荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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みのりの誕生日記念話です。
こちらも第2部終了後、サイドストーリーに移動させます。


閑話 最高の時間を、貴女に

4月14日まで後一週間ほどといったある日、遥・愛莉・雫・文は秘密裏に雫の家に集まっていた。

内容はもちろん──

 

「ではこれより、みのりちゃんの誕生日サプライズパーティー企画会議を始めます!」

「わかってはいたけど、そのまんまね……」

「あら、私はわかりやすくていいと思うんだけど……」

 

文の音頭に愛莉が「知ってた」という表情を浮かべる。

一方で雫は「どうして?」といった顔をしていた。

遥はただ苦笑しかできない。

 

「でも、わたしなんかがお呼ばれして良かったんですか?

 わたし、MORE MORE JUMP!の皆さんとは確かにお知り合いですけど」

「みのりをお祝いしたい、って気持ちは一緒だから大丈夫。

 それに文にはファンからの視点で、みのりが喜ぶ企画を考えてほしいの」

 

普段MORE MORE JUMP!の配信で行われるコーナーは、

皆で考えることが多いものの、特にみのりが持ち込んだものの人気が高い。

それは一概に良識を持ったファンとしてアイドルを見てきたからに過ぎないが、

ユニット全体の支持に大きく貢献していた。

 

「とりあえずみんなでライブするのと、

 わたし達のバースデーソング斉唱、までは考えてるんだけど、

 なんかありきたり過ぎるっていうか」

「なるほど。確かにファンからすれば推しのアイドルが、

 自分の為にライブしてくれるのは人生で最高のプレゼントですもんね」

「あ、でも……文ちゃんには見せてあげられないの。ごめんなさい」

「いえいえ、みのりちゃんの為に皆さん頑張ってください!」

 

当然そのライブはセカイで行われるものであるため、文が見ることは叶わない。

それを知ってか知らぬか、その雰囲気を守るためにも自分も見たいと申し出ることはなかった。

 

「うーん、うーん。みのりちゃんは遥さん推しだから、

 遥さんが特別何かをしてあげたら大丈夫だと思うんですけど」

「それはそうなんだけど……出来れば誕生日にしか出来ないようなことが出来たらって」

 

いつものように思い悩む文だが、すぐに浮かぶほど頭の回転は早くない。

遥も考えてはいるものの、こういう発想という方向では乏しいらしい。

それでもみのりの為に何かをしてあげたい、という想いはこの中で一番強かった。

 

「なら文がわたしにしてもらったら嬉しいことってない?」

「愛莉さんがわたしに? 昔テレビで見たサプライズ企画は羨ましいなーって思いましたけど」

「サプライズ企画?」

「ええ。この前雫とセンター街でも話してたんだけど……

 待って、それって名案じゃない!」

「確かにみのりちゃんならとっても喜びそうね~。

 もしかしたら気絶しちゃうんじゃないかしら」

「?」

 

1人だけ状況が飲み込めない遥を置いて、3人は企画を進める。

ユニットとは別の友人1名、憧れのアイドル3名によるサプライズ企画は、

こうして無事決定したのだった。

 

 

 

こうして迎えたみのりの誕生日。

セカイでのライブを無事(といっても遥の一言で気絶してしまったが)終えて、

現実世界に戻ってきていた。

そのタイミングを見計らってか、文が連絡アプリである場所に誘いをいれる。

 

そうして訪れたのはセンター街の一角にある、カラオケボックスだった。

 

「みのりちゃん! お誕生日おめでとう! それとライブお疲れ様!」

 

部屋に入ったみのりを出迎えたのはもちろん文。

簡易的なステージも併設された広い部屋で、テーブルの上には大きなケーキも置かれている。

 

「文ちゃんありがとー! あれ、でもどうしてライブのこと……」

「愛莉さん達から聞いたの。それでわたしも何かしてあげられたらなーって思って」

 

最初は喉を休めるためにゆっくり他愛ない雑談。

そして落ち着いた頃合いを見計らって文が一番手に曲を選び歌い上げる。

流石に簡易的なステージであったため、躍りは自重していた。

 

次はみのりの番だが、何を歌おうか決まっていない様子。

そんな中。

 

「ねえみのりちゃん、遥さんの曲で一番好きな曲ってなーに?」

「えっ? それは……あ、これだよ!」

 

国民的人気を誇るアイドルだったASRUNの曲が、カラオケに入っていないわけがない。

それも、桐谷遥ともなれば当然のことだった。

 

「あ、それいい曲だよねー。ねえねえ歌って歌ってー」

「いいよ! あ、なんなら振り付けだってつけちゃおっか!」

「あはは! 思う存分どうぞ!」

 

予約を入れれば前奏が流れ始める。

ステージに躍り出て、完璧な振りコピと共にAメロを歌っていると──

 

「──♪ 「───♪」えっ!?」

 

突然扉が開かれ、遥本人が歌いながら入って来た。

文からマイクを受けとると、みのりのとなりに立ち同じ振り付けを披露する。

夢の共演とはまさにこの事だった。

 

「………」

「──♪ ……どうしたのみのり、声止まってるよ」

「あ、ご、ごめんね! ──♪」

 

「「──♪ ───♪ ──♪」」

 

丸く可愛らしい歌声と、繊細で大人びた歌声が見事なハーモニーとなって響き渡る。

やがて曲が終わると、愛莉と雫も姿を表した。

 

「改めて、お誕生日おめでとう。みのり」

「遥ちゃん……! わたし、嬉しくて、嬉しくて……きゅう……」

「「「「あっ」」」」

 

こうして、本日2度目となる気絶をするみのりであった。

 

 

 

「やっぱり気絶しちゃったわね」

「……刺激が強すぎたかな?」

「でも、みのりちゃんってば本当に嬉しそう」

「えへへ、喜んでもらえたなら何よりかな」

 

法悦の笑みを浮かべるみのりに対して、思い思いの言葉を述べる4人。

 

「文、本当にありがとう。お陰で喜んでもらえた」

「なら良かったです……遥さんはみのりちゃんのことが大好きなんですね」

「……うん。みのりは私に、アイドルとしての希望を届けてくれたから」

 

いつかの出来事を思い出すように、優しい笑みを浮かべる。

凛とした態度を崩さない遥が見せたギャップは、完全に不意打ちであり。

 

「──!!! きゅう……」

「あ、ちょ、文まで!?」

 

文の心は完全に撃ち抜かれ、みのりのとなりに倒れ込む。

こうしてしばらくの間、2人は幸せな時間を過ごすのであった。




記念話と記念話で被ってしまった。kasyopaです。
モモジャンのボイスドラマを待ちながら幾星霜。
我慢できずにそのまま敢行した次第です。
例によっての数時間クオリティなのでご察し。

こちらはみのりの誕生日なのでモモジャン全員出ないと、
と思い色々エリア会話を参考にさせてもらいました。

ではでは、またいつかお会いしましょう!
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