荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第4話「邂逅」

一方その頃、自室で暇をもて余していた言葉に一本の連絡が入る。

それはKからであった。

 

【ごめん、今いいかな】

【K、どうかしました?】

【ちょっと聞きたいことがあって。ボイチャで話したい】

【わかりました。準備でき次第こちらからかけますね】

【ありがとう】

 

チャットの内容と速度からして珍しく急いでいる様子。

それを察して言葉も準備を整える。

通話ボタンを押せば2回とコールもなしにKが応答した。

 

『ごめん、えっと、忙しかった?』

『いいえ、特に。それより用件はなんですか?』

『実は今日、wordの友達に会ったんだけど……その事で質問があって』

『(理那の事? 今日は確か文と猫カフェに)』

 

奏が出不精なのは知っているが、なにかと外で出会っているため不思議には思わなかった。

しかしそれ以外であれば遭遇するのは珍しいこと。

 

『あの、もし理那が失礼なことをしたのなら謝ります。

 あの子に悪気はないと思いますが、少し暴走気味なところがあって』

『そうじゃないの。でもそっか、Amiaから聞いてたけどやっぱり間違いないんだね』

『あっ……!』

 

言葉も珍しく気持ちが先行してしまい自爆する。

理那の名前も出してしまいいくら知人とはいえ失態であった。

 

『気にしないで。名前は聞いていたから』

『失礼しました。あの、それでなにか……』

『その理那っていう人、他に友達がいたりしないかな。特に宮女の生徒で、だけど……』

『宮女、ですか?』

 

食い気味な彼女の様子に少し押されながらも、思考をまとめる。

本来なら作曲に関することしか興味を持たない彼女が、理那のことに対して躍起になっている。

正確には理那の人間関係、宮女の友人のことだろうが、

それでも人にここまで執着するのは普通ではない。

 

『……わかりません。私も彼女のすべてを知っているわけではないので』

『……そっか』

 

しかし言葉もまたそういった事情を問い質すことはしない。

思い当たる情報はいくらでもある。

しかし憶測だけで期待させるほど酷なものはない。

 

その返答に先程までの威勢を失い肩を落とす奏。

そんな彼女に対してひとつの提案をする。

 

『もしそちらがよければ、こちらで都合を会わせましょうか?』

『っ! 本当に?』

『はい。ただし話の内容に関しては先に伝えます。その上で彼女がいいと言ったら、ですが』

 

理那が言葉に尽くしてくれているように、言葉もまた理那への恩返しは終わっていない。

騙して仇で返すようなやり方はしたくなかった。

 

『わかった。多分そっちの放課後くらいになら合わせられると思う』

『ではそのように』

『話を聞いてくれてありがとう。……それじゃあ、また』

『はい。Kもお体に気を付けて』

 

これ以上は話すことがないのか、奏は通話を切る。

再会の念が届くよう善処しようと、言葉は理那へと連絡を飛ばしたのであった。

 

 

 

数日後の放課後。言葉と理那はファミレスへと向かっていた。

 

「ありがとう理那、付き合ってくれて」

「なんてったって言葉からのお誘いだからねー。内容はともかくとして」

 

流石の理那も内容からしていい顔はしなかった。なにせ人間関係の深堀りである。

自分で話すならまだしも、人に聞かれて話す内容ではない。

しかしそれでも付き合ってくれるのは彼女の人の良さの表れだろうか。

 

「それに、言葉の知り合いってのもちょっと気になるしね」

「私の?」

「そうそう。だって最初は私くらいしか友達いなかったのにさー、

 知らないうちにどんどん知り合い増やしてるじゃん。

 流石の私でもちょっと妬いてるんだよ?」

 

そう言って人目を気にせず歩み寄る理那。

 

「理那、歩きづらいよ。もう少し離れて」

「もうちょっとー」

「……はいはい」

 

言葉もまた、そんな彼女に対してどこか甘いのであった。

 

やがて到着したファミレス。

テーブル席で奏が座っているところを見つけ、店員の案内の元たどり着く。

適当に注文を済ませて自己紹介へ。

 

「宵崎奏。あなたは?」

「え、それだけ? まあいいけど……言葉の友達やってます、斑鳩理那でーす。

 よろしくね宵崎さん」

「うん。よろしく」

 

座りながらにして握手を求める理那に奏はおずおずと応える。

思ったよりも気さくな人物だと思いつつも、彼女が考える事はたったひとつ。

 

「それで、鶴音さんから聞いたと思うけど……今日は──」

「まーまーそう焦らない。

 せっかくこうして会えたんだしまずはお互いのことを知るところからでも。

 宵崎さんの趣味ってなにかあったりする?」

 

奏の声を遮り別の話題を繰り出す。

話をそらしているのか、単に対面出来たことを喜んでいるのか。

彼女の真意を図ることはできない。

 

「趣味は……音楽を聴くこと、かな」

「へー。どんなジャンル聴くの?」

「なんでも聴く。アーティストの曲もそうだけど、アニメとかドラマの曲なんかも」

「すっご! 私なんて好きなアーティストの曲ぐらいしか聞かないのに。

 それだけ音楽が好きなんだねー」

 

思ったよりも分け隔てない彼女の守備範囲に驚き感心する理那。

しかし奏の動機として、それは少し違っていた。

 

「好きというより、自分で曲を作ってるから。その勉強や参考にしてるんだ」

「あ、曲作ってるんだ! え、もしかしてプロ?」

「ううん、ネットで上げてるだけ」

「あ、ならさ、気になる人がいるから知ってたら教えてほしいんだけど……」

 

そう言っておもむろにスマホを取り出す理那。

そこにはあるアーティスト名が表示されていた。

 

「“OWN”っていう人なんだけどさ。生きてるか知ってる?」

「っ! あ、うん……生きてるよ。知り合い、だから」

「……そう。それならよかった」

 

予想外の名前に奏は硬直する。

なんとか答えつつ誤魔化してみせるも、最初の動揺は隠せなかった。

そしてそれを見逃すほど理那も甘くはない。

 

そこで注文が届き、一旦会話はお開きとなる。

各自が飲食に集中するため押し黙る奏であったが、焦らされるのは性に合わなかった。

 

「理那、もうそろそろいいんじゃない?」

「そうだね。宵崎さんの人柄も大体分かったし」

 

今まで背景のように押し黙っていた言葉がようやく口を開く。

彼女とて奏よりも理那との付き合いの方が長い。

前座のやり取りすらなんの為かは把握しているつもりである。

長年連れ添った相棒のようにやり取りを交わして理那は口を開いた。

 

「まあ猫カフェの時からわかってはいたけどねー。

 わざわざ言葉を使ってまでして呼び出す位だ。

 それくらいあの子に思い入れがあるってことでしょ」

「! じゃあ」

「でもその前に」

 

水で喉を潤してから、しかと奏を見つめる理那。

顔も、目も、一切笑っていない。

 

「あの子に最後まで付き合う覚悟、ある?」

「あるよ。わたしは救うまで、曲を作り続けなきゃいけないから」

「そっか」

 

その言葉を聞き終えて、理那は乾いた笑みを浮かべた。

 

「なら昔話してあげる。全部に裏切られた女の子──まふゆの話をね」

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