くて、どこまでも真剣なんだということが伝わってきます。
それに音程もかなり正確で、思わず聞き惚れてしまうくらい。
その歌に導かれるように向かえば、紺色の服に身を包み華麗な躍りと歌を披露するイモムシ*3がいました。
アリスは勇気をもってイモムシに話しかけます。
「えっと……青柳さん、ですよね」
「ん、ああ、そうだが……確か星乃さん、でしたね。
こんなところでどうしたんですか?」
「これは私にもわからなくて……あの、赤いチョッキを来た女の子がここを通りませんでしたか?」
「いや、俺は見ていません。知り合いですか?」
「はい。オーディションに遅刻するって言ってて」
どうやらアリスはこのイモムシのことも知っているみたいです。
白ウサギがどこに行ったか聞いてみるも、いい答えはもらえませんでした。
「ああ、それか……なんでもこの先にある城でオーディションが行われるらしいです。
俺もそれに向けて練習していたんですが……」
どうやら、白ウサギもイモムシも同じ目的があるみたいです。
でもどうしてかその答えははっきりしません。
「オーディションって、歌のオーディションですか?」
「ああ。ここの女王が曲を作っていて、その歌い手を募集している……らしいんです」
「らしい……?」
「俺もなぜここに居るのか、なぜそれを知っているかわからないんですよ。
星乃さんに呼ばれるまでは、なんの疑いもなかったんですが」
「そういえば私も、そうだった気がする……」
アリスはなんの理由もなく、どうして白ウサギを追いかけようと思ったのか解りませんでした。
ただ、そうするのが正しいと言わんばかりに。
「(そうだ私、セカイに行くためにUntitledを再生して……目が覚めたらここにいたんだ)」
自分も名前を呼ばれたからか、
自分の名前と、どうしてこのセカイに来たのか。
思い出したようにスマホを取り出そうとしますが、もちろんポケットには入っていません。
「青柳さん、スマホ持ってませんか?」
「……すまない。俺もどこかに落としたらしい」
ただ2人ともセカイに来ている、というのはわかっているみたいです。
「とりあえず、この先にあるお城へ向かいましょう。
恐らくそこに手がかりがあるはずです」
「そうですね。わかりました」
力強く頷いて、丘の上に見えるお城をみつめます。
こうして
・
・
森を進めばよりうっそうとした木々に囲まれ、遠くに見えていたはずのお城も隠れてしまいました。
方向も定まらないまま歩いていると、甘い香りが漂ってきます。
その方を見てみると、なんということでしょう。
森の広間で帽子屋*4がテーブルを広げ、お茶会を開いているではありませんか。
でも、他にお客さんはいないようです。
「鶴音さん! こんなところで何をしてるんですか?」
「
そう言ってポットから紅茶を注ぎ、暖かいお茶を振る舞います。
でも2人には行くべき場所があるので、お茶を飲む時間もありません。
「でも、私達には行かなきゃいけないところがあって」
「それはお城のことですよね。立ち話もなんですし、どうですか?」
解っていながら、それでもお茶を差し出すことをやめません。
「確かにあのお城を目指すのは正解です。
でも、あそこの女王様はとても気分屋ですから、
招待状を受け取った相手でなければお話しすることも叶いませんよ」
「つまり、あらかじめ決められたメンツによるオーディション、というわけだな」
「流石
優雅に、そして上品に。
一方で招待状なんてものがある、ということを知り2人は戸惑います。
「確かにオーディションなら、審査用の書類が必要だよね……」
「ああ。もしくはスカウトされた際の名刺あたりか。招待状に当たるならそのくらいだろう」
「ところで偶然にもこちらに招待状が3つありまして」
思い悩む2人を見て、
その中にはスペード・ハート・ダイヤのカードが1枚ずつ入っていました。
その後ろは不思議な模様が描かれていますが、なんの変哲もないトランプのようです。
「トランプが、招待状?」
「はい。先ほども言いましたが随分と変わり者の女王様ですからね。
もしよろしければ、お譲りしますよ」
「……ありがとうございます!」
「ただし──」
なにやらお願い事があるようです。
「このお茶会に参加してくれたら、ですよ」
どこまで行っても
2人も普段はしっかりしている彼女がゆっくりしている理由を信じて、
お茶会に参加するのでした。
