荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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順当に読まずして、このお話を見つけるのは中々のニーゴ好きだとお見受けします。

今まで読んでくれていた方々に一言。
「すまない、筆が滑った」

『ボクのあしあと キミのゆくさき』の第6話改編&後日談とでも思ってください。それでは。


外伝編「対岸少女のお茶は渋い」

「ねえあんた、瑞希と同じ学校なんだから少しは知ってるでしょ! 噂とか、そういうの!」

 

 セカイに呼び出された言葉は、早速絵名に質問攻めされていた。話によるところ、この前の日曜日に外出した時明らかに調子が悪かったというところから始まる。それを気に病んだ絵名はメンバーの中で唯一全日制に通う生徒の言葉に詰め寄ったのだ。

 

「噂、ですか。私はそういう物に疎いのでなんとも」

「なんでもいいの! いじめられてるとか仲間はずれにされてるとか……あんた委員長なんでしょ!? そういうの委員会とかで上がらないわけ!?」

「特別これといったことはなにも。ですが苛めも隔離もありません。以前お願いされた時からずっと」

「あ……ごめん」

 

 ミステリーツアーから瑞希の様子がおかしいのは絵名も知っている。その時点から言葉は瑞希の様子を伺うよう依頼されていた。しかし、それが成果を上げた試しはない。泣かず飛ばすとはこういうことだった。

 

 しかし絵名も言葉を知らない訳ではない。まふゆが本性を現した時も、最後にはセカイに赴かないことで調和を保った。裏方の仕事を全うしこのニーゴに貢献してきたことを知っている。以前からの依頼も、そういった積み重ねから導かれた信頼であることに絵名は気づいていない。

 

 そのためか、苛めも仲間はずれもない、という言葉は嫌に信憑性のある情報だった。初成果といえば少々物足りないが、今はこれで満足するしかない。

 

「でも、じゃあなんであんなに苦しそうなのよ……」

「それは私達だから知り得ない事なんでしょうね」

「は……?」

「この辺りに関しては私より適任がいると思います。では、私はこれで」

「あ、ちょっと!!」

 

 言葉は遠くにあるひとつのオブジェクトへと視線を送った後、曲を停止させた。絵名はため息ひとつ吐いて、何かあるのかとオブジェクトを見つめる。そこには一人の影があった。

 

「あれって、MEIKO?」

 

 このセカイの住人だというのに、一切干渉してこないバーチャル・シンガー。以前セカイを訪れた時にもルカとなにか話していた事を思い出す。

 

「(適任って、そういうこと?)」

 

 残された手がかりに藁にもすがる想いで、絵名はその場から駆け出した。

 

 

/////////////////////////////

 

 

「ねぇMEIKO、一緒に紅茶でもどう?」

 

 言葉は誰もいないセカイにレジャーシートと水筒を持ってきた。普段のそれとは違った態度に、裏があるとみたMEKOは首を横に振る。

 

「私は、遠くから見守るだけと決めているの。だからいらないわ」

「そう。なら一人で楽しむね」

 

 そういって言葉はその場にシートを広げて腰を掛ける。遠くの方からミクとリンが興味津々で見つめているが、近寄ろうとしない。言葉がコップを片手に微笑み手招きしてみるも、物陰に隠れてしまった。

 

「あらぁ、楽しそうね。私も混ぜてくれないかしら?」

「いいよ。でもその代わりひとつお願いしていいかな?」

「ええ、私に出来ることならなんでも」

「よかった。これ、終わった後でいいからミクとリンに。あの子達はあの子達で楽しんでほしいから」

 

 それでも一人動じないバーチャル・シンガーが一人。そう、ルカである。そんな彼女に対して言葉は快く受け入れいる代わりにもうひとつの水筒を差し出した。しかも自分の物より大容量である。私達以外の皆で飲める、という暗示だろう。

 

 ルカはそれを受けとると、わざとらしく言葉のとなりに座る。中くらいのサイズで自由に座れるのだが、それを彼女に問うところで、のらりくらりとかわされるだけなのは目に見えている。加えて隣に座った程度で動じるほど言葉も子供ではなかった。

