荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第20話「琥珀色の景色」

翌日、私はいつもよりも早くベッドから起きだし、食卓へ顔を出していた。

 

「おはよう叔父さん、叔母さん」

「おや言葉さん。今日は早いんですね。おはようございます」

「うん。昨日はよく眠れたからかも」

「あらあら、ならもうお弁当を忘れることもなさそうね」

「もう、そのことは水に流してくれていいのに」

 

今日も変わりない様子で二人が出迎えてくれる。

叔父さんは今出るところだった様子で挨拶もほどほどに足早に家を後にした。

叔母さんの意地悪な言葉をやんわりとかわしながら席に着く。

 

朝食もいつもより豪華だが、昨日の晩の残りが見える辺り作りすぎていたのだろう。

 

「いただき「おはよう叔母さん!」」

「あら文ちゃん、今日も早いのね」

「うん! なんだか癖になっちゃって」

 

手を合わせて食べようとしたところで文が飛び込んでくる。

どうやら私と顔を合わせないようにしていたのがいつの間にか習慣になっていたらしい。

はたしてそれがいいことなのかはわからないが、遅刻するよりかはずっといいだろう。

 

「そういえば文、受験校決めたの?」

 

季節は秋。中学三年生である文は受験に向けて勉強を始める頃だ。

この子のことだから私と同じ神山高校に行くと思うが……

 

「うん。宮女にしようかなって」

「っ!? けほっ! けほっ!」

「あわわわ! お姉ちゃん大丈夫!?」

 

呑気におみそ汁を飲んでいたところに予想外の名前が飛び出してむせ返る。

しばらく文に背中をさすってもらいなんとか事なきを得た。

 

「あら、文ちゃんのことだから神高にすると思ってたんだけど、どうして?」

「だって神高にはお姉ちゃんがいるでしょ? 私ももうそろそろ姉離れしなきゃって思って」

「あらあら。言われちゃったわね言葉ちゃん」

「ですね」

「それに、憧れの人がいるから」

 

なるほどそういう理由か。

どんなに大事な存在でも、家族でもずっと一緒にいられるわけではない。

そして文にも夢がある。その夢を叶えるために私の存在が時に障害になることもあるだろう。

 

「それに宮女で友達ができたらお姉ちゃんのこといっぱい教えてあげるんだー!」

 

それは姉離れとは言わないのでは?

という疑問が頭を過ったが余計なお世話かもしれないので言うのはやめておく。

なんてことがあったものの無事朝御飯を食べ終え、私は席を立つ。

 

何も変わらない日常。それでも一つだけ違う物があった。

 

「あれお姉ちゃん、それって」

「うん。学校でも出来たら練習しようかなって。叔母さん、文、行ってきます」

「行ってらっしゃい」「行ってらっしゃーい!」

 

 

 

学校についてからというもの、クラスのみんなから受ける視線が集中していた。

正確には私ではなく持ち込んだ楽器ケースなのだが。

 

「おはよー委員長。その楽器ケースなに?」

「これ? 見てもらった方が早いかな」

 

ここでようやくいつも話しているクラスメイトが登校してきて、率直に疑問をぶつけてきた。

机の上に出してきて中身を覗かせるも、変わらず首を傾げるだけ。

寧ろ遠目に観察していた生徒達の視線がさらに集中する。

 

「いやいや、見たことあるかもだけどないような気もするし……」

「なら音を聞いたら分かると思うよ。お昼休み空いてる?」

 

練習するために先生から音楽室の使用許可を貰っている。

吹奏楽部も演奏会などを終えて暇な時期の為使用することもないらしい。

 

「空いてることには空いてるけど、何? 演奏してくれるの?」

「練習だからあんまり上手くないかもだけど、興味あったら」

「へー、折角のお誘いだし面白そうだから行くよ。楽しみにしてるね」

 

面白いものを見つけたような顔を浮かべる彼女は、

ひらひらと手を振って自分の席へと戻っていく。

それを機に仲のいい生徒が彼女に詰め寄って話を聞いていた。

 

 

 

お昼休みの音楽室にて、早々にお昼を終えた私はクラスメイトを観客に演奏会を開いていた。

楽器を見てもパッとしない表情であったものの、

音色を聞くなり納得したようで曲に合わせて手拍子なんかを送ってくれる。

 

「ケルト音楽っていうんだっけ、あの音ってそれだったんだ」

「そうそう。よく聞くけどパッとは出てこないもんね」

「でも何でバグパイプ? もっと有名な楽器とかあるんじゃないの?」

 

その問いに対し一応フルートも吹いてるけどと付け足して。

 

「昔家族旅行でいろんなイベントを見に行った時に素敵だったから、かな」

 

民族音楽や和楽器による演奏。神秘的な音色が壮大さや物悲しさを自在に表現していた。

流石にそういう教室が近場に無かったため、取捨選択の末に残ったのがフルートだった。

 

「つまり委員長のフルートってついでだったりする?」

「あの時はついでだったかな。でも今は大事な思い出だよ」

「へぇー、きっかけは何であれいいことじゃん」

「ありがとう。もう一曲いく?」

「お願いしまーす」

 

その日を境に至って生真面目な生徒が突然楽器の演奏を始めるという怪奇現象は、

生徒達の中でたちまち話題となり、あることないことを含んで噂は波紋を生んだ。

こうして本人の知らぬところで神高の名物生徒へと昇華するのは、時間の問題であった。

 





はじめましての方ははじめまして。
それ以外の方はご無沙汰しております。kasyopaという者です。
今回の話をいったんの節目とさせていただき、ご挨拶させていただいた次第です。

今回、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』の
二次創作としてこちらを執筆させていただきました。
メインストーリーを準拠しオープニング+20話構成となっております。


ここまで読んでいただいた方々には多大なる感謝を。

そして────彼女の物語は続いていく。

次回も、問題なく続きます。
どういった話が投稿されるかは、
首を長くしてお待ちいただければと思います。

ただ一つ、『既キャラとの絡みが爆発的に増えます』。
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