荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第6話「いつかのあの場所へ」

 

「というわけでやって来ましたフェニックスワンダーランド!」

「わーい!!」

 

ワルツのようなゆったりとした音楽を背景に、理那がテンションを上げる。

文が喜びの声と共に園内を見回していた。

 

「付き合って欲しい場所があると聞いて馳せ参じたはいいが……フェニランではないか」

「ええ、まぁ……この前案内してくださったお礼といいますか」

 

言葉を濁しつつ、その後に続くのは千紗都と言葉。

 

あれから様々なプランを練ってみたものの、

やはり好きな場所を自然と回るのが一番という結論に至った。

それでもワンダーステージの公演時間には合わせようとしていた。

 

「あ、フェニーくんだ! フェニーくん、飛んで飛んでー!」

 

フェニランのマスコットに千紗都から聞いた合図を送っている文。

彼女がなぜここにいるのかと言えば、ただのカモフラージュである。

それを彼女自身が知るはずもないが、純真無垢だからこそ出来ることもあった。

 

「雲雀さん、どこか行きたいアトラクションはありますか?」

「ふむ、といっても鶴音らとは最近巡ったばかり……一番の心残りと言えばやはりワンダーステージか」

「では公演時間を調べに行きましょうか。

「文ちゃーん、えむちゃん達のとこにいくよー!」

「あ、はーい!!」

 

理那の的確な呼び掛けにより風のような早さで戻ってくる文。

こうして意気揚々とワンダーステージへ向かう4人であったが……

 

「なにこれ」

 

ワンダーステージ前にある公演予定時刻の看板には、

【本日スペシャルショーにつき休演!!】という手書きの張り紙が貼ってあった。

 

「スペシャルショー……でもそれなら尚更ワンダーステージでやると思うんだけど」

「いや、フェニランにはここ以外にも様々なステージが用意されている。

 ここは言わば氷山の一角。ここより設備の整ったショーステージも存在するからな。

 もしかすればそこで行うのかもしれん」

 

一瞬悩んでみせたものの、千紗都は再びどこかへ向かって歩き出す。

当然その行き先を3人が知るわけもない。

 

「ちょちょ!? どこ行くのさ」

「何、特別公演をするならとっておきの場所があるからな。そこを当たってみる」

「ま、待ってくださいよー!」

 

案内する予定が、この4人の中で最もフェニランに詳しいのは千紗都である。

結局は彼女のペースに振り回されるまま、3人は園内を回ることになった。

 

そしてやってきたのは一段と豪華な建物。

豪邸を思わせる作りのショーステージ。その名をフェニックスステージという。

 

「すごいですね……これもショーステージですか」

「ああ。ワンダーランズ×ショウタイムが活動を開始するまでは、

 フェニランのショーはフェニックスステージだと相場が決まるほどだからな。

 今はショーコンテストで凌ぎを削っていると聞いたが……」

 

こちらの入り口にも【特別公演の為休演】と電光掲示板で文字が流れていた。

 

千紗都がスマホを取り出し何かを調べている。

開かれているのはフェニランのホームページであった。

 

「やはり今日だったか、ショーコンテストの最終日は」

「ショーコンテストってなーに?」

「ああ、それはだな……」

 

千紗都の説明を受ける文をよそに、理那が言葉に耳打ちをする。

 

「ねえどうする言葉、他のショーステージも回ってみる?」

「そう、だね。適材適所っていうのもあるし、どこか1つでもやってたら見られるしね」

 

もはや手段が目的となってしまっているが、ここまで来ては後に引き下がれないのも事実。

それに今日はショーコンテストなる物の最終日。

その内容を2人は知らないものの、

どこでも力の入ったショーがみられるだろうと踏んで園内を巡ることにした。

 

 

 

とはいえ園内各所に散らばるショーステージ。その数は10を越えており配置もバラバラ。

全てを回り終えた4人は適当なカフェで一服しながらも、疲労が顔に出ていた。

 

「うにゅ~……疲れた……」

「いやー、まさか全部のステージがお休みなんてねー……」

「雲雀さん、今日はコンテストの最終日なんですよね。こんなことってあるんですか?」

「いや、ありえん。SNSの告知にも今日が最終日だと告げている。

 ランキング形式故、どこのステージも妥協は許さんはずだが……」

 

常連客である千紗都も頭を悩ませる。全ての公演が中止になるほどの特別公演。

予想だにしなかった事態に運悪く巻き込まれ、言葉は肩を落としていた。

 

「今日は雲雀さんに楽しんでもらおうと思ったのですが……すみません」

「楽しんでもらう……? なんだ貴様、あの時の我の言葉を気にしていたのか」

「はい。同情はするな、とのことでしたがやはり私にはそんなことはできないと思ったので」

 

こうなっては後の祭り。今回の目的を正直に白状する。もちろん、理那に全てを話したことも。

文は終始なんのことやら解らず首をかしげており、その反応から千紗都はある程度を理解した。

 

「なるほどな。何かあると思っていたが友人まで噛んでいたとは……変わったな、鶴音よ」

「何が、ですか?」

「以前の貴様は全ての罪を自分だけで背負おうとした。しかし今は違う。良き友人を得たな」

 

ほぼ正解のような返答に言葉はかぶりを振る。

そしてその目でしかと千紗都をとらえた。

 

「いえ、私が前に進めたのは雲雀さんのお陰でもあります。

 貴女が私を突き動かしてくれなければ、今の私はいなかった。

 そんな想いもありましたが、何より私は貴女に──」

 

そこまで言いかけた言葉の声を掻き消すように、スピーカーから盛大なBGMが鳴り響く。

それはまるで物語の始まりを告げるファンファーレ。

 

『ハロ~~~~エブリワ~~~~ン!

 皆さま、本日は当フェニックスワンダーランドにお越しいただき、誠にありがとうございます!!』

「これ、天馬先輩の声じゃん」

「ホントだ! あの時えむちゃんとワイワイやってた人!」

 

聞きなれた声に2人の少女が反応する。

言われてみれば学校で何度も聞いた先輩の声だと、言葉も認識した。

 

『そんな皆さまのため我々からのサプライズとして、本日限りの、スペシャルショーを上演いたします!

 それでは──当パークすべてをステージとした、スペシャルショーの開幕です!!

 皆さま、ネオフェニックス城前にお集まりください!』

「なるほど、園内すべてをステージとしたスペシャルショー。全ショーステージが休演だったのも頷ける」

 

千紗都が納得し一人で頷いていると、文が席を立ち華麗なステップと共に3人の前に躍り出る。

 

「ねえお姉ちゃん、斑鳩さん、雲雀さん、いこうよー!」

「あ、ちょっと待って。先にお会計しないと……」

 

そんなこんなで1人の少女に連れられ、3人は新たな目的地を目指すのであった。

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