「委員長ってさ、趣味ってある?」
秋風が香りはじめる屋上で言葉と、
その友人であるクラスメイトが昼食を摂っている時のことだった。
「どうしたの急に」
「いや委員長って大体本読んでるか掃除してるかバイトしてるぐらいだし」
「まあ、今はお金稼がなきゃいけないからね」
そのクラスメイト自身も言葉の内情に踏み入った事はない。
ただよく放課後に街に駆り出そうと誘ったりカラオケなんかにも誘っていいたが、
悉くバイトで断られてしまうために自然とそれが知れていた。
それでも人が悪くないことは周知の事実であったが、
彼女のように深くかかわろうとする人物は他にいなかった。
一度、何故自分にそこまでよくしてくれるのか、と聞いたことがあったものの、
『第一印象でビビッと来たから』だなどとよくわからない事を言っていたのを思い出す。
実際言葉が委員長に名乗り出た後の発言はクラス内で話題を生み、
その新鮮味がなくなる頃にはまた新たな爆弾を投下するという芸当を見せつけ、
委員長として頭角を現していったのだが無論言葉がそれを知る由もない。
「ダメだなー。学生の身分ならもっと楽しまなきゃ! 特に学割が適応されている間に!」
「学割って言っても、高校生になったらもう大人扱いのところも多いけど」
「それでもカラオケとかなら行けるって! 大学生とかもオッケーだし」
若いなら恋しよう! と提案して合コンなどに引き連れ回す人物でないことに感謝していた。
しかしこんな自分に付き合ってくれる彼女に対してはここ半年という時間が経った今でも、
特に何かしたわけではない。
「それに息抜きも大事だって。そのままだと、神高初の鉄の女なんて言われかねないよ」
「鉄の女って、それは流石に言いすぎ」
「それはあるよー。あ、そうだ」
何かを思いついたかのようにカバンを漁り取り出したのは、一組のチケット。
「それってフェニックスワンダーランドの」
「そうそう! 2年に変なポーズ取りながら大声で笑ってる先輩いるでしょ?
その人のハンカチ拾って届けたらお礼に貰っちゃってさ」
「天馬司先輩だね。でも急にどうして?」
「要約すると、最近フェニランのステージで働き始めたとかなんとか」
その詳しい内容に関しては普段意気揚々としている彼女ですら、
遠い目をして語ることはなかった。
言葉自身もその先輩がかなりの変人という事は知っていた為追及しないようにする。
「で、どう? 一緒に行かない?」
「まあ、少しくらいならいいかな。日頃お世話になってるお礼も兼ねて」
「素直だな~委員長は~!」
こうして半ば強制的とは言えど、
とんとん拍子で話は進んでいき次の休みを合わせることとした。
・
・
フェニックスワンダーランド前。
待ち合わせ時間よりも早く現地に赴いた言葉はその来場客の量に驚いていた。
彼女にとってテーマパークなど数年ぶりで、
その盛況ぶりから人気が衰えていない様子から懐かしさを感じるには充分である。
お昼前だというのに未だ絶えぬ客足を眺めながら、一人駆けてくる友人に気付いた。
「ごめーん、待った?」
「ううんそんなに。それより凄い人だね」
「フェニランは有名だからねー。とりあえず行こっか」
チケット売り場では列が既に出来ており、
もしチケットが無ければそこだけで時間を浪費していたかもしれない。
いや、それでもほとんどの人が笑顔で待っているあたり、楽しいのかもしれない。
ゲートをくぐれば様々なアトラクションが出迎えてくれる。
特に目を引くのは観覧車と長蛇の列が出来ているジェットコースター。
「あれ、あのコースターあんなに高いところまで行ってたっけ」
「あ、ネオフェニックスコースターだね。最近絶叫系にパワーアップしたらしいよ」
「そうなんだ。ちょっと残念かも」
「ま、人気であり続けるには変わっていかなきゃいけないってことかなー。あ、そうそう」
近場のマップから案内用のパンフレットを抜き取った彼女は言葉にある場所を指し示す。
「ここ、ワンダーステージって言って先輩がショーしてるんだって。良かったら見に行く?」
「ショー……か」
そういえばと、叔父と叔母に連れられて同じ場所でショーを見に行ったことがあった気がする。
今ではどんな内容だったかも忘れてしまっていた為、たまにはいいかと首を縦に振る。
「ショーっていつでもやってるのかな」
「いやいや、流石にやってないでしょ。時間調べてその間色々見て回らない?」
「そうだね。じゃあまずは「みんなー、こーんにーちわー!」」
早速どこへ向かおうかとしたところで、
どこからか現れた髪も衣装も全身ピンク色に染まっている少女。
入り口の広場で一人の少女が両手をメガホン代わりにして、
入場して間もない人々に呼び掛けている。
「もうすぐ楽しい楽しいショーが始まるよー!
誰でもわんだほーい! になれる素敵なショーが始まるよー!」
「「わんだほーい?」」
聞きなれぬ単語を耳に二人は首を傾げるも、
クラスメイトはすぐさま面白そうな笑みを浮かべてスマホを構えた。
するとそのタイミングでひとしきり宣伝し終えた様子の少女は、
近くの着ぐるみに合図を飛ばし、打ち上げられ空中で一回転して見事に着地する。
アクロバティックな身のこなしに思わず目を向けていた人々の大半が拍手を送る。
「これよりもっとすごいショーが見たい人は、あたしと一緒にワンダーステージに行こー!」
そういって桃色の少女は着ぐるみを数名引き連れ行進を始めた。
それに興味をひかれた人々はまるでパレードのように行進に加わる。
人が増えればそれに興味を持った人が寄っていき、いずれ見えなくなってしまった。
「いやー、行っちゃったねー」
「ついていかなくてよかったの?」
「流石にあの量なら満員御礼でしょ。次の時間ならきっと空いてるだろうし」
そのあたりはしっかりしてるな、と言葉は笑みを零し新たな興味を示した友人の後を追う。
なお、その後の時間のショーを見に行った二人だが、
桃色の少女が再び観客を引き連れてきた上にリピーターもいた為、
立ち見で見ることになる上にショーがあまり見えなかったのはここだけの話である。