第1話「再会」
楽しいもの探しを終えた理那。
これで万事解決……かと思いきや、彼女の姿はいつもと違うところにあった。
「はー……アニマルセラピー全開だー……」
「あはは、気に入ってくれた見たいでよかったです」
いろんな毛並みの猫に囲まれながら、癒しを堪能している。
その傍ではオニキスと遊ぶ文の姿が。
そう、ここは文が行きつけの保護猫カフェである。
千紗都が楽しい場所を教えたことにより、
文も自分のとっておきの場所を紹介したのだ。
理那としても断る理由がないため誘いにのった訳だが、
文以上にこの環境を満喫している。
「私としても嬉しいわ。文ちゃんがお友達を連れてきてくれて」
「あの、ごめんなさい予約もなにもしてないのに」
「いいのよ。もうすぐ予約してるお客さんが来るけれど、
それまでゆっくりしていって頂戴ね」
「はーい。ありがとうございます」
厨房から顔を覗かせる店主。
彼女としても文の来店は嬉しいものらしい。
何匹かの猫が大の字になって眠る理那の上に乗せられていた。
すべて文によるものだが、人肌の温かさと柔らかい体が心地いいのだろう、
すぐに離れることはなかった。
「お姉ちゃんも一緒に来れたらよかったのになー」
「仕方ないよバイトだし。それに言葉も何回かここに来てるんでしょ?」
「でもでも、やっぱり一緒の方が楽しいし!」
「そっか。私は文ちゃんとだけでも楽しいけどなー」
「あっ……ごめんなさい」
自分で言ったことの意味を理解したのか謝罪する文。
他意ではなく本心だと見抜いていたため、気にすることもない。
「大丈夫、私も言葉と一緒ならもっと弄り甲斐があるって思ってたし。
そんなしょんぼりする文ちゃんには、猫ちゃんを進呈しよーう!」
「え? わわわっ!?」
体を起こしつつ乗っていた猫を文へと差し向ける。
すると彼女の体質も相まって他の猫達も、我先にと文へと覆い被さった。
やがてすべての猫に埋め尽くされた文は身動きがとれなくなる。
「どう? 特製ネコネコアーマーの着心地は」
「お、重い……理那さん助けて……」
「ごめんごめん、写真撮ったら助けてあげるからちょっと待ってて」
こういったものに目がない彼女にとって、最高の被写体であることにか変わりない。
思う存分写真撮影した後に散らそうと努力するも、なかなか離れてくれなかった。
困っていると、その隙間から抜け出したオニキスが店の入り口にある定位置へと戻っていく。
それに合わせて他の猫達も散っていった。
「あれ、どうしたんだろ」
「ああ、予約してたお客様が来る時間ね」
厨房へと下がっていた店主も急ぎ足に入り口の方へと向かう。
しばらくしていると、お客さんが入ってきた。
「へえ、賢いねあの猫ちゃん」
「えへへ、新しいオニキスの芸ですよ。わたしが教えたんです」
定位置から離れることのないオニキスだが、文が来ているときは別である。
しかしそれで他のお客さんの出迎えが疎かになってはいけないと、
文が新たに伝授したのだ。
結果としてそれが他の猫への伝令となったのは嬉しい誤算である。
「こんにちは。あの、予約してた東雲ですけど……」
「いらっしゃいませ。はい伺って……あら、やっぱりこの前の。
どうぞ、ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます。あっ……」
来店したのはまさかの絵名。その後ろには3人の連れがいる。
オニキスの対応に笑みをこぼしつつ先客である文を見つけ、思わず硬直した。
「あっ、絵名さんこんにちは! お久しぶりです!」
「文ちゃん来てたんだ。もう、言ってくれたらいいのに」
文も絵名に駆け寄って再会を喜ぶ。
絵名にとって貸し切りでないのは痛手であったが、ここまで来ると逆に好都合である。
「ごめんなさい、色々忙しいかなーって思ってあんまり声かけられなくって」
「文ちゃんならいいの。それに一緒ならオニキスも撮れるし」
絵名の思わせ振りな視線を感じ、首をかしげるオニキス。
しかし今回の来客は絵名だけではない。
「へー、絵名のとっておきの場所っていうから来てみたけど……結構内装もオシャレだね」
「黒猫……モチーフにはよく使われるからいいアイディアになるかも」
「もう奏、今日はゆっくりするって決めたでしょ?」
瑞希・奏・まふゆ。それはニーゴの面々であった。
2人は平常運転であったが、まふゆは当然人目もあるため『いい子』状態。
「ところで絵名、その子って知り合い? 結構年下みたいだけど」
「前言ってたアイツの妹ちゃん」
「……ってことは言葉の!? へー、この子が……」
「鶴音さんの妹さん……?」
その言葉に瑞希だけでなく奏も興味を惹かれる。
しかし文からすれば見知らぬ人物であるため絵名の後ろに隠れてしまった。
「ああ、ごめんね。皆私の友達……っていうか知り合いだから。
お姉さんとは知り合いなんだけどね」
「絵名さんとお姉ちゃんの知り合いさん?」
「うん。ボクは暁山瑞希。それでこっちが奏」
「宵崎奏。お姉さんには、色々お世話になってる」
「えと、鶴音文です。よろしくお願いします」
「よろしくね、妹ちゃん♪」
名前を教えるも瑞希に覗き込まれ、
逃げ場を求めたその先はまふゆの後ろであった。
「……? 体験入学以来、だったよね。私は朝比奈まふゆ。よろしくね、文ちゃん」
「あ、お姉ちゃんみたいな人……はい、お願いします」
姿勢を低くして視線を合わせるまふゆ。その表情は笑顔。
以前見た面影は変わらず、少し落ち着きを取り戻した。
「ふふ、何度も言うけど私はあなたのお姉ちゃんじゃないよ?」
「ご、ごめんなさい」
そう言って絵名の元へと戻っていく彼女。
「それで、あそこに寝っ転がってるのって文ちゃんの知り合い?」
こちらに目も向けず猫と戯れる金髪の少女。
どこかで見たことがある気もするが、絵名には思い出せなかった。
「あ、誰かと思ったら理那じゃん! なにしてるのさーそんなところで」
「ん? 瑞希久しぶりー。今は猫と遊んでるからねー。ほーれびよーん」
決して振り向くことなく、瑞希に返事を返す。
その体でよくは見えないが、猫の体を持って伸ばしているようだ。
「理那……それにその声」
「……? まふゆ、どうかしたの?」
「ううん、なんでもないよ。もしかしたら人違いかもしれないし」
その名前と声に1人の少女が反応した。
表情から笑みは消え失せ本来の姿が写し出される。
その変化に奏がいち早く察するものの、気付いた時には元に戻っていた。
「おかしいなー?
すこぶる優秀な『まふまふ』なら聞き間違えないと思うんだけど?」
「……ふふ、『りなりー』も相変わらず人が悪いよね。そんなの
お互い向き合う2人の少女。運命の糸はまたここで絡み合うのであった。