「そういえば、クラブのカードがないようだが」
「クラブのカードなら先ほど通りかかった
「花里さんが来たんですか?」
思いがけない名前を聞いて、
それでも、
「はい。随分と急いでいらっしゃったので、お茶会は叶いませんでしたが」
「えっと、どこに向かったかは……」
「受けとるや否や、あちらの方に向けて駆けていきました」
そういって
それを知って2人は急いでお茶を飲み干し、席を立ちます。
「鶴音さんありがとう。お茶、美味しかったです」
「1杯だけでいいんですか? おかわりもありますよ?」
「俺達はいかなきゃいけない場所があるからな。終わったらまた来るかも知れない」
「そうですか、残念です。ではその時までお待ちしてますね」
「えっ、鶴音さんはいかないんですか?」
普通なら手がかりの為に
でも、
「私はもう少しお茶会を楽しんでいます。招待状は全部持っていってください。きっと役に立ちますよ」
「でもそれじゃあ鶴音さんがお城に入れないんじゃ……」
「その辺りはお気にせず。さあ、行ってください」
「星乃さん、行きましょう。鶴音はこうなると言うことを聞かない」
「……わかりました」
1人残された
・
・
お日様の光も届かない真っ暗な森の中。
『そんなに急いでも、いいことないよ』
木の上から声が響いてきました。
その方を見れば、2匹*5のチェシャ猫*6がこちらを見下ろしています。
視線を合わせると、そこからすぐに消えてしまいました。
『急いでいるなら、止まらなきゃ。止まっていたいなら、走らなきゃいけないよ』
それは木々に反射して、どこから聞こえてくるのか全くわかりません。
本当に急いでいるなら、その声も無視することもできたでしょう。
でも、2人は見覚えのある姿と聞き覚えのある声に足を止めてしまいます。
「さっきの、草薙さんだった……」
「ああ、そのようだ」
お互いに耳を澄ませますが、声のありかはわかりません。
よくわからない言葉を森のどこかから言いふらす少女は、
近くにいるようで、でも遠くにいるようで、混乱を誘います。
『わたしはどこにでもいて、どこにもいない。ふふ、見つけられるかな?』
普段の彼女とはまるで別人のように振る舞っていて、役を自分の物にしているようです。
機械の音に紛れて素早く動く影を捉えることはできません。
「っ! 草薙さん! 私です、星乃一歌です! 話を聞いてください!」
このままではいけないと思った
もしこの声が届いたなら、きっと正気に戻ってくれると信じて。
「えっ、星乃さん? あれ……わたし何して……ネネロボ、ストップ!」
その想いが通じたのか、影の動きはだんだんゆっくりになっていきます。
そこから姿を現したのはピンク色の衣装に身を包み、ロボットに乗る
「やっぱり草薙さんだった。ごめん、驚かせたみたいで」
「ううん。わたしも何て言うか、正気? に戻れたから」
「星乃さんのお蔭ですね。俺では思い付かなかった」
「確か青柳さん、だっけ。その、珍しい組み合わせだね」
「私も青柳さんとはさっき出会ったばっかりで。あ、そうだ。草薙さん、スマホ持ってない?」
「スマホなら……あれ、ない……さっき落としたのかな」
ロボットに乗っていても、あれだけ早く動いていたら振動は抑えきれなかったみたい。
何かの拍子に落としてしまったのかな。
「そっか。じゃあお城に向かうしかなさそうだね」
「お城? そんなのがここにはあるの?」
「ああ、それは俺から説明しよう」
「ネネ、ネネ」
「ネネロボ? どうしたの」
「そのカード、見セテモラエマセンか?」
「ロ、ロボットが喋った!?」
すると、そこにいたもう1匹の
自分から話したロボットに2人は驚きを隠せません。
それはさておき、手渡されたカードをくまなく見ていると、ふと裏に書かれた模様を見つめていました。
「どう? なにかわかりそう?」
「カードに隠サレタ、コードを発見シマシタ。現在スキャン中デス」
「コード? でも、裏面には何も……」
「ああ、そういうことか。きっと役に立つと言っていたが……」
「コードのスキャンに成功シマシタ。コチラに表示シマス」
それを不思議に見つめていた
「これ、今私達がいる場所と、お城までの道のり……?」
「そうみたい。ネネロボ、お手柄」
「アリガトウゴザマス、ネネ。皆サン、ゴ案内シマス」
今まではっきりとした道を知らなかったけど、ここまでわかれば目的地まですぐ。
