荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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鶴音さんちのクッキングパーティー その6

 

会場の調理部屋では、既に1人の女性と2人の少女が準備に取りかかっていた。

 

「ありがとう理那。せっかく来てくれたのに準備手伝ってくれて」

「いーのいーの。準備からやった方が楽しめるしさ」

「私からもありがとう。言葉ちゃんあんまり学校のこと話してくれないから、少し心配だったの。

 そしたらこんなにいいお友達がいたなんて」

「いいんですよ。私が好きでやってるだけですし」

 

そう言いながらも言葉より慣れた手つきで準備を進めていく理那。

叔母自身も言葉が生真面目なのは把握しているため、

こういったノリの良い友人がいることは知らなかったようで。

初見こそ不安になったものの、言葉が家族と変わらぬ態度で接することから既に心を許していた。

 

「ところで叔母さん、今日作る料理ってなんです?

 なんだかやたら材料の種類多いみたいですけど」

 

準備の片手間、用意された食材の数々に理那は疑問を覚える。

肉、野菜、果物に限らず小麦粉や調味料なども取り揃えてあり、

それはまるでホテルの厨房のようであった。

 

「ああ、それはね──」

「こ、こんにちわ」「おじゃましまーす!」

 

叔母が口を開いたとき調理室の扉が開かれる。そこから入ってきた4人の男女。

それを見るや否や会話を中断し向き直る。

 

「あら、いらっしゃい。今日の参加者さんでよかったかしら?」

「あ……はい、ここで間違いないですか?」

「ええ。文ちゃんから話は聞いているわ。もうすぐ準備できるからもう少し待っててね」

 

会場がわかっていても、始めて来る場であれば不安感をあおる。

しかし会場の中にいた知り合いを見つけ3人は安堵を、1人はげんなりとした表情を浮かべる。

 

「あれー彰人君じゃん。確か興味ないって言ってたよね? どしたの急に」

「いえ、別に大したことはないですよ。ちょっとした気分転換っていうか」

「何そのしゃべり方……ってははーん?」

 

眉間にシワがよっているのを確認しつつも口調だけは崩さない。

理那は入り口から入ってきた見慣れぬ少女達へと視線を移し、事情を察する。

 

一方視線を向けられた一歌も、見慣れぬ少女に目をつけられたのかと少し固くなった。

無理もない、一見してギャルそのものの見た目である彼女。

開口一番に彰人へ向けた言葉も一言で表すなら、チャラいというのが的確であった。

しかも一緒にいるのがあの言葉である。意外な組み合わせに困惑を隠せない。

 

「そっちの2人は文ちゃんの友達? 私は斑鳩理那。よろしくね~」

「私は天馬咲希です! よろしくお願いしまーす!」

「お、ということは司センパイの妹さんか。お兄さんには日々楽しませてもらってます」

 

開幕早々歩みより手を差し出す理那。

咲希は躊躇なく握手を交わし会話に花を咲かせるも、

一歌は助けを求めるように視界の奥にいる言葉を見つめた。

 

「ご心配なさらず。理那は高校生活きっての友達です。

 少し戸惑うこともありますが、悪い人ではありませんよ」

「ちょっと言葉ー、それってディスってない?」

「そう聞こえたらごめんね。でも好奇心で動きすぎるのは問題かなって」

 

一歌には見せない柔らかな口調と表情で答える彼女を見て、先の言葉が嘘ではないと実感する。

改めて差し出される手のひら。

 

「それで、あなたの名前は? よかったら教えてほしいな」

「あっ……星乃一歌です! よろしくお願いします!」

「うん、よろしくね」

 

自己紹介を終えたところで2人1組の配置につく。

言葉と理那も準備を手伝っていたものの今回は教わる側だ。

 

「はい、それでは皆さんはじめまして。講師を担当させていただきます、烏丸茜です。

 言葉ちゃんと文ちゃんの叔母として、改めてお礼させてください。

 今日は集まってくれて本当にありがとう」

 

教える側の人間だというのに深々と頭を下げる叔母──茜に戸惑う参加者各位。

 

「さて、今テーブルにレシピがあると思うのだけれど、それを見てもらえないかしら」

 

参加者各位のテーブルにおかれたA4サイズの紙に、手書き印刷で作られたレシピがある。

そのタイトルは──

 

「チーズケーキ……!」

「わあ、ケーキ作りだよいっちゃん!」

「そうだね。お菓子作りなんて久しぶり……」

 

彰人が感嘆の声を漏らしそうになる。まさか採用されるとは思っても見なかったのだろう。

他のメンバーもケーキという豪勢な料理に、テンションが上がっているようだった。

 

「はい、ということで今回はチーズケーキね。

 みんなの希望に添えたかったけど、折角だしみんなで食べるのならこういうのがいいと思って。

 なにか質問がある人はいるかしら?」

「はいはーい! 出来たら持ち帰ってもいいですか?」

「ええ。1人1ホールの予定だからむしろ持って帰らないと太っちゃうわよ?」

 

勢いよく手をあげる咲希が当てられるよりも先に質問を飛ばす。

それに対しいたずらな笑みを浮かべつつ、端に揃えられた紙箱を示す茜。

 

「いやー、言葉の叔母さん太っ腹だね。私もお土産にしたいって思ってたんだー」

「お父さんにあげるの?」

「ううん、父さんは甘いの苦手だし、ちょっーとした知り合いにね」

 

理那が思い浮かべるのはもちろんルカのこと。

たまにはこういうのも悪くないだろう、と思考を巡らせている。

一方の言葉は文へのお土産にしようと思い、少しだけ気合いを入れた。

 

「すみません。チーズケーキっていっても色々ありますけど、どれを作るんですか?」

 

それぞれが調理に取りかかるか、というところで彰人が質問を飛ばす。

好物であるが故にこだわりも強かった。

 

「そうね。今回は焼いてすぐに食べられるスフレ風で考えていたのだけれど……

 もしかして、レアチーズやベイクドの方がよかったかしら?」

「あ、いえ、それでいいです。むしろそっちでお願いします」

「よかったね、東雲くん」

「まあ、な」

「はい、それでは早速作っていきましょう。まずは──」

 

こうして、6人によるチーズケーキ作りが幕を開けた。

 

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