荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第8話「それぞれの答えⅡ」

そんな一方で片付けをしつつ、会話に花を咲かせている者もいた。

 

「神代センパーイ、この機械どこにしまいますー?」

「ああ、それならステージの上座に集めておいてくれないかい?」

「はいはーい」

 

演出用の重い機械も軽々と運ぶ理那は、類と共に大道具などの片付けを行っている。

元々セカイでこういった準備や後片付けを手伝っていたため、

もはや慣れたものであった。

 

「本当に助かるよ。今回のショーは特別演出に凝っていたからね」

「その辺はお気にせずー。代わりに面白いもの見れましたし」

 

その視線の先にあるのは、同じく片付けに励む4人と1体の姿だった。

 

「そこで司くんがビシー、ってポーズを取ったんだけど、

 ネネロボちゃんがピカーって光ってねー!」

「あはは! 司先輩よりネネロボちゃんが目立っちゃったんだー!」

「ま、まあスターたるもの、他のキャストを目立たせるのも大切だからな!」

「そんな事言ってあとで悔しがってたでしょ」

「ハイ、私のメモリーニモ、シッカリと記録サレテイマス」

 

ハイテンションな空気にも慣れた寧々が、

ネネロボと共に3人の抑制に徹している。

それでも作業の手は止まらず、装飾などの小道具をまとめていた。

 

「これでこの前の約束は果たされたってことで」

「おや、本当にあれだけでいいのかい?

 ショーでならネネロボの性能を存分に発揮した姿が見られるというのに」

「言われてみれば……あー、私もショー見たかったなー」

「それは次回のお楽しみということで」

 

あの司が楽しいと豪語するのだから、

きっと自分の楽しいも見つかると思ったショー。

図らずもここに訪れることになったが、むしろその為か見られなかった悔しさが顔を出す。

類としても楽しみにしてくれるお客さんが増えるのは嬉しいため、

その場で全てを見せることはしなかった。

 

そんな寧々とネネロボを眺めていると、ひとつの疑問が飛来した。

 

「そういえばあの寧々ちゃんって子も一緒にショーをやってるんですよね」

「ああ。共に最高のショーを届ける仲間だとも」

「ならなんでネネロボって何であの子をモチーフにしたんです?

 他の外見ならもっとキャストと差別化出来るのに」

 

理那の言い分はもっともだった。

キャストとしてロボットを引き入れている斬新さは目を引くが、

態々同じステージに立つ少女に似せる必要はない。

 

「それにはちょっと入り組んだ事情があってね。

 勘の良い君なら、わかるんじゃないかな?」

「へー、なら受けてた立とう!」

 

多くを語らない類の挑戦を受けて、理那は思考を回す。

上手く焦らすことこそ、演出家としての本領であった。

 

元より関わりの薄い彼について探っても意味はない。

 

『さて、メンテナンスはこれで終わりだ。

 後は軽い動作チェックと行きたいけれど、彼女のお気に召すかは本人に見てもらわないとね』

『あれ、神代先輩が使ってるんじゃないです?』

『僕はあくまで設計者だよ。……と、噂をすれば』

 

以前ネネロボについて語っていた事を思い出す。

寧々の事を想い類が設計した。それはつまり寧々本人に何か問題があったからで。

 

彼女と初めて出会ったのは神高祭で屋台に並んだ時。

綿飴の売り子をしていた寧々に、理那が彼女にお願いした。

そして記憶に新しい校舎裏での出来事。

顔見知りでもその姿を隠してしまうほどの人見知り。

 

そんな彼女がショーで多くの人の前に立つなど、想像もつかない。

 

「なるほどね、大体わかった」

「わかってくれたかい?」

「あの子の代わりにネネロボがステージに立ってる。

 だからあの子に似せて作った。そうですよね、神代センパイ」

「ご名答。といっても今は寧々も一緒にステージに立っているけどね」

 

理那の答えに対して満足げに首を縦に振る類。

 