3人(4人?)はお城に向けて早速出発するのでした。
・
・
しかし門は固く閉ざされていて、開く様子はありません。
そこで1匹の白ウサギが困った様子で中を覗き込んでいます。
「うーん、会場はここであってるはずなのに……すみませーん! 開けてくださーい!」
「花里さん! よかった、やっと追い付いた」
「あれ、その声は……一歌ちゃん!」
1人で不安なところに知った人が現れて、喜んでいるみたい。
「星乃さんの知り合い、か?」
「そうみたい。わたしも見たことないから宮女の人かな」
「あ、申し遅れました! わたし、花里みのりです! 新人アイドルです!」
「青柳冬弥だ。よろしく」
「えっと、草薙寧々……こっちはネネロボ。よろしく」
「ヨロシクオネガイシマス」
「わわっ、ロボットがしゃべ……よ、よろしくお願いします!」
「「(それにしても、アイドル……?)」」
独特の自己紹介と明るいテンションで、2人は戸惑っているみたい。
でも
「それで、花里さんはここで何をしてたの?」
「あ、えっと、オーディションがこのお城であるって聞いて来たんだけど、門が閉まっちゃってて。
場所はここで間違いないんだけど、お城からは誰も出てくる感じもしないし……」
「そうだ花里さん、鶴音さんから貰った招待状ってある?」
「うん、持ってるよ!」
そういって見せた大きな懐中時計の蓋の裏に、クラブのカードが入っていました。
「これで全部、だよね」
「そうだな。ネネロボに見せても……変化はないか」
「ネネロボ、どう?」
「解析シテミマス」
これで4枚の招待状が揃ったけど、門の前で立ち往生してるみたい。
「スキャン完了。コノカードにも、他のカードと同ジ情報が記録サレテイマス」
「そっか……」
「あ、じゃあ4枚を組み合わせてみたら」
手詰まりか、と
その模様を組み合わせて、新しい模様が浮かび上がってきました。
「草薙さん、どうしたの?」
「たぶん鶴音さんの事だから、このくらいのことはそうだけど……ネネロボ、どう?」
「流石デス、ネネ。新シイコードを確認シマシタ。スキャンを開始シマス」
「凄ーい! どうしてわかったの?」
「えっと、ゲームのやり込み要素とかでこういうのよくあるから……」
「1件のメッセージを確認。再生シマス」
少し時間が経った後、
『その門、押せば開きますよ。鍵はかかってませんので』
そこから再生されたのは
それだけ言い残すと後は無音のノイズが続いているだけで、終わりのようです。
「押せば開くそうだが……でも、本当にそうなのか?」
「流石にこのお城でそんな警備が緩いわけ……」
「とりあえずやってみる価値はある、と思う」
「じゃあ4人で一緒に、せーの!」
4人合わせて門を押せば鈍い音を立てて開きます。
どうやら本当に鍵はかかっていないみたいです。
「開いたな」
「いや、不用心過ぎるでしょ」
「でもこれでオーディションに間に合うよ!」
「そうだね。とりあえず招待状があるし、行ってみようよ」
そういってお城の扉を目指して歩き出すと、音を立ててひとりでに開くのが見えました。
その中から、白くて綺麗な髪をしたハートの女王*7が──
「うっ……日差し強い。やっぱり部屋で待ってよう……」
日の光を浴びた途端、逃げるようにお城の中へ引きこもってしまいました。
「えーっと、さっきのはなんだったんだろう……」
「もしかして、あの子が女王様?」
「でも、城の中に戻っていってしまったな」
「(あの人、どこかで見た気がする……)」
3人はそれぞれの反応をしますが、
そんな疑問を張らすために、彼女は最初に扉を開きました。
部屋の中は真っ暗で、でもパソコンの画面だけが光っています。
その前で赤いジャージ姿の女の子が画面を見つめていました。
「あのー、オーディションを受けに来たんですけど……」
「オーディション……? ああ、ちょっと待って。もうすぐ出来るから」
パソコンの画面にはゆっくりと延びるバーが映っていて、
彼女の回りにはいくつも五線紙が散りばめられていました。
暗くてよく見えませんが、お部屋も随分と散らかっているみたい。
「よし、書き出しが終わった……オーディション参加希望の人は、招待状を見せて」
「あ、はい。これです」
1人ずつ、女の子に招待状として渡されたトランプを見せます。
すると招待状を受けとる代わりに五線紙を渡して、部屋の奥に見える扉を指差しました。
「とりあえずあそこがレコーディングルームになってるから、
