荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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本当のお話

これは役目を果たした少女達がセカイを去った後の話。

 

部屋でただ1人残されたハートの女王は、まだ帰ることができませんでした。

彼女を残して少女達は行ってしまいました。

それでもハートの女王は満足しています。この歌が誰かの心に届くと信じていたから。

 

気分もすっかり晴れた彼女は、久しぶりに外へと駆り出します。

ここはとっても不思議な国。誰かを救える曲のアイディアもたくさんつまっているはずです。

 

ハートの女王はアリス(一歌)が来た道を戻っていきます。

道を辿り、深い森を越え、そして───

 

 

 

「お待ちしてました。ハートの女王(宵崎)さん」

 

帽子屋(言葉)さんのお茶会。

あれからどれだけ時間が経ったかなんて誰にもわかりません。

でもそれは帽子屋(言葉)さんにとって関係のないこと。

だって彼女の『時間は止まっている』のですから。

 

「鶴音さん……どうして」

「アリスも、白ウサギも、イモムシも、帽子屋も、チェシャ猫も、ハートの女王も。

 どれも全て与えられたものです。それは私達のものじゃない」

 

「ではその役目を終えた時、私達に残るものはなにか。宵崎さんにはわかりますか?」

「……本当の名前」

「正解です」

 

空いたティーカップに紅茶を注ぎながら、ちょっと難しいやりとりをして、

ハートの女王()は隣の席に座ります。

 

「これで私の役目も果たせました。演者は居なくなり、物語は終わりを告げる。

 不思議の国のアリス(本当のお話)には程遠い物語でしたが」

「……そうだね。わたしの知ってる()()()とは全然違ってた」

 

ハートの女王()が見たアリス(一歌)は服装こそ似ていたけれど、

それ以外は何1つとして似ていなくて。

でも、綺麗な黒髪は忘れられませんでした。

 

お互いにカップを差し出して、紅茶を飲む2人。

それを見届けるようにセカイは光に包まれるのでした。

 

 

////////////////////////

 

 

「これで、おとぎ話は本当におしまい」

 

「え? この後みんながどうなったか知りたい?」

 

「それは、自分の目で確かめるのがいいんじゃないかな?」

 

「それじゃあ、あの子達に会いに行こう!」

 

 

////////////////////////

 

 

「ん……あれ、もう朝……?」

 

カーテンから漏れる光を浴びて、一歌は目を覚ます。

 

「なんだか不思議な夢を見てた気がするけど……なんだろう。思い出せないな……」

 

夢の内容を思い出そうとして、視界の端に写った目覚まし時計を見た。

それはまもなくバイトが始まることを指し示している。

 

「いけない! 今日のシフト朝からだ!」

 

急いで身支度を整えて家を出る。

走っていけばなんとか間に合うか、という時間の為急いで電話

をかけた。

 

「あっ、店長すみません! 今日寝坊しちゃって、少し遅れるかもしれなくて……

 はい、すみません。できる限り急ぎますので、それでは!」

 

一報入れてから再び走ることに集中する一歌。

そんな中で、白い犬をつれて散歩するみのりや、路上で歌の練習をしている冬弥、

ゲームセンターに入っていく寧々を見かて、何となく既視感を覚えていた。

 

「(なんだろう……いつもと変わらないはずなのに、違って見えるような……)」

 

そんな考えの中、なんとか遅刻せずにバイト先へたどり着いた一歌であった。

 

 

 

お昼時のピークタイムを過ぎ、お客さんも落ち着いた頃。

もうすぐ上がりの時間というタイミングで2人の客が訪れた。

 

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりで──」

「もしかして星乃さん、ですか?」

「あっ、鶴音さん」

 

お決まりの台詞をいいかけたところで、その客が自分の見知った人だと気付く。

その後ろには連れと思わしき少女の姿もあった。

奇しくも咲希のシンセを買いに行った時とは立場が逆である。

 

しかし知り合いとはいえ、一歌が働いているのはファーストフード店。

どれだけ早く正確に客がさばけるかの勝負だ。

一旦気を取り直して注文を受けとり、次の少女へ。

 

「「あっ……」」

 

しかしその少女もまた、お互いに見知った少女であった。

その綺麗な髪を見間違えることはない。

 

「ハートの女王……」「アリス……」

 

夢の中であったような気がして、2人は思わず口をこぼす。

 

「あ、えと、失礼しました! ご注文どうぞ!」

「え……ああ、じゃあ──」

 

幸か不幸かその少女を待つ者はおらず、

お互いの言葉で正気を取り戻し焦った様子で注文を取る一歌であった。

 

「お疲れ様星乃さん。もうすぐ時間だし先に上がってていいよ」

「ありがとうございます。それでは、お先失礼します」

 

長蛇の列をさばき切った一歌は、先輩の労いを受けつつ更衣室へ。

しかしどうしてもあの少女のことが忘れられなかった。

 

「(このまま帰ったら、絶対に後悔する……かもしれない。だから──)」

 

着替えを終えて店内へ。目的の少女達はすみの席に座って談笑している。

一歌は勇気をもって2人に話しかけた。

 

「あの、すみません」

「あ、星乃さん。今バイト上がりですか?」

「えっと、はい。鶴音さんは……」

「見ての通り演奏の帰りですよ」

「そうだったんですね……それで、この人は……」

 

席の隣にはいつものキャリーカートが置いてある。

思わず返事を返してくれた言葉に逃げてしまうも、目的はそれじゃない。

 

「「………」」

 

思わず白の少女に目が行ってしまうも、何を話せばいいかわからない。

 

「「(『髪が綺麗ですね』……ってそれじゃ絶対変な人に思われるし、

  『夢で会いませんでしたか』……ってそれも絶対変だよね)」」

 

意外にもこの2人のきっかけは同じ物だが、話しかける話題は完全に不審者のそれである。

奏はともかく一歌でさえも、それを口にするのは憚られた。

 

「──お2人とも、私のご友人です。

   私としては、お2人同士でも仲良くしていただけると嬉しいのですが」

 

その手に持っていた紙コップをおいて、言葉が口を開く。

少しだけ間をおいて2人は自分の名を口にした。

 

「星乃一歌です。よろしくお願いします」

「宵崎奏。よろしく」

 

──これは、嘘のような本当のお話。不思議な夢を通して繋がれた1つの縁。

  それを信じるか信じないかは、キミ次第。




どうもkasyopaです。

嘘の魔法も1日で解ける。そんなお話。
間にちょっとしたお話が入りましたが、その辺りは寛大でいていただけると幸いです。

さて、このお話で第1部の物語はおしまいです。
今後2部中に何か記念の話(特にみのりの誕生日とUA10000記念)があれば、
この枠に挿入させていただく形になると思いますが、
一旦1部は閉幕とさせていただきます。

そして、休止期間をいただこうかと思ったのですが、
()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
時おりアンケートなど設けさせていただくので、
投票していただければ幸いです。

ニーゴ・レオニだけでなく未知のシャッフルも控える中で震えている私ですが、
できる限りお付き合いいただければ、と。

次回、荒野の少女と1つのセカイ。「第1部総集編」。
お楽しみに?
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