荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第5話「みんなが笑顔になれる場所Ⅰ」

 

それからフェニックスワンダーランドを回ることになった4人。

それぞれの希望を聞きながら、千紗都はそのアトラクションへと案内していく。

そして名物とも言える長蛇の列に捕まっていた。

 

「いつもは1人で来ているからな。皆と一緒であればこうして待つのもやぶさかではない」

「でもこはねちゃんと一緒だったら待たずに乗れるよ?」

「ああ、確かに少し高い年パスなら優先列などもあるが、

 それを利用するには全員が所持してないと……」

「ううん違うよ! こはねちゃんは常連さんで近道とか待ち時間も全部研究しててねー」

「なんだと!? 一体何者なのだそのこはねという人物は……」

 

上には上がいるということを痛感しながらも、会話を弾ませる2人。

実際はお互いに出会っているのだが、それを紐付ける決定的なきっかけはなかった。

 

「へー、そのこはねって子凄いね。そこまで好きになれる理由があるのかな」

「んー、その辺はよくわかんないけど……あ、順番回ってきたよ!」

 

どれほど常連なのかは知っていても、その魅力の本質には文も気づけていない。

そして会話に夢中になっていたからか、あっという間に順番が回ってきたようで。

 

「さあ来たぞ、これが我のとっておき、『フェニーくん・ザ・シューティングライド』だ!」

「名前、そのままだね」

「こういうのって分かりやすいのがウリでしょ。ほらほら後ろ詰まってるし早く乗るよー」

 

ちょうど4人用だったため、ぴったり収まることができた。

終始笑顔のスタッフから説明を受けつつ、前に固定された銃座を手に取る。

 

「フェニーくんの国が突如ドラゴンに襲われたため、

 それを救出し事の終息を図るのが我々の役目、という設定だ。

 減点対象のフェニーくんも混じっているから気を付けろ!」

「はーい! よーし頑張るぞー!」

「こういうのやったことないから……大丈夫かな」

「私は得意だよー、ゲーセンとかでちょくちょく遊ぶし」

 

気合い十分な3人に対して、こういったものには全く縁のない言葉。

そんな彼女の心を置き去りにしつつ、アトラクションは動き出した。

 

ファンシーな作りの世界に突如表れるドラゴンの的。

引き金を引けば独特な効果音が鳴り響く。

そして誰よりも早く的確な射撃によって蹂躙していくのが千紗都であった。

 

「ハッハッハ! この程度で我の進撃を止めようなど一億年早いわ!」

「うー、わたしの分も残しといてよー!」

「なんか逆に私達が侵略者側じゃない?」

 

出てくる敵をすべて蹂躙していく様はまさしく狂戦士そのもの。

2人がそれぞれの意見を口にしているなかで、戸惑いながら引き金を引く存在が1人。

 

「……えい」

『キュ~……』

「「「あ」」」

 

それは唯一残った的──フェニーくんに命中する。

 

「おい審判者! それは狙ってはならぬと言っただろう!」

「え、あ、そうなんですね……えい」

『キュ~……』

 

千紗都の警告むなしく、次に放たれた光線も狙いが逸れフェニーくんに命中した。

その後も神かかった誤射は正確にフェニーくんを撃ち抜いていく。

それを千紗都が稼いだ点数でなんとか誤魔化していた。

 

「馬鹿か貴様は! おい友人、鶴音妹! 審判者を止めろ! その引き金を引かせるな!」

「言葉ストップ!」「もうやめてお姉ちゃん!」

「え、でもやってみないと楽しいかわからないし」

「根本からゲームの趣旨を履き違えていることに気付け!!」

 

こうしてわんやてんやのシューティングライドは終わりを告げ……

 

 

 

「な、なんとか記念品を獲得できる得点は死守したぞ……」

「言葉ってば逆神エイムでフェニーくん一網打尽だったよねー。なんなのあれ?」

「さあ……? でも銃が勝手に……」

「さすがにフェニーくんがかわいそうだったよー……」

 

記念品の限定フェニーくんを手に取りながら、4人はアトラクションを後にする。

 

「ま、まあ良い。これもまた、皆で来る醍醐味というものだからな」

「んじゃ、次は私の乗りたいやついきまーす!」

「理那さんお願いしまーす!」

 

続いて理那が先導する。

まだまだ4人のアトラクション巡りは始まったばかりだ。

 

 

//////////////////////////

 

 

~ゴーカートにて~

 

「ハッハー! 最速の称号はこの理那様が頂いたー!」

「待てー! 恩人さんとはいえ勝ちは譲りませんよー!」

「くっ、メインエンジンが……! 狙ったか、斑鳩理那!」

「あくまで子供向けなので、そんなに速度は出ないと思いますが……」

 

 

~お化け屋敷にて~

 

 

──ペチョッ。

 

「うわっ何このヌメっとしたやつ! ……ってコンニャクかー」

「そんなものまで用意しているとは徹底しているな。……我の身長では届かんが」

「理那さん背高いですもん「ヴォオオオオ……」出、出たー!! お姉ちゃーん!!!」

「大丈夫だよ文、あくまでキャストさんだから「それでも怖いよー!」ぐえっ」

「ちょ、言葉が死んじゃう! 文ちゃん落ち着いて!」

「恐れるべきは仲間の中にいる、か。奇しくも真の恐怖体験を味わうとはな」

「そ、そんなこと言ってないで……助けて……」

 

 

~渓流下りにて~

 

 

「なんかゆっくりだねー」

「ま、子供向けだし普通でしょ。ちょっと濡れるって書いてあったけど」

「最近暑いことも多いからな。涼むにはちょうど良いだろう。

 雨ガッパも支給されていることだしな」

「濡れるのは……ちょっと……」

「あー、お姉ちゃんこの前ずぶ濡れで風邪引いちゃったもんねー」

「大丈夫、もし言葉が濡れそうになったら私が守るから──」

 

──バッシャーン!

 

「………」

「……ごめん、今のは無理」

 

 

~フリーフォールにて~

 

 

「というわけで風を直に感じるこれで乾かそう!」

「あの、すみません。スカートのお客様は……」

「あ、そうなんですね。私は別にいいんだけどなー」

「貴様が良くてもスタッフと観客がよくないだろう。諦めろ」

「わたしも流石に遠慮したいかなー……」

「風を感じるなら……あれに乗る?」

 

 

 

様々なアトラクションを巡り最後にやって来たのは、

最近新しくなったという『ネオフェニックスコースター』であった。

お昼時だからか待っている人も通常に比べ少ないが、

それでも目新しさからか他のアトラクションよりも長い列ができている。

 

「……ふむ、ここも変わってしまったか」

「雲雀さん? どうかしましたか?」

「いや、我も乗るのは初めて故気持ちが昂っているだけだ」

 

何かを誤魔化すように先へ進む千紗都。

しかしどこか哀愁に満ちた瞳を、言葉は見逃さないのであった。

 

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