荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第9話「最終通告」

 

翌日、25時。

 

『やっほー! 今日もみんなでがんばろーねー!

 ……って、あれ、wordだけ? Kとえななんは?』

『まだ離席中ですね。えななんさんは遅れるそうです。

 Kさんは……返事がなくて』

『まさか倒れちゃったとか……? そんなことないよね……』

『わかりませんが、今は私達の出来ることをするだけです。

 最悪の場合、作曲も作詞も私がやります』

『最悪の場合って……まあいいや。

 スピーカーはオンにしてるから、なにかあったら教えてよ』

『わかりました』

 

当然のごとくいない雪に関しての話題を避けつつ、

言っても聞かないwordに急かされながらもお互いの作業に戻っていく。

 

それからしばらくして、えななんがボイチャに参加した。

 

『あれ、Kは?』

『あ、えななんこんこん~。Kは返事待ちだって』

『そう、なんだ。それで、次の新曲はどうするの?

 雪がいないんじゃなにもできないけど……』

 

先日の話題を掘り返す。

Kがいない状態でも疑問がつきないのはえななんも同じであった。

 

『今はKが作詞、wordがアレンジするって言ってるけど……』

『ふーん……なら別にいいじゃない。雪はひとりであんなすごい曲作れるんだし』

『まあ、そうかもしれないけど……』

 

先日の話を踏まえて、Amiaは考える。

OWNとして活動するのは、Kといても見つけられなかったから。

だからすべてを捨ててまで、探し出すと言った。そしてなにより──

 

『変? 私が変なら、あなた達だってそうでしょ。

 だって本当は、Kも、えななんも、Amiaも──

 ──誰よりも消えたがってるくせに』

 

ああ言ったからには、自分も消えたがっているということ。

でもそうだとするならwordの見解に矛盾が生じる。

だからこそ、自分だけが知っている情報を伝えるべきだと思った。

 

『雪も、本当はずっとキツかったんだろうな』

『え?』

 

こうしてAmiaは語り出す。雪が消えた日に聞こえた雪と母親の話を。

人から印象を与えられ、それが正しいとして認識しつつ、矛盾を孕んで生きていく。

それに気付くことさえできず、だんだんと自分が見えなくなっていき……そして限界を迎えた。

 

『だから、思うんだよね。もし雪が苦しんでて、そのせいでああなっちゃって、

 それで、消えちゃうっていうのは……ボクは、ちょっと寂しいなって』

 

自分と同じ、他人に縛られる運命。

その思いを少しでもわかってくれるかもしれない相手が雪だ。

確証はないが、期待はある。

その結果得られるものがあると、以前の言葉とのやり取りで痛感していた。

 

『……………』

『……ボク、もう1回、雪と話したいな。

 あの“Untitled”って曲を再生すれば行けるんだよね。

 それでなら……』

『たしかに、そう言ってたけど……

 でも、肝心の雪があんな感じじゃ、会いに行ったところで──』

 

いくらOWNとして曲を発表し、心のどこかで求めているとは言え彼女は拒絶している。

それこそすぐにミクを差し向け消してしまうかもしれない。

そんな不安が絵名にはあった。

 

しかしその思考を遮るように通知音が鳴り響く。

それはOWNの新曲通知。それが立て続けに3回。

 

『3曲連続……? ちょ、word!』

『はい。こちらでも確認しました。今聞いてるところです』

『ちょ、抜け駆けして……私も!』

 

遅れて2人も新曲を再生する。

それは今までよりも突き刺し、抉りとるようなもの。

それこそ持っていかれた、と表現するのが近い。

 

『この曲……もう助けてほしいとかそんなのじゃないでしょ……』

『そう、だよね……wordはどう思う?』

『………』

 

返事はない。聞き入っているのか、答えに迷っているのか。

2人には解らなかった。

 

『ああもう、肝心なときに役に立たないんだから!』

『えななん落ちつい──』

 

荒ぶるえななんを落ち着かせようとして、またも通知音が響く。

誰かがボイチャに参加した時のものだった。

 

『……えななん、Amia、word』

 

消え入りそうな声でその名を呼ぶ。彼女の名前は。

 

『『K!』』『Kさん』

 

ニーゴのリーダー、Kであった。

 

彼女は今まで返事をしなかった理由を説明する。

セカイに行き、そこで得たひとつの答えを形にすると。

 

『わたしは雪のために曲を作る。雪を……救いたいの』

 

その言葉に、3人は笑みをこぼす。

 

『wordの言った通りだね。Kはちゃんと、自分で見つけて来てくれた』

『ほんと、腹立つくらい正確にね。これだから正論botは嫌い』

『え? wordが?』

『Kさん、その話については追々。今は曲を作るんですよね。お手伝いします』

 

話を知らないKが戸惑うも、その意思を尊重しつつwordが後押しする。

理由を聞かないのはいつものことだった。

 

『ありがとう。じゃあいつもどおりミックスだけお願い。

 今回は曲だけだから、えななんとAmiaは──』

『ねえ、K。ボクも一緒に連れてってよ』

『え?』

 

申し訳なさそうに2人へ言葉を送るKだが、それをAmiaが止める。

 

『もちろん、ボクが行ってもなんにもなんないし、

 雪のことは、雪にしかわかんないけど。

 でも、ボクの感じた気持ちを伝えたっていいと思うんだよね』

 

『……雪がいなくなったら、寂しいって気持ちはさ』

『Amia……わかった。セカイに行く時は、連絡する』

『ありがとう、K』

 

AmiaにはAmiaの想いがある。それを汲み取れぬほど、Kも鈍感ではない。

 

『……………』

 

そんな会話に対して、えななんはただ迷うだけ。

 

『……えななんは、一緒に行かない?』

 

そんな彼女に対して、優しく手を差しのべる。それでも。

 

『行かない。KもAmiaも、雪のこと構いすぎじゃない?

 しんどいのなんて、みんな一緒でしょ。雪だけ特別なわけじゃない。

 ……あのセカイとかいう変な場所にいるってところだけは、ちょっと違うかもしれないけど』

 

『でも、だからって雪のためにあんなところにいきたいなんて、私は思わない。

 ……だから、行かない』

 

馬鹿にされたまま彼女の前に姿を見せるのは、自分の許さなかった。

凡人であるが故の、意地であり見栄だった。

 

『……そっか』

『……wordは、どうする?』

『私も行きません。私が行っては曲を聴いてもらうどころではないでしょうし』

 

迷いはなかった。それがどこか寂しく感じるもなにも言い返せない。

それはひとえに雪の言葉があるからで。

 

『気持ち悪いの。あなたを見るのが。あなたの声を聞くのが。

 あなたの全部が、気持ち悪い』

 

『だからそういうの、やめてって言ってるでしょ。次に言ったら、ミクに消してもらうから』

 

雪が最も強く拒絶した人物。それを彼女自身が理解していないわけがない。

 

『そっか……でもありがとう。えななん、word。話を聞いてくれて』

 

こうして2人は作曲作業に移るのであった。

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