荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第7話「それぞれの答えⅠ」

一方そのステージでは4人のキャストが片付けに勤しんでいた。

 

「うるさ……誰? ショーはもう終わって……」

「ああ、言葉くんに理那くんだね。どうやら一足遅かったみたいだ」

「あ、文ちゃんだー! こんばんわんだほーい!」

「後1人は……見ない顔だな。知り合いか?」

 

その声によって4人に気付いたそれぞれが口を開き、見慣れた人物の元へと歩いていく。

特にえむに関しては一直線に文の元へと飛んでいき、

いつものように挨拶を交わしていた。

 

「えむちゃんこんばんわんだほーい!」

「わんだほーい……? あ、あの時パフォーマンスしてた子!」

 

摩訶不思議な挨拶に首を傾げれば、自ずと答えにたどり着く。

言葉と共にフェニランを訪れた時の事を思い出した。

 

「ほえ? お姉さんは?」

「私は斑鳩理那。文ちゃんとそのお姉さんの友達、ってところかな」

「そうなんだ、アタシは鳳えむっていうの! よろしくお願いします、斑鳩センパイ!」

「おいおいえむ、コイツはお前と同じ1年生だぞ」

 

遅れてそばにやって来た司に咎められるも、

えむは理那の顔を覗きこみ不思議そうにしている。

 

「あれ、そうなの? うーん、でも朝比奈センパイみたいな感じがするし……

 でも全然怖くないし、あれー?」

「へぇ、そこでまふま……あの子の名前出るなんて思わなかった。

 面白いね。えむちゃんって呼んでいい?」

「うん!」

 

無意識でも慧眼なえむの見解に言葉を漏らしつつ、優しい笑みで答える理那。

えむもそれに対して満面の笑みで答えた。

 

「すごいなー理那さん、えむちゃんとあっという間に仲良しになっちゃった」

「まあえむもえむだし、鶴音さんの友人もそんな感じだから……」

「まさに類は友を呼ぶ、だねえ。ところで君達、ここに一体何の用だい?」

「ああすまない。

 この者達にショーを見せようと思ったのだが、今日の公演は終わってしまったか」

 

勢揃いしたワンダーランズ×ショウタイムの面々に対して、自ら進み出て詫びを入れる千紗都。

育ちのいいお嬢様の如く、ゆったりと礼をする。

 

「そうだな。本日も満員御礼の大盛況、観客からは拍手喝采の嵐!

 お前達も見れば笑顔間違いなしの最高のショーだったぞ!」

「わたしもショーまた見たかったなー。今回はどんなショーだったの?」

「えっとね、サラサラキラキラ~で、ポンポンポーンってなるショーだよ!」

「すごーい! そんなの思い付くなんて流石えむちゃん達!」

 

その言葉の意味がわかっているのか、文も称賛を送る。

しかし千紗都も言葉もサッパリで首をかしげていた。

 

「おい鶴音よどういう意味だ、説明しろ」

「いや、私も擬音が多すぎて何がなんだか……文、教えて?」

「うーん、何て言ったらいいんだろ。ほんとにサラサラーって感じだから……」

「なるほどね、大体わかった」

「は?」「「え?」」「なに!?」「ほほう?」

 

文がうまく内容を説明できないままに戸惑っていると、理那が納得したように相づちを打つ。

それには流石の演じた面々の興味を引いた。

 

「つまり花咲じいさんのお話を元にした、魔法でお花を咲かせるショーってことだよね?」

「すごーい! 理那さん大正解ー! ドンドンパフパフー!」

「ほ、本当に当たってる……」

「ああ、これを説明できるのは類だけだと思っていたが……」

「僕も驚きだよ。まさかこんなにも身近に理解者が居たなんてね。本当に面白いよ、理那くんは」

「いやーどうもどうも」

 

逆に今度はワンダーランズ×ショウタイムの面々から称賛を受ける理那。

その優れた直感については言葉も理解していたが、

まさかここまでとは思わなかったようで。

それをはじめて目の当たりにした文と千紗都も言葉を失っていた。

 

 

 

こうして交流もほどほどに片付けを再開させる4人に、その手伝いをする理那と文の2人。

観客席でその様子を眺める言葉と千紗都。

本来は見学も許されないが、ぬいぐるみに対してえむと文がお願いすることで叶ったわずかな時間。

 

「思い出は色褪せセピアに。そして灰色に、か」

「何かの詩ですか?」

 

そんな中で千紗都がサングラスを外し、誰にも聞こえないような声で呟く。

しかしそばに居た言葉の耳には届いたようで。

 

「ああ、聞こえてしまっていたか。何、少し昔を思い出していただけだ」

「昔……そういえば、雲雀さんはここがとっておき、とおっしゃってましたね。

 思い入れがあるんですか?」

「ああ、あるとも」

 

言葉という聞き手がいるからか、いつもより饒舌だった。

感傷に浸る千紗都はおもむろに語り出す。

 

「昔……といっても我も幼く両親が存命の頃だな。

 両親の演奏会の途中でフェニランに訪れた。そしてここでショーを見た」

「ここで、ですか? 他のステージではなく?」

「昔はこここそが園内で最高のステージだったのだ。

 まさしく夢の様な一時。人々を笑顔にする真の芸術。

 そんなあるご老人のショーに心を打たれたものだ」

 

赤い瞳は相変わらずステージを眺めている。

しかし、写っているのはかつての思い出であった。

 

「そこで我は夢を知った。いや、教わった。

 それからだな。バイオリンに対して熱が入ったのは」

「それで、今日もそのショーを見ようと?」

「ああ。まあ、そのご老人も数年前に亡くなったらしいのだが」

 

目を閉じ、清々しいまでにその顔は笑っている。

しかしそれはどこか諦めているようにも見えた。

 

「その遺志を継いだのかは解らんが、彼らはそれを選んだのだ。

 理想とは最も単純な行動理由だからな。それを否定はせんよ」

「そうですね。あの人になりたい、あの人のようにありたい、

 というのは動機として優秀です」

 

ステージの上で片付けに励むワンダーランズ×ショウタイムの面々を眺めつつ、

感傷たっぷりに少女はそう呟く。

言葉もそれに対しては同意見であった。

 

「だが与えられるだけではいけない。それは本当の想いとは呼べない。

 我々が生きているのは現実という名の世界だ。

 理想に頼りきっていては、真に生きているとは呼べん」

 

夢を見る前に現実を生きねばならない。

本当の想いを見つけてもなお進めなかった少女にとって、少しばかり耳が痛くなるのであった。

 

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