荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第19話「断罪の時」

街に繰り出した3人が向かった先。そこはカラオケであった。

 

「どうしてカラオケなんだ? 我はてっきりファミレスかどこかだと……」

「だって野次馬に聞かせる話でもないんでしょ? それならここが最強だって」

「確かに店員さんも来ないし、防音って意味じゃ優秀だけど」

「ほらほらワンオーダー制だからささっと頼んで。私フライドポテトでー」

 

鞄を預かり壁に立て掛ける、入り口から一番遠い場所に言葉を座らせる。

しばらくメニューをにらめっこした言葉と千紗都も注文を終えた。

 

「もう話してもよかろう?」

「まーまー、店員さんが入ってきたらマズイでしょ。

 私トップバッターで歌うからとりあえず1曲は回そうよ」

「えぇ……おい貴様、どうにかならんのか? 友達なんだろう?」

「まあ、この人はそういう人なんで……」

 

そんな会話の間に理那は曲を予約する。それは洗礼された電子音に辛い歌詞が綴られた物。

意外にも理那の雰囲気からは考えられぬ選曲だった。

やがて演奏が終わり点数が表示される。80点といったところ。

 

「ふー、1曲目いただきましたー。どっちが歌う?」

「我は結構だ! 審判者よ、先に歌うがいい」

「じゃあ、1曲だけ」

 

言葉が選んだのは当然KAITOの歌。その中でも最高の再生数を誇る楽曲。

作り物でも、ただ歌い続けるという意志のこもった悲しい歌。

こちらも演奏終了の後、92点と表示されていた。

 

「随分とまあ、2人とも辛い歌詞を平然と歌うものだな」

「好きだからねー。今はこっちの方がしっくり来るかな」

「私はその、KAITOの曲が全然カラオケにないから……」

「なるほど。ではそれに合わせて我も一曲送らせてもらおうではないか」

 

千紗都が予約をいれている間に注文していた料理が揃う。

本来ならこの時点で彼女が歌う必要はないのだが、その手は止まることを知らない。

 

激しいバンドサウンドとリズムと共にと共に紡がれる残酷な歌詞。

その歌声はとても澄んでいて、それ以上に彼女の想いが伝わってくる。

それは彼女が望んでいるような、不幸の歌。

 

「まあこんなものか」

 

そう言ってマイクをおけば、採点画面が表示される。

96点という高得点であった。

 

「……すごい……」

「いや上手いとかそういうレベルじゃないでしょ。

 何をどうしたらこんな点数出せるわけ?」

「自分の本物の想いをのせられれば容易かろう」

 

含みのある言い方であったが、そんなことを言われても理解できない理那と、

思い当たる節がある言葉。

 

「ま、こんなものを歌えたところで一切腹の足しにもなりはしないがな」

 

それを知ってか知らぬか、そう吐き捨ててフライドポテトに手を伸ばす。

これでもかというほどにケチャップとマヨネーズをつけて頬張った。

 

「さて……そろそろ話をさせてもらおう」

 

その言葉に2人は首を縦に振る。

ようやく、といったところで彼女の口から語られたのは自分と言葉の経緯。

それは非常に辛いものであったが、理那はそれを一言一句逃さず聞いていた。

 

「──という関係なわけだ」

「そっか。つまり雲雀は裁かれたいけど、言葉は裁いてくれないと」

「なんだそのざっくりとした説明は……まあ大方その通りだな」

「じゃあ私が代わりに裁けばいいじゃん」

「は?」「え?」

 

あまりに突拍子もない発言にお互い目を丸くする2人。

そう言った本人は口を潤すために付け合せの水を傾けた。

 

「だって千紗都は裁かれたい、でも言葉は裁きたくない。

 なら私が変わりに千紗都を裁く。これで解決でしょ」

「いや、それはおかしいだろう!? いくら過去を知ったところで貴様と審判者は他人同士!

 貴様には関係ないことではないか!?」

「関係なくないよ」

 

空になったコップを置き、千紗都と向き直る理那。

 

「私は言葉の友達なんだ。友達を助けるのに理由もなにもないよ」

「……と、言っているが肝心の貴様はどう思っている?」

「私は……」

 

理那の過去を知った言葉にとって、

彼女が友達というものを常人以上に重要視していることは知っている。

だからここは任せた方が得策かもしれない。

 

しかし、ここで彼女に甘えていては以前の自分と同じだということも知っていた。

だからこそ、自分もまた変わらなければならない。

 

「理那、これは私とこの人の問題だから」

「でもそれだと言葉が!」

「大丈夫。友達なら私を信じてほしい」

 

そこまで言われてしまうと、理那も言い返す言葉が見つからない。

渋々引き下がるのを見届けて、胸を撫で下ろした。

 

「ふん、それでこそ我が審判者にふさわしい」

「ありがとうございます。それでは」

 

目を閉じて言葉は考える。彼女に相応しい罰を。

 

「──これからも音楽を続ける、というのはどうでしょう」

 

それだけ歌が上手いからではない。

ただ彼女の過去にも音楽があり、自分と同じように諦めてしまっていたのなら。

今では遠く感じられるあの場所で本当の想いを見つけられたように、

彼女にも自分には嘘を吐いて欲しくなかった。

 

「──ク、クク、ハハハ!! そうか、そう来たか! 我に、音楽を続けろと!!」

 

目を伏せひとりでに笑い始めたと思えば、前髪を掻き上げ2人を見下す。

 

「よもや、よもや幾多の罰の中で音楽(それ)を選び取るとは!! 流石は我が審判者! 

 我の目に狂いはなかった!」

「お気に召したようでなによりです」

「ならばその罰、我が研鑽をもってして堪えようではないか! それでは諸君、サラバだ!」

「あっ! ちゃんとお金置いきなよー!」

 

高笑いをする千紗都に対して、わざとらしくお辞儀をする言葉。

そのまま部屋を去っていく彼女の後を追い、理那も部屋を飛び出した。

 

「ええい離せ! 我は審判者からの罰を果たすため一刻も早く帰らねばならん!」

「そんなこと言ってちょろまかすのは許さないんだからね!」

 

なにやら廊下の方で揉めている様子で、しばらく戻ってくることはないだろう。

 

『言葉』

 

その名前を呼ばれ、スマホへと視線を落とす。

そこにはやれやれ、といった表情を浮かべるMEIKOの姿があった。

 

『MEIKO、ごめんね。心配かけたかも」

『相変わらず背負いこもうとするんだから。

 今回は……あの子のお陰でなんとかなったけど』

 

1人なら確実に潰れていた、と言わんばかりの彼女は口をつぐむ。

これ以上言うのは野暮というものだろう。

 

『傷が癒えたら、またセカイで会いましょう』

「そうだね。そしたらまた歌って欲しいな」

 

細やかな約束と取り付けて、ふたたび言葉は部屋の外を見る。

その視線の先には自らが裁き、そして赦した少女達がいた。

 




理那 :ぼくらの16bitエンズ・トリガー/sasakure.UK
言葉 :千年の独奏歌/yanagi
千紗都:アンハッピーリフレイン/wowaka
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