そんなこんなでやって来たライブ配信の日。
ななみんの後に続くMORE MORE JUMP!の面々は見事にライブを成功させた。
そして配信の終わりにみのりがカメラの前に立つ。
『わたし、アイドルとしてはまだまだだし、
遥ちゃん達の足を引っ張っちゃうかもしれない。
みんなに心配かけちゃうかもしれない……』
『でも……! こんなわたしでも、ちゃんと踊りきれたよ!
みんなと一緒に前へ進めたよ!
だから大丈夫! あなたも、絶対にできるよ!
これからもわたしと──わたし達と一緒に、がんばっていこう!』
画面の向こうにいる誰かへ当てたメッセージ。
それは確かに、みのりの届けたい相手へと届いたのだった。
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ある日の放課後。
そんな成功を納めたMORE MORE JUMP!の面々は、公園へと呼び出されていた。
それはいつかお花見をした桜の木の下。1人の少女がイヤホンをして待っている。
「文ちゃんおまたせー!」
「あ、みのりちゃん! 皆さん!」
文は4人の元へと駆け寄り頭を下げる。
「MORE MORE JUMP!の皆さん、ライブお疲れさまでした!
とっても明るくて素敵で、わたしもすっごく元気をもらえました!」
「えへへ、文ちゃんにも届いてたなら、わたしも嬉しいな!」
「それで、急に呼び出してどうしたのよ? もし打ち上げとかならファミレスの方が……」
「あ、いえ! 今日は皆さんに……ううん、皆に伝えたいことがあって」
少しだけ距離をとって4人を視界に収める。
「皆のお陰で、わたしの『本当の想い』に気付けたから、
そのお礼と感謝と、大好きを込めてこの曲を贈ります!」
スマホから流れ始めるのは、文が見つけた名も無き楽曲──だったもの。
今は確かに形となって伝えることが出来る。
自分の大好きを表現するために、自分の全力を出し切る。
そのせいか歌声はぶれていたが想いの強さは人一倍であり、
それもまた文らしさを表現していた。
その歌詞の内容も、不思議と希望を与えてくれるものであり、
人の想いの強さを歌ったもの。
「(これが……文ちゃんの本当の想い……!)」
「(前見たときよりずっと精錬される……趣味なんてレベルじゃない)」
「(なにより、自分が楽しんでる……大好きだって気持ちが溢れてる)」
「(キラキラ輝いてて、本物のアイドルみたい……)」
それぞれが見とれながらも、感想を胸に抱いていく。
楽曲が終わり、全身から汗を流しながらも呼吸は安定していた。
そして──
「こんなわたしですが、これからもMORE MORE JUMP!を応援させてください!」
勢いよく頭を下げる。しかし4人は少し戸惑った様子だった。
その理由とは……
「あれ……ダメ、ですか?」
「というより、もうこのまま一緒にやってもいいくらいじゃない?
このままファンとして燻らせるのももったいないわ」
「そうね、これまで私達に希望を届けてくれたんだもの。
文ちゃんならもっと素敵なアイドルになれるわ」
「そうだね。歌も体幹トレーニングをしたら大分よくなるだろうし、
ダンスはこのままでも十分通用するから大丈夫だと思う」
「うんうん! 文ちゃんなら大歓迎だよ! ねえ、どうかな?」
「えっ……え?」
思わず顔を上げれば4人の期待に満ちた顔が出迎えてくれる。
それこそ思考が止まってしまうまでに魅力的なお誘い。
大好きな存在と一緒にいられる時間が増えるのは、文にとっても悪くない話だった。
──それでも。
「ごめんなさい。それはできません」
文は再び頭を下げる。
「ええ!? もしかして炎上したこと、まだ……」
「それは関係なくてね。とっても嬉しいんだけど……」
みのりの戸惑いに首を横に振って答える文。その顔は決意に満ち溢れていた。
「わたし、MORE MORE JUMP!の皆も大好きだけど、
もっともっと大好きな人がいるの。だから一緒にはできません」
それは文の心からの願いだった。
それがわからぬほど4人も彼女を知らないわけがない。
「あ、でもでも、ちょっとしたお願いがあって……」
「ん? どうしたの?」
「実はこの曲、6人で踊れる曲なんだ。歌うのは1人だけなんだけど……
だからまたいつか、全部が終わったら一緒に踊りたいなって……」
「6人……? 私達と文と……あと1人はどうするの?」
愛莉の質問に少しだけもったいぶって距離をとる文。すると彼女は笑顔でこう言った。
「それはもちろん、ミクちゃんです!
