荒野の少女と1つのセカイ   作:kasyopa

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第6話「果てなき旅路の終着点」

 

なにもない荒野を鉄の塊が駆け抜けていく。

あれからというもの4人は馬車を道端へと移動させ、積み荷を出来る限り積み込んで再び出発した。

 

運転席にはルカが、助手席にはミクが、荷台のコンテナには理那と文が乗っている。

 

「まったく、理那ってば気を利かせて。とんだお節介よ」

「ふふ、でもいい子だね。あの理那って子」

「……………」

 

ミクの微笑みに応えるようにルカも笑みをこぼす。

なんだかんだでお節介で騒がしい彼女ではあるものの、

彼女がセカイに進出したことによってルカ本人も変わったといって過言ではない。

 

「そういえば途中に村があったと思うんだけど……そこの人達とはどうだった?

 ぼくは大切なことがあったから、あんまり長居はしなかったけど」

「気が済むまで照らしてあげたわ。まあそのせいで解放してくれなかったんだけど」

「……それを解放してくれたのも、あの子?」

「……ええ」

 

ルカにとってそれが最良の答えだったかは解らない。

しかし前に進むことができたのは、自分にとって良いことであった。

 

 

 

一方その頃、コンテナのなかでは理那と文が仲良くおしゃべりしていた。

その内容はもちろんこのセカイについてであり、ここに来るまでの経緯である。

 

「へー、じゃあ文ちゃんはミクちゃんと一緒に旅してたわけだ」

「そうなんです! でもびっくりしました! 恩人さんもおんなじセカイにいるなんて」

「あはは、ルカがそれっぽいこと言ってたけど、私もびっくりだよ。

 バーチャル・シンガーの1人や2人はいると思ってはいたけど、まさか知り合いがいるなんてねー」

 

ルカと共にいられるだけでも満足だった理那だが、

こうして現実味を帯びた存在と出会えたのはより一層夢ではないのだと思える。

それは文にとっても同じであった。

 

「でもミクちゃんにルカさんかー。これでいろんな歌歌えますね!」

「確かに。ミクだけでもレパートリーは多いけど、大体デュエットって言ったらこの2人か」

 

ミクがソロの曲の方が圧倒的に多いものの、歌声が違えば新たな可能性も生まれる。

ミクの相方といえばルカなんて風潮もあるように、

知名度の高い曲も大体はこの2人が絞めているといって過言ではない。

 

「あーあ、お姉ちゃんも一緒に居たらよかったのに」

「ん? 言葉はこのセカイに来てないの?」

「うーん、教えてあげたいんですけど、心配してダメーって言いそうだし……

 それにカイトお兄さんが好きだから、変に期待させちゃってもなーって」

「あはは、それ言えてる。言葉の事だからきっとふてくされるよ」

 

生のバーチャル・シンガーに会えるというだけでも眉唾物だが、

その中に自分の推しがいないのでは肩透かしもいいところだろう。

 

「でも、まあここが終点って訳じゃないし、次の町にでもいたりするんじゃない?

 文ちゃんだってその為に旅してたんでしょ?」

「あ、ううん、わたしは……ちょっと違うかな」

「? 違うって?」

「それは……ミクちゃんがいいって言ったら教えてあげます!」

「そこまで言ったらお姉さん気になっちゃうなー。ほら、おとなしく白状しろー!」

「きゃー!」

 

そこそこ広い荷台の中でおいかけっこが始まる。

そんなに騒いでいれば当然運転席にも響くわけで……

 

『こら理那、年上の貴女が騒いでどうするの。危ないからおとなしくしてなさい』

 

小さなスピーカーからルカの声がする。どうやら無線機で繋がっているらしい。

 

「あはは、ごめんねルカ。うるさかった?」

『うるさいもなにも、また急ブレーキかけたら危ないでしょう? それに──』

『そろそろ次の街が見えてきたから、文ちゃんと一緒に降りる準備をしててね』

「えっ! ほんとミクちゃん!」

 

外の様子を確認しようとするも、全面鉄の壁で覆われており見ることはできない。

しかし2人はミク達の言うことに嘘はないのだと信じている。

まだ見ぬ景色を待ちわびながら、2人は各々の準備を進めるのであった。

 

 

 

「わあっ……」「おおー……」

 

到着した街並みはどこか中世を感じさせるもの。

しかし人影の姿はどこにもなく、不気味な雰囲気もあった。

 

「とりあえず、誰かいないか探してみない?」

「そうだね。ぼくは文ちゃんと行動するけど、ルカはどうするの?」

「私達は貴女達に付いていくわ。気にしないで」

「そっか。じゃ、行こっか」

 

文の提案でとりあえず誰かいないか探し始める文とミク。

文は見慣れぬ町並みが怖いのか、ずっとミクにべったり。

ルカと理那はそんな様子を後ろから眺めつつ、街並みを観察していた。

 

「ねえルカ、この街って見覚えある?」

「どういうことかしら」

「ほら、前に休憩したときに見つけたあの光る玉みたいなやつ。

 あれに触った時に見えた景色が、ここに似てるっていうか」

「へぇ……それで? 貴女はそれ以外に何を見たのかしら」

「いや、ルカが1人で寂しそうにしてたから妙に印象に残ってさ」

「……それより貴女は、観客を沸かせる事を考えなさい。約束でしょう?」

「あ、話反らした」

 

話を反らしてはいるが約束は違わない。

『次の街の人達を沸かせられたら』という条件はこの街で果たさねばならない。

 

そんな中、ミクは誰かを探す……のではなくどこか目的地に向かって歩いているようだった。

それはまるで自分の庭のように。

 

やがてたどり着いたのは1件の雑貨屋。

看板も出ておらず名前もない店へと足を踏み入れる。

 

「ミクちゃんなにして……ってあーーー!!!」

「ちょ、文ちゃんうるさ……あーーー!!!」

 

そんなお店のガラス窓。カフェスペースに腰をかけた2人の少女──言葉と千紗都の姿が。

そしてそれを挟むように、バーチャル・シンガーのMEIKOとKAITOがいる。

 

「文!? 理那も……どうして?」

「それはこっちの台詞だよ! っていうかメイコにカイトまでいるじゃん!」

「お姉ちゃん……お姉ちゃんだー!」

 

慌てて駆け寄り騒ぐ2人を尻目に、千紗都は1人の少女を捉え席を降りる。

そのまま1人の歌姫の前まで歩みを進めた。

 

「おかえり、千紗都。それとも、ただいま、かな?」

「それはそちらも同じだろう。ただいまだ、ミク。そして、おかえり」

 

セカイの主と歌姫の再来は、ここになったのであった。

 

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