 

「はい、どうぞ」

「ありがとう。ところで、お茶菓子はないのかしら?」

 

 地べたに置いても問題ないセカイに広げられたレジャーシートは、まるでテーブルクロスのよう。しかし乗っているのは当人とルカのみ。お茶会を開くにはなんとも味気なかった。

 

「ないよ。だから代わりにお話でも、ね?」

「……それなら尚更、話すことはないわ」

 

 今まで静観を決め込んでいたMEIKOも、その目的がわかるや否や踵を返して立ち去る。それは見守ると決め込んだ故に選んだ行動でもある。

 

「砂糖を入れすぎた紅茶は紅茶の味がしないけど、砂糖のない紅茶は渋くて飲めないからね」

「なんの話?」

「何事も塩梅が大事ってこと。砂糖はもちろん、その距離もね」

 

 そう言った言葉は紅茶を呷る。そこに砂糖の一切も入っていないと気付くのは、ルカが口を付けた後だった。

 

 

 

 今日のナイトコードには別の用事があるということで言葉がいない。といっても彼女の担当は編曲や調整といった下請けであるため作業は滞りなく進んでいく。そして何より瑞希の心の棘が取れたわけではない。しかし今を楽しむ事に注力すると決めた瑞希はニーゴの為に貢献していた。

 

「ねぇ、もし良かったら皆でセカイにいかない?」

「えっ?」

 

 そんな中で絵名がひとつの提案をする。曲やイラストのブラッシュアップの為にミクやリン、メイコやルカに見てもらおうと。実際はMEIKOの目が届く範囲に瑞希を置いておきたかったのがある。

 

 特別断る理由もなくセカイに訪れたメンバーが最初に見たものは……

 

「あ、みんな……」

 

 ミクがレジャーシートに腰をかけてリンと水筒のコップに口をつけていた。ほんのりと薫る茶葉の香りから紅茶だと分かるのにさほど時間は要さなかった。

 

「紅茶にレジャーシートって……」

「あはは、ピクニックみたいだね。ミク、それって誰がおいていったの?」

 

 最も持ち込みそうな瑞希が問いかけている時点で可能性は消える。絵名もここまで気の効く性格ではなく、奏とまふゆは論外。消去法でいくと自ずとたどり着く一人の少女の影。

 

「言葉が持ってきてくれたの」

「え、あいつが?」

 

 たどり着いても、意外という言葉しか出てこない。しかしリンが首を縦に振ったためその場にいた誰もが信じざるを得なかった。近づいてはじめてそのレジャーシートの上に6つのコップと添えられたガムシロップの存在に気づく。瑞希は面白そうなものを見つけた目で水筒の中身を確認していた。

 

「結構いっぱい入ってるね。ボク達で分けてもまだ余りそう」

「私達に楽しんでほしい、って言ってた」

「へー、じゃあお言葉に甘えてもらっちゃおーっと」

「あ、コラ瑞希!」

 

 折角ブラッシュアップの為にと来てみればこれである。といっても今回ばかりはその為の道具があるからなのだが。

 

「うわ~! これスッゴく美味しい! どこのお店の銘柄なんだろ、後で聞いてみよっかな」

「え、嘘、そんなに?」

「うんうん、みんなも飲もうよ! ほらほら、遠慮しないで~」

 

 まるで幹事のようにコップに紅茶を注いでは回す瑞希。この紅茶のお陰か、肌色がいくぶんかマシになっているように思えた。疑い半分でそれぞれが口にする。

 

「! 本当だ……」

「これ美味しくない!?」

「……さあ」

 

 それぞれが感嘆に震える中で唯一味覚が損なわれている少女がどちらでもない答えを返した。こればかりは仕方ないと諦める3人だが。

 

「でも、いい香りだって思うよ」

 

そんな彼女からこぼれた言葉がその場に染み渡る。こうして一旦の作業は終わりにして、小さなお茶会が開かれるのであった。

言葉さんのニーゴIFによるニーゴストーリーの再構成を

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