荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第13話「瓦解」

 

「おはよう。叔母さん」

「おはよう言葉ちゃん。もうすぐ行かないと遅刻しちゃうわよ?」

「うん。……ごちそうさま」

 

私が起きだして食卓に座ったのは、叔父さんも文も家を出た後だった。

朝食のパンを一枚だけ食べて席を立つ。

 

「もういいの?」

「食欲ないから、いいかな」

「そう……。最近、文ちゃんとはどう?」

「何にもないよ。ほんと」

 

ここ最近はずっとこんな調子だ。

あの日から文は私に口も利かず、晩御飯の時ですら私と意図的に時間をずらすようになった。

それに加えてこちらのバイト代も受け取らなくなってしまった。

いくら言っても、いらない、の一点張りで顔さえ見せてくれなかった。

 

何がいけなかったのだろうか。私はあの子の為に頑張らなきゃいけないのに。

その援助も出来ていないなんて。

そんなことが積み重なり、今では朝に出る順番が見事に逆転してしまっていた。

今日は特にひどく、急がなければ遅刻してしまうほど。

 

「もし体調が悪いようだったら学校休んでもいいのよ?」

「ううん、気にしないで。いってきます」

 

・

 

・

 

満員電車に揺られながらもなんとか学校へ。

風紀委員の人が身だしなみを取り締まっているが、私には関係のないことだった。

 

「あっ、ちょっとそこの人!」

 

校門を通り過ぎようとした時一人の生徒に呼び止められる。

一見するとキッチリとした雰囲気だが、

毛先に紺色のグラデーションが入っているので多少の気さくさが目に取れた。

 

「あの、何かありましたか?」

「ネクタイ、忘れてますよ」

「えっ、あっ……」

 

それを指摘され確かめると本当になかった。

しまったという表情を浮かべていると、相手も意外そうな顔をしていた。

 

「確か1年C組の鶴音さん、ですよね。忘れ物は今回が初めてですから多めに見ますけど、

 次からはちゃんとしてくださいね」

「はい、すみませんでした」

 

頭を下げてその場から去るも、後ろからはひそひそ声が聞こえてくる。

 

「あれって委員長だよね、こんな時間にどうしたんだろう」

「いつもは早いの?」

「うん。クラスで一番で登校して、教室の掃除とかしてるんだけど……どうしたんだろう」

 

身だしなみは心の乱れというが、ここまで参っていたとは思わなかった。

明日からはちゃんとしていかないと。

 

・

 

・

 

その後歩いてる時もよそ見してしまって扉にぶつかったりと散々で、

授業にも身が入らず、先生にあてられても上の空だった。

そんなことをしながらも、やっとの思いでしのぎ切りやってきたお昼休み。

 

「委員長大丈夫? なんか最近おかしいよ?」

「おかしい、かな? とりあえずお昼食べるから大丈夫だよ」

 

いつも仲のいい子が心配しながら寄ってくる。

普段は別の友達と食べているので来ることはないのだけれど、

今回は断ってまでこちらに来ていた。

お昼を食べればお腹も膨れて調子も戻るだろうと、カバンの中を漁るもお弁当は見つからない。

そういえば詰めるの忘れてそのままで出てきてしまったのだった。

 

「お弁当忘れたから、先食べてていいよ」

「ん? 解ったけど、買ってくるの?」

「ううん、お昼くらい食べなくても大丈夫だろうから」

「いやいやダメでしょ。何か食べなきゃ死んじゃうよ? 私のメロンパンあげるから頑張って」

「あ、ありがとう」

 

彼女はそういって特大のメロンパンを取り出すと私に差し出した。

実際自分の顔くらいあるので普通に乗り切れるとは思うけれど、

こんなのどこに入ってたのだろう。

 

「あ、お礼なんて考えなくていいよ。委員長にはお世話になってるし。

 ねえ皆ー、委員長に恩返しするチャンスだよー!」

 

その言葉を聞いて一人、また一人とお弁当のおかずや購買のパンを置いていく。

因みにおかずに関しては既に友人が一つ空のパン袋を作っていたため、

机が汚れる心配はなかった。

 

「委員長無理しないでね」

「ここで優しくしてたら課題の納期伸ばしてくれるかもなー」

「バッカお前そういうことは後で言うんだよ」

「「「ハハハ……」」」

「皆、ありがとう」

 

そんなやり取りがあった物の、

私の前には一人では食べきれないくらいの量のおかずやパン、

コンビニのおにぎりまでもが積み上がっていた。

とりあえず長持ちしないからありがたくいただこう。

 

しかし、ここまで皆に心配をかけてしまうとは情けない。

次からはどうにか挽回出来るように努力しなければ。

 

・

 

・

 

学校の帰り道、私は一人街の中をさ迷っていた。

文と仲直りしなければこの不調が治ることはないだろう。でもどうすればいいのかわからない。

安直に何かプレゼントをすればまた元通りになるだろうかと街に出てきたが、

今のままでは渡すことはおろか顔を合わすことすらままならない。

それに、あの子の好きなものを姉ながら知らない。

しかし何もしないわけにはいかないと、頭の中で考えを巡らせていた。

 

服や靴、食べ物や小物などを見てはこれじゃない、と店を後にして、

日が傾き始めている時のことだった。

 

「──あるところに、変わり者の錬金術師がいました」

 

街の一角に空いた小さな広場で不思議な光景を目にする。

一人の青年が自分の回りにロボットやドローンを浮かべ、物語を語っているのを。

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