3話構成ですー。
この日、宮女の体育館では宮女と神高による女子バスケ部の練習試合が行われていた。
第1ピリオドはお互いにいい勝負であり、神高側が若干リードしていた。
その状況から宮女は追い抜くために、神高は差を大きくするためにお互いに助っ人を1人ずつ投入する。
「今日も負けないよ、杏」
「こっちこそ!」
その人物こそ桐谷遥と白石杏。
ある意味切り札とも言える2人であり、幼馴染みにしてライバル。
小学生時代から続く因縁ともいうべき相手だった。
激しい接戦が繰り広げられながらも、試合は拮抗し差を縮められないままに時間が経過していく。
力量は互角。それ故に最初に開いた点差が響いていた。
第2ピリオドを終えても、わずかながら神高がリードしていた。
「お疲れさま遥ちゃん! タオル、冷やしておいたよ」
「ありがとう。って、見に来てたくれてたんだね」
「うん! それに……」
ハーフタイムに突入しみのりが遥を労う中で、神高側のベンチへと目を向ける。
そこには唯一、宮女の制服に身を包んだ生徒が紛れていた。
「杏ちゃんお疲れさま。かっこよかったよ」
「ありがとうこはね~! やっぱりこはねに応援されると疲れも一気に吹き飛ぶよ!」
「わわっ! こんなところじゃ恥ずかしいよ……!」
杏に抱きつかれているのはこはねである。
完全にアウェーな空気の中でも1個人を応援する辺り、かなり肝が座っていた。
「あ、そっか……杏の言ってた相棒って小豆沢さんだったんだね」
「うん。わたしも今日知ったんだけど……ふふ、こはねちゃん嬉しそう」
お互いの仲間が労う中で、コート内では2人の少女がパフォーマンスを披露している。
「第2ピリオドを終えた宮女と神高の頂上決戦! 僅差ながらも神高がリードしております!
果たして神高はこのまま勝利を掴めるか、はたまた宮女が追い上げるか!
今後の試合展開が楽しみですが、ここで一旦休憩です!」
「さーてやって来ましたハーフタイム! ここからはあたし達が盛り上げちゃうぞー!」
一方は実況と共に曲を回し、一方はそれに合わせてダンスを披露していた。
それはさながらプロの試合で見せるハーフタイムショー。
観客だけでなく選手達も魅了されていた。
「凄いな鳳さん……あんな動きでも全然歌声がぶれてない」
「それにミクちゃんの曲だよね、でもアレンジしてるのかな?」
「うん。あの実況者さんがやってるんだと思う」
「わあ……フェニランのステージキャストさんのハーフタイムショー……!」
「あ、そっか、あの子ってフェニランでキャストやってるんだよね」
「うん! それにこのアレンジ、理那ちゃんがやってるんだよね」
「そうそう。折角のハーフタイムくらい盛り上げなきゃって張り切ってたよ」
目でも耳でも楽しませてくれるそれはさながらプロレベル。
お互いを知るこはねにとっても、意外な組み合わせに飽きることを知らなかった。
やがてパフォーマンスを終える頃、遥がえむに声をかける。
「鳳さん、もしよかったら──」
「ほえ?」
こうして第3ピリオドにて、宮女側の助っ人がさらに投入された。
「それじゃあ鳳さん、よろしくね」
「よーっし! 気合い入れて頑張ろー!」
体操服に身を包んだえむの姿がそこにはあった。
ハーフタイムショーで見せた運動神経から、神高側も多少は警戒している。
試合開始と同時にマークされるえむ。
といってもそれは徹底されたものではなく普通のもの。
神高側は見くびっていた。
無邪気な性格、小柄な体格、杏という強力な助っ人、僅かながらとはいえ連続したリード。
様々な要素が絡み合い、頭では警戒しつつも心のどこかで余裕があった。
そしてある意味遥はそれを狙っている。
ボールが遥に回った時、いつものように杏がその行く手を阻んだ。
「ここから先は通行止めだよ!」
「そう。じゃあ、これなら止められる?」
即座にパスを放つ遥だが、その先には誰もいない。
他の選手もマークされており手出しできなかった。
「遥ってば正気? そんなことしたって──っ!?」
そのボールの行く末を眺める杏は目を丸くする。
先程までマークされていたえむが、フリーの状態でそのボールをかっさらっていったのだから。
「(うそ、あの子最初からマークしてたのに!)」
本来えむをマークしていた選手も困惑している。
まさに一瞬の出来事。
小さい体から繰り出される圧倒的な瞬発力によって、
瞬く間にゴール下へと潜り込みレイアップを決めた。
得点と共に歓声が上げる。
それからえむのマークを増やせばその分遥がフリーになり、
遥を押さえ込もうとすればえむがフリーになるという、
どうしようもない展開が続いていた。
そしてなにより、引けをとらぬ運動神経もさることながら、
互いの位置を熟知しあっているかのような巧みな連携で翻弄していく。
こうなれば杏1人の力で押さえる事は難しく、
点差はあっという間になくなり大きくリードを許していた。
やがて第3ピリオドの終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。
「どうする、このままじゃ……」
「そうは言ってもこっちの控えでもじゃあの2人に勝てないでしょ」
ベンチへ戻るチームメンバーは、どこか思い空気を漂わせていた。
ここで巻き返せなければ、神高の敗北が決定する。
しかし常に1対2の状態では勝てる可能性も薄かった。
「杏ちゃん、大丈夫?」
「うーん、ちょっと厳しいかも。後1人くらい助っ人がいてくれたらなー」
といってもここは宮女であり、見学しているのも宮女の生徒ばかり。
完全にアウェーな状態であることにかわりはない。
「突如彗星のごとく現れた鳳選手の活躍により、宮女側は大きくリード!
宮女はこのまま試合を勝利で飾れるか! それとも神高が追い上げるのか!
運命の第4ピリオドはまもなくです! どっちもがんばれー!」
そんな状況でも一切贔屓しない理那の実況により、館内は盛り上がりを見せる。
もはやここまで来ると世界大会のような盛況具合であった。
「いるじゃん! 1人、最強の助っ人が!」
そこで声を張り上げる杏。
その視線の先には観客の空気をものにする、実況者の姿があった。