1人ずつ歌ってみてほしい。楽譜はさっき渡したものだから」
「いきなり本番、ですか?」
「仮歌くらいで大丈夫。その中で一番気に入った物を採用させてもらうから」
急な話に
でも4人ともオーディションっていう目的のためにここまで来たから、断れないよね。
「とりあえずやってみよっか。採用されたら帰れるかもしれないし」
こうして、オーディションという名のレコーディングが始まったのでした。
・
・
「………」
「えっと、どう、かな?」
するとヘッドホンを外して4人に言いました。
「うん。みんな違ってみんな良いんだけど……でも、なにか足りない気がする」
どうやらハートの女王は満足していないみたいです。
「アリスの声はキリッとしてて、叫ぶ感じだけど曲に絞まりが出る。
白ウサギの声は元気がはつらつとしてて、曲を明るくしてくれる。
イモムシの声は曲全体をよく把握しててバランスがすごくいい。
チェシャ猫の声はすごく感情が籠っていて思いが伝わってくる。
でも、なにか足りない。これじゃ、皆を救えない……」
「「「「………」」」」
思い詰めたように言葉を吐き出す彼女に、4人は何て声をかければわかりません。
それでも1人、前に出て口を開きます。
「それなら、皆で歌うというのはどうですか?」
それは意外にも
「音楽は自由です。ソロというものも味があるのは俺にもわかります。
でも皆で歌えばお互いを補うことができる。背中を預けることだってできます」
「青柳さんのいう通りだよ! わたしもいろんなライブ見てきたけど、
このアイドルが歌ってはじめて響く歌詞ってあると思うし」
「それはわたしもわかる気がする。ミュージカルだって、
1人じゃ絶対に出来ない演目だってあるし、歓声とかも曲のひとつだから」
「……それに何より、皆で歌った方が楽しいよね」
皆、それぞれの想いから教えて貰った答えをハートの女王に伝えます。
それを聞いて、さっき録音した音声を一緒に流してきいてみることにしました。
するとどうでしょう。ハートの女王の表情が驚きに満ちていきます。
「そっか、皆で……一緒に歌う、か。考えもしなかったな」
それだけ呟いて、もう一度4人に向き直ります。
「でも、このままじゃダメ。一緒に歌うなら、もう一回その前提で録り直さないと」
「あ、それならここの歌詞は──」
「それだとパートが被ると思いますからここは──」
「じゃあここはわたしが歌って──」
「──ふふ」
その言葉を聞いて5人の少女達はもう一度歌について考えることにしました。
少しだけその様子を外から眺めていた
こうして5人によって紡がれた歌はとても素敵な歌となってセカイ中に響き渡り、
役目を果たした少女達は無事に帰ることができましたとさ。
////////////////////////
「めでたし、めでたし」
ミクが長いお話を終えて、キミを見る。
『素敵なおとぎ話だった』とキミが答えると、ミクはまた笑顔で答えてくれた。
「気に入ってくれたみたいでよかった」
それでも、どうしてミクがこんな話をしてくれたのだろう。
キミはその疑問をミクに投げ掛ける。
特別な日だから、というのも結局のところわからない。
「今日は『嘘をついていい日』なんだよね?」
「これは全部、本当にあったことじゃない。だから『嘘』のお話」
「セカイを見守ってくれるキミのために、なにか1つお返しがしたかったんだけど……
わたしは歌で嘘はつけないから」
その辺り、歌姫としてのプライドがあるのか、それとも別の意味があるかはわからない。
それでもミクがキミのために紡いでくれた優しい嘘は、心地よかった。
「これからも、わたしとセカイを一緒に見守ってくれるかな?」
そんな問いかけにキミは力強く頷く。
そこに嘘なんてものは、どこにもなかった。
Alice in Musicland/OSTAR project
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「あれ、まだ残ってたんだ?
……さっきの話には続きがあるんじゃないかって?
ふふ、やっぱりキミの目は誤魔化せないね。
だってこれまで、いろんなセカイを見てきたんだもん。
でも今は少しだけ待ってほしいな。
今話しちゃったら、全部嘘になっちゃうから。
その時が来たら、もうちょっとだけ話してあげる。
お話の結末と、そこから始まる本当のお話をね!」