荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第6話「試行錯誤の面々」

 

それから言葉・理那・千紗都は時おりスタジオに訪れていた。

あの時はどうにかなったものの、勝負となれば話が別。

楽曲も決定し意気込む2人に手を引かれ、言葉も練習に打ち込んでいる。

 

そして今日もまた当然のように合わせていたのだが、理那が唐突に疑問を口にした。

 

「そういえば誰がボーカルやるの?」

「えっ、それは雲雀さんが」

「馬鹿者、我が出来るのはどちらか1つのみ。そんな芸達者なこと出来るわけがなかろう」

 

さも当然の様に千紗都が答えたことで新たな問題点が浮上する。

そう、この3人にはボーカルが存在しない。

前回と同じようにメロを誰かが演奏すればいいのかも知れないが、

相手はバンドでありボーカルも必ず存在する。

技量も大切だが、歌詞のあるなしでは観客への伝わり方が段違い。

そして何より対等でなくては比較対象になり得なかった。

 

「うーん私が歌ってもいいけど下手だからなー。ボーカル代理立てる?」

「そうだね。誰かお願い出来そうな人……」

 

1人でVivid BAD SQUADの面々を相手にした理那がいうのもなんだが、

あの時はアレンジという変化球だからこそ得られた評価。

今回は王道の一本勝負であるため、彼女のアレンジは使えない。

スマホの連絡先を確認しようとして制止の声をかけられる。

 

「いや、友人ではいけない。大体貴様らの友人など別の形で音楽を演じているだろう。

 我々の奏でる歌を歌うのに、そういった者は相応しくない」

「いや、そんなこと言ったって贅沢できないでしょ。素直に旨い人つれてくればいいじゃん」

「ならば我は降りるだけだ。どこの馬の骨かもわからぬ者が混じるなど、我は認めん」

 

理那の反論にも耳を貸さずその場に座り込んでしまう彼女。

といっても彼女の知り合いなど2人は分からない。

かなりの技量を持つ、彼女の眼鏡にかなう人物などいるはずもないだろう。

 

「えっと、どういう方なら認めてくれますか?」

「ふむ、そうだな……」

 

流石にこのまま堂々巡りをするわけにもいかず、観念して言葉は質問を飛ばす。

そんな言葉の態度に感心したのか、思い当たる人物を探し始める千紗都。

といっても彼女自身関わりが少ない為、自ずと導きだされるのは1人だけであった。

 

「鶴音妹はどうだ。彼女なら歌唱だけでなくパフォーマンスもこなせる」

「えっ、文ですか?」

「ああ。我はあのステージで確信した。彼女もまた貴様と同じ逸材なのだと」

 

案外答えは近くにあったらしい。

予想外の事が続く言葉は半ば呆れながらも文へと連絡を飛ばすのであった。

 

 

 

「お邪魔しまーす!」

「文ちゃん久しぶりー! 元気してた?」

「はい! 今日も元気いっぱいです!」

 

いつもの元気の良さでスタジオに飛び込んできた文と、満面の笑みで受け止める理那。

その相性の良さは言葉の入院以降も健在であり、フェニランを訪れてからは更に仲良くなっていた。

 

「来たか鶴音妹よ。早速だがこの曲は知っているか」

「……? あ、これミクちゃんの曲ですよね。知ってますけど……」

「貴様の腕を見込んでこの曲の歌唱と舞踊をお願いしたい。行けるか」

「出来なくはない……ですけど……うーん」

 

歌詞を見つめる文の表情が曇る。

やがて全てを見終わった彼女のはそれを突き返した。

 

「すみませんが、お断りします!」

「なっ!? 何故だ、これを歌えば貴様の実力を相手に知らしめることができるのだぞ!?」

「それはそうですけど、一緒にやるならわたしの意見も聞いて欲しいです!」

「文……」

 

以前の全肯定と違い、しっかりと自分の意見を言うようになった彼女。

これも多くの交流から自分の本当の想いを導き出した影響だろう。

そんな見違えた彼女に対し、しみじみと声を漏らす言葉。

 

「むう、それもそうか……して、どうすればいい。そうなれば選曲から見直す羽目になるが」

「私は大丈夫だよー。確かにちょっと暗い曲連続するの好きじゃないし」

「私も大丈夫です。ただ、あまり難しくない方がいいかな。練習時間も限られてるし」

「だが、明るすぎる曲も我としてはNGだ。愛だの希望だの、陳腐な言葉には聞き飽きたのでな」

「うーん、それだと……」

 

自分のスマホで動画サイトを漁る。暗すぎず、明るすぎず。

明るい楽曲であればいくらでも見つかるが、その両方を満たすとなると難しい。

 

文が思い浮かべるのは、セカイで出会ったミクの姿。

憂いの表情を浮かべつつ、宛のない旅を続ける彼女の心境を歌ったような曲を。

 

「……──♪ ──♪」

 

そんな彼女はおもむろに歌い始める。

それはまるで頭で考えるよりも先に体が動いたような、そんな感覚。

しかしそんなことは文にとって当たり前のことであり、それを便りに1つの楽曲へとたどり着く。

 

「あった。これこれ!」

 

その楽曲は和風ということもあり、明るすぎず暗すぎない雰囲気を保っていた。

求められた100%の答えとも言える。

 

「おお、これは……なるほど、曲の早さも申し分ない」

「寂しいけど……ま、さっきの曲よりかマシでしょ。消え去るわけじゃないしさ」

「この曲いいよね。ミクの方もルカの方も好き」

「ルカさんのはキーがちょっと高いんだよね。だからミクちゃんの方で!」

 

こうして紆余曲折があったものの、無事楽曲も決定し練習に励む4人であった。

 

 

 

練習終わりに4人は最寄りのファミレスで一服していた。

夕飯前ということもあり文と理那はいつもより注文を控えている。

しかししっかり1品注文している辺りちゃっかりしていた。

 

「ところで理那、審査員候補の人って見つかったの?」

「ん、見つかったよー。雲雀の名前出したら一発だった」

「我の名前で釣れたのか? それはどういう……」

「良く分からないけど、是非聞いてみたいって言われちゃってさ。

 それから成り行きで。大丈夫言葉も知ってる人だし」

 

言葉と理那が共通で知る人物はそこそこの人数であるが、千紗都の名前で釣れたとなると検討もつかない。

 

「お姉ちゃん、審査員ってなーに?」

「そういえば文には言ってなかったね。Leo/need……星乃さん達と勝負するんだよ」

「勝負? 音楽でするの?」

「心配しなくても大丈夫! 模擬戦だから勝ち負けでどうにかなる訳じゃないよ」

「あ、ならよかった……」

 

勝負と聞いて緊張していた文は胸を撫で下ろす。

 

「どうした、勝負事は嫌いか?」

「だって負けたら悲しいでしょ。友達だったらあんまりそういうの嫌だなって」

「ふむ、そういう考えもあるが……そういう訳にもいかんだろう」

 

注文していたコーヒーに口をつけ、千紗都は余韻たっぷりに呟いた。

 

「人は誰しも勝者であり続けたい生き物。そしてその象徴たる権力・地位・栄光にすがり続ける」

「あ、それわかる。自分の代わりに誰か生け贄にしたりしてね」

「なんだ友人、貴様もその口か」

「いんや、私じゃなくて父さんがね。そんな感じなんだよ」

「そうか。……まったく、いつの時代も変わらんな」

 

含みのある言い方をする言い方をし、それ以降は口を閉じる千紗都であった。

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