荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第11話「夜を越えて」

週末。言葉の姿はファミレスにあった。

 

「あ、来た」

「やっほー言葉ー、こっちだよ~」

 

店奥のテーブル席。

つまらなげにスマホを弄っている神高の制服をまとった少女と、

見慣れたピンクのサイドテールを揺らし、手を振る人物。

 

「お待たせしました。Kさんと雪さんはまだみたいですね」

「うん。Kはもうすぐつくみたいだけど、雪はHRが長引いてるらしいから」

「そうですか」

 

2人は隣同士で椅子に腰かけており、露骨にソファ側が空いている。

荷物を寄せながら一番奥へと腰かけて、2人と向き直る。

 

「っていうかアンタも神高なわけ? それにネクタイとブレザーなんて」

「この方が気が引き締まりますから。えななんさんは確か夜間でしたね」

「そ。はーあ、まさか同じ学校だなんてね……やんなっちゃう」

「ボクは嬉しかったよー? いやぁ、世界って広いようで狭いんだねー」

 

そういう瑞希は完全に私服である。

学校をサボっているのはまるわかりだが、それを気にする者は誰もいない。

 

「そういえば瑞希、wordの名前知ってたの?」

「うん。つい最近だけど学校で会ったんだ。まあ色々あったけど」

「……?」

 

本来なら盛り上げるべき話題であろうが、

瑞希にとってはその後の会話が重要なため口をつぐんだ。

えななんはそんな普段と違ってしおらしい瑞希に対して首をかしげるも、

聞こえてきた入店の効果音に気をとられる。

 

そこにはまるで幽霊のように佇む白髪でジャージ姿の少女がいた。

 

「あ、来た来たー! こっちこっちー!」

「……遅れてごめん」

「大丈夫、まだ雪は来てないし」

「奏、こちらの席が空いてますからどうぞ」

 

ニーゴのリーダー、宵崎奏。

口にしたのは謝罪の言葉であったが、対して気にしないえななんがフォローに回る。

安堵を覚えながら言葉の隣へ腰かけた。

 

「それにしても、昨日ぶりなのにリアルで会うのは初めてなんだよね。

 ……ちょっと変な気分かも」

 

なんだかんだセカイで何度も会っているものの、

あんな不思議空間では実感がわかないらしく。

えななんの言葉に瑞希も同意を示す。

 

そこからは雪が来るまで他愛ない会話を続ける。

とは言っても話しているのはいつもの2人で、後の2人は聞き手に回っている。

 

「そうだね~。えななんって、写真撮る時はやっぱフィルタかけまくってるんだなーって♪」

「はぁ!?」

 

いつものおちゃらけた空気にえななんが声を上げていると……

 

「……ごめん、お待たせ」

 

濃い紫髪にくせっ毛のポニーテールを携えた少女が姿を表す。

制服姿のところを見るに学生だが、神高ではない。

 

「あ……」

「どうも」

「雪……」

「大丈夫、全然待ってないよ! みんな、まだ注文もしてないし」

「そう、よかった。隣、座っていい?」

「……あ、うん」

 

雪と呼ばれたその少女は、変わらず無感情な声で奏の隣に腰かける。

一瞬空気が変わるかと思われたが、間髪いれずに瑞希が話題を繰り出した。

 

「それじゃあまずは、自己紹介タイムからいってみよ~!

 ボクは暁山瑞希だよ♪ 瑞希って呼んでね! はい、次えななん!」

 

いつものテンションで押しきる瑞希。

こうなると止まらないため、指定されたえななんは少し呆れていた。

 

「はいはい。東雲絵名。……なんか、改まって名乗ると変な感じだね」

「あ、名前知ったあとも、そっちで読んでなかったしねー。

 これからは名前で呼んじゃおっと♪ じゃあ次は……」

 

セカイで既に名前は知っていたものの、実感がわかないのは瑞希も同じだったらしく、

この機を境にリアルではそう呼ぶことになるだろう。

進行役のように次の人物を探す中、1人の少女が動く。

 

「では私が。神山高校1年C組の鶴音言葉です。よろしくお願いしますね」

「え? 1年? ウソ、年下……?」

「そういう絵名は2年ってこと? そうは見えないなー」

「ちょっと、それってどういう意味?」

「ひとまずその話題は置いておきましょう。K、お願いします」

 

再び口論が勃発しそうになるも、素早く次の人物へと移す言葉。

次の人物がKとあっては、2人も黙るしかなかった。

 

「宵崎奏。……雪は?」

 

フルネームとはいえそれだけだった。すぐに雪へと転換する。

 

「……………」

 

少しの沈黙。そして──

 

「……朝比奈まふゆ」

「まふゆ……」

 

奏は、噛み締めるように名前を呟き、意味を考える。

 

「だから……雪って名前だったんだね」

「……………」

「これからもよろしく、まふゆ」

「……うん。迷惑かけて、ごめん」

 

こうして救いたい少女と、見つけてほしい少女は、お互いの存在を認識しあう。

 

「……ねえ。それ、ほんとに悪いと思っていってるわけ?」

 

しかし、その謝罪に納得の行かない絵名は反論していた。

2週間以上の失踪に加え、奏や瑞希、果てには自分も巻き込んだのだ。

プライドの高い彼女からすれば、それだけでは物足りないのだろう。

 

「……どうなのかな。自分でもよくわからなくて」

「まあ絵名さん、今はいいじゃないですか。こうしてまふゆさんも戻ってきた事ですし」

「そそ。それより注文しよ注文! ボク、フライドポテトがいいな~」

 

このままでは空気が死んでしまうと判断したのか、言葉と瑞希がフォローに入る。

それぞれが注文を終えて、飲み物が行き渡る。

 

「じゃ、乾杯しよ!」

「え、乾杯って、なんの?」

「ニーゴの初オフ会記念に決まってるじゃん!

 そのためにみんなに集まってもらってたんだし♪

 ほらほら、奏もまふゆも飲み物持って持って」

 

それぞれが飲み物を手に、瑞希の音頭を取り乾杯する。

それからつつがなくオフ会が進行していくのだった。

 




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