昼休みと午後の授業を終えて早速目ぼしい人物を探し始めた2人。
しかし探すまでもなく1人目が理那の元を訪れた。
「なあ斑鳩、ちょっといいか」
「あ、彰人君じゃんナイスタイミング! ちょっと聞きたいことあるんだけどさ、いい?」
「いや、聞きたいことってオレにもあるんだが……」
「じゃあ早速質問ね、ズバリ彰人君が楽しいと思うことは何!」
「オレのことなんざどうでもいいんだよ! だから話聞けよ!?」
お昼に聞きそびれた為に再びやってきたのもつかの間。
今度は一方的に質問を飛ばす理那に対して激しいツッコミを入れる。
そんな騒ぎの中、言葉もその話題を耳にして理那のそばへ寄っていた。
「えー、だってこっちの方が重要でしょ。私の未来に関わってるんだからさ」
「だったら先にこっちの質問に答えろって。その後なら何でも答えてやる」
「ちぇー、はいはいわかりまーした。それで質問って?」
頬を膨らませながら席に座りその身を引く。
意外にも律儀な態度に戸惑いながらも、彰人は口を開いた。
「いや、まあそう改まって聞くほどでもないけどよ……あの時杏達とやってみてどう思った?」
「あー、この前のね。まだまだだなーって思ったよ。
だってこの世にはもっと凄い人がいるわけじゃん」
「……その凄い人ってのはもしかして謙さんの事か?」
本命とも言える質問を飛ばしたとき、なるほどねと理那は笑みを浮かべる。
その本心に気付いたかのように。
「悪いけど、それは違うね。確かに杏のおじ様は凄い人だけど、私の目標じゃないよ」
「……そうかよ。ならこの話は終わりだ」
つまらなさそうな反応で返しいつも通りの態度を示す彰人。
彼にとって元より理那は相性が悪い。出来る限り関わりたくない人物であった。
「それで楽しいこと、だったよな。そんな事聞いてどうすんだ?」
「いや、参考の1つにでもさせてもらおうかなーって。ほら、言葉も聞きたがってるしさ」
ここでようやくそばにいた言葉について触れられる。
彰人もその存在に気づいていたが、別段聞かれても問題ないとスルーしていた。
理那のいう通り興味があるのか、表情は変わらないものの先程より接近している。
「わかったよ。楽しいこと……仲間と歌ってる時、だな。
本番のステージだけじゃねえ。練習もそうだ。
こいつらとなら本気でRAD WEEKENDを越えられるってな」
「へー、じゃあ杏と彰人君は同じ夢目指して頑張ってるんだ」
「ま、そういうことだな。質問も終わったしオレは帰るぞ、じゃあな」
「あ、ストップストップ! それなら青柳君紹介してよ!」
用事は済んだとばかりに教室を後にしようとするも引き留める。
これだから理那とは関わりたくない、とため息を吐く彰人であった。
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「──というわけなんだ」
「なるほど、それで俺にも聞きに来た、というわけだな」
「ごめん青柳君。練習忙しいのに」
「いや、鶴音が気にすることじゃない。しかし……楽しいことか。難しいな」
経緯をかいつまんで説明した言葉に納得する冬弥。
しかし彼も言葉と同じくなにかしら思い悩んでしまう。
「そんなに思い悩むことじゃねえだろ。もっと単純に考えればいいんだよ」
「単純と言われても、正直2人に求められている答えを出せるかはわからない。
それでもいいか?」
「全然大丈夫! むしろアンケートみたいなものだし気にしないでいいよ」
慎重かつ几帳面である彼らしい、とその場にいる3人が思いながらもその答えを待つ。
「俺は楽しそうな雰囲気やそういった話を聞くことが、楽しいと思っている。それに……」
ふと冬弥が思い出すのは司の買い物に付き合った時の事。
その後同じように咲希の買い物にも付き合ったわけだが、
物を選ぶ時の光景が微笑ましく思えたのは記憶に新しい。
「俺にも、楽しい事を教えてくれた人がいるからな」
「お、もしかして青柳君の恩人? 私気になるなー」
「私も少し気になるかな。どんな人だろう」
「………」
普段真面目な冬弥にここまで言わせる人物はそういない、と理那は食いつく。
言葉も心なしか興味があるようだ。
しかしそれを知る彰人は心底嫌そうな顔をしている。
「良かったら今からでも紹介しよう。まだ教室にいる筈だ。彰人も良かったら……」
「いや、オレはいい。というかそろそろ行かねえとあいつらも待ってるだろ」
「……そうだな。すまない、こちらから連絡しておくから2人で行ってくれないか?」
「おっけー! じゃあどこにいけばいい?」
「2のAだ」
「えっ……」
そこでようやくなにかに気づいたのか言葉も硬直する。
思考回路を回しながら、もしという嫌な予感が導き出される度に少しずつ後ずさっていた。
「どうしたの言葉、急に変な声上げたりしてさ」
「えっと、私もいいかな……家で勉強があるし」
「ダーメ、言葉だって付き合うって言ったでしょ! じゃあ早速2のAにしゅっぱーつ!」
「し、東雲君助け「じゃあな委員長。
頼みの綱として彰人に助けを求めるが、巻き込まれたくないのは彼も同じ。
そして彼の放った一言で嫌な予感が的中した言葉は、
みっともない声を上げつつ理那に連行されるのであった。