これは元々ミクちゃんの歌だから、皆で一緒に歌って、踊りたいなって」
「ちょ、ちょっと待って! もしかして文ちゃんもセカ──!」
みのりの声を遮るようにアラームが鳴り響く。
何事かと思えば文のスマホからだった。
「あ、お姉ちゃんがバイト上がる時間だ! それじゃあ皆、またねー!!」
「あ、う、うん! またねー!」
それを見た本人は慌てた様子でスマホをしまいこみ、どこかへ向けて駆け出す。
置き去りにされてしまった4人は、ただ走り去っていく背中を見送ることしかできない。
完全に見えなくなったところでみのりが呟いた。
「文ちゃんももしかしてわたし達みたいにミクちゃんと会ってるんじゃ……」
「本当の想い、って言ってたからまず間違いないと思う」
「それに、文ってば嘘は言えなさそうよね。隠し事もできなさそうだし」
「でも、ミクちゃんは一度もそんな話はしてなかったと思うわ」
頭を悩ませる4人であったが、その答えは一向に出ないまま。
それに見かねた愛莉が鶴の一声をあげた。
「ま、気になることは多いけど、こうなったらやることは1つでしょ?」
「愛莉ちゃん、やることって?」
「文が断ったこと、後悔するくらい立派なアイドルになるのよ!
わたし達は『こんなもんじゃないぞ!』ってね!」
こうして少女達はお互いの道を進む。いつかたどり着く道の先を夢見て。
「よーっし! もっともっともーっと、がんばるぞー!」
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言葉が働いている楽器店に飛び込もうとした時、突然現れた大きな影にそれを阻まれた。
「おっとっと……あっ!」
「わわわ! 大丈夫ですか?」
「大丈夫です、ちょっとバランス崩しちゃって──」
「あ、恩人さんだ!」
「って、文ちゃんじゃん! 久しぶり、元気してた?」
しかしそれはいつか病院で出会った金髪の少女──斑鳩 理那だった。
その両手には大きな紙袋が下げられている。
「はい、元気いっぱいです! 恩人さんはどうしたんですか?」
「これ? 私も言葉……文ちゃんのお姉さんに肖って音楽始めよっかなって」
理那が文に見せるのは、袋に詰められたDJ機材の数々。
それは見るからに彼女が本気なのだと言うことを表していた。
そんな他愛ない約束を交わしつつ、文はようやくその後ろに隠れていた姉の存在に気がついた。
「あ、お姉ちゃん! 今日バイトじゃなかったの?」
「今日は休みだよ。そのかわりに友達と寄り道」
少し嬉しそうな表情を浮かべる言葉に対し、文は昔に見た本当の嬉しさを垣間見る。
それを押さえることなく、その胸元に飛び込んだ。
「ふ、文!?」
「えへへ、やっぱりお姉ちゃん大好き!」
長い時を経た文の大好きは、本当に伝えたい相手の元へ贈られるのだった。
DECORATOR/livetune+
ご無沙汰しております、kasyopaです。
今回初の試みとしてイベストに介入する形になりました。
純粋なみのりのイベントが好きな方はごめんなさい。
ある意味、鶴音文の集大成という形ですね。
遥イベントがどういう展開になるかは不明ですが、
おそらくまた関与してくるかもしれません。
何はともあれ、お気に入り登録も100件を突破しUAも15000もうすぐといったところ。
誤字脱字報告・感想・評価も着けていただきありがとうございます。
日計ランキングにもちょこちょこお邪魔させてもらって本当に励みになってます。
返礼は毎日更新or記念話という形で代えさせてもらいますが、
今後とも読んでいただければ幸いです。
さて、次回からですが……100件突破の記念話が完成したので、
そちらを投稿させて頂きます。
記念話ですが話数が多いため、本編は一旦お休みです。
この作品ではあり得ない世界観をお楽しみください。
次回、ニーゴIF編。お楽しみに。