荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第5話「行方不明」

 

その日もまた、25時を迎えいつものように活動を始めるといった時であった。

 

『みんな、いる?』

『いるよー! 今日もがんばろうねーっ♪』

『K、昨日言ってたイラスト、完成したよ! 見てくれる?』

『うん。……あれ? 雪とwordは?』

『wordはINしてるみたいだけど……雪は珍しいよね』

『あれ? ほんとだ、いないね。夕方にはいたのに』

 

オンライン通知を見ても、wordはログインしているようだ。

しかし雪はずっとオフライン状態のまま。

連絡などがマメな彼女が忘れるとは考えがたい。

 

『寝ちゃったんじゃない?

 雪は私達と違って普通に学校行ってるんだし、疲れてたらそういうこともあるでしょ』

『それならwordだって同じでしょー?

 うーん、また夜にねって言ってたんだけどなぁ……ま、雪だって寝ちゃう時もあるか』

『呼びましたか、Amiaさん?』

『わあっ!? 急に出てこないでよ、びっくりするじゃない!』

 

まるで障子に目ありと言わんばかりの勢いで、噂をした途端に声を発するword。

あまりの唐突さにえななんは驚きの声と共に反感をぶつける。

 

『それはすみませんでした。それより雪さんがいらっしゃられないようですが』

『うん。wordはなにか聞いてる?』

『私は特に』

『だよねー。うーんなにかあったのかな……』

『まあ今気にしてもしょうがないでしょ。K、ファイル送るね』

『……うん、そうだね。じゃあ、Amiaとwordも進捗報告お願い』

 

この時は誰もが大きな問題とは捉えていなかった。

──そして1週間の時が過ぎることとなる。

 

 

 

いつも通りの時間に、いつも通りのメンバーが集まる。

しかしそこに雪の姿はない。

メンバー全体に不穏な空気が漂っていた。

 

『……雪が来なくなって、もう1週間かぁ』

『……………』

『雪、旅行に行くとか言ってたっけ?』

『ううん、何も聞いてないよ。……1週間も来ないと、さすがに心配だよね』

 

そこから発展するのは、事故や病気といった命に関わる話題。

いままで遅れたり予定があるなら必ず連絡を入れていた雪のことだ。

これだけなにも連絡がないのは、そういうことも考えてしまう。

 

『ねえword聞いてるんでしょ。アンタと学校、同じだったりしない?』

『……ああ、すみません。作業中だったもので。なんですかえななんさん』

『なにそれ、雪がいないってのに心配のひとつもしないわけ!?』

『まーまーえななん落ち着いて。焦ってもいいことないよ。

 それにwordも……なんか冷たくない?』

『いえ、雪さんの分の作業を代行しているので。もしものことがあった時のために』

『もしもって……じゃあwordも……』

 

通話に引きずり出されたwordはあくまで淡々と事実を告げつつ、

作業の手を止めることはなかった。

 

『……なにか、連絡をとれる手段がないか探そう』

 

こうして3人は奏の発案の元、雪の痕跡を探す。

一方でwordは相変わらず作詞以外の作業に没頭していた。

 

会話の内容、雪のSNSのログを漁ってもそれらしいものはない。

しかし、クラウド上の共有フォルダに見慣れない物が存在していた。

そのファイル名は、Untitled。

 

『“Untitled”? そんな曲、作った記憶ないけど』

『じゃあ、雪が作ったのかな? ファイルに名前、付け忘れたとか』

『それなら“あたらしい音声”のようなタイトルになるはずです。

 例え無名でも、名前をそうしたとしか』

 

作業が一段落したのか、wordもチャットに戻ってくる。

しかし3人にとってそんな疑問などどうでもよかった。

 

『まあ、とりあえず聴いてみる?』

『……うん。聴いてみよう』

 

Kの合図の元、4人はUntitledを再生する。

するとモニターが自然と輝きだし──

 

 

 

目を開けば真っ白で薄闇に覆われた、なにもない場所に立っていた。

所々に鉄柱と三角のオブジェが突き刺さり、地面には無数の線が走っている。

自分の小説の好みとは違う、異世界転生……いや、転移物と呼ぶべき状態だった。

 

「………」

 

突然の変化に驚きつつ地面に手を伸ばす。

朝方のフローリングのように少し冷たかった。

 

「ここがどこかわかりませんが……まあ、いいでしょう」

 

あのUntitledというファイルがなにかの鍵になったなら、

同時に再生したKやえななん、Amiaもどこかにいる可能性もある。

確信があるわけでもなく、言葉はこの世界をさ迷い始めた。

 

 

 

それからどれだけの時が経ったか分からない。

現在地も不明。帰る方法も不明。すべてわからない状態であてのない場所をさ迷う。

 

「少し、疲れたかな」

 

突き刺さったオブジェクトに背中を預ける。地面と同じ冷たさが背中に伝わる。

温もりを感じないそれらは、まるで──

 

「拒絶してるみたい」

 

人に適しない温度。日の光も指さぬ薄闇の空間。

ゆっくりと、でも確実に人としての寿命をすり減らし、死んでいくような場所。

 

「よかった! 無事だったんだね、雪!

 連絡とれないから心配だったんだけど、ほっとしたよ~!」

 

そんな空間にテンション高い独特の声が響き渡る。

話の内容からしてAmiaが雪を見つけたらしい。

 

唯一の手がかりとして言葉はその方向へと歩き出す。

やがて、5人の少女達がとらえられるまで近付いた時、Kの声が聞こえてきた。

 

「……雪が、OWNだよ」

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