普通に考えれば導き出せる答えかもしれないが、

以前ショーを見た際は言葉も理那も立ち見であり、キャストの顔を拝むことができなかった。

寧々と関係の深い言葉はともかく、理那など数回会った程度に過ぎない。

そんな情報量の少なさから的確に解を見いだせるのは、慧眼という他なかった。

 

「でもそれならもうネネロボを……あー、ごめんなさいなんでもないです」

「特に気にしていないよ。君の場合、悪気はないだろうから」

 

これ以上ネネロボがステージに立つ必要はない。

そう思ったことを口にする彼女だが、それこそ地雷だと気付きすんでのところで留まる。

類も興味の延長線上にある疑問に過ぎないと知っていた。

 

「確かに代行としてのネネロボの役目は終わった。それでもまだ必要としてくれる仲間がいた。

 なら設計者としてそれに応えないわけにはいかないだろう?」

「必要としてくれる仲間、ね……」

 

『もう二度と、───には近付かないでくれ』

『───はあなたと違って優秀なお医者さんになるの。

 あなたといたら、その夢を奪うだけだってわからないの?』

 

ふとその言葉に過去を思い出し、目を伏せる理那。

必要とされたから引き合わされ、不要として切り捨てられた。

誰かの為に使い捨てられる物。

 

「私にはわかんないな。何もかも」

 

かつての友ですら理解することは叶わなかった。

今の友も全て理解出来ているかすらわからない。

どんなに直感が優れていても、真実までは辿り着けなかった。

そして今は楽しさも失っている。

いつまで経っても追い付けない、という枷に囚われながら。

 

「──わからないままで、いいんじゃないかな」

「へ?」

 

そんな突拍子のない言葉に理那は目を丸くする。

同じく慧眼である彼とは思えない発言であった。

 

「過程も結末もわかっているショーなんてつまらない。

 何が起こるかわからないからこそ楽しいんだ。違うかい?」

「……はは、そりゃそうですね」

 

自分こそがその証明であるように、自信たっぷりに類は告げる。

その顔があまりにも挑戦的なものだった為か、理那は悔し紛れに質問を返した。

 

「じゃあ神代センパイは、今楽しいですか?」

「ああ、楽しいとも。最高の仲間と最高のショーをする。

 試していない演出も、まだまだあるからね。フフフ……」

 

ショーも終わったばかりだというのに、類は不適な笑みを浮かべる。

そんな態度に、またも敵わないと両手をわざとらしくあげる理那。

 

「あーあ、ほんと神代センパイが羨ましいなー。

 今が楽しくって最高の仲間も一緒だなんて、この先怖いもの知らずじゃないですか」

「それは君も同じじゃないかな?」

「? それってどういう……」

 

先程の理那の態度に疑問を覚えたのか、言葉がそばにやって来ていた。

 

「ん、どうしたのさ言葉。何かあった?」

「何かあったって、急に両手あげたりしたから。重い物持ってたし腕でもつったのかなって」

「恩人さん大丈夫ですか!? 怪我でもしたんですか?」

「おいおい、自分から手伝いを申し出ておいて負傷など笑えんぞ」

 

会話の内容までは聞かれていなかったものの、

動きに大きく現れていたため心配したのだろう。

自然と文や千紗都も集まってきていた。

 

「(ああ……なんだ。こんな簡単なことだったんだ)」

 

何気ない日々を共に暮らしながらも、

こんな些細なことでも自分のことを心配してくれる。

追い付けないからといって諦めていたのは、いつも自分の方だった。

それでも振り返り手をとってくれる誰かがいる。

 

理那が長らく求めていたものの答えが、そこには確かに存在していた。




ご無沙汰してます。kasyopaです。

のほほんと更新しながらも新作との温度差で風邪引きそうです。
UAもお蔭様で順調に伸びて2万が見えてきました。
近々記念話アンケートをとる予定ですので、またご協力のほどよろしくお願いします。
とはいえもうネタが……いや、捻り出しますのでご心配なく。

理那のお話もまもなく終わり。決着の時は、まもなく。
次回「私の未来、貴女の未来」。お楽しみに。
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